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『桃源暗鬼 ~日光・華厳の滝編~』第4話は、鬼國隊の大将・等々力颯が四季をスカウトしに羅刹学園へやってくる回だった。誘いを断る四季と、ついていく矢颪。二人の選択が、仲間とは何かを問い直す。風を操る等々力の圧倒的な強さ、鬼國隊についていく矢颪の決断、そして戦わない桃もいると語る四季の言葉まで、第4話を場面ごとに一つずつ丁寧に振り返っていく。




第4話 鬼國隊の大将・等々力颯
『桃源暗鬼 ~日光・華厳の滝編~』第4話は、どこにも所属せず独自に桃太郎と戦う鬼國隊が登場し、その大将・等々力颯が四季をスカウトしに羅刹学園へやってくる回だった。四季は誘いを断るが、矢颪は等々力についていく。仲間とは何か、という第3話からの問いが、ここで大きく動き出す。場面ごとに振り返っていく。
水の消えた滝
冒頭は、父と娘が並んで食事をする穏やかな場面から。桜はまだ少し早く、滝はなぜか水を失ってしまっている。きっと滝は戻ってくるよ、今はちょっとお休みしてるだけ、と言う娘に、父は桜が咲いたらまた来ようと約束する。ここで食べると何でもおいしくなるとママが言っていた、という一言まで含めて、失われたものと、それでも続いていく日常が静かに描かれていた。
物語の舞台となる華厳の滝の今を、説明ではなく親子の会話で見せる導入がうまい。このあと語られる研究所の不穏さと並べると、この穏やかさがいっそう際立って見える。
50人の桃太郎と鬼國隊
場面は一転、軍服姿の鬼國隊が桃太郎の部隊に待ち伏せされる。ざっと数えて50人。降参しても鬼は全員処分だ、と言い放つ相手に、鬼國隊の一人が問いかける。何人の鬼を殺したのか。殺した鬼のことなんか覚えているわけがない、と返されると、静かに言葉が続く。「安心しろ 地獄の閻魔が貴様らの罪を数えている」。
「死にたい奴は前へ出ろ 生きたい奴は諦めろ」。血蝕解放、血刀風月。一瞬で部隊は吹き飛び、残った一人の隊長は何が起きたのか分からないまま立ち尽くす。「俺の力は風」。風をまとい、自在に操る。命乞いをする相手にも、鬼國隊の信念は桃太郎の完全抹消だと告げる。強さと容赦のなさが、たった数分の戦闘で鮮烈に刻まれた。
何人殺したかを覚えていない相手に、地獄の閻魔が数えていると返す。この問答は、鬼國隊がただの暴力集団ではなく、桃に奪われてきたものへの怒りを背負って戦っていることを感じさせる。その怒りが正しいのかどうかは、このあと四季の言葉によって問い直されることになる。等々力の正しさと危うさが、最初の登場場面からすでに同居していた。
羅刹学園への訪問とスカウト
方向音痴の大将
そんな大将が向かった先は、羅刹学園。ところが到着した等々力たちは、着くなり乗り物酔いで吐きそうになり、大将は爆裂的に方向音痴だと仲間に言われる始末。先ほどの戦闘シーンとの落差に、思わず笑ってしまった。お邪魔しますも言わずにお邪魔してしまったことをお詫びしよう、という律儀な謝り方もずれている。
鳥飼のほうも、生の無陀野を見てうーわと声を上げるなど、どこか緊張感がない。戦場では容赦がないのに、日常ではとことんマイペース。鬼國隊というチームの空気が、短いやりとりだけで伝わってくる。羅刹学園の生徒たちが、なんだこいつらと呆れるのも当然だった。
名乗りを上げたのは、鬼國隊大将の等々力颯と、鳥飼羽李。どこにも所属せず、各地の桃の部隊を潰している集団で、目的は桃の完全抹消。一人残らずこの世から桃を根絶する。羅刹学園の面々が、マジかよと言葉を失うのも無理はない。
同じ鬼神の子
等々力の目的は、一ノ瀬四季に会うことだった。俺と同じ鬼神の力を継ぐ者だな、風を司る自分に対して、四季は炎を司る。「炎は熱くないのか」、火傷もしないのか、と質問を重ねて、四季の答えを待たない等々力。うるせえよ俺の答え聞けよ、と四季が突っ込むやりとりは、強いのにどこか抜けている等々力らしさがよく出ていた。
そして本題。鬼機関は痛み分けで平和的な解決をつけようとしているが、そんなものは甘い。「戦わなければ奪われるだけ」、「殺さなければ殺されるだけ」。一人でも桃が生きていれば、いずれ必ず牙を剥く。「自由とは不自由と戦い手を伸ばした人の手の中にしか存在しない」。だから共にこの世から桃を根絶しよう、と等々力は手を差し出す。
四季の答えは「え 嫌だよ 勝手に盛り上がるなよ」。あまりにもさらっと断る四季も、そうか分かったとあっさり引き下がる等々力もおかしい。押しつけた理想に魂は宿らない、という言葉を残して去ろうとする等々力には、勧誘する側なりの筋の通し方があった。
等々力の言葉そのものは、決して軽くない。戦わなければ奪われる、という実感は、これまで桃太郎に追われてきた鬼たちなら誰もが知っているものだ。だからこそ、四季がためらいなく断ったことに意味がある。四季が目指すのは、鬼も普通に笑って過ごせる世界であって、桃をこの世から消すことではない。
矢颪の決断
ところが、ここで矢颪が動く。待てよ、俺も連れて行け。「ここじゃ俺は強くなれねえ」。桃を殺すのが目的なら自分も同じだと言い、来る者は拒まないと受け入れる等々力についていく。止めようとする声にも、仲間を作るなんて気持ち悪い、「てめえらとなれ合うくらいなら死んだほうがマシなんだよ」と吐き捨てる。
第3話の最後に、矢颪はここにいても強くなれないと漏らしていた。死んだ仲間の仇の桃太郎を殺す、それ以外の仲間は作らない、と語っていた矢颪にとって、鬼國隊の目的は自分の願いとまっすぐ重なって見えたのだろう。仲間と歩調を合わせることに苛立ってきた矢颪にとって、目的だけを共有して突き進む鬼國隊のあり方は、羅刹学園よりずっと分かりやすかったのかもしれない。行き先は栃木県の華厳の滝跡地。有毒ガスで立ち入り禁止になったその場所に、桃太郎機関の研究所があるらしい。
矢颪を追うか、追わないか
あいつが決めたこと
追いかけるぞ、と声を上げる四季に返ってきたのは、「あいつが決めたことだろ」という言葉だった。遊摺部も、矢颪の目的を聞く限り鬼國隊と一緒のほうが合っているとも思える、と言う。いなくなるのは寂しいけれど、普通の学校にいるわけではないし、それぞれ目的がある。本人が決めたことを無理やり止めるのは、という空気が広がる。
帆稀は姉に、どう思うかと問いかける。「お手手繋いでみんなでずっと歩いていくと思ってんのか」という辛辣な言葉に、言い方がいちいちムカつくんだよ、と返す場面もあった。それぞれが目的を持つ羅刹学園の生徒たちにとって、矢颪の選択を止める理由は簡単には見つからない。
戦わない桃もいる
それでも四季は引かない。自分にだって絶対許せない桃はいる。殺意を持った者同士の命のやり取りなら分かる。向こうも撃たれる覚悟があるからだ。けれど、桃にも戦わない者たちがいる。無陀野も、桃機関にも非戦闘員はいるし、機関に所属せず普通の生活をしている者も少なくないと答える。鬼國隊の言う根絶は、静かに暮らしている桃太郎も一人残らず殺すということだ。
京都で見たはずだ。ひっそり暮らしているだけなのに、鬼だというだけで子どもまで殺された。あの唾切と同じことをするのか。「引き金に指すらかけてねえやつまで殺すのは間違ってんだろ」。矢颪がそこを理解しているとは思えないし、直接聞かなければ納得できない。全部理解してそれでも行くならいい、応援は一ミリもしないけど、という言い方に、四季なりの仲間への誠実さがにじんでいた。
そして四季は言う。「鬼は仲間作るのが大事なんだろ」。「なら仲間がやべえ道行こうとしてんの止めることも大事だろ」。第3話で無陀野が語った、心を育てるのに欠かせないのが仲間だという教えを、四季は自分の言葉で受け止め直していた。
仲間だから行かせる、ではなく、仲間だから止める。矢颪自身が仲間なんていらないと言っていても、四季は矢颪を仲間として扱うことをやめない。相手の選択を尊重することと、相手を放っておくことは違うという四季の考え方が、この一連のやりとりではっきりと示されていた。
第4話のまとめ考察
外出許可は全員
四季の言葉に、仲間たちの考えも変わっていく。鬼國隊は唾切と同じことをしようとしている、それは止めないと。目的のためなら仕方ないと思っていたけど、止めたほうがいいかも。怖いから行かないと言いかけた者も、仲間が道を踏み外そうとしているなら止めてやるのが男ってもんだろう、という声に押されていく。
外出許可の人数を問われて、答えは「全員です」。あのバカを追いかけるとするか、と皆が動き出す場面は、第3話で全員ゴールを果たした彼らが、今度は全員で仲間を迎えに行く構図になっていた。仲間が仲間を止めに行くという選択が、とても気持ちよかった。
一方で、華厳の滝の研究所では、不穏な会話が交わされていた。鬼は研究のしがいがある、切り刻めば切り刻むほど新しい発見がある。実験の素材が足りない、特に子どもを、近くに鬼の集落を見つけてあるので今日中に捕獲してくる。冒頭の穏やかな親子の場面と同じ土地で、これほど冷たい会話が交わされていることに背筋が寒くなった。
矢颪が向かおうとしているのは、まさにその研究所がある華厳の滝跡地だ。等々力たちの目的地と、研究所で進む実験。二つが交わる場所に、羅刹学園の生徒たちも全員で向かうことになる。物語の舞台が一気に一点へ集まっていく流れに、編のタイトルの意味がようやく見えてきた。
第4話は、等々力という強烈な人物を通して、鬼と桃の戦いの意味を問い直す回だった。戦わなければ奪われる、殺さなければ殺されるという等々力の言葉には、彼なりの正しさがある。けれど四季は、引き金に指すらかけていない者まで殺すのは間違っていると言い切った。同じ鬼神の子でも、目指す世界は違う。
矢颪がなぜ鬼國隊を選んだのか、四季たちは矢颪から直接その答えを聞けるのか。研究所の不穏な動きも含めて、華厳の滝を舞台にした物語がいよいよ本格的に動き出しそうだ。全員で仲間を迎えに行く四季たちの姿を、しっかり見届けたい。等々力と四季、二人の鬼神の子が再び向き合ったとき、どんな言葉を交わすのかも楽しみだ。矢颪が最後にどんな答えを出すのかにも注目したい。




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