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第7話「お腰につけたムーチ団子〜、一つ残らずくださいな〜♪」は、王都へ出発する前の一日をエルラージュの街で過ごす回である。公式のあらすじは「その前にまずは一休み」と書いているのだが、本編で起きているのは休息ではない。ヴィルが出発を引き延ばし、寄り道の理由が二つ増える。しかもこの街に温泉は出てこない。湯が名物なのは、この回の最後に寄ることが決まったメルロアのほうである。




結論:休日の回ではなく、出発が遅れる理由が二つ増える回
公式のあらすじは「その前にまずは一休み。エルラージュの街でおいしい休日、過ごします!」で締められている(※1)。ところが本編を通して見ると、休んでいる場面はほとんどない。買い物をし、教会で料理を作り、朝食を食べ、ギルドで交渉している。そしてその全部が、王都への出発を後ろへずらす方向に働いている。
「いやいや、そういうわけじゃないぞ」が三回出てくる
最初は朝市である。リンが「欲しいのは香辛料なんですけど、異世界の朝市を見たかったのがメインなんで」「なければないで大丈夫です」と言っているのに、ヴィルのほうが「いやいや、ここでなければ明日、別の市場に行こう」「そうだ、東の市場なら確か香辛料をたくさん扱っている店があったはず」と買い物を増やそうとする。そこを「やっぱり、王都に行くのは気が進みませんか」と突かれ、返ってくるのが「いやいや、そういうわけじゃないぞ」である。言い訳もちゃんと用意してあって、「準備を怠って行動を起こして、後々後悔することになったりしたら、パーティーの命を預かるリーダーとしてだな」と続く。
二回目=教会の相談を引き受ける
そこへ幸運のクローバーのレントが現れ、リンに「ちょっと教会に来てほしいんですけど」と持ちかける。「俺たち明日には王都に向かう予定だから、時間はあまり」と一度は渋る声が入るのだが、続けて出てくるのが「知らない仲じゃないんだ」「力になれるのならいいじゃないか」である。すかさず「ヴィルさん、やっぱり」と突かれ、二度目の「いや、だからそういうわけじゃないぞ」が出る。理屈のほうは立派で、「一刻惜しんで王都に行っても、必ずしも問題が解決するわけじゃない」「それよりも、今困っている人の力になる方が大切なんじゃないか」。正しいことを言いながら、結果として出発は遅れるという形が二回続く。
三回目=ギルドの依頼で、経路まで変わる
締めはギルドである。トーリから「王都に行く途中、メルロアのギルドによってこの書類を渡してきてほしい」と頼まれ、ヴィルは一度「あっ、でも王都への到着が遅れるのはまずい」と口にする。にもかかわらず次の台詞が「よし、その依頼引き受けた」で、返ってくるのが「ちぃ」という舌打ちである。三度目の「いやいや、そうじゃないぞ」に対して、リンはもう「わかってます」としか言わない。この一件で王都行きはメルロア経由に変わり、到着はさらに遅くなる。公式のあらすじが「一休み」と呼んでいる一日は、リーダーが出発を延ばす理由を二つ調達した一日だった。
第7話で確定したこと(要点だけ)
場面が細かく切り替わる回なので、先に事実だけ並べておく。
- 前提=一行はダンジョンを踏破し、ごまみそを仲間に迎えたところ。この国の異変と、リンが聖女召喚された事情を王都にいるヴィルの兄へ報告しに行くことになっている(※1)。
- 朝市。リンの目当ては香辛料だが、本音は「異世界の朝市を見たかったのがメイン」。料理を教えようかと持ちかけられた側は「そこは適材適所ということで勘弁してくれ」「爪楊枝でファイアベアと戦えと言われる方が気が楽だ」と逃げる。
- 幸運のクローバーのレントに呼ばれて教会へ。相談は「教会のバザーで出す食べ物を、何とかおいしくできないか」。材料は庭で採れるムーチの実の粉。
- 子供たちのムーチ団子への不満が並ぶ。「もちもちしてて飲み込みにくい」「味は癖が強い」「真っ白で食欲がそそられない」「ベトベトしてる」「すぐ固くなる」。レントは「ムーチ団子って定番のおやつなんだけどさ。少しでもおいしいって言ってほしいじゃん」と言う。
- リンが出した答えがポンデケージョ。作中では「ポンデケ」と略される。子供たちにも配られ、神官のライアーが「こんなものは食べたことがない。大変希少なレシピですね」と評する。
- お礼として、ライアーからお守りを渡される。「水の女神リュウシア様の加護があると言われています」。ヴィルの後押しは「装備なしのリンに、守りはあった方がいいだろう」。
- 朝食は各々外食する取り決めだったが、全員がキャンピングカーのモーちゃんに集まってしまう。アリアとエド、続いてセノンまで同じ理由でやってくる。
- 市場の食堂。注文には「猫ちゃん用のメニュー」まで含まれている。リンが「ここで出してるお魚、買い取りとかできないですか?」と申し出ると、店の人が「そんなこと言ってもらえるなんていつぶりかしら」と驚く。
- エドが髪飾りをアリアに買っており、その店の人から聞いた話が、この回のいちばん重い情報になる。
- ギルドのトーリから、メルロアのギルドへ書類を届ける依頼。理由は「リンのスキルなら伝令用の使い魔より確実だ」。王都行きはメルロア経由に決定する。
リンが持ち込んでいるのは食材ではなく、値打ちのつけ直し
この回でリンが扱うものは二つある。教会のムーチ団子と、市場の魚である。どちらも珍しい食材ではない。その土地では当たり前すぎて、誰も評価しなくなっていたものだった。
定番なのに、作った側が喜ばれない
ムーチ団子はこの時期の定番のおやつである。それなのに、子供たちの口から出てくるのは不満ばかりで、「もちもちしてて飲み込みにくい」から「すぐ固くなる」まで五つも並ぶ。レントが言うのは味の話ではない。「少しでもおいしいって言ってほしいじゃん」「せっかく作った料理がこんなもんだよね、みたいな顔されるの悲しいもんね」。困っているのは食べる側ではなく、作って出す側のほうだと最初にはっきりさせている。
魚も、地元では褒められない
市場の食堂でも同じ形が繰り返される。リンが「本当に美味しかったから、パーティーみんなで食べたいなって思いまして」と買い取りを申し出ると、返ってくるのが「そんなこと言ってもらえるなんていつぶりかしら」である。理由も本人が言う。「この辺の人たちってみんな魚を食べ慣れてるからさ」。そのうえで「うちの亭主も喜ぶよ」と続き、奥から出てきた相手に「あんたが取ってきた魚美味しいから買いたいって言ってくれてさ」「もう嬉しいじゃないか」と報告する。褒められないことに慣れていた側が、褒められて動いている。
外から来た人にしかできない仕事
並べてみると、この回のリンの役割ははっきりしている。異世界の珍しい食材を見つけてくる話ではなく、地元の人が値打ちを感じなくなったものに、もう一度値段をつけ直す話である。ムーチの実の粉は教会の庭で採れるもので、魚はこの辺りの人が食べ慣れている魚だった。リンが持ち込んだのは食材ではなく、それを珍しいと思える立場のほうだということになる。朝市で「異世界の朝市を見たかったのがメイン」と言っていたのも、同じ性質の台詞として置かれている。
ポンデケージョは、おいしいからではなく条件を満たすから選ばれる
料理の回として面白いのは、作るものを決めるまでの手順が全部映っているところである。「おいしそうなものを作る」ではなく、先に条件を確定させて、そこから逆算している。
先に条件を三つ固める
リンはまず、いまの調理法を潰していく。揚げるのは「油をたくさん使うのは、チビたちもいるから危ないって禁止」、焼くのは「付きっきりにならなきゃだから、あんまりやれない」。そこから条件をまとめ直すのが次の台詞である。「調理工程が危なくなくて、一回で大量に作れて、バザーで配れる軽食ね」。「そんな料理あるのか」という反応に対して、リンは「一番近いのは白玉団子だよね」と、知っている料理のほうから当てにいく。
つまずきどころを一つずつ潰す
ここからが速い。はちみつを絡める既存の食べ方には「はちみつを絡めても、途中から味がなくなっちゃう」という難点がある。そこで出てくるのが「だったら、生地そのものに味をつけちゃえば?」という切り返しで、条件は「白玉のレシピで、一回で大量に作れて、生地に味がついてる系のやつ」まで絞り込まれる。思いつきではなく、条件を満たす料理を探して当てているのが分かる書き方である。
作り方そのものが、条件を満たしている証明になっている
手順も理由付きで説明される。小麦粉とムーチ粉を細かくふるいにかけて合わせるのは「混ぜたとき、ダマにならないから」。次にすりおろしたチーズ、塩、植物油を入れ、ヘラで混ぜながら少しずつ牛乳を注ぐ。あとは丸めて焼くだけである。そして最後に、条件を満たしていることを本人が確認する。「丸めるとこまで、ちっちゃい子たちに手伝ってもらったりできるし、たくさん作るのも、そんなに大変じゃないと思うんだ」。おまけに味変まで即答してしまい(「チーズを控えて、代わりにはちみつを入れて、砕いたナッツを混ぜれば甘じょっぱい方向に仕上がりますよ」)、仲間から「リンさん、なんでそうポンポン教えちゃうの」と呆れられる。
「胃袋を掴まれている」が、この回では戦力の話として出てくる
食い意地のギャグとして流せる場面が続くのだが、この回はそれを、パーティーの状態を説明する言葉として使っている。言い出すのがリーダー本人だというのがきいている。
「そんなに?」「そんなにだ」
お守りを受け取る流れで、「私も一応、暴食の卓の一員ですものね」と言ったところで返ってくるのがこれである。「まだ一応とか言っているのか」「リンがいないともううちは崩壊しかねないくらいには、胃袋を掴まれていると思うが」。リンの「えっ、そんなに?」に、「そんなにだ」と即答する。直前にヴィルが「装備なしのリンに、守りはあった方がいいだろう」と言っているので、戦えない仲間を守る理由づけとして、料理が持ち出されている形になる。
各自で外食するはずが、全員モーちゃんに集まる
証拠は次の場面にそのまま出てくる。この日の朝食は各々で外食する取り決めだったのに、アリアとエドが「朝飯テイクアウトしてどっかで食べようってうろうろしてみたんだけど、なんか落ち着かなくてさ」「モーちゃんの居心地良かったって話になってさ」と現れる。エドの「俺ももう地面に座って食べることにちょっと抵抗がある」「贅沢な体になった」「こんな体にしたのはリンちゃんだからな」が続き、少し後にセノンまで同じ理由で来て「考えることは皆同じですか」と言われる。取り決めのほうが守られないという形で示すのがうまい。
味の基準そのものが書き換わっている
もう一つ、地味だが効いているのがタルタルソースの話である。魚を買い込んだあと、「フライを作る時はあのタルタルソースも是非頼む」と注文が入り、理由が「実はさっきのフライもどうも物足りない感じがしてな」。店で食べたばかりのものが物足りなくなっている。追い打ちで「タルタルの虜になった者がここにまた一人」「あれはヤバいぞ」「マヨネーズだけでもヤバいのに、ゆで卵の旨味と玉ねぎの食感を」「やめろ、それ以上言わないでくれ」「食べたすぎて頭がグラグラしてきた」まで転がる。おいしいものが増えたのではなく、おいしくないと感じる範囲が広がっているという書き方になっている。
まとめ:いちばん重い情報が、髪飾りの店の世間話から出てくる
この回で唯一、本筋を動かす情報がある。それが買い物ついでの世間話として置かれているのが、食事の回であるこの第7話らしいところである。
「乱世の気配ゼロ」から始まる違和感
市場での食事を待つ間に「しかし市場を見るにつけ、街の様子は全くの平和だな」という話になり、「乱世の気配ゼロって感じで」と受ける声が続く。そこから出てくるのが「お隣の国は何のために聖女召喚をしたんだろう?」という疑問である。危機がないのに救い手を呼んだ、という形で違和感が言葉になる。
髪飾りを売っていた人の話で、順番が裏付けられる
答えらしきものは、まったく別のところから来る。エドがアリアに髪飾りを買っており、その店の人がこう言っていたという。「1ヶ月くらい前にこっちに来た時は、道中魔物らしい魔物に襲われることはなかった」「でも今回は魔物が出た」。これを聞いた一行の結論が「やっぱり順番が逆」「聖女召喚が先で、魔物出没が後」である。本筋の仮説を裏付けたのが、髪飾りを売っていた人の世間話だったことになる。そのうえで「それを解明するための情報集めに王都に行くんだ」「判断は情報を集めてからでいいんじゃないか」と、考え込むのをいったんやめる流れになっている。
次回の予想と、この回の担当
予想として書くなら、次はメルロアで足止めが三つ目になると見ている。根拠は本編の会話そのもので、メルロアは「火山の町」「虫料理と鍛冶屋が名物」「あと温泉」と紹介され、そこから「露天風呂に浸かりつつ夜景を眺めるとかいいですよね」「じゃあ二三泊するからね」まで話が伸び、「さすがにダメでしょ」「王都で情報収集しなきゃ」と止められて、ようやく「わかった、書類を渡したらすぐ王都に向かおう」で終わる。この回は最後の最後まで、延ばす提案と止める声で出来ている。担当を見ると、この回は脚本が杉原研二、絵コンテが前澤大樹で、どちらも第1話からここまでで、この回にしか名前が出ていない(※1・※2)。シリーズ構成のあおしまたかしが第1話から第3話、藤本冴香が第4話から第6話を書いてきた流れなので、書き手が入れ替わった最初の回が、本筋を進めない回になっている。原作は米織。もっとも、次回の話はあくまで予想である。
出典
※1 テレビアニメ公式サイト STORY 第7話「お腰につけたムーチ団子〜、一つ残らずくださいな〜♪」(あらすじ・スタッフ)/isekai-gohantabi.com
※2 ウィキペディア「捨てられ聖女の異世界ごはん旅 隠れスキルでキャンピングカーを召喚しました」各話リスト(第1話〜第7話の脚本・絵コンテ・演出)/ja.wikipedia.org















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