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『冰剣の魔術師が世界を統べるII』第3話は、レイの実家で続くアリアーヌの特訓と、レイとアメリアをチームに誘った本当の理由が語られる回だった。強さを求めるアリアーヌの胸の内に、初めて深く触れた一話でもある。嫉妬する自分を打ち明けるアリアーヌ、リーゼロッテの意外な正体、そしてマギクス・ウォーの開幕と決勝まで、駆け足で進んだ第3話を場面ごとに振り返っていく。




第3話 エインズワース式ブートキャンプの日々
『冰剣の魔術師が世界を統べるII』第3話は、レイの実家で続くアリアーヌの特訓から始まり、リーゼロッテのもとでのアメリアの訓練の終わり、そして大規模魔術戦マギクス・ウォーの開幕までを一気に駆け抜ける回だった。レイへの気持ちに気づき始めたアリアーヌが、なぜレイとアメリアをチームに誘ったのか。その理由が語られる夜の場面を中心に、場面ごとに振り返っていく。
キラキラして見えるレイ
早朝の点呼から、アリアーヌ訓練兵の一日が始まる。気を抜くんじゃない、この場では即死につながるぞ、とマスター・ホワイト・ブラックの声が飛ぶなか、アリアーヌはいつもよりレイがキラキラして見えると戸惑っている。熱があるのかと心配されて、私は今日も元気ですわと胸を張るものの、どう見ても様子がおかしい。
複数名による遊撃戦に備えて、常に周囲に気を張れ、できなければ死が待っていると思え、と厳しい指導は続く。それでも、ふとした瞬間にレイを意識してしまい、熱かと聞かれて大丈夫ですわと返すアリアーヌ。厳しい訓練と、どうしようもない胸の高鳴りが同じ画面に並んでいるのが、この回のアリアーヌらしさだった。返事はもちろん「レンジャー」。
前回、レイの母に応援されて胸のドキドキに戸惑っていたアリアーヌは、今回はもう隠しきれないほどレイを意識している。訓練中は仮面のマスター・ホワイト・ブラック、それ以外の時間は優しいレイ。その落差に振り回される姿は、恋を自覚したばかりの少女そのもので、厳しい訓練の場面に柔らかな空気を足していた。
兄妹から逃げ切った二日間
訓練の相手は、レイと妹のステラの兄妹。声を出す必要はない、相手に気づかれるだけだ、と注意されたステラが、楽しくてついと笑う姿はかわいらしい。さすが我が妹、と思わず頭をなでたくなるレイの兄ぶりにも、ステラへの愛情がにじむ。そして日が暮れるころ、アリアーヌは二人から1時間も逃げ切ってみせた。
本気で死ぬかと思いましたわ、と言いながらも、ここで負けては乙女が廃ると踏ん張ったアリアーヌ。私は強くなれているでしょうかという問いに、レイは迷わず答える。たった二日で俺たち兄妹をかわし切ったんだ、「確実に君は成長している」。冷えるぞと気づかうレイに、ありがとうですわと返すやりとりにも、二人の距離が少しずつ近づいているのが見える。
1期から見てきたアリアーヌは、学院のトップとして誰よりも凛とした姿を見せてきた人物だ。そのアリアーヌが、本気で死ぬかと思ったと素直に口にし、強くなれているかとレイに尋ねる。弱音と向上心を同時に見せられる相手がレイなのだと思うと、この二日間の特訓は体を鍛える以上の意味を持っていたように感じた。
アメリアへの嫉妬
その夜、あっさり背後を取られてしまったアリアーヌは、ちゃんと話せていなかったことを打ち明ける。私がレイを誘ったわけ。レイとアメリアと3人で共に戦ってみたい。そして何より、「私自身を変えたいのです」。貴族としての在り方に迷い、アメリアの模範であろうとして、誰にも弱さを見せずに強くあろうとしてきた。それがアメリアのため、友人としての使命だと思っていた。
けれど、アメリアの才能は自分よりずっとすさまじいものだった。慢心していたのだと思い知らされ、彼女の才能に嫉妬している自分を、どうしようもなくちっぽけな存在だと感じてしまう。アメリアを変えたのは、アメリアの心を救ったのはレイ。だから、レイについていけば自分も変われるかもしれない。本当に身勝手ですわねと自分を責めるアリアーヌの告白は、いつも堂々としている彼女だからこそ胸に刺さった。
三大貴族の令嬢として、友人として、ライバルとして。アリアーヌが背負ってきたものは一つではない。だからこそ、嫉妬という感情を自分の中に見つけたとき、それを恥ずかしいものとして押し込めてしまったのだろう。レイを誘った理由が恋心だけではなかったと明かされたことで、アリアーヌという人物の奥行きがぐっと深まった。
そのままでいい
そんなアリアーヌに、レイはそのままでいいと語りかける。「人に嫉妬する気持ちは別に恥ずかしいものではない」。平和に暮らしている人をうらやんだり、自分がどうしようもなく嫌になる時は俺にだってある。「そんな時こそ誰かを頼っていいんだ」。最強の魔術師であるレイが、自分の弱さも含めて肯定してくれる言葉は、アリアーヌにとって何よりの救いだったはずだ。
ありがとうございますと答えたアリアーヌは、部屋に戻るまで、と小さなお願いを口にする。構わないさ、明日も頑張ろうと受け止めるレイ。気持ちを自覚したばかりのアリアーヌのささやかな一歩が、とても初々しい。強さを求める理由と、レイへの想い。その両方が、この夜の会話で一つにつながっていた。
それぞれの特訓の終わり
リーゼロッテの正体と最後の教え
一方、アメリアはリーゼロッテのもとで訓練を続けていた。アメリアが読んでいたのは、レイの影響でハマったというルナエテルの恋愛小説。リーゼロッテは「まだ市場に出てない新刊だよ」と一冊を差し出し、正体不明の謎の恋愛小説家ルナ・エテルは「私だよ」と明かす。虚構の魔術師らしい、なんとも人を食った正体の明かし方だった。
バタフライエフェクトはかなり良くなった、もうここへは来なくていい。最低限のことは教えた、「あとは君次第だ」。「レイ・ホワイトへの借りもこれで返せた」と言うリーゼロッテに、アメリアはレイとの関係を尋ねる。恋人だよ、嘘だよ、と冗談でからかい、君との婚約も認められるんじゃないかとまで言われたアメリアの慌てぶりには、思わず笑ってしまった。
リーゼロッテは、アメリアがバタフライエフェクトを発現させたのはやはり必然だったのかもしれない、とも口にしていた。前回、強すぎる魔術は使用者を殺すと語っていたリーゼロッテが、最低限のことは教えたと送り出す。七大魔術師が認めたアメリアの才能が、大会でどう花開くのかにも注目したい。
最終訓練と胸の薔薇
アリアーヌの14日間にわたる訓練も、ついに最終日を迎える。最終訓練では魔術の使用が解禁され、アリアーヌはシスター・ホワイト・グレーことステラとチームを組む。ドグマの森の奥深くで待つマスター・ホワイト・ブラックから告げられた条件は、「我が胸の薔薇を散らしてみせろ」。全力をぶつける最後の試験だ。
変わり身に翻弄され、ステラが押し込まれても、アリアーヌは最後まで食らいつく。見事だと認められ、エインズワース式ブートキャンプのサバイバル訓練は完了。二人の兄妹から逃げるだけだったアリアーヌが、自分から勝ちを取りにいった。それだけで、この14日間の重みが伝わってくる。
最終訓練でステラと組むという形も、この特訓の締めくくりにふさわしかった。これまでは二人から逃げる側だったアリアーヌが、今度はステラと並んで仮面のレイに挑む。押し込まれたステラの名前を叫び、自分が決めるしかない場面で踏み出す。誰かと共に戦うことは、まさにアリアーヌがレイとアメリアを誘った理由そのものだった。
別れの場面では、ステラが「お兄ちゃん、私絶対応援行くからね」と手を振り、レイの母も寂しくなるわと見送る。ほかにも、森ではレベッカを慕う二人が不思議な格好でステラと出くわし、かっこいいと言われる一幕も。コミカルな寄り道が、大会前の穏やかな時間を作っていた。
第3話のまとめ考察
マギクス・ウォー開幕
そして、ついに初開催となるマギクス・ウォーの予選が始まる。会場は満員の熱狂に包まれ、観客席にはステラやレイの母、師匠のリディア、リーゼロッテ、フランの姿も。王族席にいるはずのオリヴィア第二王女は、あんな堅苦しいところにいたらレイを応援できないと抜け出してくる。解説はキャロライン先生で、実況とのかけ合いもにぎやかだった。
ルールは、国境付近の古城を舞台に、3人1組のチームで城内の5か所を取り合い、制限時間内により多くを占有したチームの勝ち。充填には決まった時間がかかり、充填する人はその間無防備になる。戦闘力だけではない、守りと攻めの役割分担が問われる戦いだ。レイたちの快進撃に、レイってあんなに強かったんだね、と驚く声が上がる。
観客席から上がる「新時代の扉が今開くぞ」という叫びとともに、大会はあっという間に決勝へ。優勝を争うのは、レイ率いるチームオルグレンと、マギクス・シュヴァリエの優勝者ルーカス率いるチームフォルスト。開始早々にレイとルーカスが切り結び、その先で待っていたのはエヴィとアルバートだった。「やはり来たな」、「待ってたぜ」。
第3話は、アリアーヌの成長の物語でありながら、アメリア、エヴィ、アルバートたちがそれぞれの場所で積み重ねてきた時間が一つの舞台に集まる回でもあった。予選から決勝までを短い時間で駆け抜けたぶん、決勝の対決への期待が一気に高まる。特訓の日々で強くなった彼らが、どんな戦いを見せてくれるのか楽しみだ。
観客席の顔ぶれも見どころだった。レベッカは、貴族席は舞台から遠いからと最前列に陣取り、色々と見極めねばなりませんしと意味深につぶやく。レイの母は、あのアメリアって子がアリアーヌちゃんのライバルなのね、と興味津々。そして抜け出してきたオリヴィアは、ステラと仲良くしようと約束を交わす。大会の外側でも、それぞれの物語が動き出しているのが楽しい。
なかでも心に残ったのは、やはりアリアーヌの夜の告白だった。嫉妬する自分を責めるアリアーヌに、そのままでいい、誰かを頼っていいと返したレイ。強くなるために誰かを頼ることを、最強の魔術師が肯定する。その言葉があったからこそ、アリアーヌは最終訓練で自分から勝ちを取りにいけたのだと思う。仲間と共に勝ち上がっていくチームオルグレンの戦いを、決勝でもしっかり見届けたい。




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