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第23話は、近道を差し出された回だ。身内の十三冠が出した条件は「バビルスを辞めた俺についてこい」だった。断った側が挙げた理由は「バビルスには刺激的なライバルと」「お友達がおりますから」。同じ日、入間は魔王の本を借りに来ていて、二人は別々の方向から同じ場所へ向かっている。そして扉の向こうからは「お前は魔王にはなれない」だけが返ってくる。




公式あらすじが置いた、第23話の入り口
副題は「魔王への道」
第23話の副題は「魔王への道」。公式のあらすじは「魔王師団(バトラ)を訪れた入間。次期魔王候補に選ばれたことで、今まで目を向けてこなかったものに向き合うため、魔王の知識に精通しているサブノックへ話を聞きにきたのだ」と始まる。道という言葉が副題に出ているのに、最初の一歩として書かれているのは移動でも戦いでもなく、詳しい相手に聞きに行くという行動だ。
もう一本の線は、帰省
あらすじの後半は入間から離れて、サブノックが実家へ帰る話になる。そこで次期魔王候補の育成計画を聞かされる、というところまでが先に告知されていた。訪問と帰省という二つの移動が並び、どちらも自分から動いた結果で始まっている。
先行カットに出ている顔ぶれ
公開された先行カットには、本が舞い上がる蔵書室、武器に囲まれて歩く後ろ姿、そして妹らしき人物に頭を抱え込まれたサブノックが並んでいた。戦う画が一枚も入っていない回として案内されている。
冒頭に置かれた「魔王って道」
「その身が魔王となった暁には」
本編は面接の場面から始まる。「その身が魔王となった暁には」「どのように魔界をすべたいと考える」という問いが投げられ、そこから入間の記憶が過去へ移る。今回の全部が、この問いに答えられなかった時間の続きとして置かれている。
「おじいちゃんは僕を魔王にしたいの」
回想の中で入間は「おじいちゃんは」「僕を魔王にしたいの」と尋ねる。返ってきたのは「魔王はこの魔界で」「最も険しく偉大な役職だ」という説明だった。すすめる言葉の前に、まず険しいと言っている。
「魔王って道も作っておいてあげたいんだよ」
続けて出てくるのが「僕はね」「イルマ君が将来道を選ぶ時のために」「魔王って道も作っておいてあげたいんだよ」。選ばせるための用意ではなく、選択肢を一つ増やしておくという言い方になっている。
魔王師団(バトラ)では、先に歓迎されてしまう
「魔王バトラさん ちょっとお話を」
入間は「魔王バトラさん」「ちょっとお話を」と声をかけて部屋に入る。ところが返事より先に菓子と茶が出てきて、気づけば席に着かされている。用件を言う前に客として処理されるので、目的が置き去りになる。
「ここで何をしておるのだ」
そこへサブノックが来て「ここで何をしておるのだ」と聞く。入間の答えは「いや いつの間にかもてなされて」で、「珍しいな お菓子を食べに来たのか」と受け流されかける。本題は二度、別の理由に取り違えられてから通る。
「それを早く言えい! 我がライバル!」
「サブノック君と話がしたくて」と言い直し、さらに「魔王について」と続けた瞬間に空気が変わる。「それを早く言えい! 我がライバル!」と手を引かれ、蔵書室へ連れていかれる。遠慮しながら来た側が、聞かれたい側の勢いに押し切られる形になっている。
針山の伝説と「死者0 負傷者1」
蔵書室の並びが、そのまま人柄になっている
「ここは蔵書室だ」「魔王に関する特に重要な資料が集まっている」と案内され、「何か気になる書はあるか」「何でもあるぞ」と胸を張られる。並んでいるのは「歴代魔王カラーイラスト年表」や「魔王が好んだ歌謡曲666選」。重要な資料という前置きの下に、好きが理由としか言えない本が堂々と混じっている。
「その身をもって全ての武器を受けとめた」
入間が手に取ったのはデルキラの本で、「デルキラ様は歴代でも一二を争うほどの人気の魔王だからな」と説明が入る。好きな話として語られるのが「北方戦争の針山伝説」で、両軍がぶつかる寸前に降り立った人物が「その身をもって全ての武器を受けとめた」。止め方が、防ぐでも倒すでもなく、全部を自分で引き受けるという形をしている。
「死者0 負傷者1」
受けとめたあとに出てくるのが「はぁ~い 終わり終わり」「みんな仲良くしろ~」という軽い声で、結果は「死者0 負傷者1」。「その姿は まるで武器の針山であった」と締められる。伝説の数字が、勝ち負けではなく誰も死ななかったことだけを数えている。
受け止める姿勢が、途中で読み替えられる
「幼い頃に何度も読んで」
サブノックはこの話を「幼い頃に何度も読んで」と言い、だから「攻撃は全て受け止める姿勢でいると決めた」と続ける。理由は自らの強靭な体を示すためだった。憧れの入り口が、強さの見せ方としての真似だったと本人が認めている。
「最近では違う見方もしていてな」
ところがそこで止めず、「しかし 最近では違う見方もしていてな」と自分から付け足す。「デルキラ様が武器を全て受け止めたのは」「その戦が生み出す痛みを知りたかったのではないかと」。同じ場面を、見せるためではなく知るための行為として読み直している。
「その戦を鎮める王たると考えたのでは」
読み替えの着地は「その戦を鎮める王たると考えたのでは」だった。聞いた入間は「そうやって考えると」「優しい方だった気がするね」と返す。強さの逸話が、痛みを引き受ける話として共有し直されている。
入間が本を借りに来た、本当の理由
「正直驚いているぞ」
ひとしきり語ったあとでサブノックが「正直驚いているぞ」と言う。「主、イルマがこうも魔王に興味を持つとは」という戸惑いで、そのまま「何かあったか」と聞き返す。喜びより先に、変化そのものを不思議がっている。
「今まで目を向けてこなかったものに」
入間の答えは「詳しくは話せないんだけど」「考える機会があって」から始まる。続きは「今まで目を向けてこなかったものに」「ちゃんと向き合ってみようかなって」で、「僕の知識が足らなすぎってのが問題なんだけど」と自分で足す。やる気の宣言ではなく、足りていないという自己申告から入っている。
「ちゃんと読むね」
本を借りた入間は「時間かかるかもしれないけど」「ちゃんと読むね」と言い、「またこうやって一緒に話してくれたら嬉しいな」と続ける。約束の中身が、読むことと、また話すことの二つしかない。
実家への入り方が、この人らしすぎる
「シルビアか」「今度そっちへ帰る」
場面が変わると、サブノックは「シルビアか」と電話に出ていて「今度そっちへ帰る」と伝える。向こうで何かが倒れる音がして「すごい音がしたぞ」「どうした 椅子から落ちた」と続く。帰ると言った側より、聞いた側の反応のほうが大きい。
門の前で、立ち止まらない
実家の門は見上げるほど大きい。正面に立ったサブノックは呼びもせず、鍵も探さず、雷をまとって扉ごと開けて入っていく。帰省という言葉から想像する動きが、最初の一手で吹き飛ばされる。
目を向けてこなかったものへ、二人で向かっている
この回は、入間が魔王の本を借りに行く話と、サブノックが実家へ帰る話が並んで進む。片方は知識、片方は家族で、どちらも本人がこれまで後回しにしてきた側だ。向き合う相手は違うのに、動き出した形が同じになっている。
「己が直しておこうか?」と言える距離
「おかえりなさいませ サブロ様」
迎えに出たヤマンダは「おかえりなさいませ サブロ様」と言い、「久しいな」に「ですね」「お帰りになられて うれしいです」と返す。門を壊して入ってきた主に、開口一番でうれしいと言っている。
「そろそろ屋根の修理が必要かと」
「変わりないか」と聞かれて出てくる報告が「そろそろ屋根の修理が 必要かと」。事件でも来客でもなく、家の傷みの話だ。久しぶりに帰ってきた相手へ最初に渡す情報が、留守の間の暮らしそのものになっている。
「己が直しておこうか?」
それを聞いたサブノックの返事が「己が直しておこうか?」で、ヤマンダは「助かります。」と受ける。屋根の修理を自分でやると言い出す一言に、この家での立ち位置が出ている。
妹の合格と、三日という願い
「兄様~ おっかえり~!」
そこへ飛びついてきたのがシルビアで、「兄様~」「おっかえり~!」と頭を抱え込む。「シルビア!」「元気だったか?」に「めちゃめちゃ」「元気だよ!」と返し、「ね ヤマンダ~!」に「はい。すごく。」と静かな裏付けが付く。元気だという自己申告が、すぐ横から控えめに保証されている。
「三日? 三日はいる?」
妹の最初の質問は「何日くらいいる?」で、間髪入れず「三日? 三日はいる?」と自分で数字を出す。返ってきたのは「本を取りに来ただけだが」「一泊はするぞ」だった。希望を先に言ってから答えを聞く順番に、待っていた時間の長さが出ている。
「バビルス入学試験に合格」
さらに大きな報告が続く。「バビルス入学試験に合格」の宣言に、「筆記はギリギリだったけど 実技でゴリ押ししたッス」と本人の注釈が付く。兄の反応は早く、「よし 今日は祝いだな」「宴だぞ」へ飛ぶ。合格の報告が、そのまま同じ学びやで会えるという話に変わっている。
特別ゲストと、開かなかった扉
「私の合格と兄様の帰宅を祝した 特別ゲスト」
妹が用意したもう一つの驚きが「私の合格と兄様の帰宅を祝した 特別ゲスト」だった。現れたのは十三冠の一人で、サブノックは「叔父殿も…!」と姿勢を正す。祝いの席に、家の外でいちばん大きな肩書きが座っている。
「お前 まだ兄貴に会ってねえらしいな」
会話は武勇伝から始まり、「魔王を目指す者にとっては重要なお話ですので」と食いつくサブノックに向けて、ふいに「お前 まだ兄貴に会ってねえらしいな」と切り替わる。「会いに行くから一緒に来い」と連れ出され、妹も「せっかく家族がいっぱいなんだし」と乗る。祝いの流れのまま、会っていない相手のところへ足が向けられる。
「お前は魔王にはなれない」
扉越しの「いるんだろ?開けろよ」に応じて、サブノックは「ただいま帰りました」と告げる。返事は短く、去り際に「お前は魔王にはなれない」という一言だけが置かれる。返ったのは「言いたいことは」「それだけか」で、そのまま「失礼する」と場を出ていく。この家で足りないのは会話の量ではなく、聞く気のある相手のほうだと分かる。
「俺がお前を魔王にしてやるって言ったら」
「お前は間違ってねえ」
扉の前から離れたあと、「相変わらずみたいだな」「兄貴との仲は」と水を向けられる。そして出てくるのが「俺はお前を応援するぜ」「お前は間違ってねえ」だった。たった今否定された直後に、正面から肯定の言葉が差し込まれている。
育成計画と、推薦という仕組み
続いて明かされるのが「次期魔王を育成する」「トリックスター計画が提案された」という話だ。「現在の候補者は3名」で、その並びに入間の名前がある。面白い部分として挙げられたのは「候補者を推薦する権利があるってとこだ」で、これからは「候補者のアピール合戦になる」。誰が強いかではなく、誰が推されたかで前に出られる仕組みになっている。
「どうする サブロ」
そのうえでの誘いが「もしお前にその覚悟があるなら」「バビルスを辞めた俺についてこい」だった。「そこで俺がお前を後押ししてやる」「2人で他の候補者を蹴散らしてやろうぜ」、そうすれば「お前は魔王になれる」。最後に置かれるのが「俺が お前を魔王にしてやるって 言ったら…」「どうする サブロ」だ。近道の条件が、学校を辞めることと、味方を一人に絞ることの二つになっている。
断り方に、この人の芯が出る
「これはかっこいいと言えるのかどうか」
返事は迷いから入る。「それはかっこいいのだろうか」と言い、「その方法で魔王になったとして」伝記に「叔父の推薦によって魔王になった男と」書かれるのではないかと考える。そして「これはかっこいいと言えるのかどうか」。損か得かではなく、後から読まれたときの形で判断している。
「お前が止まっている間に」
差し出した側はすぐ畳みかける。「この魔界で十三冠の推薦をもらえる悪魔が何人いると思う」「野望をつかむのにかっこいいだのなんだの」「なりふり構っている場合なのかよ」。決め手として出てくるのが「魔王の座を狙いに きてるだろ。」「イルマだって そうだ。」「お前が 止まっている間に」「ヤツは どんどん 上へ いくぜ。」だった。説得の最後の一押しに、本人がいちばん大事にしている相手の名前が使われている。
「お友達がおりますから」
それでも答えは「いえ」「違います」から始まる。「イルマはそんな奴ではありません」「近くで見てきたから分かります」と言い、「その道は魔王への近道なのかもしれない」と認めたうえで「そちらの道にはどうしても惹かれないのです」と続ける。理由は「バビルスには刺激的なライバルと」「お友達がおりますから」。近道を断る根拠が、強さでも誇りでもなく、そこにいる相手の名前になっている。
まとめと考察
訪問と帰省が、同じ答えにたどり着く
入間は知識に、サブノックは家族に、それぞれ後回しにしてきたものへ自分から向かった。入間が持ち帰ったのは本と「ちゃんと読むね」という約束で、サブノックが持ち帰ったのは「まだバビルスで何もなしていない」「ライバルとは同じ学びやで」「正々堂々勝ってやらねばならんのです」という言い分だった。向き合った先で二人とも、いま立っている場所へ戻る理由を見つけている。
「俺はこれさえもらえりゃ満足だからな」
宴のあと、場面は静かに裏側を見せる。「用事は済んだだろう」「私も仕事を果たした」というやり取りに続いて、「俺はこれさえもらえりゃ満足だからな」「いい仕事をありがとうよ」と渡し物の話になる。さらに「これ以上私の家族に」「サブロに近づくな」と釘が刺され、去り際に「似た者親子が」とだけ返る。祝いの席そのものが、別の用事のために用意されていた可能性が最後に置かれる。
妙な形の槍と、「狩りの始まりだ」
締めに映るのは鍛冶場と、見慣れない形の槍だ。「どんな魔獣を狩りに行きはるん」と聞かれ、答えは「魔界の秩序をひっくり返すな」「行くぞ」「狩りの始まりだ」。蔵書室で話題に出た、実家にあるという変わった形の武器が、ここで動き出す側に回っている。
「知力 教養と」、耐久力
最後の短い一幕はヤマンダの紹介で、「サブノック家に勤める上で必要なのは」「知力 教養と」まで来たところで妹に呼ばれ、締めが「耐久力」になる。笑いの形をしているが、この家で働き続けるために何が要るかをいちばん正確に言っている。




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