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魔法の国からやってきたウメゾウが変身装置のスイッチを切り忘れたせいで、流は次々と別人の姿に。よりによってその日はドラマの撮影で、流は代役ののことして自分自身の役を演じることになる。そして公園のブランコでは、別人の姿のまま風の本音を聞くことに。代役ののこの撮影、リリィが頑張れる理由、そしてブランコで聞いた風の本音まで、第15話を振り返る。




第15話「流の七変化」は別人になった流が風の本音を知る回
『魔法の姉妹ルルットリリィ』第15話「流の七変化」は、魔法の国からやってきた住人の変身装置の影響で、流が次々と別人の姿になってしまう回だった。よりによってその日はドラマの撮影。ルルに戻れないまま代役として現場に立つことになった流は、思いがけずリリィの頑張りの理由を知り、さらに公園では、別人の姿のまま風と二人きりで話すことになる。ドタバタの笑いと、姉妹の距離がそっと縮まるあたたかさが同居した一話だった。
変身装置を切り忘れた来訪者
冒頭、久しぶりの人間界にやってきたのは、フェリックススターの住人ウメゾウ。変身装置で人の姿になり、人間ぽいかなぁ、まあいっか、と気楽にお買い物へ出かけていく。一方の野々山家では、前話で知った魂の牢獄の話がまだ尾を引いていた。魔法のことが人に知られたら魂の牢獄に捕らえられてしまう。あずきも知らなかったと謝るこの事実は、姉妹の秘密がどれほど重いものかをあらためて突きつける。
そんな重い空気とは裏腹に、この回の騒動の原因はとても気の抜けたものだった。ウメゾウが変身装置のスイッチを切り忘れたまま歩き回っていたせいで、近くにいた流まで魔法の影響を受けてしまう。悪気のない迷惑がそのまま物語を動かしていくところに、この作品らしいユーモアがあった。
学校でも、流は撮影に向けてセリフの練習に余念がない。こうしてまた一つ、悲しいすれ違いの末、事件の花が散った。廊下でつぶやいたこのナレーションのようなセリフは、のちのドラマ撮影でそのまま重要な意味を持つことになる。何してるんだと声をかけられて照れる流の姿からは、初めてのドラマの仕事に本気で向き合っている真面目さが伝わってきた。この一日の始まりは、ごく普通の、少しだけ忙しい日になるはずだった。
知らない人になった流
学校では、バスケットボール部の翔太が明日の試合を見に来ないかと流を誘う。明日は歌のレッスンがあるからと断ろうとした流だったが、気がつけば翔太の目の前にいたのは知らない人。慌てて鏡をのぞいた流は、自分が知らない人になっていることに気づいて青ざめる。これは誰かの魔法。いったんは元に戻ったものの、撮影に向かうためにルルへ変身しようとすると、今度はスタッフさんの姿になってしまう。
誘いを断られた翔太が、知らない人と話していたことになって戸惑う様子もおかしい。変身するたびに別の誰かになってしまう流の七変化は、副題どおりのにぎやかさだった。中学生の女の子が、ある時は見知らぬ大人に、ある時は撮影スタッフにと、本人の意思とは関係なく姿を変えていく。そのたびに慌てる流の表情がころころ変わるのも見どころで、作画の楽しさも存分に味わえた。とはいえ流にとっては笑いごとではない。ルルの撮影はもう始まろうとしていて、本人がルルに戻れないのだから、ルルは急病でお休みということにするしかない。塔子さんに嘘の連絡を入れたあとの、ごめんなさい嘘ついちゃって、という流のつぶやきに、真面目な彼女らしさがにじんでいた。
代役ののこのドラマ撮影
代役として現場へ
ところが、スタッフさんの姿で代役を探していた流は、監督に代役の方と勘違いされてしまう。セリフを言ってみようかと促され、ルルとして覚えていたセリフを口にすると、これならいけそうだと即決。こうして流は、眼鏡をかけたののこという名前の代役として、ルル自身の役を演じることになった。自分の代役を自分で務めるという状況だけで、もう面白い。
今回のドラマは、私立高校が舞台の学園サスペンス。学園長が失踪して校内は大混乱、授業がなくなってしまう。真相を突き止める生徒会長で探偵役がののこ、その親友で実は犯人役がリリィ。リリィは学園長の息子役の恋人という設定でもある。共演者に、かわいいねその眼鏡、と言われて戸惑うののこの姿もかわいらしく、眼鏡姿の流を楽しめるのもこの回ならではだった。現場では、急病で休んだことになっているルルを心配する声も上がる。大丈夫かなルルちゃん、と気づかわれたののこは、思わず自分のことのように答えかけて、スタッフさんがそう言っていました、と慌ててごまかす。正体を隠して自分の噂を聞くという、なんとも落ち着かない状況が続いていく。
リリィが頑張れる理由
撮影では、犯人役のリリィがなかなかOKをもらえない。ちょっと子どもっぽい、心に闇を抱えた人物だから親友を裏切ってしまった悲しみも見せたい、と注文を受けて演じ直すと、今度は暗すぎる。何度もNGを出してしまったリリィは、休憩中に、歌っているときはこんなことないのにな、とこぼす。歌うのは楽しくて大好きだけど、お芝居はちょっと苦手かもしれない。
どうしてそんなに頑張れるのかと尋ねたののこに、リリィは「やるって決めたんだから」、このまま終わるのはいや、と答える。たとえ自分が傷ついても、せっかくなら楽しかったで終わりたいから。この言葉はまっすぐで、リリィという人物の芯の強さをよく表していた。正体を知らないまま、姉が妹の本音を聞いている。その構図に、思わず胸が温かくなった。
シーン26の悲しすぎる動機
撮影が再開されたシーン26では、犯人の動機が明かされる。学園長を誘拐したのは、学園長がいなくなればテストがなくなるから。そんな理由でひどい、テストを楽しみにしている人だっているんだぞ、とツッコミどころ満載のやりとりが続く中、リリィは「あなたのせいで全部失ったのよ」と叫ぶ。テストのないバラ色の学園生活も、親友も。リリィの演技には悪役にしては不思議な哀しさがあって、現場からも、何だか可哀想、という声が上がる。
真実なんて知らない方がよかったのに、それでも人はどうしても求めてしまう。こうしてまた一つ、悲しいすれ違いの末、事件の花が散った。監督が求めていた方向性とは違ったものの、気持ちが乗っていたから伝わるものがあった、と見事にOK。ラストシーンがよかった、二人とも本番に強いタイプなんですね、と言われるののことリリィの姿が誇らしかった。真実を知らないほうがよかったというドラマのセリフが、正体を隠し合う姉妹の物語とも重なって聞こえるのが心憎い。
公園のブランコで聞いた風の本音
ケーキと和菓子
ドラマは無事に終わったものの、流はののこの姿のまま戻れない。困ったな、家に帰れない、と途方に暮れていた公園で、声をかけてきたのは風だった。女優さんのののこちゃんですか、とうれしそうに近づいてくる風。うちもこの近くで和菓子屋さんなの、と話しながら、一緒にブランコに乗っていいかと尋ねる無邪気さがかわいい。
そして風は、ののこにだけこっそりと打ち明ける。「私本当はケーキの方が好きなんだ」。和菓子よりケーキのほうがかっこよくない、なんか地味だし、という風に、和菓子だって素敵だよ、琥珀糖とかきれいだよ、とむきになって答えるののこ。家業の和菓子を大切に思う流の気持ちが、思わずこぼれた瞬間だった。ののこちゃんがそう言うならそうかも、とすぐに考えを変える風の素直さもほほえましい。
お姉ちゃんともこんな風に
元気だね、私の憧れの人と一緒だ、と言うののこに、風は自分はその人とは違うかも、と首を振る。結構悩んじゃうときもある。お姉ちゃんとうまく話せなかったりするとき。最近はちょっといい感じだけど、小さい頃はもっと仲良しで、一緒に歌ったりしていた。そして風がつぶやいたのが「お姉ちゃんともこんな風にいっぱいおしゃべりできたらな」という言葉だった。
目の前にいるのが、その姉本人だとも知らずに。別人の姿だからこそ聞けた風の本音に、流は何も言わずにブランコを押してあげる。偽りの姿だからこそ届いた妹の気持ち。この場面は、第2クールの中でも特に心に残るシーンになったと思う。これからも応援してるね、と手を振る風を見送ったあと、流はようやく元の姿に戻る。
風が口にした、小さい頃は一緒に歌ったりしていた、という思い出も見逃せない。第2クールに入ってから、流はずっとリリィのステージで聞いた歌の秘密を気にかけてきた。その歌が、もしかすると幼い頃の姉妹の思い出につながっているのかもしれない。風がこの話をしたのは、相手がお姉ちゃんではなく憧れの女優さんだったからこそ。素直に話せる相手が実は一番話したかった相手だったという皮肉が、この場面を一層切なくしていた。
第15話のまとめ考察
風が笑っていれば
家に帰った流は、あずきと今日の出来事を振り返る。何かの魔法だったのかな、実は知らないうちにみんな変身していたりして、と冗談めかしながらも、流の中ではひとつの答えが出ていた。歌の秘密のことは気になる。でも、風が笑っていればそれでいい。リリィの正体を探ることをやめた流の決断は、妹の本音を知った姉だからこその優しさだったのだろう。
気になるのは、公園で風が最初から、女優さんのののこちゃん、と声をかけていたことだ。ののこはその日の撮影のためだけに生まれた代役で、ドラマも撮り終えたばかりだ。その名前と顔を知っているのは、撮影現場にいた人だけのはず。流は気づかないまま探偵をやめてしまったけれど、視聴者にとっては、リリィの正体を示す小さな手がかりがさりげなく置かれていたように見える。流が探るのをやめた途端に答えが目の前を通り過ぎていくというすれ違いも、この姉妹の物語らしい。
騒動の張本人であるウメゾウは、大量、大量、とたくさんのお土産を抱え、満足そうにフェリックススターへ帰っていく。はた迷惑な来訪者だったけれど、結果的には姉妹にいい影響を与えてくれた。第15話は、正体を隠し合う姉妹が、それぞれ相手の本当の気持ちに少しだけ触れる回だった。リリィの頑張りの理由を知った流と、お姉ちゃんともっと話したいと願う風。いつかこの二人が、本当の姿のまま同じ話ができる日が来るのを楽しみに見守りたい。




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