この記事の作品:
『ガールズ&パンツァー もっとらぶらぶ作戦です!』第3話は、自動車部、BC自由学園、家元たち、みほとエリカの四つの物語が描かれる盛りだくさんの回だった。ドラム缶風呂の大ピンチ、派閥争いのど真ん中に飛び込むアンチョビ、そして知らない港町で迷子になった二人。自動車部の大ピンチ、幼い頃のみほと愛里寿、そして大洗は特別だと語るみほまで、第3話を振り返っていく。




第3話 ドラム缶風呂から迷子の港町まで
『ガールズ&パンツァー もっとらぶらぶ作戦です!』第3話は、自動車部、BC自由学園、家元たち、そしてみほとエリカの四つの物語が描かれる盛りだくさんの回だった。ドラム缶風呂の大ピンチ、派閥争いのど真ん中に飛び込むアンチョビ、幼い頃のみほと愛里寿、そして知らない港町で迷子になった二人。笑いと温かさが交互にやってくる一話を、物語ごとに振り返っていく。
自動車部特製のドラム缶風呂
一つ目は、レオポンさんチームの面々が主役の物語。大洗女子自動車部のハイパーテクノロジーをふんだんに盛り込んで建造したという特製ドラム缶風呂は、水温調整や自動循環といった便利機能つき。試合会場に搬入できる独立ユニットまで計画中という本気ぶりだ。油汚れまで落ちていくというお湯に浸かって「いやー このために生きてるわ」とくつろぐ姿は、見ているこちらまで気持ちよくなってくる。
学校の大浴場に直行するのはちょっと気が引けるからという理由で作られたこのお風呂、気持ちよすぎて寝ながら溺れかけるというハプニングまで起きる。万が一の自衛用装備で全員をたたき起こし、「ありがとう中島」。みんな寝不足だから気をつけようねと言い合う自動車部の面々の、連日の整備明けらしい疲れ具合がおかしい。
着替えがない大ピンチ
ところが、本当の危機はここからだった。何も考えずに飛び込んだせいで着替えがなく、着てきた服はお湯をかぶって泥まみれ。さっと走って済ませればいいと言う声に、星野が待ったをかける。そうこうするうちにドラム缶風呂が倒れ、お湯はなくなり、このままでは風邪をひいてしまう。「非常にまずい状況になってまいりました」という言葉どおりの大ピンチだ。
誰か都合よく知り合いが通りかからないかと待っていると、やってきたのは秋山さん。おーいと呼んでも聞こえず、軽く石を投げてみるが気づかれない。次に現れた冷泉さんには石が当たってしまい、「隕石が落ちてきた」と倒れ込む冷泉さんを、そど子が引きずるように連れて行ってしまう。助けを求めるたびに事態が悪化していく展開に、思わず笑いがこぼれた。
最後に通りかかったのは、ゆうべ見た映画の話で盛り上がるみほと沙織。屈強な男たちがカーチェイスしまくる、ドリフトギュンギュンの映画だったという沙織の話に、みほがへえと相づちを打つ。そこへ聞こえてきたのは、二人を呼ぶ声。そして「ドラム缶風呂、一緒にどうです」。結局次の日の面白記事になったというオチまで含めて、自動車部らしいマイペースさが詰まった物語だった。
派閥争いとフードデリバリー
二つ目の舞台はBC自由学園。いつものように受験組とエスカレーター組が席をめぐって対立し、今にも力づくのぶつかり合いが始まりそうな雰囲気だ。そこへやってきたのが、アンツィオのアンチョビたち。試合後のお食事を他校の皆様に提供する、アンツィオ流のフードデリバリーの売り込みに来たのだという。
サンダースは自前のキャラバンを持っているし、聖グロは食文化が合わない。お金を持っていそうなBC自由学園こそ狙い目だというアンチョビの読みは、なかなか商売上手だ。「こういうのはノリと勢いなんだよ」と乗り込んだものの、ドゥーチェを知らないと言われてしまう出だしからして、すでに雲行きが怪しい。
わたくしアンツィオの方から来ましてと名乗りかけたアンチョビを、両派閥のリーダーはそれぞれ自分のファンの子だと思い込む。この安藤のファンなんだろお嬢さん、と迫る受験組に、その野蛮な手を離すんだと割って入るエスカレーター組。いつの間にかアンチョビの取り合いが始まり、アンツィオの後輩までドゥーチェは誰にも渡さないと参戦する大混乱に。派閥争いが恋の鞘当てにすり替わっていく展開がたまらなくおかしい。こっそり恋愛小説を読んでいるという、アンチョビの意外な一面が明かされるのもかわいらしかった。
騒ぎを止めたのは、「お腹が空いたわ」という一言だった。こちらのフルコース、今からお願いできるかしら。結局、売り込みは思わぬ形で成功したことになる。革命も間近ねとつぶやかれていた学園の混乱を、食事の一言であっさり収めてしまう優雅さも、BC自由学園らしい締めくくりだった。
幼い日の記憶と迷子の二人
家元たちの激論
三つ目の物語は、ある教官の思い出の一枚をめぐる話だ。そこに描かれていたのは、幼いまほとみほ、そして愛里寿を連れた、西住流と島田流の家元の姿だった。「まほちゃんもみほちゃんも 大きくなりましたね」と声をかけたかと思えば、愛里寿の名前を適当に呼んで「アリスです」と訂正される。家元同士の皮肉の応酬が、のっけから火花を散らしている。
応接室での本題は、試合会場の年間使用計画をめぐる話し合いだった。高校連盟と大学連盟、それぞれの立場から一歩も譲らない二人の議論は、まさに激論そのもの。高校生選手たちにより高いレベルの試合をと主張がぶつかり合い、話はいつまでたっても平行線だ。それでも「大いなる一歩だわ」と締めくくるあたりに、家元同士の奇妙な信頼関係がにじむ。
子どもたちはどこへ
ところが、議論に夢中になっているうちに、子どもたちの姿が消えていた。ごめんなさいアリス寂しかったと駆け寄ろうとしても、そこには誰もいない。燃え尽きたような顔から一転、娘はどこと鬼気迫る表情で問い詰める母親たちの姿は、普段の家元の威厳とはまるで別人だ。子どもを想う母の顔が、思いがけない形で見えてくる場面だった。
子どもたちは子どもたちで、大人の都合など知らずに勝手に遊び回っていた。小さな子どもたちが館の中を駆け回り、まだ幼い愛里寿もそのあとを追いかけていく。その様子を、教官はカメラに収めていた。ご迷惑でなければ一枚よろしいですかと声をかけて撮った写真こそが、この物語のタイトルにもなっているポートレートなのだろう。家元の母親たちと、幼い娘たちの一枚。今では戦車道の世界で名を知られる少女たちにも、こんなに無邪気な時代があったのだと思うと、胸が温かくなる。
この物語のおかしさは、家元同士の対立と、子どもたちの無邪気さの対比にある。大人たちが真剣に言い争っている間、子どもたちはただ楽しく遊んでいる。そして子どもがいなくなった途端、どちらの家元もただの母親に戻ってしまう。流派の違いを超えて、母としての顔は同じなのだと気づかせてくれる物語だった。
見ているこちらは、あの家元たちがここまで取り乱すのかと笑いながらも、娘を大切に思う気持ちにはしみじみとさせられる。幼いまほとみほ、そして愛里寿。のちに戦車道で向き合うことになる少女たちが、一緒に遊んでいた過去があったというだけで、本編を知るファンにとってはたまらない一場面だろう。
迷子のみほとエリカ
四つ目の物語の舞台は、学園艦が寄港した港町。ようやく手ごろな寄港地に到着したと思ったら、相席になったのは黒森峰の学園艦だった。学園艦が入港できる港は限られているから、こういうことはたまにある。それでも気まずいと話す大洗の面々をよそに、気づけばみほの姿がない。その頃みほは、知らない街で迷子になっていた。しかも電話も置いてきてしまっている。
電話を貸してほしいと頼まれたのは、黒森峰のエリカだった。大洗で成長したと思いきや、戦車を降りると頼りないのは相変わらずか、とあきれながらも、「しょうがないわね」と手を貸すエリカ。ところが、なぜかエリカの携帯はみほのカバンに入っていた。電話ボックスはカード専用で、カードも売っていない。こうなったら学園艦を目指して歩くだけ。どこからでも見えているのが学園艦のいいところだと二人は歩き出す。
大洗は特別なの
途中でファンシーショップに寄り道するみほに、仲間とはぐれたのはそれのせいかしらとあきれるエリカ。前からそういうのが好きだったわよねと言われ、よく覚えてたねと返すみほ。どこがいいのかわからないと言いながらも、エリカはみほの好みをしっかり覚えていた。一方のエリカも、黒森峰の仲間が降りるときに誰にも気づかれずに置いていかれていたことが明らかになる。
喫茶店で一息ついたとき、エリカは本音をこぼす。それなりに寝食をともにして、肩を並べて戦車道に勤しんだ私たちを差し置いて、と。そんなエリカに、みほはごめんなさいと謝りながらも、「大洗は特別なの」と伝える。大洗は特別。その一言に込められたみほの思いを、エリカはわかったわかったと受け止める。あなたマカロンとか好きだったよね、と注文をすすめるエリカの優しさが、かつての仲間だからこその距離感を感じさせた。
学園艦に戻ると、大洗と黒森峰の面々が顔を合わせて一触即発の雰囲気に。そこへ現れたのは、手をつないだままのみほとエリカだった。「って いつまで繋いでんのよ」と慌てるエリカに、「ありがとう エリカさん」と笑うみほ。あなたがすぐはぐれるから仕方なくでしょと返すエリカの照れ隠しが、なんとも微笑ましい。意味のわからない一日だったわとこぼすエリカの横顔には、どこか満更でもない色が浮かんでいた。
第3話のまとめ考察
らぶらぶの名にふさわしい四つの物語
第3話は、四つの物語それぞれに違う形の愛情が描かれた回だった。ドラム缶風呂にかける自動車部の情熱、アンチョビの乙女心、娘を想う家元たちの母性、そしてみほとエリカの不器用な友情。もっとらぶらぶ作戦ですというタイトルの意味が、これまで以上にはっきりと伝わってくる構成だった。
中でも、みほとエリカの物語は特に心に残った。本編では対立する立場で描かれることが多かった二人が、戦車を降りた日常の中で、かつての仲間として自然に言葉を交わしている。大洗は特別だと言い切るみほと、それを受け止めるエリカ。過去のわだかまりを超えた、二人なりの距離の取り方が丁寧に描かれていて、スピンオフならではの魅力を感じた。
戦車道のない日常の温かさ
幼い頃のみほと愛里寿の物語も、本編を知るファンにとっては貴重な一場面だった。戦車道の世界で向き合うことになる少女たちにも、母親に連れられて一緒に遊んだ日があった。家元たちの激論と、母としての素顔。そのギャップが、シリーズの登場人物たちにさらなる厚みを与えている。
戦車が登場しない場面が多いにもかかわらず、どの物語にもガルパンらしさがしっかりと息づいていた。仲間との時間、ライバルとの関係、家族の絆。戦車道の外側にある日常こそが、少女たちの強さを支えているのだと改めて感じさせてくれる、温かな第3話だった。




関連作品:





















































コメント