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第6話のサブタイトルは「アシスト」。愛菜の想いに気づいた耕平が、伊織とふたりきりの状況を作ろうと動き回る回だった。ところが恋占いも心理テストも全部同じ結論に着地し、「遠回しに聞け」と頼まれた結果が身も蓋もない直球になる。その裏では、千紗と愛菜が男ふたりが死にかけているという与太話を信じ込み、そこから誰ひとり噛み合わないまま話が転がっていく。




諦めたはずの耕平が、翌朝から動き出す
「本気で好きなことくらい、俺でもわかるっての」の続き
第6話は、前回の締めをそのまま引き継いで始まる。「ったく、本当に馬鹿な奴だ」「本気で好きなことくらい、俺でもわかるっての」。本人にはさんざん否定されて、もう無理かと引き下がったはずの耕平が、翌朝には完全に動く側へ回っている。舞台はパラオの店と寮のまま、今回はほとんど恋愛沙汰と勘違いだけで一話が回っていく。
一方の愛菜も朝から警戒態勢だった。「まさか耕平に勘づかれるなんて」「でも、まだ確信には至っていないはず」「何があっても、知らぬ存ぜぬで押し切らなきゃ」。★この二人が同じ朝に正反対の決意を固めているのが、この回の出発点になる。隠す気満々の側と、暴いて後押しする気満々の側が同居しているので、衝突しないほうがおかしい。
★注目したいのは、耕平が愛菜に一言も相談せずに動き出していることだ。前回あれだけ「勘違いだから」と押し返されたのに、それを真に受けた様子がまったくない。この鈍さと押しの強さが同居しているのが耕平という男で、見ているこちらとしては、始まる前から嫌な予感しかしなかった。
朝食当番も、機材の取り込みも「そういう気分なんだ」
最初の一手は朝食当番だった。「今日の朝食は俺と千紗の番か」と言う伊織に、「待て北原。今朝の飯当番は俺が代わろう」と割って入る。「なんでまた急に」に返したのが「そういう気分なんだ」で、そのまま「行くぞ、古手川」と千紗を連れていってしまう。
続いて午前の仕事の割り振り。室内でできるブログ更新と伝票整理を残して、「俺が機材の取り込みでいい」と炎天下の作業を自分から取る。「外は暑いぞ」と止められても「かまわん、暑さを楽しみたい気分なんだ」で押し切り、極めつけが「俺は作業に集中するから、二時間くらいは絶対に戻ってこないからな」。
★この「二時間」という言い方が今回きれいに効いてくるので、覚えておきたい。誰も頼んでいないのに時間まで宣言していく段取りの良さがあって、「あいつ、熱でもあるのか」と怪しまれるのも当然だった。★やっていること自体はまともなお膳立てなのに、やり方が全部露骨という、耕平のアシストの性質がこの時点でもう出ている。
直球すぎるアシストと、ダイヤの3
「いっそのこと、付き合ってみてもいいんじゃないか」
せっかく作った二人きりの時間に、耕平は戻ってきてしまう。伊織が「悪い、ケバ子。お茶取ってくれ」と頼み、愛菜が「うん、入れるよ」と応じる。たったそれだけのやりとりを見て、「お前ら仲いいの?」「今のやり取り、なんか熟年夫婦みたいだったぞ」と切り込む。
伊織は「普通にお茶もらっただけだが」と取り合わないのだが、耕平はそこで止まらず「これはもういっそのこと、付き合ってみてもいいんじゃないか」まで一気に進んでしまう。★遠回りゼロ。前振りゼロ。本人としては後押ししているつもりなのだろうが、隠したい側からすれば公開処刑でしかない。
当然、愛菜は激怒する。「あれは何」「そう、嫌がらせってわけね」と詰め寄り、「もし仮に、万が一、ありえないけど、私に好きな人がいるとして、あんな不自然な行動とられ」と続ける。そこへ耕平が「ツンデレってことか」と真顔で返すので、返事が「誰かそいつ、山に捨ててきて」になる。★★怒りの矛先が完全に処分の相談に変わっているのが可笑しかった。
「ダイヤの3を引いたあなたは」
次の手が恋占いである。「なあ北原、恋占いは好きか」といきなり切り出し、「何、突然」と引かれても構わずトランプを差し出す。伊織が引いたのはダイヤの3。耕平は「よし、全て分かった」と宣言する。
その結果が伝説級だった。「ダイヤの3を引いたあなたは、身近にいる同年代の田舎出身で、化粧をすると異常にケバくて、ドラマのような恋愛に憧れる女性と結ばれるでしょう」。伊織のツッコミが「しかも、やたら具体的」。★占いの体すら保っていないのだが、★一枚引かせる手順だけは丁寧に踏んでいるのがまた面白い。
この作品のギャグは、「ばれないように仕込む」ではなく「ばれ方が派手」で笑わせにくるタイプだと改めて思う。耕平は隠す努力をしていないのではなく、★隠す努力をしているつもりで全部はみ出している。だからこそ伊織のツッコミが一言で済んでしまうし、その一言の短さがまた笑いになる。
心理テストと、耕平が協力する理由
どの答えを選んでも結論が同じ心理テスト
占いが不発に終わると、次は心理テストが始まる。問題は「あなたは職場の重役が主催する会食に呼ばれました。豪華な料理が並ぶ中に、あなたがとても苦手な料理があります。あなたはどうしますか」。居合わせた愛菜が「私なら我慢して食べちゃうかな」と答え、耕平は「この質問は、どんなタイプの人と相性がいいかが分かるらしい」と場を整える。
ところが伊織の回答が「嫌いなものがないので全く想像できん」。テストが成立しない。ここから耕平の暴走が始まり、「嫌いなもののないお前には、化粧が濃い派手顔の相手が最適だろ」と勝手に結論を出す。
食い下がる伊織が別の答えを挙げても無駄だった。正直に無理と言うなら「正直者のお前には化粧が濃い派手顔の相手がお似合いだ」、少し手をつけて残すなら「何にでも挑戦する勇気のあるお前には化粧が濃い派手顔の相手がグッド」。★★どの選択肢を選んでも到達点が一つしかないという、心理テストの形をした結論の押し売りである。★ここまで来ると清々しく、今回いちばん声を出して笑った場面だった。
「抑えられないほどの強い気持ちってのが理解できるからかもな」
そんな騒ぎのあと、愛菜が耕平に尋ねる。「仮に、あくまで仮によ」と前置きした上で、「どうしてそこまで私に協力するの。別にあんたにメリットなんてないのに」。この回で唯一、二人が正面から向き合う場面だ。
面白いのは、耕平自身が答えを持っていなかったことだ。「確かに」「言われてみれば、その通りだ」「なぜ俺はこんな得のないことを」と本気で考え込み、「何それ、自分でも分かってなかったの」と呆れられる。そのうえで絞り出したのが「まあ強いて言えば、抑えられないほどの強い気持ちってのが、理解できるからかもな」だった。
続けて「お前には黙っていたが、俺も昔はオタクで、強い気持ちを持っていた」「強い情念を持て余していて」と語り出すので、愛菜の返しは「ああ、うん、そうね」。★「昔は」の部分だけが嘘なのを全員が知っているという、優しいツッコミである。★★ただ、ここは笑いの形をしているが中身は真面目で、耕平が愛菜を手伝う理由が同情でも義理でもなく、共感だと明かされている。報われないと分かっていても止まらない気持ちを、この男は身をもって知っている。だから他人事にできない。
受けた愛菜も「このまま放っておいて変なことをされても困るし、ならせめて私の管理下に置いておこう」と方針を変え、「じゃあ、遠回しに質問でもしてきて」と依頼する。★★この時点で愛菜は、耕平を止めるのではなく使う側に回っている。否定し続けていた側が指示を出し始める流れが自然で、うまい持っていき方だった。
ワールドワイドツアーズの杉田と、遠回しの結果
「おばさん、電話です」が通じない
その合間に挟まるのが、店にかかってきた一本の電話だ。受話器の向こうから聞こえてくるのが「ワールドワイドツアーズの杉田と申しますが」。★役名がそのまま声の主の名前になっているという反則気味の配役で、ネットでも真っ先に話題になっていた。
取り次ぎもひと悶着ある。伊織が「おばさん、電話です」「おばさん、電話ですよ」と呼んでも、オーナーの紗耶華はまったく反応しない。呼び方を改めた途端に「何の用だい」と返ってくるので、伊織の「おばさん呼びは嫌なのか」がすべてを物語っていた。
★短い場面だが、この人が身内相手でも一切甘くないことが一往復で分かる。前回までに見せてきた店の顔としての厳しさと同じ物差しが、★親戚付き合いにもそのまま適用されているわけで、この距離感の取り方は後半の千紗の話にもつながっていく。
頼まれた「遠回し」の結果がこれである
そして愛菜からの依頼、「私のことを異性として見られるか、とか」を聞き出す任務に耕平が向かう。本人はきちんと受け止めていて、「わかった。遠回しに聞こう」と宣言までしている。
その結果、伊織に投げられた質問が「ケバ子とやりたいか」だった。遠回しの意味を根本から取り違えている。伊織の「あいつは一体、何がしたいんだ」というつぶやきが、視聴者の気持ちをそのまま代弁していた。
★この一連で分かるのは、耕平は手を抜いているのではなく、全力でやってこうなるということだ。占いも心理テストも遠回しの質問も、段取りは律儀に踏んでいるのに出力だけが常に直球になる。★努力の方向が一度も合っていないのに、努力の量だけは本物なので、腹が立つより先に笑ってしまうのだと思う。
二週間の噂と、哀れみの目
バーベキューの後、片付けながらの雑談から
この回のもう一本の筋は、まったく別のところから始まる。客を招いたバーベキューが終わり、「お客さんたち、ずいぶん愛菜を気に入ってたね」と声がかかる。酒の付き合いまでこなした愛菜は「はい、これくらいなら」と平然としていて、★接客で頼られる側になっているのがさりげなく示される。
その片付け中、スタッフ同士の雑談として飛び出したのが男女で共同生活を続けている若者二人は、そのあたりをどうしているのかという話題だった。しかもそこに、男は二週間ためこむと命に関わる、という何の根拠もない与太話が混ざっている。★それを愛菜が聞いてしまう。
拍車をかけたのが、その日の昼の一件だった。千紗は男性客の器材のバンドが外れているのに気づいて直してあげたのだが、その拍子に相手を痛い目に遭わせてしまっている。叱った紗耶華の言葉が「保健体育で習わなかった男女の違いも勉強しとくことだね」。★この一言があるせいで、千紗は与太話を否定できなくなってしまう。
「私もないとは思うの」「でも、あいつらの日々の行動を思い出したら」と二人は青ざめていく。普段のばか騒ぎが全部、命がかかっていたからだと説明がついてしまう、というわけだ。★★間違った前提を置くと、日常の記憶が全部それを裏づける証拠に見えてくるという、この作品お得意の構図がここでも決まっていた。
男二人がたどり着いた、まったく別の結論
確認すると決めた二人は、仕事を終えた伊織と耕平に妙な優しさを向け始める。「大丈夫か」「苦しくないか」「無理すんなよ」と気遣い、しまいには「今までありがとう」と別れの挨拶まで飛び出す。「なぜ突然礼を言う」「一体何があった」と困惑する二人に、「気にしないで」「ただ、今生きていることに感謝したくて」としか返ってこない。
残された男二人の分析がまた見事に外れる。「まるで、かわいそうだけど明日には死ぬのね、って目だ」から始まり、哀れみ、下半身、外国という三つの単語が並んだ瞬間に、「現地民とサイズの比較をされた可能性に」という結論へ着地してしまう。
しかも二人はそれを受け入れてしまう。「現実はなんて残酷なんだ」「比較相手が相手だし」と納得し、最終的には「甘んじて同情を受け入れて、ただ酒でも奢られよう」。★★傷ついた顔をしながら、しっかり得をする方向へ舵を切っているのがこの二人らしい。★誤解した側も誤解された側も、双方が自分の結論に自信を持っているので、話が噛み合うきっかけがどこにも生まれない。すれ違いの作り方として、今回はかなり完成度が高かったと思う。
千紗と愛菜、ないものねだりの二時間
店の鍵を借りて、時間をつぶすことにした
二人が出した答えは、寮に戻らないことだった。耕平が朝に言っていた「二時間」がここで拾われていて、男二人に部屋を明け渡すために、自分たちが外で時間をつぶすという発想に行き着く。動機は完全に間違っているのだが、行動としては真剣そのものだ。
店に居残っているところを真木に見つかり、「二人ともまだ残ってたの」と声をかけられる。鍵を預かることになるのだが、「ところで、二時間って何かあったの」と聞かれた説明が最悪だった。伊織と耕平の事情である、という言い方で伝えてしまうので、★誤解がここで新しい形に変異して外へ広がっていく。
手持ち無沙汰になった二人が「まだあと一時間、どうしよっか」と話し、千紗が出した案が「ダイビングのDVDでも見る?」。「実物を見たのにDVDはちょっと」と返されても「私はDVDも好きなんだけど」と食い下がる。★この状況で出てくる選択肢がそれしかないというのが千紗という人で、「千紗は本当にダイビングのことばっかりだね」と言われるのも当然だった。
「私は千紗になりたい」「私も愛菜になりたい」
ここから空気が変わる。愛菜が「ちょっと羨ましい」「そこまで夢中になれるものがあるってこと」とこぼし、話がイントラを目指す千紗の進路に及ぶ。「ならどうして工学部に入ったの」という問いに、千紗が答えたのが「もともと理数系が得意だったのと、あとはちょっとお母さんともめて、交換条件みたいな」だった。
続く「お母さん、私がイントラになるの嫌みたいで」で、★あの厳しい距離感の理由が初めて説明される。そして千紗が漏らしたのが「私、お姉ちゃんになりたかった」。「人当たりが良くて、いつも笑顔で、海が大好きで、ああ見えて仕事もできて」「私がお姉ちゃんだったら、どれだけ良かっただろうって」と、姉の奈々華への憧れが、そのまま自分への評価の低さとして出てくる。
それを受けた愛菜が「これを言ったら惨めになるって分かってるのに」と前置きして「私は千紗になりたい」。返ってきたのが「私も愛菜になりたい」で、理由が「今日お客さんとすごく仲良くやってたでしょ。私にはああいう才能ないから」。★★★互いが互いの持っているものを羨ましがっていたことが、同時に明かされる形になっている。
落としどころも良くて、「でも仕方ないよね」「ないものねだりってやつだもんね」「結局、私は私ってことで」と、解決させずに二人で笑って終える。★★下ネタで転げ回っていた回の真ん中に、★この静かな数分をためらいなく置いてくるのがこの作品の強さだと思う。しかもこの後すぐ、誤解を聞きつけた伊織と耕平が「こいつとできてるってどういうこと」と乗り込んできて、全部いつもの空気に引き戻されるのだから、始末が悪い。
「アシスト」まとめと考察
サブタイトルが指しているアシストは一つではない
第6話を通して見ると、アシストという言葉が二重、三重にかかっていることに気づく。一つ目はもちろん耕平のそれで、愛菜と伊織をくっつけようとする不器用な後押し。朝食当番も、炎天下の作業も、占いも心理テストも全部これにあたる。
二つ目が、千紗と愛菜による救援だ。こちらは前提が完全に間違っているのだが、★男二人が命を落とさないように場所と時間を用意してやるという、本人たちにとっては真剣な人助けになっている。★★動機が下らないのに行動が献身的、という落差が今回の笑いの中心にあった。
そして三つ目が、千紗と愛菜が互いに向けたものだと思う。羨ましいと言い合い、なりたいと言い合っただけで、どちらの悩みも解決していない。それでも、相手が自分をそう見ていたと知ること自体が支えになる。★騒がしい回に見えて、いちばん静かなアシストがここに置かれていた。
耕平が最後まで言わないこと
考えたいのは、耕平が一度も自分の手柄を口にしないことだ。前回、愛菜に問い詰められた時も本音を認めなかったし、今回も理由を聞かれて出てきたのは「抑えられないほどの強い気持ちが理解できるから」という、自分の話に置き換えた言い方だった。
★やっていることは全部愛菜のためなのに、口では一度も「お前のため」と言わない。そのくせ手段が下品で直球なので、感謝される前に怒られる。★★この収支の合わなさが、今の耕平というキャラクターの芯だと思う。報われない気持ちを知っているから他人の報われない気持ちを放っておけない、という理屈は、そのまま自分に跳ね返ってくるはずのものだ。
もう一つ気になるのが、千紗の進路の話が★笑いの回の真ん中にわざわざ置かれたことだ。母ともめて交換条件で工学部に入ったという事実は、この先で必ず一度、正面から扱われる種類の情報に見える。紗耶華が娘に対してだけ経営者の顔しか見せない理由も、そこに絡んでくるはずだ。
★★下ネタと勘違いで一話を回しきりながら、登場人物の内側の情報だけはきっちり進めている。笑っているうちに大事なことを聞かされているという構造で、★今期の中でも屈指の密度だった。次回、この誤解が解けたあとに何が残るのかが楽しみだ。




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