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第18話(18限目)のサブタイトルは「無人島の冒険」。期末試験の初日、スピカの相棒になるのはカバンに入っていた魔導人形ブーディで、助けてくれるのは三回だけ。島ではアリアとポルックスがエメラルドを賭けて一対一の勝負をしていて、スピカはそれを割り込まずに見届ける。そして後半は、ほとんど歌でできている。




正午、カバンの中に人形が入っていた
魔導人形ブーディ
期末試験の初日、正午。スピカは拠点を決めて支給されたカバンの中身を検める。コンパスと地図が出てきて「いっぱい入って便利だな」と感心していると、底のほうにまだ何かある。取り出したのは人形で、「髪を一本口に入れて」と書かれたメモが貼ってあった。「ってこわっ」という反応が正しい。
言われた通りにすると人形が起動し、まず「スピカ・ヴァルゴ、乙女座の魔法使い」と持ち主を読み上げる。そのうえで「私はあなたをお助けお守りする、魔導人形ブーディ」と名乗った。ところが名乗りの前後で、聞いてもいない使用中の洗髪剤の銘柄まで読み上げてくる。「そんなの解析しないで」「解析完了」。★助けに来たはずの相棒が、開口一番いちばんどうでもいい情報を差し出してくる。
しかも褒めたつもりの一言には「全然褒めてないブーディ」「9割キモいと思ってるブーディ」と噛みついてくる。★試験の相棒として渡された道具が、こちらの物言いにいちいち傷つく。★持ち主より先に人形の機嫌をとらないといけないという、なかなか面倒な始まり方だった。
語尾を指摘されて、口をきかなくなる
ブーディの役目は三回だけ助けることで、「三回に達した時点で試験は終了」という条件が付いている。★つまり残機表示つきの相棒で、頼れば頼るほど後がなくなる。
問題はここからで、この人形は語尾に「ブーディ」を付けて喋る。地図を開かせようとするたびに繰り返されるので、スピカがつい「その語尾がちょっとしつこいかなって」と口に出してしまった。ブーディは「しつこ?」と固まり、そのまま語尾を捨てる。「気にしてないし早く地図開け」と言っても遅く、「すごい怒ってる」。
★笑いどころは語尾そのものより、指摘された瞬間に引っ込めてしまうところだと思う。名乗りの時点であれだけ堂々としていたのに、たった一言で全部やめる。★おかげで以降の会話がずっと不機嫌な口調になっていて、道具というより気難しい同居人が一人増えた形になった。
宝石は五種類、全部で四十個
「金剛石は心臓に眠る」
ブーディは「仕事だから」と前置きして、ようやく試験の説明をする。宝石の種類は五つ、島に隠されているのは合計四十個で、「個数が少ないほどポイントも高い」。スピカが「ダイヤがあれば一番になれそう」と言っても、返ってくるのは「そのうち分かるわ」だけ。「ケチ」「おだまり」で会話が終わる。
そのかわり、書かれている一文は読める。「金剛石は心臓に眠る」。★スピカは何か思い当たったらしく問い返すのだが、ブーディは「それは教えられないわ」と答えない。
★島の名前がアスピドケロンであることを思うと、心臓という言い方はかなり気になる書き方だ。★答えを言わない相手を隣に置いておくのは意地の悪い作りで、しかもその相手は今ちょうど機嫌が悪い。
洞窟の魔虫と、宝石に化けた巣
探索に出たスピカは洞窟に入る。暗いので「ねぇ目からライト出せたりしない?」と聞いてみるが、返事は「無理」の一言。★まだ怒っている。
そして見つけた宝石に飛びつきかけたところで止められた。それは宝石ではなく、粘液で作った宝石そっくりの巣で餌をおびき寄せる魔虫の仕掛けだった。逃げ切れずに助けてもらう羽目になり、残りは二回。★探索を始めて早々に、持ち札の三分の一が消えている。
そのかわり、本物が近いときは光る合図が出ることも教わる。光る色で宝石の種類まで分かるという親切な仕様で、緑ならエメラルド。★ところが今回のスピカは、この便利な知識を最終的にまったく別のことに使うことになる。
エメラルドを巡る一対一
「これは兄ちゃんが魔虫を倒して見つけた宝石なんだ」
緑の光を追った先で聞こえてきたのは、「そのエメラルド返してもらうよ、自称最強ちゃん」という声だった。★この呼び方だけで誰のことか分かるのが良い。前回「最強はアリアでしょ」と言い切っていたアリア・アクエリアスである。
話は数分前に戻る。洞窟でエメラルドを先に見つけていたのはポルックスの側で、そこへアリアが来た。「悪いけど、ごつい男はアリアのタイプじゃないから」と渡すよう迫るアリアに対して、ポルックスは「これは兄ちゃんが魔虫を倒して見つけた宝石なんだ」「渡さないよ」と譲らない。★同じ体を分け合っているはずのもう一人を、当たり前のように別人として立てているのが面白い。
対するアリアも「アリアだって潮風で髪ベタベタになりながら見つけた宝石だし、譲れないな」と返す。★ここが良かった。★アリアもちゃんと苦労して探している。才能だけで拾い集めているわけではないと、この一言でわざわざ見せてくる。そして「話し合いは無意味のようだね」で、冒頭に響いた爆発に繋がる。
割り込まずに、見届ける
現場に着いたスピカに、ブーディが言うのは「乱入してエメラルド奪ってきなさいよ」。生徒同士の奪い合いは認められているので、ルール上まったく問題のない提案である。
スピカの答えは「一対一の決闘に割り込むなんて無粋」「私はこの戦いを見届ける」だった。「とか言って、見たいだけでしょ」と見抜かれて「てへ」で流し、そのうえで「情報収集も作戦のうち」と言い直す。
★宝石ゼロの人間が、目の前の宝石を見送って観戦を選んでいる。普通なら怒られる判断だし、実際この後きっちり痛い目を見るのだけれど、★この子はいつもこのやり方で強くなってきた。前回自分に言い聞かせた「勝つんだ」を、殴りに行く方向ではなく見て盗む方向で始めたのは、悪くない入り方だと思う。
海辺のアリアは反則級だった
分身と、透明化
ポルックスのジェミニマジックは光の屈折を使った分身。本体が正面から攻め、分身が死角から挟み撃ちにするという組み立てで、観戦しているスピカがその場で見抜いて解説してくれる。
さらに驚かされるのが、追い詰められた一瞬で本体を透明化して分身と入れ替わるという手だった。「透明にもなれるの?」と声が出るのも当然で、★分身を囮ではなく身代わりに使っている。技が多彩という評価が、そのまま形になった戦い方である。
★観戦するスピカの分析が具体的なのが良い。★「すごい」で終わらせず、どう組み立てられているかを言葉にしている。前回さんざん言われた知識と発想の話が、こういう形で効いてくるのだと思う。
アクエリアスマジックの弱点と、海という答え
決着は技ではなく場所でついた。逃げ切れると踏んだポルックスが「射程圏外まで逃げ切るだけだね」と海側へ走り、そこで「これ誘導された?」と気づく。
アリアの説明がそのまま種明かしになっている。アクエリアスマジックは普段、空気中の水蒸気を水に変えて操っているので「すっごく魔力がいる」。★つまり水を用意する手間こそがこの魔法の重りで、海辺ではその手間が丸ごと消える。ポルックスの「反則でしょ、こんなの」がすべてだった。
そのポルックスが「悔しいけど、私の負けだ」「エメラルドはアリアちゃんにあげる」とあっさり折れるのも良い。アリアも「素直でよろしい」「ポルックスも強かったよ、マジで」と返していて、★勝ったほうが相手を落とさないのが今回のアリアだった。見下す言い方が目立つ子なので、この差は覚えておきたい。
アリア三十ポイント、スピカはゼロ
「スーピカが見てるからって ちょっと張り切っちゃった」
見届けたつもりが、しっかり見つかっていた。「やっほー、スーピカ」「情報収集できたかな?」で、最初から気づかれていたことが判明する。
そして数字を突きつけられる。アリアが三十ポイント、スピカはまだゼロ。「アリアに勝ちたかったら死ぬ気で頑張ったらええんじゃね?」と煽ったあとに続くのが、★「スーピカが見てるからって、ちょっと張り切っちゃった」だった。
★この一言で、さっきの反則級の強さの意味がひっくり返る。★あれは実力の披露ではなく、見られていたから出した力だった。ライバルとして正面に立ちはだかりながら、動機のほうは「見てほしい」で動いている。スピカの「勝てるかじゃない、勝つんだ!」という自分への言い直しがこの直後なのも効いていた。
サバイバル飯と、人形の食事
気を取り直したスピカは昼食を作る。森で見つけた蜂の巣キノコやドーナツ芋に加えて、ブーディが「高級食材にうたわれるほど美味らしいわよ」と勧めてきた見た目のきつい食材まで使ってしまう。
できあがったのが「ワーム肉のバナナリーフ包み焼き、山の幸を添えて」。★名前と盛り付けまでやるのがこの子である。理由もその場で明かされていて、「実家は兄弟が多いから、よく料理手伝ってたの」。
ついでにブーディの食事も判明する。★この人形が食べるのは髪の毛で、起動に髪を一本使わされたところまで筋が通ってしまう。★試験の相棒が持ち主を少しずつ食べているという、よく考えるとかなり嫌な設定を、昼休みの雑談の顔でやっているのが良い。
メロウ・パイシーズとジョニー
歌でしか伝わらないもの
場面が変わる。アリアとポルックスが戦っていた頃、メロウ・パイシーズはイルカと戯れていた。彼女の魔法は海洋生物を召喚するもので、呼べば来てくれる友達がいる。
ところがジョニーだけが見当たらない。「どこに行ってしまったの?」と探すメロウと、浅瀬で傷ついていた一頭。★ここから後半は、台詞よりも歌のほうが多くなる。
★注目したいのは、スピカが動く理由が説明ではなく歌で渡されていることだ。「メロウちゃんの歌で、ジョニーがどれだけ大切な友達か伝わってきたから、放っておけないの」。★事情を聞いて納得したのではなく、聴いて先に体が動いている。★説得ではなく感染で、この段取りなら歌にする意味がちゃんとある。
レッドアロエを取りに行く
治療に必要なのはレッドアロエで、火傷や切り傷に効く。ただしブーディが言うには生えている場所がだいぶ遠回りで、試験時間を大きく削ることになる。
メロウのほうも止めにかかる。「あなたはこのまま先に進んで」「これ以上スピカちゃんの時間を無駄にさせられない」。★助けられる側が先に遠慮している。それでもスピカは行き、ブーディにジョニーを浜辺まで運ばせ、アロエは切って中のゼリーを患部に当てる、という使い方まで伝えて戻ってくる。
★★ここが今回いちばん怖いところで、スピカは損得を計算していない。★宝石ゼロで残り時間だけが減っていく状況で、一点にもならない仕事を最後までやり切る。★人としては褒めるところだが、試験としては明確に負けへ向かっている。★その両方を同時に見せてくるのが、今回のいちばん誠実なところだった。
「無人島の冒険」まとめと考察
「回り回ってあなたに返ってくる」
別れ際のメロウの言葉が、この回の答えになっている。「自分が損をするかもしれない状況で、誰かのために行動できる人はそういない」「あなたのような友達は初めてよ」。そして「いつかその優しさは、きっと回り回ってあなたに返ってくるわ」。
締めが「じゃあね、マイプリンス」で、スピカが「プリンス?」「なぜ?」と困惑して終わる。★笑って流しているけれど、★助けられた側からは王子に見えていたというのは、今回のスピカの立ち位置をそのまま言い当てている。
★「回り回って返ってくる」は、おそらく予告になっている。宝石ゼロのまま夕方を迎えたスピカがこの後どう立て直すのかを考えると、自力で見つける以外の道が、ここにわざわざ置かれている。★今回まったく点にならなかった時間が、点になる形で戻ってくるはずだ。
午後五時、宝石ゼロ
我に返らせたのはブーディの一言だった。「人助けもいいけどもう夕暮れよ」「宝石どうするの?」。「やばいやばいやばい」から「お願いします」「教えてください」への切り替えが早く、★あれだけ雑に扱っていた相手に、あっさり頭を下げる。
そして最後のテロップが容赦ない。午後五時、現在スピカ宝石ゼロ、試験終了まで残り十四時間。★数字で殴ってくる終わり方で、前半で見せられたアリアの三十ポイントがここで効いてくる。
★通して見ると、これは宝石を探す回ではなく、宝石を探さなかった回だった。光る合図の見分け方を教わり、五種類四十個のルールも聞き、「金剛石は心臓に眠る」というヒントまで手に入れておきながら、実際に使ったのは友達を助けるための遠回りだけである。★それでも損に見えないように作ってあるのが今回の腕前で、この時間が次に何を連れて戻ってくるのかが楽しみだ。




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