この記事の作品:
4th seasonの最終話となる第85話の副題は「シャウラ/英雄」。ボルカニカに嫉妬の魔女と呼ばれたエミリアは、自分の名前で名乗り返し、塔の試験を終わらせる。赤いサソリとなったシャウラは、400年を待っていた時間も愛していたと言い残して去っていく。そして長い眠りからついに目を覚ましたレムに、スバルは「俺はお前の英雄だ」と名乗り直す。




最終話の副題は「シャウラ/英雄」
第85話の副題は「シャウラ/英雄」。あらすじは「最上層で黒いモノリスと6つの手形を発見したエミリアに対し、意識を取り戻したボルカニカはサテラ、嫉妬の魔女と呼びかけ、再び襲いかかる」と始まり、プレアデス監視塔の攻略が「最終局面を迎え」たことを伝えている。公式アカウントも放送後に「4th season 最終話ご視聴有り難うございました」と投稿しており、この回が4th seasonの最終話となった。
「また何か忘れてるの」
最上層で手形に触れたエミリアは、話しかけてきたボルカニカに「もしかして正気に戻ってくれたの」と期待する。けれど返ってきたのは「フリューゲルやレイドはどこへ行った」「シャウラが寂しがるぞ」。ファルセイルという名前に、エミリアは「ボルカニカと盟約を結んだっていう」「400年前の王様」を思い出す。
そしてボルカニカは、エミリアを「サテラ」と呼ぶ。「嫉妬の魔女となり果てた汝を」「我らが止めねば」「あの日 我がためらわなければよかった」。エミリアは「まさか私」「森のお母様たちのこと以外にも」「また何か忘れてるの」と動揺する。自分の知らない過去を、自分の顔を見て語られる怖さが、この短いやり取りに詰まっている。
「私はエリオール大森林の氷結の魔女」
それでもエミリアは、嫉妬の魔女と呼ばれることをきっぱりと拒む。「違うわ」「私はエリオール大森林の氷結の魔女」「エミリア」「名前だけでも」「ちゃんと覚えてね」。
誰かと重ねられるのではなく、自分の名前で立つ。忘れていることがあると認めたうえで、それでも今の自分を名乗るエミリアの姿は、最終話の副題にある「英雄」とも響き合う。ボルカニカとの戦いは、ここから本格的に始まる。
砂丘に駆けつけたユリウス
一方の砂丘では、スバルとベアトリスが魔獣の群れを必死に押さえ込んでいた。
「待たせてすまない」
マナの残りは少なく、「メィリィの治療を止めるって選択肢がねえ」状況で、スバルは切り札を「5秒で切り札使っちまった」と嘆く。そこへ現れたのがユリウスだった。「待たせてすまない」「危ないところだったね」。
「伝言頼んだだろうが」と文句を言うスバルに、ユリウスは「ああ聞いたとも」「だからここへやってきた」「一番危険だと判断したのでね」と返す。レイドとの勝負は「完敗だ」「気持ちよく勝ち逃げされたよ」。負けを隠さずに笑って言えるところに、ユリウスの変化が見える。スバルも「一遍しか言わねえけど」「ありがとうよ」と、素直に礼を言う。
「己の価値を見つめ直したようで何よりだ」
役割を決める場面でも、二人のやり取りは軽やかだった。「自力で何とかしろってことだな」と言うスバルに、ユリウスは「ベアトリス様と協力して成し遂げてくれ」と言い直し、スバルは「7割くらいベア子を計算に入れてるから」と返す。
ユリウスの「己の価値を見つめ直したようで何よりだ」という一言は、スバルへのねぎらいでもある。塔での長い戦いを経て、二人はようやく対等な仲間として並んでいる。第1期の頃の険悪な関係を思えば、ここまで来たことに感慨を覚える場面だった。
白い鱗と、雲の晴れた空
最上層では、エミリアがボルカニカの弱点に気づく。
パックの記憶
ボルカニカの体をよく見ると、鱗が一か所だけ違っている。「ウロコ」「あそこだけ色が」。その瞬間エミリアの頭に浮かんだのは、パックの「そんなにこそばゆいことされたら」「集中が乱れちゃうでしょ」という言葉だった。
ずっとそばにいた精霊との、なんでもない日常の記憶が、神龍を止める鍵になる。エミリアは「あの白い鱗に」狙いを定め、「アブソリュート ゼロ」を放つ。パックの姿を久しぶりに見られたことも含めて、胸が温かくなる場面だった。
「みんな 仲良くして」
ボルカニカは改めて「志を問わん」と問いかけ、エミリアの答えは「みんな 仲良くして」だった。その直後、砂丘の空で異変が起きる。「空が」「雲が晴れた」。スバルは「やってくれたのか」「エミリア」とつぶやく。
塔の頂での試験を、エミリアは自分らしい言葉で終わらせた。難しい理屈ではなく、みんなが仲良くしてほしいという願い。それがエミリアの志であり、塔を縛っていたルールを壊す決め手になった。
シャウラとお師様
塔のルールが壊れても、シャウラは止まらなかった。
「俺があいつの王子様だからじゃない」
スバルは「塔のルールが壊されたんだ」「もう戦わなくていい」と呼びかけるが、シャウラの体は赤いサソリの姿に変わっていく。「諦めない そう決めたんだ」と言うスバルは、「俺があいつの王子様だからじゃない」と続ける。
「こんな砂の塔でずっと一人でいて」「俺らと過ごした何日かが楽しかったって」泣きじゃくるような相手を、「どうして放っておけるんだよ」。スバルがシャウラを救おうとする理由は、お師様だからではなく、一緒に過ごした時間があるから。ユリウスも「強情だな」「だがそうすべきだ」と、その意思に付き合う。
「400年なんてすぐだったっすよ」
シャウラは最期に、スバルに語りかける。「アーシに絶対戻ってくるから待ってろって」「そう言っていなくなったっすよ」。スバルは「覚えてねえ」と返しつつ、「お前の王子さまはクソ野郎だ」「俺がこの手でぶっ飛ばしてやりてえよ」と怒る。
「お師様 愛してるっす」と言うシャウラに、スバルは「俺はお前に愛してるなんて言わないぜ」と返す。シャウラは「お師様が言ってくれない分」「あーしが言い続けるっす」と笑い、「気の長い話だな」「400年待つ気かよ」という言葉に「400年なんてすぐだったっすよ」「明日の明日みたいなもんだっす」「だって」「待ってる時間も愛してたっすもん」と答える。400年の孤独を、愛していた時間として言い直してしまうシャウラの強さに、涙が止まらなかった。
「今度はお師様が待つ番っすよ」
シャウラの最後の願いは、「いつかまた」「出会ってほしいっす」「今度はお師様が待つ番っすよ」「大事な約束っす」「今度は忘れないでくださいっす」というものだった。待つ側だったシャウラが、最後に待つ役目をスバルに渡していく。400年ぶんの想いを約束に変えて去っていく姿は、この回でいちばん美しかった。
「だったら俺たちがここに来なければ」と自分を責めるスバルに、「君がすべき後悔ではない」という言葉が返される。そしてスバルは「大丈夫だ」「俺はあいつのお師様だから」と答える。約束を背負う覚悟が、この一言に込められていた。
戦いのあとで
戦いが終わり、塔には少しずつ日常が戻ってくる。
戻った記憶と、戻らない記憶
最上層から戻ったエミリアは「よくわからなくてすごく大変だったけど」「なんとか終わらせられたみたい」と笑う。「ユリウスはちゃんと私のことわかる」と聞かれ、ユリウスは「はっきりと思い出せます」と答える。眠っていたアナスタシアも目を覚まし、「心配かけてごめんやったね」「このとおりピンピンしとるよ」とおどけてみせる。
けれど、戻らなかったものもある。レムのことを聞かれて返ってきたのは「ごめんなさい スバル」という謝罪で、「ユリウスのことも思い出せてないかしら」「暴食の被害の全部が戻ってきてるわけじゃないみたいやね」。エミリアの記憶が戻っても、レムを覚えている人はまだスバルとラムしかいない。喜びの中に、解決していない問題がはっきりと残された。
「涙を流せるナツキくんの方が好きやね」
捕らえた暴食の一人をどうするかで、スバルは声を荒らげる。それをいさめたのがアナスタシアだった。「殺さなならん時は殺すよ」「いざとなったら手も汚す」「でも衝動に任せるんは違う」「人を簡単に死なせる人間は ろくな結末を迎えない」。
そして「いなくなった誰かのために」「涙を流せるナツキくんの方が好きやね」。怒りのまま動くのではなく、泣けるスバルでいてほしいという言葉だった。ラムもまた、「怒るのではなく泣きなさい」「寂しいと泣かれた方がシャウラも喜ぶわ」「ラムもそうだから」とスバルに伝える。二人の言葉が、シャウラを失ったスバルの心を少しずつほどいていく。
「俺はお前の英雄だ」
物語は、最後に大きく動く。
繰り返される「愛してる」
部屋に突然現れたのは、意識のないまま横たわる「ルイ・アルネブ」だった。「暴食最後の一人の名前ね」。スバルがエミリアたちを呼びに行かせたその直後、異変が起きる。「バルス しっかりしなさい」「レムが泣くわよ」という声のあと、「愛してる」という声が何度も何度も繰り返される。
第4期を通して何度も耳にしてきたこの声が、最終話でまたスバルを追いかけてくる。そしてボルカニカの「志を問う」という声が重なり、場面は一変する。
気がつくとスバルは、見知らぬ場所にいた。「ここどこだ」「これ死に戻りじゃないって」。すぐそばで眠るレムを見つけ、「よかった 無事だ」と胸をなで下ろす。
「あなたは誰ですか」
そしてついに、レムが目を開ける。「レム」と呼びかけるスバルに返ってきたのは、「あなたは誰ですか」という言葉だった。記憶は戻っていない。長く眠り続けてきたレムが、ようやく目を覚ましたのに、スバルのことを覚えていない。
何年も待ち続けた目覚めが、いちばんつらい形でやってきた。それでもスバルの表情は、悲しみだけでは終わらない。ここからスバルが何を言うのかに、すべてがかかっていた。
もう一度、ゼロから
「カッコイイところを見せてください」「スバル君」という言葉が重なったあと、スバルは胸を叩いて名乗る。「俺の名前はナツキ・スバル」「今はまだ思い出せないかもしれねえ」「でも俺は」「俺はお前の英雄だ」「レム」「会いたかった」。
忘れられていても、今度は自分から「英雄」だと名乗る。かつてレムに救われ、英雄と呼ばれたスバルが、今度は自分の口でその言葉を差し出す。副題の「英雄」は、この瞬間のためにあった。
記憶のないレムを前にして、泣き崩れるのではなく笑って名乗り直す。そのためにスバルがどれだけの気持ちを飲み込んだのかを思うと、この名乗りの重さがよくわかる。
ここから二人の関係は、もう一度ゼロから始まる。作品の題名そのものを体現するような幕切れだった。
まとめと考察
第85話は、シャウラとの別れと、レムの目覚めという二つの大きな出来事を描いた最終話だった。
待つ人から、待たせる人へ
シャウラは400年を「明日の明日みたいなもん」だと言って、待つ役目をスバルに渡した。スバルは眠るレムをずっと待ち続け、ようやく目覚めたレムに、もう一度自分を知ってもらうところから始める。この回は、待つことと、待たせることの物語だった。シャウラが残した「今度は忘れないで」という願いは、記憶を失ったレムと向き合うスバルの姿に、そのまま重なって見える。
4th seasonを終えて
記憶を取り戻したエミリア、まだ戻らない人たちの記憶、そして謎を残したままの「愛してる」の声。監視塔の物語はひとまず幕を閉じたが、解かれていない謎はまだ多い。「俺はお前の英雄だ」という名乗りから始まる、スバルとレムの新しい物語が描かれる日を待ちたい。




























































コメント