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アルトワール学院での生活が始まったニア。身体測定では何かと張り合ってくるレリアの記録をことごとく上回り、楽しみにしていた天破流のクラブ見学では、師匠の実力にすっかり拍子抜けしてしまう。後半は、ヒルデの呼びかけで三人がマジックビジョンを広める方法を話し合う。筋肉任せの師範代代理、一年の稽古を見せたリノキスの蹴り、そして三人で開いた第1回の普及活動会議まで、第5話を振り返る。




第5話 身体測定とレリアの対抗心
第5話は、アルトワール学院での寮生活が始まったニアたちの、にぎやかな学院生活の一日目から幕を開けた。身体測定ではニアに張り合うレリアが空回りし、待ちに待った天破流のクラブ見学では、ニアの期待が思いもよらない形で裏切られる。そして後半は、ヒルデの呼びかけで開かれた第1回マジックビジョン普及活動会議。学院生活の始まりと、三人の番組作りの第一歩を振り返っていく。
マジックビジョンの人気者たち
身体測定の会場へ向かうニアとレリアには、あちこちから視線が集まる。貴人の家の子はいつも侍女と一緒なのだと噂する声に、ニアは階級制度の意味合いが弱まってきているとはいえ、やはり貴人は特別な目で見られるのかと考える。その一方で、マジックビジョンに出ている子たちだと気づく子もいれば、見たことがない、家に魔晶板がないという子もいる。
第4話で感じた現実の厳しさは、ここでも変わらない。それでもニアの頭にあるのは、今日の目的である天破流の師匠のこと。果たしてどれほど強いのか。にやけていると「なに笑ってんのよ」と突っ込まれるところから、二人の一日が始まった。
識別色の出ない魔力測定
最初の測定は魔力だった。レリアの識別色は赤で、量は平均よりかなり多いという。姉たちも全員赤なのだと誇らしげなレリアに続いて、ニアの番。ところが、ニアの識別色はまったく出なかった。
本人にとっては予想どおりだった。一年以上前に死にかけてから、髪の色が戻らない。魔法使いは魔力を使いすぎると髪が白くなるというが、あのとき魔力の回路そのものが壊れてしまったのだろう、とニアは考える。それでもまったく気にしていないのがニアらしい。魔法による攻撃なんかより「殴ったり蹴ったりした方が早い」のだから。
なんで全部私より少し上なのよ
体重の測定では、ニアのほうが重いと分かってレリアが首をかしげる。ニアの答えは「筋肉は脂肪より重いから」。理屈は正しいのに、言われた側はなぜか「なんか腹立つ」。この噛み合わなさが、二人の関係をそのまま表していた。
体力測定に入ると、全力でやってはいけないと念を押されたニアは、手加減しながら記録を出していく。それでもレリアの記録を、どの種目でもほんの少しずつ上回ってしまう。「なんで全部私より少し上なのよ」と悔しがるレリアに、ニアは心の中で「子供相手といえど負けたくないからだ」とつぶやく。神殺しの武人の負けず嫌いが、こんなところで顔を出すのがおかしかった。
あんたより強くなりたい
測定を終えると、いよいよレリアの姉が待つ天破流のクラブ見学へ。約束していたことを思い出したニアは、内心で「ずっと楽しみにしていたのだ」と浮き立ち、早く連れていけと言わんばかりにレリアを急かす。天破流のクラブに入るのかと聞かれれば、「私より強ければ考えてやらなくもない」という答えが心の中に浮かぶ。
マジックビジョン普及のために、クラブ活動にかける時間はないだろうと話すニアに、レリアは自分は入りたいのだと明かす。強くなりたいのかと尋ねられたレリアの答えは、「もちろんあんたより強くなりたい」。「顔と性格では勝ってる自信があるけど」、「力は負けてるからね」。シルヴァー家の娘として、「全てにおいてあんたには負けたくない」のだという。
それを聞いて笑ってしまうニアに、レリアは何度も「なんで笑うのよ」と食ってかかる。ニアが笑ったのは、馬鹿にしたからではないだろう。前の人生で強者を求め続けたニアにとって、実力差を知ったうえで自分に挑もうとする相手は、むしろ好ましい存在なのだと思う。
期待外れの天破流とリノキスの蹴り
がっかりさせてくれた師匠
体育館には、荒事に関わるクラブばかりが集まっていた。「平和ボケのアルトワール」と呼ばれるわりに、武術のクラブは意外と多い。魔獣もいるし、ダンジョン攻略のように危険を伴う仕事もあるからだろう。レリアの姉に道場まで案内されたニアは、ついに天破流の師匠と対面する。
師範をも上回ると言われる師範代代理。「その年で武の道に興味があるとは感心だ」と迎える師匠に、ニアは心の中で「できれば何人か殴りたい」と答える。ひと目見ただけで、相手の底が見えてしまったのだ。技の練度より筋肉が主体の、「ただの力任せの荒くれだな」。唯一褒められるとしたら、「思いっきり殴っても死なずに耐えきれるだろう」ということだけ、という評価が辛辣すぎて笑ってしまった。
第4話の最後であれほど燃えていただけに、この落差は大きい。用は済んだとばかりに立ち去ろうとするニアを、師匠は引き止め、クラブに入ってほしいと誘う。一応は敬意を払ったつもりのニアは、心の中で「弟子の前で恥をかきたいのか」と思う。ここで本気で相手をすれば、師匠の顔に泥を塗ることになると分かっていたのだろう。
露払いは弟子の仕事
そこで前に出たのがリノキスだった。お嬢様には自分が教えているので、「他流の門は叩けないのです」。そうして間に入ったリノキスに、ニアは師匠と手合わせをして実力を示すよう命じる。リノキスが師匠より強いことを示せないなら、師匠替えを検討してもいい。「どうせなら強い人の弟子になりたいわ」という言葉に、慌てるリノキスとは対照的に、師匠は乗り気だった。「武においては、強い者が弟子を導くのは当然のこと」だと。
ニアがリノキスに見せるよう求めたのは、気の使い方だ。「一年間で磨いた、あなたの武を見せてみなさい」。勝てばご褒美に好きなものを食べに行き、負ければ「丸一日の荒行ね」。「またあの地獄に突き落とすつもりですか」と嘆くリノキスに、ニアは「露払いは弟子の仕事よ」と言い切る。一番弟子に向けた言葉としては、なかなかに厳しい。
一瞬で終わった手合わせ
新入生の女子を取り合って、侍女と師範代代理が戦うらしい。そんな噂に、道場には人だかりができる。本当に大丈夫なのかと心配する声に返ってきたのは「彼女は強いですから」という落ち着いた答えだった。
試合は、始まった瞬間に終わっていた。鞭のようにしなった右足が、師匠の太ももに強烈な蹴りを入れたのだという。見ている側には速すぎて何が起きたのか分からないほどの一撃で、音からすると相手は筋肉を緩めていたようだ、という解説まで入る。ニアの評価は「今のは良かったわ」。一年前はただの侍女だったリノキスが、ここまで来たのかと思うと感慨深い。
師匠にとっては散々な結果だが、ニア本人が相手をしていたら、もっと大きな恥をかいていたはずだ。弟子に任せたのは、ある意味で師匠の面目を守るためでもあったのかもしれない。
お嬢様の手料理がいい
約束どおりお昼に行こうと言うニアに、リノキスが望んだのはお嬢様の手料理だった。ところがニアの返事は「わかったレストランね」。もう一度お願いしても、同じ答えが返ってくるだけ。ご褒美のはずなのに、いちばんの望みはあっさり聞き流されてしまう。この主従のやり取りは、何度見ても楽しい。
第1回マジックビジョン普及活動会議
ヒルデと呼んでください
入学式では、王立アルトワール学院は王国中すべての子どもたちが身分に関係なく一つの学び屋で学ぶ場所だと語られる。校舎の案内の途中にはマジックビジョンの撮影も入り、カメラの前には、はしゃぎながら次々と子どもたちが飛び込んでくる。この光景が、のちの会議の鍵になる。
そしていよいよ、ヒルデの呼びかけで「第1回マジックビジョン普及活動会議を始めます」。まずは自分のことを「ヒルデと呼んでください」、「敬語も必要ありません」と切り出す王女に、さすがに呼び捨てはとためらう声と、すぐに呼び方を切り替える声が重なる。三人の距離が、ここで一歩縮まった。
高すぎる魔晶板
ヒルデによれば、マジックビジョンを映す魔晶板は、当初は希少な天然水晶を使っていたが、研究が進んで今では魔法で生み出せるようになった。それでも大変なコストがかかるため、魔晶板は高額なまま。国は莫大な資金を投じているものの、一国の財力だけでは苦しく、共同出資者もリストン家のあとはなかなか続かず、ようやくシルヴァー家が手を挙げたのが現状だという。
魔晶板一枚ですら庶民には買えない。どうやって作っているのかと聞いても、「そのあたりのことは全て国のトップシークレットなのです」。王女ですら知らされていないというのだから、普及への道のりは想像以上に険しい。
魔獣狩りと血しぶき
シルヴァー家のチャンネルには冒険家関係の映像が多く、冒険家は探索で見つけた素材で収入を得ているという話が出る。そこでニアが出した案は、「魔獣狩りで稼ぎましょうか」。冗談だと思われて呆れられても、心の中では「本気なのだが」。自分たちで稼いで魔晶板の支払いに当てればいいという発想は、あまりにもニアらしい。
その後も、今ある番組をもっと面白くするにはという話になるたび、ニアの案は次々と却下されていく。いったん魔獣から離れようと言われても、ニアの本音は「私は血しぶき飛び散る魔獣との試合が見たいのだ」。番組作りの会議のはずが、ニアの頭の中だけはずっと戦場だった。
ズバリ恋です
そんな中、もっと大勢の人が見たいと思う番組をと求められて、ヒルデが出したのは「ズバリ恋です」。「万人が興味を抱くものは異性」、つまり恋愛。昔から恋愛や愛憎の物語が数多く生まれるのは、人が人を、そして愛を求める生き物だからだと熱弁をふるう。
つまらない、いい歳した大人がうだうだしていて面倒くさい、という反応にも、「そのもどかしさが大人の恋なのです」と一歩も引かない。8歳の王女が大人の恋を語る姿に、「どうせ初恋もまだのくせに」と冷ややかな声が飛ぶのもおかしかった。食いつきが良いのは事実だと認めたニアが、それを突き詰めるなら「いやらしい感じのやつね」と言い出し、「方々から圧力をかけられて潰されますよ」と必死に止められる流れまで含めて、この会議はどこまでも騒がしい。
見る側から出る側へ
けれど、アイデアが出ないまま、ヒルデは肩を落とす。二人に出会う前からいろいろ考えてきたが、妙案は浮かばなかった。大人でさえ成し得ていない難題だからこそ、「この3人ならあるいはと期待したのです」。それでも「けれどもやはりままなりませんね」。世界の覇権を語った王女が見せた弱音が、年相応で少し切ない。
そこへ「落ち込んでるだけでは前に進めないわ」と声がかかり、役に立つかどうかは置いておいて、まずは発想を出してみようと話は仕切り直しになる。そして出てきたのが、作る側ではなく、視聴者の側に立って「どんな番組に出てみたいか」を考えるという逆の発想だった。入学式の撮影で、カメラの前に飛び込んできた子どもたち。あの子たちは、マジックビジョンに出たいと思っていたのではないか。
「見るだけではない参加できる番組」。ヒルデは二人に礼を言い、「これはいけますわよ」と部屋を飛び出していく。見る側を出る側に変える。たった一つの視点の転換が、行き詰まった会議を一気に動かしたのが気持ちよかった。
リノキスの稽古とヒルデの妙案
ちゃんと気も使えていたわね
ヒルデがいなくなったあと、ニアはレリアに、視聴者参加型の番組を思いついたと話す。強い冒険家と魔獣が戦ったり、強い者同士が戦ったりして、どちらが強いかを視聴者が選んで賭ける番組。レリアの返事は「あんたそういうのばっかりね」。最近は血はあまり見たくないという声も多く、苦情も来ると聞かされても、ニアは「勝負ごとに流血はつきものじゃない」と譲らない。
一方で、ニアはリノキスに稽古をつける。先日の蹴りは、基礎さえ怪しいけれど「ちゃんと気も使えていたわね」。完成はまだ先だが、これからも励むようにと言われたリノキスは、「必ずお嬢様をお守りできるように」と誓う。守られる側のお嬢様が、守る側の侍女を鍛えている。ニアの心の声「いつになることやら」には、厳しさと一緒に、弟子の成長を見守る温かさもにじんでいた。
師範代代理への落胆があったからこそ、自分の弟子が確かに育っていることへの手応えが、いっそう際立つ。強者を求めるニアにとって、いちばん身近な楽しみは、案外すぐそばにあるのかもしれない。
視聴者参加型のぶとう大会
やがて、企画を詰めていたヒルデが、ついに妙案が浮かんだと二人のもとへやってくる。その提案は、視聴者参加型のぶとう大会。強い者同士が戦う番組を思い描いていたニアにとって、その響きはまさに待ち望んでいたものだったに違いない。
期待した天破流の師匠には肩透かしを食らい、普及活動会議では物騒な案をことごとく却下された一日。それでも最後に、ニアの目を輝かせる言葉が転がり込んでくる。三人の番組作りが、ここからどう形になっていくのか楽しみだ。




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