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『うちの弟どもがすみません』第16話「悩める成田きょうだい」は、源に振られた糸が、柊に誘われてeスポーツ部に入るところから始まる回だった。気まずい源との距離と、それぞれのきょうだいの戸惑いが重なっていく。友達に恋だと言われる源、忘れなくていいと気づく糸の初恋、そして糸の恋を知ってしまった柊まで、場面ごとに一つずつ振り返っていく。




第16話 失恋のあとの新しい一歩
『うちの弟どもがすみません』第16話「悩める成田きょうだい」は、源に振られて胸に穴が空いたままの糸が、柊に誘われてeスポーツ部に入るところから始まる回だった。ぎこちない源との距離、源自身の戸惑い、そして糸の恋を知ってしまった柊。成田家のきょうだいそれぞれの悩みが重なっていく。場面ごとに振り返っていく。
胸に空いた穴
「恋を失うと書いて 失恋」。あの日から、胸のあたりに大きな穴がぽっかり開いている気分。そんな糸に、柊が一緒に部活に入らないかと声をかける。受験生だし、家事もあるし、勉強にも自信がない。ためらう糸に、なんでそんなに誘ってくれるのか、一人じゃ心細いからかと聞かれた柊は、ちょっとあるけど、と認めながらこう続ける。「お姉ちゃんに楽しいことが増えるといいなって」。
いつも糸に支えられてきた柊が、今度は糸のために動こうとしている。弟が姉を気づかう側に回るという構図が、この回の柊のあり方を最初から示していた。そこまで言ってくれるなら、と糸はちょっとだけ試してみることにする。
eスポーツ部に入部
体験入部のつもりが、始めてみれば「すっごい楽しい」。あんなノリノリで、と言われるほどの熱中ぶりで、そのまま入部が決まる。悩んでいたのがアホらしくなるくらい楽しかった、誘ってくれてありがとう、と柊に感謝する糸。
そして糸は心に決める。「過去はもう徹底的に振り返らない」、「自分を変えられるのは自分だけだ」、「この失恋を乗り越えて強くなるんだ」。失恋の痛みを抱えたまま、それでも前を向こうとする糸らしい決意だった。
部室で女子は自分一人だったという高梨は、女子トークできる相手ができて嬉しいと大はしゃぎ。彼氏はいるんですかと早口で聞かれ、彼氏はいないけどちょっとした恋なら、と言いかける糸の姿に、まだ消えない気持ちがのぞいていた。高梨の明るさに押されるように部室になじんでいく糸を見ていると、柊の誘いが正しかったことがよく分かる。家と学校以外に、糸が素の自分でいられる場所ができたのは大きい。
頑張れの一言
ところが、朝の食卓で源は、要はゲームだろ、やりすぎて頭パーになっても知らねえぞと突き放す。心配してくれてるんだよね、勉強もするって決めてるから大丈夫、と返す糸に、三日坊主にならなきゃいいけどな、とさらに一言。糸は言い返す。「こういうとき 頑張れの一言があっても いいんじゃないかな」。
しぶしぶ出てきたのは「せいぜい頑張れば」。素直になれない源と、気まずさを振り払おうとする糸。どちらも悪くないのに、かみ合わない二人のやりとりがもどかしい。
源の戸惑いと謝罪のカレー
ゲンは恋をしてるんだね
学校では、朝から元気のない源を友達が心配する。なんでかどうでもいいことまでいちいち気になる、今頃になってあいつの考えていることが全然分からない。そう漏らす源に、友達はあっさりと言う。「ゲンは恋をしてるんだね」。相手の前だと思い通りにできない、急に相手のことが分からなくなった、「今まで見なかったところまで見ようとしてるからだよね」。
違うし、家族だって出会って一年かそこらだぞ、と否定する源だが、突き放す気にはならないし、どこまで優しくしていいかも分からないという言葉は、どう聞いても恋の悩みそのものだった。本人だけが気づいていない変化を、周りのほうが先に見抜いている構図がおもしろい。まあとりあえず見守っといてあげようよ、という友達の締めくくりも、源のことをよく分かっている人の言葉だった。
柊の知らない自分
一方、部活での柊も、自分の気持ちに戸惑っていた。同じ部活にまで入ってくれるなんて、もしかして自分のことを頼りにし始めてくれているのでは。そう考えて、なんて暴走をしているんだと我に返る。「お姉ちゃんといるとどんどん知らない自分になってくみたいだ」。自分が頑張っているところをずっとそばで見ていてほしい、というのは、わがまますぎるだろうか。
前回、お姉ちゃんを泣かせるやつは俺が絶対に許さないと心の中で誓った柊。その思いが、少しずつ形を変えていくのが見えた場面だった。姉を守りたい弟の気持ちと、それだけでは説明できない感情が、柊の中で同居し始めている。
謝罪のカレー
その夜の食卓に並んだのは、源の特製カレー。何のためのカレーかと聞かれて、「カレーの王様甘口だよ」と返す源に、いよいよ訳が分からないと首をかしげる糸。台所で二人きりになると、源はぽつりと謝る。今朝のことも、ここのところ当たりがきつかったことも、一人でムカついていただけだ、と。
知らない部活に急に入るし、あからさまに距離を取ろうとしているのが、なんか。別に寂しくて拗ねているわけじゃない、いつもと違うことをされると罪悪感というか、「とにかく普通でいて欲しいっつーか」。謝罪のためのカレーだったと気づいた糸は、ほんとゲンって注文多いよね、人のこと振っといて、と笑う。
そして、ちゃんと忘れる気満々だと言う糸に、源は言う。お前の気持ちをどうするかを決めるのは自分しかいないだろう。答えられないのに好きと思われているのは迷惑じゃないのか、と聞く糸に、「別にそのくらい受け止めるわ」、「長男なめんな」。「私忘れなくていいんだ」。届かなかった恋は消さなければいけないと思っていたけれど、「この気持ちは」、「私だけのものにしておけば」、「それでいいんだ」。この回でいちばん心に残った場面だった。振った側の源が、振られた側の気持ちを否定せずに受け止める。その不器用な優しさが、二人の関係を気まずさから救っていた。
柊に知られた恋
100万積まれても
ところが、その会話を柊が聞いてしまっていた。お姉ちゃんが源のことで頭がいっぱいだとか、と言われて慌てる糸。源は、忘れろ、俺たちは何にもならねえし、これからもなる予定もねえ、「100万積まれたって絶対にねえ」とまで言い切る。そこまで言うことないじゃない、と糸が抗議するのも当然だった。
翌日、気まずさで頭がいっぱいの糸は、柊にどう思われたかを想像して勝手に落ち込む。三次元に恋しちゃう人だったんだ、お姉ちゃんも所詮は俗物だったんだ、と思われているに違いない、と。糸の想像の中の柊があまりにもひどくて、思わず笑ってしまった。
堂々としときゃいい
調理実習では、ウインナーをタコにして見せる余裕を見せたものの、上の空で指を切ってしまう糸。何気を抜いてんだよ、と源は保健室へ引っ張っていく。どうせ昨日のことを思い出して一人でぐるぐる考えていたんだろう、と言う源は、柊に知られたからって何なんだ、「悪いことしたわけじゃねえんだし」、「堂々としときゃいいんだよ」と励ます。
そりゃ源は聞かれても大した痛手はないよね、と言い返す糸に、絶対あるわ、死ぬほど恥ずかしいセリフを身内に聞かれたんだぞ、と源。家族の前で振られ散らかされて立っているのがやっとだという糸の嘆きも含めて、どちらも恥ずかしさを抱えているのが、二人らしくて微笑ましい。保健室まで引っ張っていく源の強引さも、気まずさを振り払うための源なりの気づかいに見えた。
第16話のまとめ考察
柊の応援
指のけがを心配した柊は、源の言っていたことは気にしなくていいと思う、源はただ照れていただけじゃないか、と言い出す。照れてないです、ガチで振られたんです、と全力で否定する糸に、柊は「義理家族でラブコメは割と鉄板的にあるものだから」と漫画の話を持ち出す。この弟たちはいつも予想をはるかに超えてくる、という糸の心の声がおかしい。
気晴らしに行こう、と柊が糸を連れ出したのはゲームセンター。柊が生き生きしているのを見ると癒やされる、と言う糸に、こういうところしか連れてきてあげられないと落ち込む柊。けれど糸は言う。辛いときは一人になりたかったりもするけれど、「そばに誰かがいてくれるってだけで」、「安心だったりもするじゃん」。今日は柊がいつもと変わらずそばにいてくれたことで救われた、と。
帰り際のプリクラで、柊は思い切って伝える。俺めちゃくちゃ応援するよ、まだやれることはあるかもしれない、「諦めるなんてらしくないよ」。源からまず女子として見られていないから、と言う糸に、柊はまっすぐに、そんなことはない、自分の中では出会ったときからお姉ちゃんは女の子だった、と言い切る。どうしてそんなにまっすぐ見つめてくるの、と戸惑う糸の表情で、第16話は幕を閉じる。前回、俺じゃダメかなとつぶやいた柊の言葉が、ここで一段深い意味を帯びて響いてくる。
振り返ると、第16話は糸の失恋を、それぞれのきょうだいがどう受け止めるかを描いた回だった。源は自分でも気づかない変化に戸惑いながら、受け止めるわと言い切る。柊は姉を応援すると言いながら、自分の中の知らない感情に揺れている。同じ糸の恋をめぐって、二人の弟の気持ちが交差し始めた。
忘れなくていい、自分だけのものにしておけばいい、と糸が自分の初恋を抱え直したことも大きい。失恋を乗り越えるとは、気持ちを消すことではなく、持ったまま前に進むことなのだと、この回は教えてくれる。
源の友達に恋だと言われた源の戸惑い、そして柊の告白にも近い一言。成田家の関係は、ここからさらに複雑に、そして温かく変わっていきそうだ。きょうだいそれぞれの悩みがどこへ向かうのか、楽しみに見届けたい。eスポーツ部という新しい居場所で、糸がどんな表情を見せてくれるのかにも注目したい。
誰か一人の恋が家族全体の空気を変えてしまうのは、一つ屋根の下で暮らすきょうだいならではの難しさでもある。それでも成田家の面々は、それぞれのやり方で糸を支えようとしていた。その不器用な優しさこそが、この作品のいちばんの魅力なのだと思う。次の話で、源と柊がそれぞれの気持ちにどう向き合っていくのかも楽しみにしたい。




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