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前回のラストで封印の箱を開けてしまったソナの体を、伝説の仮面職人ガストンの傑作・武神の仮面が乗っ取った。世界最強の戦士ゴウオンさえ圧倒する怪物を前に、かつてその仮面に人生を狂わされたペルが立ち向かう。仮面を知り尽くしたペルの戦い、右腕と引き換えに守ったもの、そしてペルの旅についていくと決めたソナまで、重くも温かい第2話を振り返る。




第2話「武神の仮面」は、仮面の代償を描いた回
『朱色の仮面【第1クール】』第2話「武神の仮面」は、前回のラストでソナが封印の箱を開けてしまった直後から始まった。少女の体を乗っ取った武神の仮面と、かつてその仮面に人生を狂わされたペル。激しい戦いの末にペルが失ったもの、そしてソナが選んだ道まで、2話目とは思えないほど重く、それでいて温かい一話だった。
ソナの記憶
物語は、幼いソナの記憶から始まる。城に押し寄せる兵士たち。何があってもあなたを守るから、と娘を逃がす母。王女が中にいるぞ、という声に追われながら、ソナは一人で城を抜け出した。前回、今の王様が嫌いだと話していたソナの過去に、こんな夜があったことが明かされる。
そして場面は現在へ。箱を開けたソナに向かって、仮面は良い顔だ、気に入ったぞ、力を貸してやろうと語りかける。王女として守られた少女が、今度は仮面にのみ込まれてしまうという残酷な対比が、冒頭から胸に重くのしかかった。
武神の仮面の目覚め
ソナが仮面をかぶった姿に、リスブランを制圧したゴウオンの兵たちは騒然となる。元王女がかぶりおった、という声とともに現れたのは、少女とは思えない巨体の怪物だった。ゴウオンの側もエンリュウの仮面を持ち出して迎え撃つが、武神の仮面の力は桁違いだった。
これほどの挑戦者に巡り会えたことを喜び、褒美だと手品を見せるようにゴウオンを圧倒する武神の仮面。種も仕掛けもございません、とおどけてみせる余裕すらある。そして言い放つ「我の存在は人間の尺度とは異なる」という言葉が、この仮面の異質さを決定づけていた。
世界最強の戦士と呼ばれたゴウオンですら歯が立たない。人間の体を器にして暴れる仮面の恐ろしさが、ここまで容赦なく描かれるとは思わなかった。仮面をかぶったのが心優しいソナだったからこそ、その変わり果てた姿がいっそう痛ましく映る。
ペルと武神の仮面の因縁
久しぶりと言おうか
武神の仮面の前に立ったのは、ペルだった。久しぶりと言おうか、ペル。仮面はペルのことを覚えていた。自分を閉じ込めたのがペルだったことも。次は街の人々を殺めて楽しもうと思っていたが、と嘲笑いながら、仮面は師の仇を前にして戦う勇気もないのかとペルを挑発する。
前回明かされた、一人の弟子が武神の仮面をかぶって起きた惨劇。その記憶と向き合わされるペルの姿は痛々しい。けれどペルは、ただ逃げ回っていたわけではなかった。仮面のことを誰よりもよく知る仮面屋として、ペルには勝ち筋が見えていた。
時間を稼ぐ戦い
ペルの作戦はこうだった。武神の仮面の手は恐ろしく速いが、手の届く範囲はそれほど長くない。距離を取り続ければ、時間稼ぎくらいはできる。そして仮面の力は、かぶっている人間の能力に左右される。子どもがかぶった場合、三つ目の進化の前に体力が切れる。俺の時もそうだったろう、というペルの言葉に、二人の因縁の深さがにじんでいた。
力ずくではなく、知識と観察で仮面を追い詰めていくペル。最後には仮面に一撃を与え、「一矢報いたぞ」と叫ぶ。ぼろぼろになりながら笑うその姿は、前回、一人前だと認められたかったと語っていた半人前の弟子とは違って見えた。
ただし、その代償はあまりにも大きかった。戦いが終わったとき、ペルの右腕は失われていた。仮面屋にとって、利き腕を失うことが何を意味するのか。この後の場面が、その重さを静かに突きつけてくる。
失ったものと残されたもの
右腕を失ったペル
目を覚ましたペルは、すぐにこの街を離れると言う。うわさが広まる前に。師匠の仮面を全部壊すまで、捕まるわけにはいかない。でもその腕じゃ、と言いかけるソナに、ペルはお前が武神の仮面をかぶったからこのざまさ、と突き放す。ごめんなさいと泣くソナに向けられたのは、「俺は泣き虫のガキが一番嫌いだ」という冷たい言葉だった。
けれど、続く言葉にペルの本心がのぞく。「こいつは俺の弱さが招いた結果だ」。お前がいくら泣こうが関係ない。出ていけ、二度と顔を見せるな。乱暴な言い方の裏には、ソナに罪を背負わせたくないという気持ちが隠れているように思えた。自分のせいだと責める相手を遠ざけることで、ペルなりにソナを守ろうとしていたのではないだろうか。
ソナの帰る場所
ソナが向かったのは、仲間の子どもたちのところだった。3日もどこに行っていたんだと心配する子どもたちは、ソナが王女だったことを知っていた。誰にも話していない、俺らだけの秘密だ、と。城は乗っ取られ、父も母も殺された。けれどもう、あいつはいない。そう話すソナの表情は複雑だった。
続いてソナは、レンという幼い子を家に呼び戻す母親から声をかけられる。このあいだ、このあたりに化け物が出たんだって。あんたも早く家に帰りな、お父さんとお母さんが心配するよ。何も知らない母親の言葉は、怪物の正体が自分だったソナにとって、そして帰りを待つ両親をもう持たないソナにとって、どれほど重く響いただろうか。
その後ソナは、爺と呼ぶ老人のもとを訪れる。災いの種である仮面は、旅人に国外へ持っていってもらった方がいい。そしてこの国は今、復興を指揮する新たな指導者を求めている。前国王の娘であれば国民も納得するだろう、と爺はソナに国を導いてほしいと頼む。けれどソナの心は、すでにペルについていくことに傾いていた。
笑顔の仮面の下で
一方のペルは、痛み止めももらえず、笑顔の仮面でごまかしながら右腕の痛みをこらえていた。医者への悪態をつきながら笑い続けるその声が、どこか泣き声のようにも聞こえる。第1話で、こんな時こそ笑顔が必要だと笑顔の仮面を売っていたペルが、今は自分の痛みを隠すためにその笑顔を使っている。
そしてソナもまた、苦しんでいた。「自分のせいで誰かの大切なものがなくなる」というのは、こんなにもつらいことなのか。ペルはこんな気持ちを背負って、許してくれる人もいないまま旅を続けてきたのだ。ちゃんとした形で帰りたかった、と両親を思うソナの涙に、二人が同じ痛みを抱えていたことがはっきりと浮かび上がった。
旅立ちのバス
国を救った英雄への切符
街を離れるバスに乗ろうとするペルの前に現れたのは、ソナだった。このバスは事前に切符を買わないと乗れない。用意しておいて正解だった、とソナは切符を差し出す。国を救った英雄よ、これぐらいさせて。ぶっきらぼうに礼を言うペルとのやりとりが、少しだけ空気を和らげた。
ゴウオンが持っていたガストンの仮面も、ペルのもとに届けられる。ただ、もう一枚あったはずのエンリュウの仮面は見当たらず、何者かに持ち去られたらしい。新たな火種を感じさせる報告だった。そしてソナは、爺にペルについていくと告げる。昔からおてんばな方でした、と見送る爺の言葉には、長年仕えてきた者の愛情があふれていた。
私がついてくの
罪滅ぼしのつもりならやめろ、お前にはやるべきことがあるだろう、と止めるペルに、ソナは答える。「泣いてる人を見過ごせないの」。この国より、あなたの方がためになりそうだから、私がついていく。第1話で荷物を盗んだ少女が、今度は自分の意思でペルの隣に座る。その変化がうれしかった。
お互い、いろんなものをなくしたみたいだな。どれも取り返しのつかないものばかりで、もう元には戻らない。たったそれだけのことだ、と言うペルの言葉は、失ったものを受け入れたうえで前に進もうとする決意にも聞こえた。
寂しくなったら帰ってこいよ
バスが出ようとしたそのとき、子どもたちが駆けつける。仮面のお兄ちゃん、物を取ってごめん。お前なんかいなくても平気だぞ、この国は俺たちがなんとかする、と強がる子どもたち。けれど最後に、「寂しくなったら帰ってこいよ」、ここはお前の故郷なんだから、と叫ぶ。
城も家族も失ったソナにとって、帰れる場所がちゃんと残っていた。王女としてではなく、一人の仲間として迎えてくれる場所。泣きながら手を振る子どもたちの姿に、こちらまで涙腺が緩んでしまった。
第2話のまとめ考察
仮面の力と、その引き換え
第2話は、仮面の力がどれほど大きな代償を伴うのかを、真正面から描いた回だった。少女の体を器にして暴れる武神の仮面と、その仮面を止めるために右腕を失ったペル。仮面屋にとって何よりも大切な腕を失ったことは、この物語の行く末を大きく変えていくはずだ。
印象的だったのは、ペルが力ではなく知識で武神の仮面に立ち向かったことだ。手の届く範囲、かぶった人間の体力、進化の段階。仮面屋として仮面を知り尽くしているからこそ、勝てない相手から時間を稼ぎ、ソナの体が限界を迎えるのを待つことができた。かつて自分がその仮面をかぶった経験さえ武器に変えたペルの戦い方は、半人前と呼ばれた過去を乗り越えようとする姿そのものだった。
それでもペルは旅をやめない。師匠の仮面をすべて壊すまで。失ったものの大きさを受け入れて前に進むペルの姿には、第1話で語られた半人前の弟子とは違う強さがあった。
二人で始まる旅
そしてもう一つの大きな変化は、ソナがペルの旅に加わったことだ。国を導く道もあったソナが選んだのは、泣いている人を見過ごせないという自分の気持ちだった。自分のせいで誰かの大切なものを失わせたつらさを知ったソナだからこそ、ペルの痛みに寄り添えるのかもしれない。ペルが突き放したのも、ソナが追いかけたのも、どちらも相手を思ってのことだった。泣き虫のガキは嫌いだと言ったペルの隣で、ソナは泣いている人を見過ごせないと言う。正反対に見える二人の言葉は、実は同じ優しさの裏表なのかもしれない。
帰れる場所があるソナと、帰る場所を自ら手放してきたペル。同じ痛みを知る二人の旅が、ここから本当の意味で始まる。持ち去られたエンリュウの仮面の行方も含め、二人がこの先どんな仮面と向き合っていくのか見届けたい。




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