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『追放された転生重騎士はゲーム知識で無双する』第17話は、デスアームドを倒したエルマとルーチェが、冒険者の都ラコリナのギルドでギルド長ハレインと向き合う回だった。戦闘の決着のあとに待っていたのは、魔物ではなく人との駆け引きだ。2800万ゴルドの小刀に錯乱するルーチェ、田舎冒険者扱いからの換金、そして底の見えないハレインとの駆け引きまで、場面ごとに振り返っていく。




第17話 デスアームド討伐のあとで
『追放された転生重騎士はゲーム知識で無双する』第17話「ギルド長ハレイン」は、百足坑道で存在進化したデスアームドを倒した直後から始まる。高額ドロップに大騒ぎするルーチェ、冒険者の都ラコリナのギルドでの換金、そしてギルド長ハレインとの対面。戦闘の回のあとに、言葉の駆け引きで緊張感を作る回が来た。エルマが何を警戒し、ハレインが何を見抜いたのかを、場面ごとに振り返っていく。
不惜身命の一撃と称号「悪夢殺し」
前回の決着は、<燻り狂う牙>のスキル不惜身命による一撃だった。経験値がすごいことになっていたと喜ぶルーチェに、エルマはなんとか勝てたなと息をつく。それでも、ここで存在進化が起きるはずがなかったと謝るエルマに、ルーチェは謝らないでくださいと返す。「それでも勝っちゃうのがさすがエルマさんです」。危ない賭けのあとでも、ルーチェはまっすぐにエルマを信じている。
エルマ自身は、勝てたのは今回もルーチェのおかげだと言う。不惜身命は強力だが隙が大きく、スタンが取れたあの状況だったからこそ攻撃できた。最後にライフシールドがなかったら死んでいただろう、とまで振り返るあたりに、この勝ちがどれだけ紙一重だったかがにじむ。今のステータスで積極的に使っていきたいスキルではないが、ハッタリにはなるという計算まで含めて、エルマらしい冷静さだった。
そこへ届いたのが、称号の獲得。レベル70以上の存在進化したマスターを討伐した証で、マスターへの攻撃時に攻撃力がプラス7%される。「ボス特攻の称号だな」とエルマ。存在進化が絡むから狙って取れるものではない、という説明もゲーム知識を持つエルマならではで、思わぬ災難が思わぬ収穫に変わる流れが気持ちいい。
2800万ゴルドの小刀と大混乱のルーチェ
魔石を回収しようとしたところで、ルーチェがとんでもないものを見つける。デスアームドのドロップアイテム、毒ムカデの小刀。攻撃力プラス28、市場価値2800万ゴルド。ムカデの猛毒を帯び、まれに敵に毒を付与する。決して高くないドロップ率のアイテムを当たり前のように引き当てるルーチェの幸運に、エルマも今までのドロップ品の中でも頭一つ抜けていると驚く。
エルマの見立てでは、この手の確率効果の発生率には幸運が関わる。曲芸連撃で手数を増やして強引に毒を付与できれば、勝ち筋が一気に広がる。「ルーチェとはかなり相性がいいと言える」。幸運特化のルーチェのために出てきたような武器で、集めた鉱石がいらなかったなと漏らすエルマの一言も笑える。
ところが、当のルーチェはそれどころではない。こんな高額アイテムを持って帰ったらバチが当たったりしませんか、と震え出し、「置いていった方が良かったりしませんか」と言い出す始末。ちょっとだけ置いてきますと走り出すルーチェを、エルマが必死に止める。2800万ゴルドの重みに負けて錯乱するルーチェの顔芸と動きが、今回いちばん賑やかな場面だった。
冒険者の都ラコリナのギルドで
存在進化を伝えるために
坑道を出てギルドに戻っても、ルーチェの挙動不審は止まらない。百足坑道であんなに稼いだんですもん、と言うルーチェをなだめつつ、エルマは受付で魔石の換金を頼み、できればギルド長と話がしたいと切り出す。「とんでもないことが起きてるかもしれない」。今回の目的は換金だけではなかった。
マスターの存在進化は、多くの犠牲者が出ていなければ本来は起き得ないものだったはず。そんな大惨事が起きていれば、ギルドで情報共有されていないのはおかしい。だからこそ、ギルドにしっかりと伝えておかなければならない。前回のラストでエルマが決めたことが、ここでそのまま行動になっている。
けれど、受付の職員の反応は冷たい。D級冒険者の重騎士と道化師がですか、上には私から適当に伝えます、後がつかえているので手短に。そんな言い方しなくてもいいじゃないですかとむっとするルーチェに、ここは冒険者の都ラコリナですよ、と職員は胸を張る。ギルド職員も高名な冒険者を輩出してきた自負がある、という言い分に、この都市の空気がよく出ていた。
田舎冒険者扱いと1000万ゴルドの換金
エルマはルーチェを制し、「俺に任せてくれ」と前に出る。冒険者の都の民は自分の都市に誇りを持っていてプライドが高い。この都市を治める公爵家もプライドが高く、底意地が悪いクセ者だと、父アイザスから愚痴を聞かされていた。エドヴァン家で育ったエルマの知識が、ここでは魔物の情報ではなく人の情報として生きている。
失礼に受け取られたのであれば謝罪する、だがまずあなたを説得する時間をもらいたい。今回の事件は複雑で、人づてに説明して簡単なこととして処理されるのを恐れている。エルマは丁寧に頼むが、職員は田舎の冒険者にギルド長を気軽に呼びつけられては気分が良くないと突っぱねる。田舎と言われて、ロンダルムもエドヴァン伯爵領もそこまで田舎ではないと思うんだが、と内心で反論するエルマがおかしい。
そこでエルマが出したのが、百足坑道の魔石だった。「先にこっちを出すべきだったな」。全部で1000万ゴルド近い魔石の山に、職員の態度が一変する。1000万ゴルドを一括ですぐ欲しいと言っている冒険者がいる、ランクはD級です、と奥へ駆けていく様子に、肩書きより実物がものを言う世界だと改めて感じた。
D級冒険者があれだけの量の魔石を一括で換金しようとすると、ややこしい手続きが必要になるらしい。それでも受付の職員が押し進めてくれたおかげで換金は終わり、その間にギルド長へのアポも取ってくれていた。忙しい人物と聞いていたのに、すぐ会えるという。冷たかった職員が、最後は話を通してくれる側に回っている。
ギルド長ハレインとの対面
何もかも見透かす観察眼
ところが、通された先では、そのような要件は聞いていないという言葉が返ってくる。何か手違いがあったようで、と頭を下げる場面があり、まあ話ができるのなら構わないと話は進む。歓迎されているのか、いないのか。入室した瞬間から、二人は道化師と重騎士という珍しい組み合わせとして値踏みされていく。
ロンダルムから来たばかりのD級冒険者が、レベル60の百足坑道を攻略した。どちらもマスターの攻略にはかなり不利なクラスのはずなのに。「面白いな」、少し興味が湧いた、とハレイン。話を聞き流されずに済みそうだと安堵しつつ、エルマはこの人の観察眼が尋常ではないことに気づく。心を見透かされそうで不安になる、という独白が、そのまま視聴者の緊張になっていた。
実績を積まぬうちから上を目指す死にたがりか、そうでなければクラスやダンジョンの情報によほど自信があったのか。物おじしない堂々とした態度、気品のある顔立ち、ダンジョンへの詳しさから、貴族の人間かとまで言い当てる。前情報を少し聞いただけで、こちらのことがどんどん見透かされていく。ルーチェの表情からも答えが読まれてしまうのが怖い。
エルマの心の声は「ルーチェは素直すぎる」、腹芸は無理だ。観念したエルマは、自分はエルマ、こちらの彼女はルーチェ、ロンダルム出身の冒険者だと名乗り、百足坑道で異様な状況に見舞われたので直接報告したくて面会を希望したと伝える。気になることはあるが追及しないでおいてやろう、と受け流すハレインの余裕が、かえって底知れない。
黒幕は誰なのかという疑い
ハレインはラコリナのギルド長であり、この都市を治める公爵家の分家筋の人間だと明かす。冒険者の都ではギルドが他の都市以上に大きな意味を持つため、分家筋の人間をギルド長に据えて、ギルドと貴族家が円滑に連携できるようにしているらしい。マスターのロックセンチピードは巨体からの突進と自動回復の速さが厄介で、重騎士も道化師もそれに対する決定打を持たないはず。そこまで把握しているハレインに、エルマは警戒を強める。
「ハレインはこの世界に詳しすぎる」。隙を見せれば、エルマがこの世界の外の情報を持っていることにまでたどり着きそうだ。父アイザスやエドヴァン伯爵家とは比べ物にならないほどの情報を持っている。そして何より危惧しているのは、存在進化の条件を満たしていた黒幕が、公爵家の仕業ではないかということ。ギルドの頭目なら冒険者の誘導も情報統制も容易で、領地の統治のためにこの世界の法則を知る実験をしているとも考えられる。
安易に決めつけるべきではないが、今はかなり慎重に動かなければならない。目の前の人物が存在進化の元凶かもしれないという緊張の中で、ハレインは、考え事をしているようだがどうした、異常事態というのは真っ赤な嘘で、関心を引いて取り入ろうという魂胆だったかと揺さぶってくる。報告に来たはずのエルマが、いつのまにか試される側に回っていた。
第17話のまとめ考察
夢と挫折の都のギルド長
ここは万の冒険者が集まり、その上澄みだけが成功を積み重ねていく「夢と挫折の都」。突出した才能を持つというだけでは、ここでは珍しくもない。少しは遊びに付き合ってやろうと思える程度には関心を持った、と言ったうえで、ハレインは釘を刺す。「私を手玉に取れると思わんほうがいいぞ」。
それは言葉どおりの意味なのか、こちらの考えを見越した上での遠回しな警告なのか。「あまりに彼女の底が見えない」というエルマの独白で、第17話は幕を閉じる。存在進化の報告という本題にはまだたどり着いていないが、そのぶん、ハレインという人物の大きさがじっくり描かれた。サブタイトルどおり、ギルド長ハレインを見せるための一話だったと思う。
振り返ると、第17話は力で押し切る話ではなく、相手の出方を読み合う話だった。デスアームドを一撃で倒したエルマでも、言葉の駆け引きでは簡単に主導権を握れない。ゲーム知識で魔物には先回りできても、人の思惑までは読み切れない。情報を持つ者同士の駆け引きという新しい緊張が、ラコリナ編の面白さになっていきそうだ。
一方で、2800万ゴルドの小刀に錯乱するルーチェや、魔石の山で態度を変える受付の職員など、コミカルな場面もたっぷりあった。重い戦いと重い会話の間に挟まる、こうした軽さがこの作品らしい。毒ムカデの小刀を手にしたルーチェが、これからの戦いでどう活躍するのかも楽しみにしたい。




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