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体育祭の午後、ついに始まった騎馬戦で、柊は源に真正面から勝負を挑む。体格も強さも違う兄に食らいつきながら、柊がぶつけたのは長い間しまい込んでいた本音だった。それは、ずっと長男として弟たちを守ってきた源の心を揺さぶる言葉でもあった。兄弟の本音のぶつかり合い、勝った柊が源に頼んだたった一つのお願い、そして帰り道に源がこぼした不器用な告白まで、第18話を振り返っていく。




体育祭午後の部、騎馬戦の幕開け
勝ったら言うね
『うちの弟どもがすみません』第18話は、体育祭の午後の部から始まる。最初のプログラムは応援合戦。にぎやかな会場の中で、糸は「ほんとは争う二人なんか見たくない」と複雑な気持ちを抱えていた。源と柊の勝負は、もう目の前に迫っている。
柊は糸に、「見ててくれる?」と声をかける。「今度はただの喧嘩じゃなくちゃんとするから」。そして、もし自分が源に勝ったら、と言いかけて「勝ったら言うね!」と笑う。この時点では、柊が何を言おうとしているのか分からない。その含みが、最後まで物語を引っ張っていく。
前の話でぶつかり合った二人が、今度は正々堂々と勝負する。糸が見守る前で、柊がどんな姿を見せるのか。騎馬戦の開始を告げるアナウンスとともに、こちらの緊張も一気に高まった。前の話までの柊なら、源に正面から挑むことなど考えられなかったはずだ。糸に見ていてほしいと言える強さを手に入れた柊の姿に、まずそれだけで目頭が熱くなった。
罪な女と青いゴリラ
騎馬戦が始まると、会場はあっという間に混戦状態。実況ごっこを始めた生徒たちは、「激アツな兄弟対決になりそうですね」と盛り上がり、どちらを応援するのかと糸に聞く。「二人ともかな」と答える糸に、「オタクもなかなか罪な女だ」と返されるやりとりがおかしい。そういう意味じゃないと慌てる糸の姿も含めて、緊張した空気の中のいい息抜きになっていた。とはいえ、どちらも大切な相手だからこそ片方だけを応援できない糸の立場は、本人にとっては笑いごとではないはずだ。軽いやりとりの裏に、糸の迷いがちゃんと描かれていたのがよかった。
会場のあちこちで騎馬がぶつかり合うなか、3年生の強敵を前に逃げ腰になる生徒もいれば、ザコなんかじゃないと奮い立って向かっていく生徒もいる。体育祭ならではの熱気が画面から伝わってきて、見ているこちらまで声を上げたくなった。その熱気の中心で、源と柊の騎馬は互いを探して進んでいく。
兄弟の本音のぶつかり合い
長男のフリなんかするしかなかった
そしてついに、源と柊の騎馬が向かい合う。こそこそ筋トレをしていたわりに全然だと挑発する源に、柊は「油断しないでよ」、「ただ突っ込んでいくだけで勝てると思ってないから」と返す。力では敵わないと分かっているからこそ、柊は言葉で源の心に踏み込んでいく。
「ほら そういうとこ 源君の悪いとこだよ」、「そうやってすぐごまかすじゃん」、「だから自分の気持ちもはっきり分かんないんだ」。さらに「いつも長男のフリするので頭いっぱいにしてるから」。弟だからこそ見えていた兄の弱さを、柊は容赦なく突きつける。
それに対する源の答えは、思いがけないほど痛切だった。「長男のフリなんかするしかなかったに決まってんだろ」。「お前らみたいに欲しいものを欲しいって」、「まっすぐ言える奴らに」、「今さら俺の気持ちなんか分かられてたまるかよ」。いつも頼れる兄として弟たちを支えてきた源が、初めて弱音のような本音を吐き出した瞬間だった。
その直後、柊は体勢を崩して騎馬から落ちてしまう。源もとっさに柊へ手を伸ばす。本音をぶつけ合った直後に、言葉より先に体が弟を守ろうとする。そこに源という人間のすべてが表れていたように思う。どれだけ言い合っても、最後は弟を守ってしまう。それが長男のフリなのか、本当の源なのか。その境目があいまいなところに、源の生きてきた時間の重さを感じた。
勝ったのは柊だった
目を覚ますと、柊は保健室のベッドの上にいた。「騎馬戦で落ちたんだ」と思い出す柊。そばで眠っていた糸は、目を覚ました柊に大喜び。呼んでも返事がない柊を、源がここまで運んできてくれたのだという。自分から勝負をふっかけておいて、結局助けられて終わり。柊は「いくら頑張ってみても」、「圧倒的ヒーローキャラには敵わないんだ」と落ち込む。
ところが源から告げられたのは、意外な結果だった。「じゃあ右手に握ってんのは何だ」。落ちる瞬間、柊は源の鉢巻をしっかりつかんでいたのだ。「マジで覚えてねえのな」、「ルール的にはそうなるんじゃね」、「俺は今割と屈辱的だぞ」。最後まで勝ちにこだわった柊の粘りが、きちんと結果につながったのがうれしい。落ちながらも鉢巻を離さなかったのは、それだけ本気だったということだ。勝ち負けにこだわる姿は、以前の柊からは想像できなかった。悔しがりながらも結果を認める源の潔さも、兄らしくて好ましい。
それでも柊は、全然勝った気がしないと言う。「やっぱり源君はかっこいいお兄ちゃんだなって」、「俺のわがままに付き合ってくれたんでしょ」。放っておけば自爆していたのに、わざわざ助けてくれた兄。「昔から俺たちのことばっか考えてきたんだもんね」、「自分の気持ちにも鈍感になるくらい」。柊の「ごめんね」、「ありがとう」には、兄への尊敬と感謝が詰まっていた。
柊が源に頼んだたった一つのお願い
糸ちゃんよろしくね
保健室を出た柊に、糸は勝ったら言うと言っていたことは何だったのかと尋ねる。糸は、二人のけんかは嫌だったけれど、ちゃんと意味があったと振り返る。「ついでに弟離れの一つでも覚えて」、「もう少し肩の荷下ろしちゃえばいいんだよ」。糸もまた、源の背負ってきたものをちゃんと分かっていたのだ。
柊の答えは、「もし俺が勝っちゃったら」、「源君きっと落ち込んじゃうでしょ」、「だからその時は」、「糸ちゃんよろしくねって言いたかったんだ」というものだった。本当に言いたかったことは別にあったはずなのに、柊は兄の背中を押す方を選ぶ。保健室から出てきた源に「約束だからね」、「頑張って」と告げて去っていく姿が、切なくもかっこよかった。
好きな女の子のヒーローに
戻ってきた柊を、小麦さんたちが迎える。勝負の結果を聞いた小麦さんは「じゃあお姉さんは君のもの?」と冗談めかすが、柊はそれは無理だと笑う。そして、源に頼んだお願いの中身を明かす。源に、本当の気持ちを言ってほしい。自分ではなく、糸に。
糸に手を出すなと言うと思ったかと聞く柊は、「言うわけないじゃん100%で振られるのに」とあっさりしている。「俺はいつも一生懸命な糸ちゃんが報われてほしいだけ」、「いつも楽しそうに笑っててほしいだけ」。そして「こんな俺だけど好きな女の子のヒーローになってみたかったんだ」。ヒーローキャラには敵わないと落ち込んでいた柊が、自分なりのやり方で、確かに糸のヒーローになってみせた。第18話でいちばん心を揺さぶられた場面だった。
勝負とかどうでもよかったのかもしれない、ただやらずにはいられなかったという柊の言葉にも、素直な気持ちがにじむ。自分の想いを押し通すのではなく、好きな人の幸せを選ぶ。柊の成長を、これほどはっきり感じた回はなかった。シリーズの序盤では自分の気持ちを言葉にするのも苦手だった柊が、兄にも糸にも本音を伝え、自分の役割を選び取っていく。その変化を、騎馬戦という分かりやすい舞台で見せてくれたのがうれしい。
帰り道の不器用な告白
餃子の口と、俺だけ見てればいい
体育祭は白組の逆転優勝で幕を閉じる。帰り道、源と糸は晩ごはんの相談をしながら商店街を歩く。「今餃子って思いました?」、「奇遇だな今一瞬で餃子の口になったわ」。いつもどおりの軽口が、なんだかほっとする。体育祭のあとの夕暮れの商店街を、晩ごはんの話をしながら並んで歩く。二人の距離の近さは、もう家族同然だ。その近さこそが、源が気持ちを口にしづらかった理由なのかもしれない。
荷物を持とうとする源が右手をかばっていることに、糸はすぐ気づく。騎馬戦で落ちたときに痛めたのだろう。「ほんとお前は油断ならねえよな」とぼやく源に、「うちは弟4人が常にやんちゃしてるもんでね」と返す糸。そして源は、「まあ悪かったな」、「いろいろ心配かけて」と素直に謝る。柊の言葉が、源の中で何かを動かし始めているのが分かる。人に頼らず全部を一人で背負ってきた源が、心配をかけたと自分から口にする。それだけでも、源にとっては大きな変化なのだと思う。
昔のあだ名を言い合ううちに、源の口から思わずこぼれたのが、「もっと俺だけ見てればいいんだ」だった。糸に「俺だけ見ろって何」と聞き返されても、源は「俺だってどう切り出していいか分かんなかったんだよ」、「約束だからってわけじゃねえけど」と不器用に言葉を探す。告白と呼ぶにはあまりにもぎこちないけれど、源らしい精一杯の一歩だった。しかも、動揺した糸の心の声が全部口に出てしまっていたというおまけつきで、二人そろっていっぱいいっぱいだったのがほほえましい。
第18話のまとめ考察
両思いになってたってこと
家では弟たちと餃子パーティー。にぎやかな食卓で、糸はさっきの出来事が現実だったのかどうか、ぼんやりと考え込む。普通の顔で普通に餃子を食べている源を見ていると、夢だったのではと思えてくるのがおかしい。それでも思い返すほどに、言葉の意味がじわじわと心に響いてくる。
「知らないうちに」、「両思いになってたってこと」。そして「私、どうすんの?」。糸がようやく気づいたところで、第18話は幕を閉じる。柊が身を引いて背中を押し、源が不器用に一歩を踏み出し、糸がそれを受け止める。三人それぞれの想いが一本の線でつながった、とても丁寧な回だったと思う。体育祭という舞台を使って、兄弟の関係と恋の行方を同時に動かした構成も見事だった。
柊にとってこの騎馬戦は、兄に勝つための戦いではなく、兄に本当の気持ちを言わせるための戦いだった。そう考えると、勝ち負けにこだわりながらも勝った気がしないという柊の言葉にも納得がいく。好きな人の幸せを願って身を引いた柊と、ようやく一歩を踏み出した源。この兄弟の関係が、ここからどう変わっていくのかも楽しみにしたい。




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