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第2クールの始まりとなる第13話の副題は「エジプトからの書簡」。ツタンカーメン王を亡くしたエジプトの王妃から、ヒッタイトの皇子との縁談が届く。カイルを行かせまいとするジュダとユーリの眠り薬、そして戦車競走の末に、エジプト行きを引き受けたのはザナンザだった。砂漠の夜に初めて口にした想いと、ナキア王妃の刺客の前で残した最後の言葉が胸に残る回である。




第13話の副題は「エジプトからの書簡」
第13話の副題は「エジプトからの書簡」。あらすじは「ミタンニとの戦いに勝利し、ヒッタイト軍は遠征を終えた」と始まり、エジプトの王妃が自らヒッタイトの皇子との縁談を申し込んできたこと、そして「エジプトへ向かう皇子は戦車競走で選ばれることになる」ことを伝えている。第2クールの始まりとなるこの回は、穏やかな日常から一転して、ヒッタイトとエジプトをめぐる大きな物語へと踏み出していく。
寝室を別にしたいユーリ
冒頭、ユーリはカイルに「寝室をね王子と別にしたいの」と頼む。理由は「また王子を蹴飛ばすのも悪いし」「いっぱい空き部屋もあるし」。カイルは「わかった好きな部屋を」とあっさり応じるが、宮に仕える者たちが「いいえ困ります」「これ以上掃除など手が回りません」と口々に反対する。本当の理由は掃除ではなく、ユーリにずっとここにいてほしいという気持ちだった。「みんなユーリ様にずっといていただきたいんです」という言葉が、宮の人々とユーリの距離の近さを物語っている。
「ユーリ一人を愛し抜ける」
遠征から戻ったザナンザは、カイルに「兄上」「愛してます」「ユーリに頼まれていたので」と伝言を届ける。慌てるユーリに「続きは自分で言いなさいね」と笑うあたり、ザナンザの気づかいがにじむ。そして「ユーリを元の世界を忘れるほど幸せにする自信があるか」という問いに、カイルは「ある」「そんなことは分かりきっている」「私はユーリ一人を愛し抜ける」と答える。
この言葉が、あとでユーリの胸を締めつけることになる。穏やかな夜のやり取りは、直後に届く知らせによって、あっけなく破られてしまう。
エジプトから届いた縁談
夜中に届いたのは、カイルとエジプト王妃との「ご縁組が決まった」という知らせだった。
末の弟ジュダ
急いで王宮へ向かったカイルとユーリの前に現れたのが、カイルを「カイル兄様」と慕う末の弟ジュダだ。「ずっとお会いしたいと思っていました」と礼儀正しくあいさつする姿を見て、ユーリは「綺麗な王子」と感じる。ところがジュダは、ナキア王妃が生んだ王子だった。王妃が帝位につけたがっている当人である。
「いい子だよ けど あの王妃の息子だ」「兄上が可愛がってる分 私たちが注意する必要がある」。ジュダ本人に悪意はなくても、その背後にいる母の存在が、無邪気な笑顔に影を落としている。「兄様が皇帝になられた時」「僕がお役に立てそうなのって学問くらいですもの」と語るジュダは、兄を心から慕っているように見えるだけに、この構図がいっそう切ない。
ツタンカーメン王の死と王妃の申し出
元老院まで招集された場で語られたのは、エジプトの王が亡くなり、「王妃は我が国の王子と再婚し」「生まれた子を両国の絆にしたい」と申し出てきたという話だった。「王子がファラオとなれば戦わずして」和平が成るという声が上がり、「それはもうカイル殿下以外におりませんわ」と、カイルを推す言葉まで出てくる。
皇帝は「敵大国からのこのような申し込みは前代未聞だが」「エジプト王妃自らの申し出だ」として、皇太子を除いた五人の王子から公平に一人を選ぶと決める。そこで出されたのが「戦車競争はいかがでしょう」という提案だった。あらすじによれば、これはウルヒの差し金である。「戦車の操縦はカイル様が国内一」と言われる競技を選んだ時点で、結果はほぼ見えていた。カイルを国の外へ出してしまおうという思惑が、はっきりと透けて見える。
眠り薬と戦車競走
カイルが遠くへ行ってしまうかもしれない。その知らせは、ユーリを大きく揺さぶる。
「そんなの嫌だ」
ユーリは「ユーリ一人を愛し抜く 幸せにするだと」と、カイルの言葉を思い返す。「いつかは王子も誰かと結婚するって」「覚悟はしてた」「けど遠くに行ってしまうなんて」「そんなの嫌だ」。元の世界に帰るつもりでいたはずのユーリが、カイルと離れることを本気で拒んでいる。自分の気持ちにはっきり気づいた瞬間だった。
そこへやってきたジュダが差し出したのは、小さな包みだった。「この薬をワインにでも混ぜて」カイルに飲ませてほしい。「大丈夫 軽い眠り薬です」「エジプトには僕が行きます」。「そりゃあ敵国だし怖くないわけじゃないけど」「カイル兄様はこの国に必要な方ですから」。まだ幼いジュダが、兄のために自分が敵国へ行くと決めていた。
それぞれの覚悟
迷うユーリの背中を押したのは、「構わないから言う通りにしてやりなさい」「あいつが自分で決めたことだ」という言葉だった。「でもジュダ王子はまだ子供」と言うユーリに返ってきたのは、「この国では十分大人だよ」「それとも兄上をエジプトにやりたいかい」。ユーリはレース前のカイルに「これワインなんだけど」と杯を差し出し、カイルは「いや、もらうよ」「ちょうど喉を湿らせたかった」とそれを飲み干す。
ユーリはカイルを行かせたくないという自分の願いのために、カイルを裏切るような真似をしてしまった。杯を手にしたときのユーリの表情には、後ろめたさと必死さが入り混じっている。
勝ったのはザナンザ
レースが始まると、ジュダが「兄様」「勝利はいただきます」と先頭に立つ。ところがその横を抜いていったのは、ザナンザだった。「ジュダ 見直したよ」「だがお前にはまだ早い」「5年経ったら譲ってやるから」「今は任せておけ」。
勝ったザナンザに、カイルは「亡くなったファラオには暗殺の噂もある」「そんなところにお前をやれるか」と詰め寄る。ザナンザの答えは「それは私のセリフです」。ユーリもジュダも、自分がカイルに薬を盛ったと打ち明けるが、ザナンザはすでに心を決めていた。「元より君主となるべき身にない私ですが」「エジプトの人々に受け入れられるように努力します」「それに兄弟の中で決まった妃がいないのは私一人」「どなたも泣かせずに済んで都合よいでしょう」。誰も泣かせないために、自分が行く。ザナンザらしい優しさが、そのまま彼の運命を決めてしまった。
動き出すナキア王妃
ザナンザの派遣が決まった裏で、別の思惑が動き始める。
「ザナンザを殺せ」
このままでは「ジュダ殿下が帝位につく余地がなくなってしまいます」という報告に返ってきたのは、「殺せ」「ザナンザを殺せ」という命令だった。ザナンザとカイルが両国で力を持てば、ジュダを帝位につけるという王妃の望みは断たれる。息子を思うがゆえに、別の王子の命を奪おうとする。ナキア王妃の執念は、ここでもまったく揺らいでいない。
一方で、ジュダは「母様が兄様方をよく思ってないの 僕知ってます」とカイルに打ち明けようとする。カイルは「心配はいらない」とジュダを帰らせたあと、王妃の私兵が動いたことをつかみ、狩りを口実にその前に現れる。「誰かの飼い犬を射ってしまうかもしれん」「飼い主のもとに戻れ」という警告が、カイルの頼もしさを感じさせる場面だった。
イシュタルとして見送る
「私 自分のことしか考えてなかった」と悔やむユーリに、「悔やむ必要はありませんよ」「これが最良の決定です」という言葉がかけられる。それでもユーリは、ザナンザのエジプト行きの一行に加わりたいとカイルに願い出る。「イシュタルは愛と豊穣の女神なんでしょ」「婚礼のお祝いに見送ってもおかしくないよ」。
ザナンザは「何よりの花向けです」と喜ぶ。そしてカイルに「兄上の理想は忘れていません」「戦いのない世界の実現のため」「そばにいる以上に役に立ってみせます」と誓い、カイルも「お前がファラオになれば」「いつでも会える国同士になるさ」と送り出す。兄弟の別れが晴れやかであるほど、このあとの展開が重くのしかかってくる。
砂漠の夜の告白
砂漠越えを前にした夜、ザナンザとユーリは言葉を交わす。
「このままあなたを連れて逃げてしまおうか」
「国のために会ったこともない人と結婚するなんて」と言うユーリに、ザナンザは「たった一人 欲しいと思った人が手に入らないなら」「誰と結婚しようと同じさ」と答える。そして「このままあなたを連れて逃げてしまおうか」。すぐに「冗談だよ」と笑ってみせるが、ザナンザがずっと胸に秘めてきた想いが、ここで初めて言葉になった。
「今私がいなくなったらヒッタイトとエジプトが戦争になってしまう」「それにちゃんとあなたを返さないと兄上に恨まれる」「その方が怖いな」。想いを口にしながらも、兄と国を裏切らないところにザナンザの誠実さがある。
「王妃を愛してあげて」
ユーリはザナンザに「王子 王妃を愛してあげて」「国のためとか義務とかじゃなくて」「本気で愛してあげて」「そしたらきっと みんなが幸せになれるから」と伝える。ザナンザは「いや そうするよ」「王妃を愛して幸せにするよ」「そして 私自身 王妃と民から愛されて」「幸せになれるよう努力する」と応える。
自分の想いを飲み込み、新しい国で幸せになると約束したザナンザの言葉は、この回でいちばん優しい。ユーリも「王子の幸せを願ってる」と返し、二人は穏やかに夜を終える。だからこそ、翌日の出来事がいっそう残酷に映る。
ザナンザの最期
ハットゥサでは、カイルが「胸騒ぎがして仕方ないんだ」と落ち着かずにいた。
毒のワイン
砂漠の途中、一行の一人に勧められたワインを口にしたあと、一行は異変に気づく。「お二人に恨みはないが死んでもらうぞ」「王妃様の薬はよく効くぜ」。ナキア王妃に頼まれたのかと問われ、男は「そうさ」と認める。ザナンザとユーリを殺し、エジプト兵に襲われたと報告するつもりだった。
ザナンザは「ダメだ そんなことしたら戦争になる」と叫び、ユーリに「兄上に知らせるんだ」「行って戦いを止めてくれ」と託す。「兄上は平和を望んでいる 私もだ」「だからこそ国を離れた」「王妃の思い通りにさせるな」。自分の命より先に、戦争を止めることを考えている。ユーリを逃がそうとしたザナンザは、深手を負って倒れてしまう。
「どの川のほとりにいても」
倒れたザナンザは、ユーリに最後の言葉を残す。「私はあなたを思う」「どの川のほとりにいても」「どの空のもとにいても」。そして「長く兄上のそばにとどまり」「タワナアンナとなる日を」。作品の題にもつながる川のほとりという言葉を、ザナンザは自分の想いを伝えるために使った。最後まで、ユーリが兄のそばで幸せになることを願っていた。
ユーリは「嘘」と受け入れられず、砂に覆われていくザナンザに「だめ 王子を 隠さないで」と叫ぶ。「王子は エジプトに行くんだ」「そして きっと立派に国を治めて」「王妃と民に愛されて 見事なファラオになるんだ」。前の夜に交わした約束をそのまま口にするユーリの叫びが、あまりにもつらい幕切れだった。
まとめと考察
第13話は、第2クールの幕開けにして、物語が大きく動いた回だった。
誰も泣かせないために選んだ道
ザナンザは「どなたも泣かせずに済んで都合よいでしょう」と言ってエジプト行きを引き受けた。誰も泣かせないために選んだ道の先で、結局いちばん多くの人を泣かせることになってしまった。その皮肉が、この回の悲しさの芯にある。ユーリへの想いを秘めたまま、兄の理想と国の平和のために動いたザナンザの生き方は、最後まで一貫していた。
残されたユーリとカイル
史実でも、エジプトの王妃に求められて送られたヒッタイトの王子は、エジプトに着く前に命を落としたと伝えられている。物語はその出来事を、ナキア王妃の陰謀として描いた。ザナンザの死を知ったカイルとユーリが、ナキア王妃とどう向き合っていくのか。ザナンザに託された「戦いを止めてくれ」という願いが、この先の二人を動かしていくはずだ。




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