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第19話のサブタイトルは「ルビー争奪レース」。始まりは午後五時のポイント発表で、一位のアリアが四十ポイント、スピカだけが宝石ゼロという状態からである。そこへ現れるのが五十ポイントのルビーをくわえた鎧ハゲワシで、一つ取れば順位がひっくり返る。見どころはユゥの青い炎と、スピカが走らずに勝った手口の二つだった。




公式サブタイトルは「ルビー争奪レース」。午後五時、宝石ゼロ
上位の顔ぶれと、宝石を集める気のない生徒たち
冒頭は先の場面の切り取りから始まる。「一足遅かったな、ユゥ」「ルビーは私がもらった」「生徒同士、宝石を奪ってもいいルール?」「その派手な宝石はレオがもらいますわ」「来いよ、二人とも相手してやる」。誰の台詞かを伏せたまま、四人が同じ宝石を取り合う画だけが先に置かれる。
そこから時間が戻り、クロードの観察になる。現在一位はアリアの四十ポイント。「あの魔法、すでにグランマジックの域に達している」と評しつつ、「だが魔力の消費もかなりのものだろう」「アリアといえど、この先どう転ぶかはわからない」と保留を付ける。
他の生徒の様子がまた面白い。イオは資材集めの途中で宝石を手に入れたものの「やはりイオは闘争心がないなあ」と言われ、別の生徒はすでに宝石六個目。その一方で、宝石探しと関係のない用事をブーディに頼む生徒までいて、「そんなことでブーディを頼るな!」と突っ込みが入る。
試験の中盤を、順位表ではなく誰がどれだけ真面目にやっていないかで見せてくるのが可笑しい。緊張感のある回の入り口としては、かなり緩い作り方をしている。
「やばっ! ドベ争いしてる!」
極めつけが、宝石そっちのけで戯れている生徒たちだった。「丸みを帯びたボディーが際立ってとてもキュートだ」から「君に合う宝石を探してくるよ、ハニー」「私、ダイヤがいい」まで行き、「おい! クロード・カヴンはまともな奴いないのか!」と叫ばれる。
そこで思い出したようにスピカの名が出る。「そうだ、スピカは? 宝石いくつ取った?」に対する答えが宝石ゼロで、「こんな調子で大丈夫なのか?」「少し焚きつける必要があるな」となる。
焚きつけ方が全体連絡だった。午後五時現在のポイントは三位カペラが二十五ポイント、二位レオが三十ポイント、一位アリアが四十ポイント。「試験終了は明日の朝七時。終了まで残り十四時間だ」「頑張れよ!」。スピカの第一声が「やばっ! ドベ争いしてる!」で、「圧を感じる」という声まで漏れる。
第18話の引きが「午後五時/スピカ宝石ゼロ/残り十四時間」というテロップだったので、一秒も進めずに続きから始めている。順位を本人にも視聴者にも同時に突きつけてくるので、焚きつけられているのがスピカだけではないのが上手い。
五十ポイントのルビーが飛んでいく
見つけた瞬間に三つ巴になる
日が暮れれば森は暗くなり、探索はさらに難しくなる。追い詰められたスピカが「こうなったら、もう誰かの宝石を奪うしか!」「この世は、所詮、奪い合いよ!」と口走り、「盗賊の台詞ね」と冷静に返される。
そこで光るものを見つける。「よく見えたわね。あれはルビーよ」「ルビーって五十ポイントのやつ、それ取れば一気に一位じゃん」。一位が四十ポイントなので、ゼロの人間が一つで抜けるという計算になっている。
ところが同じものを狙う三人が先にいた。カペラのカプリコーンマジックが飛び、レオが「魔法が消されてしまうなら、物理で叩けばいいんですわ」と割り込み、「魔術師のくせに物理で魔法を叩くな」という抗議まで出る。
魔法を打ち消す相手に物理で来る、という噛み合わせの悪さが最初から出ている。三人が牽制し合っている横に「あら、いたのかスピカ」と気づかれるくだりも含めて、スピカが数に入っていないことが丁寧に描かれていた。
「先にあの鳥から奪ったものが所有者」
言い合っている間に鳥は飛び去ってしまう。「また逃げられちゃった」「舐められてますわね」。事情も明かされる。「私たち三人がルビーを見つけて取り合っていたところに、突然襲いかかってきやがった」=もともと三人が見つけたものを、鳥が横取りしていったのだった。
相手は鎧ハゲワシ。そこで出るのが「では、先にあの鳥からルビーを奪ったものが所有者、というのはどうかしら」「上等だ」「誰が取っても恨みっこなしな」という取り決めである。
奪い合いが公式に認められている試験の中で、わざわざ四人で条件を決め直しているのが良い。ルール上は横から掠め取っても構わないのに、そうしない。副題が「争奪戦」ではなく「レース」になっているのは、この一言があるからだと思う。
四人それぞれの、負けられない理由
レオとカペラは、鳥の上でも言い合っている
鎧ハゲワシは雛たちに石を落とさせて進路を妨害してくる。それをアリーズマジックの一撃で吹き飛ばしたのがユゥだった。「見ろ、雛たちが逃げていくぞ」「派手で羨ましいですわ」。
レオの動機ははっきりしている。「レオの目標はカヴン一位だけじゃない」、中間試験で逃した最上位の評価も取って「レオの名を学園中にとどろかせますの」。
空中戦がそのまま口喧嘩になる。「狙うのは下からではなく上ですわ」で翼に取り付いたあと、「自分だけカプリコーンで飛ぶのずるいですわ」「浮いてんだから乗ったっていいだろ」「ずるいって言われるの嫌だよ」「嫌なのですね」と続き、さらに「魔力を食い尽くして飛べなくしてやるよ」「こいつは私が倒す」「一番の座は譲れねーからな」「負けませんわよ」まで行く。
命がけの追跡をしているはずなのに、中身の半分がけんかである。それでいて二人とも普通に鳥へ飛び乗っているので、実力の高さだけはきちんと伝わる。
ユゥが変わった理由は「あの日」だった
ユゥの真剣さには、見ている側も驚いている。「意外だな、あのユゥちゃんがあんなに真剣なんて」→「いろいろと考えてるんだろう。あの日からな」→「あの日?」→「みんなそれぞれ負けられない理由があるんだよ」。
答えは本人の独白で出る。「これだ、この真剣勝負の空気」「あの日、合宿で私は知った。全力を出して勝った時、何者にも代え難い高揚感を得られると」「勝つための準備はしてきた」「出し惜しみをしている場合じゃない」「全力を出して勝つ!」。
スピカも受けて立つ。「負けられない理由なら私にだってある」「絶対にルビーを手に入れてみせる」。それを聞いたクロードの感想が「面白いことになったな」で、実況めいた口ぶりのまま「ルビー争奪レース。一番早く奪えるのは誰かな」と続く。
やる気のなかった生徒が変わった理由を、性格の変化ではなく一度きりの成功体験に置いているのがいい。勝った時に何が起きるかを知ってしまったから、もう手を抜けない。説明としてとても分かりやすかった。
青い炎が出るまでにやってきたこと
硬質化した羽には攻撃が通らない
ユゥの分析が先に置かれる。「ヒートウェーブの魔法は全く効いていなかった」「あの硬質化した羽を何とかしないと攻撃は通らない」。鳥は体当たりを受けてもけろりとしていて、「あの衝撃でけろっとしてるなんて、どれだけ頑丈ですの」と呆れられている。
そこへ回想が入る。授業で扱われていたのが炎の色の話だった。「貴様らが今使える炎の色は赤からオレンジだが、アリーズマジックを極めれば超高温の炎を出せる」、そして「これが、ブルーフレイム!」。
弱点の説明と回想が並べて置かれるので、次に何が来るかは分かってしまう。それでも溜めがきちんと効いているのは、回想の中身が必殺技の披露ではなく授業だったからだと思う。
寝ないで授業を聞いた
撃つ直前に入る独白が、この回でいちばん良かった。「寝ないで授業を聞いた」「面倒だったけど、何度も、何度も練習した!」。技を覚えた経緯が、才能でも師匠でもなく授業と反復で説明されている。
青い炎が鎧を溶かす。「やるなユゥ! あの鎧を溶かしやがった!」「これでもう攻撃は防げないよね」「鎧羽が再生するには時間がかかる」。ユゥの「よし! あとはルビーを取ったら私の勝ちだ!」で、勝負は決まったかに見える。
「面倒だったけど」という一語が残っているのがうまい。面倒くさがりのまま、それでも何度も練習したという言い方なので、別人になったわけではないと分かる。やる気のなかった生徒の成長の書き方として、いちばん納得のいく形だった。
スピカが用意していたもの
追いつけないと認めてから考える
一方のスピカは、走り出す前に自己評価を済ませている。「まともに走っても追いつけない」「私にできることを」。二人が鳥に飛び乗るのを見て「私がうだうだ考えている間に、二人は鎧ハゲワシに飛び乗っちゃった」「本当に強いな、二人とも」と素直に感心もする。
勝てない相手だと認めるところから始めるのがこの人の型である。第18話でも、正面から割り込める場面で一対一の決闘に手を出さず観戦に回り、情報収集だと言い張っていた。今回もまったく同じ入り方をしている。
偽物の巣と、偽物の雛
鎧ハゲワシが鎧を失っても飛び続けた理由が、最後に明かされる。「親心を利用しちゃって」、全ては森へ引き込むためだった。スピカは偽物の巣と偽物の雛を用意して、親鳥をそちらへ誘導していた。
クロードの評価がそのまま解説になっている。「親鳥が見間違うほど精巧な木の人形を作る操作性」「森一帯を使った広範囲魔法」、そして「努力を積み重ね、危機的状況を何度も乗り越え、今、才能が開花し始めている」。
三人を出し抜いてルビーを手にしたのはスピカだった。対照的に、青い炎を撃ち切ったユゥには「もう青い炎を出す力もないし」「お腹すいた…」しか残っていない。全力を出して勝つと決めた側が力を使い切り、追いつけないと認めた側が最後まで余力を残していたという並びになっていて、勝敗の理由が絵だけで分かるようになっている。
「ルビー争奪レース」まとめと考察
「発想力だけが高い」という評価の使い道
第17話でスピカが魔道具から受けた評価は、発想力だけが高くて他は平均的、技術はまだ低い、というものだった。知識を増やして発想力をさらに伸ばすといい、という助言も付いていた。当時は慰めのようにも聞こえた評価である。
今回の勝ち方は、その評価のとおりになっている。走っても追いつけない、正面から撃っても羽が硬い、魔法の威力でも技術でも三人に届かない。それでも勝てたのは、木の人形を雛に見せかけて親鳥の判断を狂わせるという思いつきと、戦う場所を自分の得意な森に移すという段取りがあったからだった。
苦手なところを克服して勝つ話にしなかったのが良い。低いままの項目は最後まで低いままで、高い一項目だけで勝ちにいっている。ポテンシャルを数値化する魔道具を出した回が、ここまで具体的に回収されるとは思っていなかった。
餌に化けて待つ、という戦い方
もう一つ思い出さずにいられないのが、第18話の洞窟である。スピカがそこで出会ったのは、宝石そっくりの巣を作って餌をおびき寄せ、寄ってきたものを食べる魔虫だった。スピカは危うく食べられかけて、助けを一回使っている。
今回やったことは、その裏返しである。偽物の巣と雛で相手を呼び寄せ、来たところを押さえた。一度自分を食べようとした手口を、今度は仕掛ける側で使っている。本編で説明されるわけではないが、危機的状況を乗り越えたという言葉の中身がこれなら、話がきれいにつながる。
ゼロだった人間が、一つで一位まで届く。追いかけっこの副題を付けておきながら、勝ったのは走らなかった人だったというのがこの回の落ちで、レースという言葉の使い方まで含めて気持ちのいい構成だった。次は、残っている宝石をどう取りにいくかの話になりそうだ。




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