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第2期第6話のサブタイトルは「あなた、この仕事向いてないわよ」。京都でエンジニア候補の闇森響と顔を合わせたマジルミエだったが、腕は確かでも、人に合わせる気がまるでない。その一方で、塔ノ森神社の祭りの主役である怪異を今の形にしたのが、ほかならぬ闇森自身の仕事だったことが分かってくる。そして祭りが始まった夜、重本が講演を中断してまで追いかけた相手が、この回の最後に置かれた。




それならなんでうちに応募を?
作業中なんで、長引くと困るんすけど
冒頭で、京都行きの経緯が短く整理される。「京都の学校から講演依頼があってな。目星をつけた人材も京都に住んでいるようだ。講演ついでに面談ができるだろう」。翠川がすかさず「臨時予算を計上します」と乗るのがこの会社らしい。
そして前回のラストの続きから、闇森響との初対面が始まる。神社の魔法陣をいじりながら「やっぱ魔法陣の出力ゲージいかれてるっしょ」と話す横で、重本が「うちの新人エンジニア候補」「そうだな、履歴書通りだ」と紹介する。闇森の反応は「ああ、明日19時っすね」「はい、どうも」と事務的で、続けて「んで、わざわざ事前になんすか。作業中なんで、長引くと困るんすけど」。
大学の様子を心配されると、返ってきたのがこれだった。「ぶっちゃけ俺、コードが得意で、中坊の時から企業の案件いろいろ引き受けてるんすよ。勉強は金になんねえし」、そして「社風合わねえなら、応募取り下げてもかまわねっすよ」。槙野が「な、なんて無責任な」と絶句すると、「合わねえ職場なら、事前に断んのが責任ってもんっしょ」と理屈で返してくる。去り際の「面接なしにすんなら今日中に連絡よろっす」まで一貫していた。
放送前から身構えていたが、初対面の数分でここまで印象を悪くする新キャラも珍しい。残された側の「でも、それならなんでうちに応募を?」という疑問が、そのまま今回の芯になっている。ここまで断る前提で振る舞う人間が、なぜ自分から応募したのか。
誰のために教魔大行った思てんねや
闇森が去る前に、幼馴染との口論が入る。サカヱの言い分は保護者そのものだった。「相手の会社さんに失礼やろ」、そして「響ちゃんの学力なら、教魔大よりいいとこ行けたんやない?」、「どこにでも行けたのに、受けたん教魔大だけやったやん。なんで能力あるのに無駄にするん?」。
そこで闇森の口調が変わる。普段の砕けた喋りから地の関西弁になって、「ねえ、どっちがアホや」、そして「誰のために教魔大行った思てんねや」。★進学先を選んだ理由が、目の前の相手だったことを本人の口から言ってしまっている。それでもサカヱには通じないまま、話は流れてしまう。
客に謝るサカヱの説明も印象的だった。「たしかに響ちゃんは優秀で、顔も頭もええですけど」と褒めたうえで、「でも、なんや、いつも追い詰められてるようなとこがあって」。一番近くで見てきた人間の見立てが、この一言に入っている。
女子の方が恋愛に鈍いパターン、という整理に笑ってしまった。あれだけ直球で言っても届かないのだから救いがない。ちなみに重本の裁定は冷静で、「作業中に声をかけたのはこちら」「先ほどのは質疑の場ではない」「面接は予定どおり行う」、そのうえで「槙野くんの指摘も正しい。気に病むな」と両方を立てていた。
坊ちゃんおってこその塔ノ森神社なんやから
うちの第一代目にあたる巫女が封印しはりました
翌日の面接は祭りのあとだと分かり、話は塔ノ森神社の伝統へ移る。サカヱの説明はこうだった。「その昔、よう面倒を起こす狼がおりまして。このあたりに現れては、家を焼いたり、川を氾濫さしたり」、「現れるたびに頭の数は増えよるし、被害もひどなって、もう大変で」。そして「うちの第一代目にあたる巫女が封印しはりました」。
祭りの中身は、その封印の再現である。「それを28代の巫女が再現してみせるんが、塔ノ森のお祭りです」。だから当日に向けて「塔ノ森神社全体の結界を強化せなあかん」という話になり、闇森が出力ゲージをいじっていた理由もここで繋がる。
伝承の再現がそのまま神事になっている、という設定が良い。魔法少女の源流が巫女だという第2期の前提が、ここで具体的な行事として画面に出てきたことになる。祭りの準備という日常業務の中に、この作品の世界観の根っこが埋まっていた。
うちの相棒、炎の乙型怪異
そして祭りの主役が出てくる。取り出されたのは怪異を封じたUSBで、サカヱの紹介が「この中にうちの相棒、炎の乙型怪異・坊ちゃんがおるんです」。「祭事ではこの子にも働いてもらいます」と、完全に同僚扱いだった。
当然マジルミエ側は引っかかる。元魔総研の赤坂が「怪異のUSBは回収の対象となっていたはずですわ」と指摘し、「魔総研も怪異を研究のために保持していますが、それは厳重な管理のもとですし。由緒正しい伝承とはいえ、神社では管理システムに不安が」と続ける。重本は「例外として、保持が認められる場合がある。塔ノ森もその一つだろう」と受けた。
呼び出された坊ちゃんの姿を見て、赤坂の見立てが変わる。「おそらく、乙型の初期ですわ」、「まだ自然現象の延長線上だった甲型怪異、そこから乙型に変異したという初期怪異についての記述によく似ていますわ」。サカヱの答えが決定的だった。「坊ちゃんは塔ノ森の初代巫女が封印した伝説の怪異そのものです」。
怪異をこういう形で使っているのが面白い、という感想がそのまま出た場面だった。退治する対象でしかなかったものが、御祭神として祀られ、相棒として名前で呼ばれている。しかも封印されたのが伝承の当人なのだから、神社の歴史と怪異の歴史が同じ一本の線になっている。
今、坊ちゃんがこうしておられんのは響ちゃんのおかげなんや
退治してしまうのは絶対嫌やった
サカヱが語る歴史が重い。坊ちゃんは祠の魔法陣に収められたまま、初代から28代まで受け継がれてきた。外に出すのは「怪異に変異や異常はないか、年に一遍確認するため」だけで、しかも「今みたいに大勢の人に見てもらえる安全な環境やなくて、坊ちゃんも巫女も命がけの神事やった」。「そもそも坊ちゃんっていう名前もなかったんやけど」という一言が効いている。
完全に退治する案もあったのかと聞かれ、答えが返る。「神社の記録によればそういう話もあったみたいですね。でもうちも退治してしまうのは絶対嫌やった」、そして「塔ノ森の御祭神でもあるんや。坊ちゃんおってこその塔ノ森神社なんやから」。そのうえで置かれたのが今回いちばん大事な一行だった。「それを叶えさしてくれたんが響ちゃんやって。今、坊ちゃんがこうしておられんのは響ちゃんのおかげなんや」。
やったことの説明も添えられる。「詳しいことは何遍聞いても分からへんかったんやけど、要は怪異の敵意を減らして、こっちの言うことを聞いてもらえるようにしたんです」。重本の評価が「こうも目の前で見せられては否定はできないな。だがそれには、かなり複雑なプログラムが必要になる」で、サカヱが「あん時は一年近くかけとったなぁ」と付け足した。
初対面での印象の悪さが、ここで完全にひっくり返る。幼馴染が神社を諦めずに済んだのは、この男が一年近くかけて怪異の性質そのものを書き換えたからだった。しかも本人はその場にいない。
古代の魔法を内容ごと蘇らせてるんですよ
オタク組の反応が最高だった。坊ちゃんが伝説の怪異そのものだと聞かされた瞬間に「歴史的価値! 研究実験対象!」と叫び、越谷から「落ち着け、オタク組」と止められる。「なんでそんな古い怪異がUSBに?」という疑問には、越谷が「フロッピーに入れてたやつ、移したんじゃね?」と真顔で答え、「時代設定に齟齬がありますよ」と即座に却下されていた。
カナと二子山の食いつきはさらに具体的だった。「怪異の魔力値や特性を調整しただけでなく、古代の魔法陣のアナログ技術を現代の納品形式に変換したってことですよね?」、「古代の魔法を内容ごと蘇らせてるんですよ! 時間もスキルも執念も必要です」。そして「いいエンジニアですよ絶対!」と断言する。★昨日あれだけ失礼な態度を取られた相手を、仕事の中身だけ見て評価している。
古の技術に興奮するオタク組に笑った、という感想が的確だった。この二人は相手の人柄をいったん括弧に入れて、成果物だけを見る。越谷のフロッピー発言に世代を感じる声も出ていたが、その一言で場が緩むのも含めて、この会社の空気がよく出ていた。
あなた、この仕事向いてないわよ
単なる作業っすよ
褒められた本人の返しが、この回の分かれ目だった。「んなことないっすよ。元々大昔の単純な怪異っすからね」と切り出し、手順を淡々と並べる。「魔法陣のパターン解析して、その逆をかけるプログラミング。順番に流し込んで、奥にいる怪異を抽出してデータ転送するだけっしょ」、結論が「単なる作業っすよ」。
カナが「着眼点はすごくいいと思うけど、普通ここまでできないよ」と食い下がっても、返ってきたのは「結局その程度か」。さらに「仕事ってもっと淡々とやりません?」、「そうやって語れる感覚、正直謎いっすね」、「俺は別にオタクじゃないんで」と続けて、「じゃあ俺、作業すっから」で背を向けてしまう。
技術力は誰も否定していない。否定しているのは本人だけで、自分の一年をただの作業と言い切り、褒めた相手まで一緒に切り捨てている。怪異を仲間にできるプログラムを書いた人間が、その価値をいちばん見ていないというのが、この回のいちばん厄介なところだった。
他者への敬意こそ人間関係の基本でしょ
そこで飛んだのが副題である。槙野の「あなた、この仕事向いてないわよ」、「初対面とはいえ、将来一緒に働くかもしれない人に対して、歩み寄る姿勢もないの」。闇森も引かず「自分の意見述べただけっすよ。意見交換は仕事の基本でしょ」と返し、槙野が「意見交換以前に、他者への敬意こそ人間関係の基本でしょ」で切り返す。
噛み合わないまま応酬は続く。「誰を敬うかは自分で決めますよ」、「そんなんで本当に社会でやっていけると思ってるの?」、そして「俺はスキルを伸ばしたいだけっす。人にあれこれ言われる筋合いありません」。面白いのは、この直後に二子山が「でもやっぱり腕は確かですよ。あの人と働いてみたいです」と言うことだ。★同じ会社の中で評価が真っ二つに割れている。
普通の会社員をやるには厳しそうだ、という見立てはその通りだと思う。ただマジルミエは、人見知りが極まったエンジニアも、コスプレ姿の社長も抱えている会社である。この人を受け入れられるかではなく、この会社ならどう扱うのかという問いのほうが、今後の見どころになりそうだった。
塔ノ森祭り当日の神社は京都でも一番安全や
肉を食ったから大丈夫だ
祭り当日、重本の指示は意外だった。「今日の講演は私一人で行く。君たちは祭りの方を見てきてくれ」、理由が「塔ノ森の神事は色々勉強になるはず」。朝からステーキを食べている姿を越谷に突っ込まれて、「緊張が原因の睡眠不足によるスタミナ欠乏を補うためだ」と真顔で答えるのが良かった。翠川の「リラックスですよ、社長」が優しい。
会場はすでに賑わっていた。「昔はもっと小さいお祭りだったんですって」、「盛り上がるようになったのは、やはり坊ちゃんが間近で見られるようになったからのこと」。★ここでもさらりと、祭りが大きくなった理由が闇森の仕事だったと示される。その本人も結界の最終確認に来ていて、サカヱの詫びを「関係ねえだろ。それより今日のルート、結界確認すっぞ」と切り捨てていた。
この回はサブタイトルからして刺々しいのに、描かれているのは祭りの準備という地味な現場作業ばかりである。怪異と戦う話ではなく、怪異を安全に出すための段取りの話になっているのが新鮮だった。
神社の周囲5キロは怪異の反応はゼロだ
闇森の仕事の中身が、ここで数字とともに出る。祭りでは坊ちゃんを連れて境内を歩くため、そのルートが全部結界の内側に入っている。危ないのかと聞かれたサカヱの答えが「ううん、逆やで。塔ノ森祭り当日の神社は京都でも一番安全や」だった。
説明を振られた闇森は、渋々ながら理屈を並べる。「塔ノ森の怪異は弱体化もしてるし、人に危害は加えない。それでも、軽微な魔力や別の怪異が刺激になる可能性がある。だから半年前から結界を張ってる」。確認結果が「神社の周囲5キロは怪異の反応はゼロだ」で、赤坂の「徹底してますのね」に説得力がある。サカヱが「自己PRの機会、使ったげたんやで」と促していたのも良かった。
半年前から準備していた、という一点だけで人物像が変わる。初対面で「単なる作業」と言い捨てた男が、祭りのために半年かけて結界を維持していた。口の悪さと仕事の丁寧さがまるで釣り合っていない。
これが今に伝わる、いにしえの魔法少女
おのが姿、今こそ現じたまえ
神事が始まる。口上はこうだった。「かつて災いをもたらした怪異ですが、塔ノ森初代巫女によって封印された後は、当社の御祭神となって我々をお守りくださっております」、「いにしえより伝わる故事を神事をもって再現し、平安を祈願するものであります」。
そしてサカヱの祝詞が響く。「地に座し、空に座し、陰と陽の間に座し、みはたらきをなされたまう…おのが姿、今こそ現じたまえ」。そこから変身に入り、被さるのが「これが今に伝わる、いにしえの魔法少女」という一行だった。見ていた側が「社長に見せたい」と繰り返すのも分かる。
演出を担当した方自身が変身シーンの格好よさを挙げていた。会社の制服を着た魔法少女ばかり見てきたあとで、巫女装束の変身を持ってくるのが効いている。同じ職能の千年前の姿、という見せ方になっていた。
彼は本来、塀の中にいるはずだからな
その頃、講演会場では別のことが起きていた。質疑応答が盛り上がりすぎて祭りに間に合わなくなり、翠川への電話で「すまん、思ったより盛り上がりすぎた。質疑応答の終わりが見えん」「面接には間に合わせる。構わず祭りを楽しんでくれ」と伝えていた重本が、途中で質疑を打ち切ってしまう。
理由を聞かれての答えが、この回の引きだった。「知り合いを見かけた」、「知り合いなんて明日でも会えますやろ」と言われても「いや、会えるわけがないのだ」、そして「彼は本来、塀の中にいるはずだからな」。祭りの側では「魔力値変化、結界強度ともに予想範囲内」と順調な報告が上がっているだけに、落差がきつい。
最後のあれはやばい相手っぽい、怪異ではなく人間の犯罪者が相手になるのか、という読みが出ていたが、確かにその匂いがする。結界も魔力値も完璧に管理された夜に、その管理がまったく効かない存在が一人だけ紛れ込んでいる。怪異の出現を丁寧に安全化してきた回の締めとして、これ以上ない置き方だった。
「あなた、この仕事向いてないわよ」まとめと考察
向いていないのは仕事か、それとも
整理すると、この回は同じ人物を二通りの見え方で提示している。初対面での闇森は、約束を軽んじ、他人の敬意を要求せず、褒めてくれた相手まで切り捨てる人間だった。だが仕事の側から見ると、一年近くかけて怪異の敵意を書き換え、半年前から結界を維持し、伝承を安全な祭りに変えた技術者である。同じ一日の中で、この二つが並べて置かれた。
面白いのは、副題の指摘が半分当たっていることだ。槙野が言う通り、この態度では普通の職場は務まらない。だが本人が向いていないのは仕事そのものではなく、自分の仕事に値打ちを認めることのほうだった。★「単なる作業っすよ」と切り捨てた相手は、他人ではなく自分自身である。サカヱの「いつも追い詰められてるようなとこがあって」が、その裏付けになっている。
折り返しを過ぎて残りが半分を切った、という指摘の通り、ここから採用の話は決着に向かうはずである。断る前提で振る舞いながら自分から応募してきた理由だけが、まだ一度も語られていない。面接の場でそこが出るなら、この回はその全部の前振りだったことになる。
怪異を退治しない仕事の話
もう一つ、この回には第2期らしい主題が通っている。塔ノ森が選んだのは、伝説の怪異を退治しないという道だった。「退治してしまうのは絶対嫌やった」という感情を、技術で実現可能にしたのが闇森の仕事である。★怪異を消す仕事しか描いてこなかったこの作品が、怪異を消さずに共存させる仕事を初めて正面から出してきたことになる。
そう考えると、二子山とカナが人柄を脇に置いて「あの人と働いてみたいです」と言ったのも筋が通る。この二人は怪異を退治するためではなく、魔法でできることを増やすために働いている。そこだけは闇森とまっすぐ噛み合っている。槙野との対立と、二子山の期待が同時に成立しているのはそのためだった。
残る宿題は二つになった。一つは面接そのもので、重本が「結論はそのあとでもいいだろう」と言った通り、判断はまだ下されていない。もう一つが「彼は本来、塀の中にいるはずだからな」の相手である。祭りの夜がここまで安全に組み上げられていたぶん、その外側から来る危険がどう入り込むのかが気になって仕方ない。
次で折り返し、という言葉通り、ここまでが助走だったのだと思う。会社を大きくする話と、京都に現れた不穏な人物の話が、同じ京都出張の中で同時に走り出した。採用の結論と、重本が追いかけた相手の正体。次回はどちらも見逃せない。




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