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自ら命を絶とうとしたエルザは、ピーちゃんの回復魔法で一命を取り留める。家の迷惑になる人生に耐えられないという彼女のために、ピーちゃんは佐々木たちの世界で預かることを提案した。異世界と現代、二つの世界の物語が同時に動き出す。父と娘が交わした約束、インターネットで恋愛ドラマにはまる異世界人、そして星崎が通う高校への潜入捜査まで、第3話を振り返る。




第3話「潜伏と潜入」
『佐々木とピーちゃん Season2』第3話「潜伏と潜入」は、望まぬ縁談に追い詰められたエルザを、佐々木たちが自分の世界で預かることになる回だった。異世界ではエルザを守るための大芝居が打たれ、現代ではインターネットに夢中になる異世界人と、星崎が通う高校への潜入捜査が並行して描かれる。重い始まりから一転してにぎやかになっていく一話を、場面ごとに振り返っていく。
お父様の邪魔になるくらいなら
前回のラストで自ら命を絶とうとしたエルザは、ピーちゃんの回復魔法によって一命を取り留める。よかった、本当にと娘を抱きしめるミュラー伯爵。けれど目を覚ましたエルザは、どうしてと問う父に、お父様の邪魔になるくらいなら自分は死を選ぶと繰り返す。幼いながらも、家のために自分を犠牲にしようとする覚悟の固さが痛々しかった。
伯爵は、君の命を代償にしてまでこの家を守りたいとは思わないと語りかける。けれどエルザは、それはミュラー家当主として怠慢ではないかと返す。ミュラー家は第二王子アドニス殿下の派閥。ルイス第一王子のもとにみすみす人質として嫁ぐなど自分にはできない。このまま一生、家の迷惑になるだけの人生なんて耐えられないという言葉に、エルザがどれほど追い詰められていたかが伝わってくる。
縁談を断ることはできないのかと尋ねる佐々木に、伯爵は地方領主の娘が第一王子の側室筆頭に迎えられるなど前代未聞で、本来は破格の縁談なのだと答える。正当な理由もなく断れば、王族の権威に真っ向から泥を塗ったと受け取られてしまう。家と娘のどちらも守りたい父親の苦しさが、短いやりとりの中ににじんでいた。
エルザを佐々木の世界へ
ピーちゃんの提案
そこでピーちゃんが一つの提案をする。しばらくの間、娘をこの者の世界で預かるのはどうか。こちらの世界とあちらの世界では時間の流れが異なり、こちらでの数年はあちらでの数か月ほど。2、3年も雲隠れしていれば、世の中は娘の存在に関わらず大きく動いていくだろう。もちろん、万が一のことがあれば、娘は頼る者のいない異郷の地で一人生涯を終えることになるというリスクもある。
以前は無理だと説明されていたと首をかしげるエルザに、ピーちゃんは以前とは状況が変わっていると返し、佐々木がその理由を説明する。理由は二人静との関係。しばらく交友を重ねたことで、彼女との交渉は融通が利くとわかった。対価さえ払えば、人を一人かくまうくらいは可能だろう。お父様の迷惑にならずに済むのなら、向こうの世界に連れていってとエルザは願う。
もっとよく考えるべきだと止める父に、エルザはこれはまたとない機会だと説く。佐々木たちの世界は比べものにならないくらい洗練されていた、あちらで学んだことをこちらの世界でも取り入れられれば、きっとお父様の力にもなれる。困ったときはお互い様ですと協力を申し出る佐々木に、伯爵はついに娘の意思を尊重すると決める。お二人に決して迷惑はかけないと約束してくれるねという父と、お父様との約束しっかりとお守りいたしますと答える娘。自分の命を投げ出そうとしていたエルザが、生きて父の力になる道を選んだ瞬間だった。
娘は死んだことに
とはいえ、周囲への建前も必要だ。そこで取られたのが、盗賊の襲撃を装い、エルザは死んだことにするという策だった。ただしやるからには、周囲の者全員を欺く必要がある。宮廷では、ミュラー伯爵の娘が正式に第一王子の側室になるといううわさが流れ、ルイス殿下も酷なことをなさるとささやかれていた。
襲撃の芝居を終え、別れのときが来る。わがままを言ったら叱ってやってほしいと頼む伯爵に、わがままなんて言わないわよと慌てるエルザ。佐々木は、あちらの世界には声も姿も記録できる道具がある、次に訪れる際はエルザ様の元気な姿を記録してお持ちしましょうと約束する。エルザ、私との約束を決して忘れてはいけないよ。はい、お父様もどうかご無事で。お父様、行ってまいりますという言葉に、父娘の深い絆が込められていた。
異世界人とインターネット
人遣いの荒い連中じゃ
佐々木の世界でエルザを迎えたのは二人静だった。客人が何か月も暮らす部屋をたった一晩で用意せえとはなと文句を言いながらも、きちんと準備を整えているあたりがこの人らしい。よろしくお願いしますと頭を下げるエルザの言葉を佐々木が訳すと、相変わらず礼儀のできた娘ではないかと二人静。言葉がわからず、やっぱり私だけ何を言っているのかわからないのねとしょんぼりするエルザが、少しかわいそうでかわいらしい。
佐々木と二人静がお勤めに出ている間、日中の通訳を務めるのはピーちゃん。迷惑ばかりかけてごめんなさいと謝るエルザに、気にすることはないと返したピーちゃんは、暇のついでにインターネットというものを教えてやろうと言い出す。こちらの世界の知識の海だ。知りたいか、インターネット。知りたいわ、インターネット。このやりとりだけで、この後の展開が目に浮かぶようだった。
ピーちゃんは何を見せているのか
そして案の定、ピーちゃんがエルザに見せていたのは、ドロドロの恋愛ドラマだった。一目見たときから君に夢中さ、ずっと好いていた、私もよ。登場人物の台詞を、ピーちゃんが一人ずつ律儀に訳していく。ジェイク、ケリーと名前を呼び合う場面まで、ピーちゃんの声で再現されるのがおかしい。
後半になると、私とは遊びだったのねジェイク、我をもてあそんだのかと、修羅場のシーンまで忠実に訳されていく。違うんだと叫ぶジェイクに、エルザはいいなと目を輝かせ、ピーちゃんはと言っていると締めくくる。これがインターネットと感動するエルザの姿に、異世界の令嬢がとんでもないものを覚えていく予感しかしない。ピーちゃん、何を見せているのか。
星崎の高校への潜入捜査
防犯設備の視察という名目
一方、局では佐々木と二人静に新たな任務が与えられる。昨日の騒動で殺害された被害者のうち、少年が通っていた高校への調査だ。高吉くんが高校生だったと知って驚く佐々木。現地では彼の異能力に関する情報と、他の異能力者の有無を調べてほしいという。混乱を防ぐため、学校には防犯設備の視察という名目で話を通してある。
学校の調査なら星崎さんの方が適任ではと尋ねる佐々木に返ってきたのは、この学校は星崎が通っている学校でもあるという答え。局員の身辺調査は本人には行わせない方針で、今回のことも星崎には伝えていない。彼女の目に留まらないように調査してほしい。同僚の学校に、本人に内緒で潜入するという状況が、それだけで面白い。
調査の前には、二人静から局内のきな臭い話も聞かされる。近々人事があり、今の次長が飛ばされるらしい。例のボウリング場の一件で、偽の情報をつかまされて局員を動員したのは次長の方だった。あの男の仕掛けた茶番で局は犠牲を払い、上司は失脚し、その上で自分は出世する。お主もせいぜい気をつけて仕事に励むことじゃなという忠告が、不穏な余韻を残した。
アオハルしておるのう
校内では、高吉が昨日から家に帰っていないといううわさ話をしている生徒たちの顔を、二人静が捉えていく。新しい女のところじゃないかと冗談めかしながらも、親がめっちゃ心配している感じだったと話す生徒たちの会話が、事件の重さを静かに伝えていた。ところが撤収しようとしたそのとき、星崎が近づいてくる。慌てて身を隠した二人が目撃したのは、星崎が先輩に呼び出される場面だった。
俺と付き合わないかという進藤先輩の告白に、星崎はごめんなさい、それは無理ですと即答。他に付き合っている人はいないが、他に気になる人がいる。うちの生徒でも教師でもないが、似たようなものかもしれない。連絡先だけでもと食い下がる先輩には、遊び相手には不自由していないのでとばっさり。アオハルしておるのうとにやにやする二人静と、とりあえず一度戻りますねと逃げ腰の佐々木の対比が楽しい。
さらに、先輩に告白されておいて一方的に振るとはどういうつもりかと、別の女子生徒が星崎に詰め寄る。前のテストで赤点を取ったくせにと言われて、あの見た目で赤点は詐欺じゃのとつぶやく二人静には笑ってしまった。もしかしてあなたも先輩が気になっているのと切り返し、だとしたらごめんなさい、確かに気を使うべきだったと謝る星崎は、学校でもやはり強い。そして最後、佐々木と二人静は何かに気づく。まさか、あのときの。間違いない。調査はここから大きく動き出しそうだ。
第3話のまとめ考察
預かった命と、二つの世界の日常
第3話は、エルザという一人の少女の命が救われ、そして二つの世界をまたいで守られることになる回だった。家の迷惑になるくらいなら死を選ぶというエルザの言葉は、幼い少女が背負うにはあまりに重い。その重さを、父の愛情とピーちゃんの機転、そして佐々木の誠実さが少しずつほどいていく流れが丁寧に描かれていた。
一方で、現代パートはいつもの本作らしいにぎやかさにあふれていた。インターネットで恋愛ドラマにはまる異世界の令嬢と、それを律儀に訳すピーちゃん。同僚の学校に潜入しながら、星崎のアオハルをのぞき見てしまう佐々木と二人静。日常と非日常が混ざり合うこの作品の魅力が、存分に味わえる回だったと思う。特に、命がけで家を守ろうとしていたエルザが、ピーちゃんと並んでドラマに夢中になる姿には、ようやく年相応の顔に戻れたような安心感があった。重い始まりがあったからこそ、この何気ないひとときがいっそう温かく感じられる。言葉の通じない世界で暮らし始めたエルザにとって、ピーちゃんの通訳とインターネットは、きっと新しい世界への窓になっていくのだろう。
局の人事をめぐるきな臭い動き、高吉の通っていた高校で見つけたもの、そして佐々木の世界で暮らし始めたエルザ。異世界と現代、それぞれの物語が少しずつ動き出している。エルザが父との約束を胸にどんな日々を過ごしていくのか、そして佐々木たちが学校で気づいたものの正体を、楽しみに見届けたい。




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