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第7話のサブタイトルは「土曜の10時、びわ湖テラスで」で、劇中でルカが送ってきた待ち合わせの一行がそのまま題になっている。公式のあらすじは「ララがルカを避けてしまう」までだが、実際に効いてくるのはルカが王子と同じ顔で、まるで正反対のことを言う相手だったという一点である。そしてこの回で初めて、二百年前にララの光が刃へ形を変えていたことが本人の口から出る。締めは花火と、ララの足元に残ったものだった。




公式サブタイトルは「土曜の10時、びわ湖テラスで」。人魚に戻った理由
心が大きく動いたからだろう、という魔女の答え
冒頭は前話の最後の続きで、ララが人魚の姿に戻ってしまったことをめぐるやり取りから始まる。一人だけに見られてごまかしたものの、またすぐ戻ってしまったという状態である。
理由についての魔女の答えが「お前の心が大きく動いたからだろう」だった。「二百年前もそうだったはずだ」「お前が王子と愛を結ぼうとした時も」と続き、さらに「そいつが本当の愛を見つける相手だという可能性もある」とまで言う。
ララの返しは強い。「あの人を思い出して怖くなっただけ」「運命の相手なんかじゃないわ」。否定の仕方が強いほど、心が動いた事実のほうが裏書きされてしまう。この回の全部が、この短いやり取りの上に乗っている。
訪ねてきたのは、探していた側ではなく探された側だった
そこへ客が来る。名乗ったのが「俺、ルカ」で、続けて「名前は」と聞いてくる。ララの反応は「えっ、誰」である。それでも引かず、「そうや、連絡先を教えて」と自分の番号を渡してくる。
ララは連絡先というものを持っていない。茉里が「これ使ってええで」と父の古い端末を貸し、「ここを押して喋ったら入力されるから」と使い方を教える。文字を書くのが初めてだった人が、声で文章を送っているのが少しおかしい。
送る前には迷いもある。「このまま王子様探しを続けていていいのかしら」に対して、魔女は「家族たちに光を取り戻したいなら、本当の愛を見つけるしかない。人間との間に」と押す。返信は「俺と会って」で、茉里が横から「デートやん」と言い、届いたのが「今週土曜日の10時、びわ湖テラスで」。サブタイトルはこの一行がそのまま使われている。
二百年ものあいだ探す側だった人が、今回は探されて呼び出される側になっている。立場がひっくり返っているのに、本人だけがまだそれに気づいていない。
びわ湖テラスへ。かみ合わない会話のまま距離が縮まる
高校一年、それ以外は「いろいろかな」
待ち合わせの日は生憎の空模様で、「今日晴れるって言うてたのに」とぼやきながらリフトで山を登っていく。その道中でララが聞くのが「あなた何者なの」だった。
返ってきたのが「高校一年」で、「学校以外は」と重ねても「いろいろかな」としか言わない。ララが知りたいのは学年ではなく、二百年前の相手と同じ顔をしている理由のほうである。当然かみ合わない。
それでもルカは「リフト楽しいな」と言い、どこへ行くのかと聞かれれば「上の景色めっちゃ気に入るのよ」「綺麗だから」と答える。問い詰めと世間話が同じ画面で並走しているのに、会話としては成立している。この二人の距離の詰まり方は、最初から少し変わっていた。
「美しいものが好き」に重なってしまう別の声
ララが「綺麗な景色が好きってこと?」と確かめると、ルカは「まあそうやけど」と受けたうえで言い直す。「美しいものが好き」。
ララがその言葉を口の中で繰り返した瞬間に、別の声が重なる。「その醜くおぞましい姿で」。誰の言葉なのかは示されないまま、同じ人の中で「美しい」と「醜い」が正面からぶつかる作りになっていた。
ルカのほうは何も知らないので、「美しいって言っても、いろいろあるけど」「今度また話すわ」と先送りして、「もうすぐ着くで」と続ける。頂上に着けば天気は変わり、カレーパンを二つ買ってきたところで転ぶ。それでも「パンは無事や」と言うあたりで、この人の性格がだいたい分かる。
帰り道のララのひとりごとが「こういうのをデートって言うらしい」「私にはよくわからなかったけど」で、そこに「なぜかその日を境に、ルカから連絡が来るようになった」と続く。分からないと言いながら断ってもいないのが、この人らしい。
秘密の部屋と、弟のレオ
「ここに連れてきたんは、ララが初めてなんや」
次に連れていかれたのが、ルカの部屋だった。「友達も来たことない、秘密の場所やから」「ララには特別に見せるんやからな」と念を押してくる。
ところがそこへ弟のレオが入ってくる。「お前来んなって言うたやろ」「やっぱり女の子やん」から始まり、名前を聞いて「私はララ」と返されるなり「お兄ちゃんにはもったいないわ」と言い放つ。
さらに「顔は僕に似てかっこいいけど」と前置きしてから兄の欠点を並べ、「見て、絵も下手くそやし」「ララちゃん、遠慮せんと下手くそって言うてな」「お兄んのためやで」まで行く。ルカの反論は「下手くそちゃうし」だけである。
弟が一人入るだけで、二百年前の王子と同じ顔をした相手が、急に近所の高校生になる。ララがこの家に入っていける空気を作るのに、これ以上ないやり方だった。
本当に美しいものは、心で見つけて、感じて
部屋に並んでいたのは絵だった。題を聞くと「青空」「濡れた犬」と返り、最後の一枚が「ほんまの俺」である。ララの「一体、何を見て描いたの?」に対する答えが、この回でいちばん大事な台詞になる。
「俺は、美しいもんが好きで、でもそれは目に見えるもんだけじゃない」「本当に美しいもんは、心で見つけて、感じて、そして、絵に描いて、残したくなる」。そのうえで、「あの日、初めて見たときから、ララのことを描きたくなった」「ララの美しさを、もっともっと、見つけたいと思うようになった」と続ける。
見せたかった一枚はララを描いたもので、「まだ、完成してへんだけ」。ララが「いい絵だと思うわよ」と言っても「まだまだ」「試したい色が」と引き下がらない。相手を美しいと言い切ったうえで、まだ足りないと言っているのが妙に真面目である。
注目したいのは「見つけたい」という言い方のほうだった。前話でリサが妹について語った言葉が「あの子、何だって見つけちゃうんだから」「きっとあの光で、どんな暗がりからだって世界を見つけるのね」である。見つける人どうしが出会っていることになる。
胸の中の光が、刃へと形を変えた
「ごめんなさい、もう私に関わらないで」
「試したい色が」と言ってルカが手に取ったものを見た瞬間、ララの顔が変わる。心の中で言いかけた言葉は最後まで言われないまま、体のほうが先に逃げてしまう。
ルカは何が起きたのか分かっていない。「いきなり、どうしたん?」「ララ?」と呼びかけるだけで、返ってきたのが「ごめんなさい、もう私に関わらないで」だった。
それに対してルカが投げた言葉が「ララ、また来てな」「完成させたいから」である。拒絶をまるごと受け取ったうえで、絵が完成していないという事実だけを理由にして扉を閉めない。食い下がり方が押しつけがましくないので、見ていて嫌にならない。
愛から生まれるはずの、私の光が
逃げた先で、ララの中に二百年前が戻ってくる。最初に置かれるのが「選ばれしプリンセスが、本当の愛を感じた時だけ、その胸の奥から、みなぎる光が生まれる」という説明だった。
そこから先が、この回でいちばん重い。「忘れていた。私の胸の中の光が、刃へと形を変えた」「愛から生まれるはずの、私の光が」。さらに「あれは私の心そのもの」「今度は、誰かを傷つけてしまうかもしれない」と続く。
これまで二百年前の出来事は、想いを伝えられないまま泡になった失恋として置かれてきた。ところが本人の記憶では、光が刃に変わったことになっている。何が起きたのかまでは明かされないが、少なくとも語られてきた通りの話ではない、という揺さぶりが入った。
冒頭の魔女の言葉と繋げると筋が通る。心が大きく動くと、ララの中に光が生まれる。その光は一度、刃になった。つまりララがルカを避けるのは、辛い記憶が蘇るからというより、同じことをもう一度やってしまうのが怖いからと読める。それを「過去のトラウマ」の一語で片付けない置き方が丁寧だった。
「相手の気持ちも聞かんと、一方的に離れるん」
誘わずに情報だけ並べる、茉里のやり方
一方でリサたちも動いている。「魔女はもう、私たちの存在に気づいている」「ララに近づこうとしても、きっと排除されてしまうわ」と分析したうえで、「手段はまだある」「絶対に、ララを取り戻すわ」「間に合わなくなる前に」と締める。
対する大津家は花火大会の話をしている。ここでの茉里の言い方が絶妙だった。「花火大会、見たことないやろ?」「毎年ここで、家族と見てんねん」「友達とか、仲いい人と見る人もいるけど」「誰か行きたい人、いる?」。直接誘わず、事実だけ並べて相手に選ばせている。手を挙げたのを見て「じゃあ、今年はララも一緒やな」で終わり。
そのあと、歩道橋にずっと立っている人がいると教えられ、ララが「もう会っちゃダメなの」と言うと、茉里が返すのが「このままでええ?」「相手の気持ちも聞かんと、一方的に離れるん」である。ゴンちゃんに「気になるか?」と聞かれて「ゴンちゃんもやろ」とかわす場面もあり、この家の距離感が一貫している。
茉里の物差しはいつも目をそらすなで固定されている。母から受け取った「大事なときに目そらす子や」という言葉が、ここでは他人の恋の話に転用されている。ララの答えは「マリの言う通りだわ」「終わらせる」だった。
俺は、ララが、ララやから、一緒にいたい
終わらせるつもりで行った先で、ララは先に全部言ってしまう。「そんなに私を絵に描きたかった」「私が人魚だから」「私に近づくことは、人間同士が近づくことと違う」「会いたくないの!」。ルカがすでに人魚だと知っている前提で話が進むのも、この回の面白いところである。
はじめは人魚だから興味を持ったのだろう、と決めつけられたルカの返事が「今はちゃう」。そして「ララは、俺が人間やから嫌なん?」と聞き返す。「会いたくないって言ってるのに」と突き放されても引かず、「ごめん」と一度謝ってから言う。
「俺は、ララが、ララやから、一緒にいたい」。人魚だからでも、美しいからでもなく、ララだから。ララのひとりごとは「私は、その言葉を」で途切れ、実際に口から出たのは「ありがとう」の一言だけだった。
二百年前、ララは声を失っていたので想いを伝えられなかった。今回は言えなかった側が、言ってもらう側に回っている。同じ顔の相手を二度目に選び直すのではなく、別の人から別の言葉をもらう、という形にしてあるのがうまい。
「土曜の10時、びわ湖テラスで」まとめと考察
王子と同じ顔で、正反対のことを言う相手
改めて並べると、ルカがララに言ったことは全部二百年前に足りなかったものだった。美しいと言い切り、もっと見つけたいと言い、逃げられても「また来てな」と言い、最後に「ララやから」と言う。
サブタイトルが「土曜の10時、びわ湖テラスで」という待ち合わせの一行なのも、今にして思えば筋が通っている。事件の名前でも感情の名前でもなく、約束の時刻と場所だけが題になっている。探し続けるしかなかった人が、初めて具体的な時間と場所を指定されたのがこの回である。
そのうえで、二人が同じ動詞を持っているのが効いてくる。ルカは「ララの美しさを、もっともっと、見つけたい」と言い、前話のリサは妹を「何だって見つけちゃうんだから」と評していた。王子に似ているのは顔だけで、中身はララのほうに似ているという組み立てになっている。
花火と、足元に残ったもの
締めは花火大会である。公式の締めくくりも「新たに芽生えた気持ちに気づいたララ」と打ち上がった花火で、見せ場としてはここに置かれている。
ただし気持ちよく終わらない。終盤、ララの足元に泡を思わせるものが残る描写が差し込まれる。台詞では一切説明されないので断定はできないが、複数の受け手が同じ箇所を不穏だと受け取っていた。
ここで冒頭に戻ると、話の筋が見えてくる。魔女が言ったのは「心が大きく動いたから人魚に戻った」で、前話でも同じことが起きていた。つまりこの物語では、心が動くたびにララの体が反応している。
問題は、本当の愛を見つければ家族に光が戻るという目的と、心が動くほど体が人でなくなっていくという反応が、同じ方向を向いていないことである。進めば進むほど消えに近づく作りだとすれば、ルカに「ありがとう」と言えた夜は、いちばん幸せでいちばん危ない夜だったことになる。次がどう転ぶのか、いい形で怖い引きだった。




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