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最終話の副題は「来るべき世界」。コミティアの出張編集部で、かつての手島先生の担当編集者・金剛寺は『星の歌』に「漫画の命はキャラです」と告げる。安海と藤森はその場で漫画を描き直し、名刺を受け取る。帰りの飛行機で「プロになりたいんですか」と聞かれた安海の答えは「どっちでもいいです」だった。そして、消印のないはがきに込められた二人の最初の出会いが明かされる。




副題「来るべき世界」と、公式のあらすじ
最終話の副題
第12話の副題は「来るべき世界〜好きなものを描こう。この先も、ずっと…」。公式サイトのあらすじは、コミティア会場の出張編集部に持ち込みを試みる安海と藤森が、かつての手島先生の担当編集者・金剛寺に合作漫画『星の歌』を読んでもらうが、「その反応は厳しいものに」と書く。そして「これまで『漫画は趣味の範囲で』と言い続けてきた手島は、安海にプロになりたいのかと問いかける」と続く。最終話の軸は、第3話から続いてきた趣味の範囲という約束が、最後にどう扱われるかにある。
「プロを目指さないこと」という約束
漫研の活動を始める前、手島先生は「学業を第一優先とすること」「プロを目指さないこと」と約束させていた。その約束を覚えている安海は、「先生 前にあんなこと言ってたから」「怒ってるのかな」と気にしている。第1期の最初に交わした約束が、最終話の問いとしてそのまま戻ってくる構成になっている。
『星の歌』と、「漫画の命はキャラです」
最終話は、二人の合作漫画『星の歌』の中身から始まる。
音が形になった地球
『星の歌』は、隕石の衝突をきっかけに「その日から 地球のあらゆる音が形になった」という物語である。形になった音は消えずに増え続け、やがて政府は不要な音を禁止し、「地球は静かな星になった」。隕石から現れた宇宙人は、自分の星では「戦争で音がなくなってしまいました」と語り、「音のない生活はとても寂しいです」「私は音を探してこの星に来ました」と頭を下げる。音が形になるという発想は、安海の自由な想像力と藤森の画力がそのまま合わさった設定である。
「漫画の命はキャラです」
読み終えた金剛寺の感想は「面白い設定ですね」だった。しかし「いくら設定が面白くても」「うちのような少年漫画では」と続き、「漫画の命はキャラです」と言い切る。キャラは「設定のための奴隷にしかなっていません」、「もっと命を持った応援したくなるようなキャラでないと」「プロでは通用しませんよ」という評価だった。設定の面白さを認めたうえで、足りないものをはっきり一つに絞って指摘する講評が、プロの編集者らしい厳しさである。
「趣味の範囲でしたら」
「うちは商業誌ですから」と言われ、安海は「なんか舞い上がっちゃって」「よく考えないまま ここに来ちゃって」と謝る。金剛寺は「趣味の範囲でしたら よくできてましたよ」「漫画を楽しんで描いてくださいね」と優しく返すが、その裏では「この子はダメだ」「プロになるという決意がないのでは」という声が響く。表では優しく、内心では見限っているという二重の言葉が、趣味とプロの間にある線をはっきり見せている。
「同情は創作の敵じゃなかったんですか」
そのまま帰ろうとしたところで、声を上げたのは藤森だった。
藤森の一言
藤森は「同情は創作の敵じゃなかったんですか」と問い返し、「安海さん 今 絵の特訓してるんです」「キャラの勉強もします」「私たち もっと面白い漫画 描けます」と言う。安海は「いつもおとなしいココロちゃんが」と驚く。人前で話すことが苦手だった藤森が、編集者に向かって先に声を上げる。その順番に、この一年の二人の関係の変化が表れている。
「こんな時 漫画の主人公なら」
そこで安海の頭に浮かぶのは、いつもの「こんな時 漫画の主人公なら」だった。安海は「ちょっとだけ待っててください」と頼み、藤森と会場を飛び出していく。第1話から繰り返されてきた漫画の主人公ならという問いが、最終話ではその場で漫画を描き直すという行動になって返ってくる。
「とても良くなりましたね」
戻ってきた安海は「漫画 直してきました」と原稿を差し出す。「冒頭4ページを足して」「宇宙人の悲しみと」「後に宇宙人を応援するロックバンドのリーダーの魅力を書き足している」と読み取った金剛寺は、「構成は荒いが理屈は通っている」と認め、「とても良くなりましたね」と言う。「これ 雑誌になっちゃうんですか」という問いには「そういうレベルではありません」と返しつつも、「改めて 名刺 お渡ししますね」と名刺を差し出す。一度見限った相手に名刺を渡し直すという小さな動作が、プロの側からの最初の承認として描かれている。
コミティアの人たちと、帰りの飛行機
持ち込みのあと、三人は会場を回り、帰りの飛行機に乗り込む。
それぞれの好きなもの
会場には、「刺繍で描いた漫画」や「オリジナルの怪獣ばっかりのイラスト集」が並んでいる。電柱ばかりを描いた本の作者に「なんで電柱なんですか」と聞くと、答えは「好きだから」だった。安海は「これが楽しいんだろうね」と感じ入る。売れるかどうかとは関係なく、好きなものだけを形にしている人たちの姿が、後半の安海の答えの材料になっている。
「超過料金です」
帰りの空港では、藤森が「超過料金です」と告げられる。藤森は「体重じゃなくて 荷物が」と慌て、飛行機の中でもまだ気にしていて、「まだ気にしてんのかよ 重いのは荷物だろ」と突っ込まれる。大きな一日の後に、こうした他愛もない笑いを挟むのが、この作品の呼吸である。
手島先生の過去と、「あの地獄」
飛行機の中で、手島先生はかつての連載時代を思い出す。
「売れないと売れないと売れないと」
回想の中の手島は、三日寝ずに描き続けている。そこで告げられるのは「アンケートがよろしくないですね」という一言だった。面白いと思うと言われても「面白いとかじゃないんだよ」と返り、「売れないと売れないと売れないと」「死ぬよ」と追い詰められていく。面白さでは測られず、数字だけで生き死にが決まる世界が、手島先生の言う地獄の中身だった。
「この子を」「あの地獄に」
隣の席ではしゃぐ安海を見ながら、手島先生の心の声は「この子を」「あの地獄に」と続く。趣味の範囲でと言い続けてきた理由が、安海をあの世界に行かせたくないという一点にあったと、ここで初めてはっきり言葉になる。
「どっちでもいいです」
そして手島先生は、ずっと避けてきた問いを口にする。
「プロになりたいんですか」
「安海さんはプロになりたいんですか」と聞き、「だとしたら 私はもう あなたに」と言いかける。安海は「私もそのこと考えてたんですけど」と答え、窓の外を見て「ここからの景色見てたら ちっちゃいなって」と言う。手島先生が一番重く抱えていた問いを、安海は空の上から見れば小さいと言ってのける。
「私も自分の好きなものを描きたい」
安海は「コミティアの人たち みんな 自分の好きなもの 作っていました」「みんなみんな好きなものを楽しそうに」と続け、「私も自分の好きなものを描きたい」「それができるんだったら」「どっちでもいいです」と言い切る。プロか趣味かという二択そのものを、好きなものを描けるかどうかという別の物差しに置き換えてしまう答えが、この作品の結論になっている。
「私の好きの始まりは『ロボ太とポコ太』です」
さらに安海は「私の好きの始まりは『ロボ太とポコ太』です」と話し、「ロボ太とポコ太に会えて」「手島先生に出会えて」「仲間に出会えた」「やっぱり 漫画は嘘じゃなかった」と続ける。そして「だから先生 これからも 漫画を教えてください」「もっと好きに描けるように」と頼む。一つの漫画から始まった好きが、作者と仲間につながったという安海の歩みが、この短い言葉に全部入っている。
「この子は私とは違うのかもしれない」
安海の答えを受けて、手島先生の心の中には「この子は私とは違うのかもしれない」という声が浮かぶ。自分と同じ地獄に落ちるのではないかと恐れていた相手が、まったく別の道を歩ける人間だと気づく瞬間である。
消印のないはがき
ここで描かれるのが、手島先生と安海の、本当の最初の出会いである。
「大丈夫じゃないさ」
幼い安海は、港で泣いている大人の女性を見つけ、「大丈夫ですか」と声をかける。返ってきたのは「大丈夫じゃないさ」「だけど 君には関係ない」という言葉だった。安海を救う側だと思っていた手島先生が、かつては安海に声をかけられる側だったという反転が、最終話の最大の仕掛けである。
「くだらなくないもん」
幼い安海は「あのね 私の大好きな漫画には 人間はみんなつながってるって」と話しかける。女性は「君は漫画なんか読むのか」「くだらない」「漫画なんて読むな」と突き放すが、安海は「くだらなくないもん」「私の一番大好きな漫画の通りにしてたら」「今日友達ができたんだよ」と言い返す。その漫画の名前は「ロボ太とポコ太」だった。自分の描いた漫画を否定したくなるほど追い詰められていた作者の前で、その漫画が一人の子どもを救っていたと知らされる場面である。
「絶対に 届けてやるから」
「世の中には そんなものより 素晴らしい漫画がたくさんあるんだ」と言う女性に、安海は「君がそれを知らないだけだよ」と返し、「じゃあ もっと漫画読んで確かめる」と言う。そして、先生あての手紙を出し忘れたことに気づく。女性はその手紙を受け取り、「絶対に 届けてやるから」と約束する。消印のないはがきが、実は作者本人の手で直接受け取られていたという事実が、二人の関係をすべて結び直している。
二度救われた人
漫画に絶望していた作者を、幼い読者の一言が救い、今また同じ読者の答えが、プロか趣味かで迷っていた先生を救っている。手島先生は、同じ相手に二度救われたことになる。安海が漫研の顧問に手島先生を選んだことも、先生がその安海を見守り続けてきたことも、この出会いから始まっていた。
「全部でこれを描いて生きる」
過去の場面のあと、港の景色を前にしたモノローグが流れる。
描きたいもの
「この景色も漫画にできそう」「例えばお散歩中に見た花」「無性に寂しくなる夕まぐれ」「いくつも表情を見せる青色」と、描きたいものが次々に挙がっていく。そして「ここに叩きつけたい」「残らず描き尽くすまで」「眠ること 飯を食うこと」「海を見ること この人生を消費すること」「全部でこれを描いて生きる」と続き、「俺はここにいる」で締めくくられる。好きなものを描きたいという衝動が、題名の『これ描いて死ね』と正面から響き合う言葉になっている。
「無敵の女子高生」
ノートに書かれた言葉は「無敵の女子高生」だった。次の漫画の始まりを思わせる一言で、描くことが終わらずに続いていくことが示されている。
ポコ太と、「もう少し あなたのそばに」
最後に描かれるのは、安海の空想の相棒、ポコ太との会話である。
「まだ消えないよ」
姿が見えなくなったポコ太は、「そろそろお別れの時かもしんないなぁ」と言い出す。しかしすぐに「久しぶり」と戻ってきて、「いなくなったかと思ったじゃん」と安海に怒られる。理由は、安海たちが「次々に 愉快なやつを生み出すからさ」というものだった。「まだ消えないよ」「だって 漫画って 楽しいもんな」とポコ太は言う。第4話から別れの予感が漂っていたポコ太が、漫画が楽しい限り消えないと宣言して残るのが、最終話らしい優しい着地である。
「もう少し あなたのそばに」
締めの言葉は、「もう少し」「あなたのそばに」「いさせてほしい」という心の声だった。プロの世界から守るつもりでそばにいた手島先生が、最後には自分のほうが安海のそばにいたいと願う。守る関係から、並んで描く関係への変化が、この一言で示されている。
まとめと考察
第12話は、持ち込みの失敗と描き直し、手島先生の問い、そして二人の最初の出会いを一話に収めた最終話だった。公式サイトでは、第2期の制作決定が発表されている。
プロか趣味かではなく
安海の「どっちでもいいです」は、問いから逃げた答えではなかった。好きなものを描けるかどうかという一点で考えれば、プロか趣味かは手段の違いにすぎない。コミティアで見た人たちと、描き直しで編集者を動かした経験が、その答えを支えていた。
漫画は嘘じゃなかった
漫画の主人公ならどうするかを問い続けてきた安海は、最終話で本当に漫画の主人公のように振る舞い、手島先生を救った。「やっぱり 漫画は嘘じゃなかった」という言葉は、安海だけでなく、漫画に絶望しかけた作者自身にも向けられていたのだと思う。




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