この記事の作品:
クェンティン団長に従魔の証を見られ、ザビリアの正体に気づかれたと察したフィーア。そのまま成り行きで、騎士団長会議に同行することになる。待っていたのは、個性の強すぎる団長たちだった。ザビリアとの完全重複の契約、フィーアをめぐる騒がしい騎士団長会議、そして星降りの森に現れた幻覚を見せる夢見鳥まで、第6話「黒き王の捕獲作戦」を振り返っていく。




従魔の証と完全重複
完全なる一本の線
『転生した大聖女は、聖女であることをひた隠す』第6話「黒き王の捕獲作戦」は、前の話の食堂の場面の続きから始まる。フィーアの従魔の証を見たクェンティン団長は、「こんな見事な従魔の証は初めて見ました」と目を見張る。80名の騎士でAランクの魔物を囲んで従魔にしたという自分の証と比べても、フィーアのものは別物だった。「あなたの証は完全なる一本の線になっていて」、「全く途切れがない」、「完全重複だ」。
ここでフィーアは、クェンティン団長がザビリアの正体に気づいていると察する。とはいえ、黒竜だと認めてしまえば報告の義務が生まれ、身動きが取れなくなる。そこで選んだのが、聞かれないことは認めないという方針だった。「どんなに黒に近いとしてもグレーはグレーで黒ではないもの」。追い詰められながらも冷静に作戦を立てるフィーアの頭の回転の速さが、この作品の面白さのひとつだ。
一方のザビリアは「フィーア以外と無駄話をする気はないから手短にしてよね」とそっけない。二人の関係を尋ねられると、「フィーアとの仲なら 熱々だよ」と得意げに答える。フィーアの生命力と魔力が減ってきたら、ザビリアの側から流れるようになっているのだという。「僕が死なない限り フィーアは死なないし」、「僕は死ぬ瞬間までフィーアといられるんだよ」。さらりと語られる契約の中身は、想像以上に重かった。
ブチ殺す?それともブチ殺す?
話の途中で、フィーアが口に含んだ水を吹き出してしまい、クェンティン団長は頭から水をかぶる。慌てる周りに対して本人は「申し訳ありませんが 私のことは放置しておいてください」と、話の続きに夢中だ。フィーアの側からは行動や思考、感情がザビリアに流れてきて、「どんなに離れていてもね」という。従魔の契約の常識を超えた話に、クェンティン団長は信じがたいという顔を見せる。
そこでザビリアが持ち出したのが、フィーアに生意気な口をきいた副団長ギディオンの話だった。「ブチ殺す?」、「それともブチ殺す?」。選択肢がひとつしかない問いかけに思わず笑ってしまった。クェンティン団長は「うちのクソったれギディオンの話ですよな!」と即座に部下を切り捨て、平謝りする。騎士団長がここまで頭を下げる相手が、見た目は小さな青い鳥だというギャップがたまらない。
杉田智和さんの演じるクェンティン団長の、真面目な顔で突拍子もないことを言う芝居は、この回でも絶好調だった。フィーアを前にしたときの極端な態度の変わりようが、会話のたびに笑いを生んでいる。
騎士団長たちの集合
総長の個人エロ情報を共有する仲
騎士団長会議に向かうクェンティン団長は、フィーアに同行を頼む。「私でよければ」と応じたフィーアの前に現れたのは、第六騎士団長のザカリーだった。肉祭りのときにちらりと見かけただけなのに、やけに親しげに声をかけられて戸惑うフィーア。「お前なら俺を呼び捨てても許すぞ」、そして「総長の個人エロ情報を共有する仲だ」。すかさず入る「何その頭悪そうな単語」という突っ込みが最高だった。
さらに、髪が濡れているクェンティン団長を見とがめたザカリー団長に、本人は「フィーア様から 口に含んだ水を吹きかけられた」と正直すぎる説明をする。部下だろうが女性とは食事をしないはずの男が、「フィーア様に誘われたんだ 俺に断る権利はない」。「あんな時間を持てるなら 何を犠牲にしても本望だ」、「なんといってもフィーア様の左腕を好きなだけ触らせてもらえたからな」。誤解しか生まない言い回しの連続だ。
たまらずフィーアが「あなたの言葉選びのセンスは最低です」と抗議すると、返ってきたのは「フィーア様怒らないでください心から謝罪しますから」。「だからその言葉のセレクトが最悪なんですよ」という悲鳴まで含めて、二人の掛け合いは完全にコントだった。ただ、言葉選びは最悪でも、クェンティン団長がフィーアに心からの敬意を払っていることだけはよく伝わってくる。
さてフィーア、お前はどこに行きたい
そこへ現れたのが総長のサヴィスだ。「相変わらず楽しそうだなフィーア」、「お前が関わると有能な騎士たちが揃って不審な行動を取り出すことは承知している」。すっかりお見通しなのが頼もしいやら、恥ずかしいやら。続いてシリル団長が「あなたは第一騎士団所属ですから」とフィーアを呼び寄せようとすると、クェンティン団長は「フィーア様は俺が連れてきたんだ」と譲らない。
微笑んでいるのに不愉快さが伝わってくるシリル団長の表情に、フィーアは心の中で震え上がる。どちらについても角が立つ状況で、総長が「さてフィーアお前はどこに行きたい」と尋ねる。フィーアは「いい質問です総長」と応じたうえで、正直に言えば帰りたいと本音をこぼす。団長たちに取り合われる騒ぎの中心にいながら、本人がいちばん逃げ出したがっているのがおかしい。
第五騎士団長クラリッサ
そんなフィーアの前に現れたのが、ピンクの髪の華やかな女性だった。ザカリー団長いわく「騎士団一残虐で容赦がなくて」、「鋼のメンタルを持つ最強生物だ」。さらに「年若い騎士たちを捕食する世にも 恐ろしい生き物なのですよ」とまで言われる。その正体は「第5騎士団長のクラリッサ・アバネシーよ よろしくね」。名乗りの字幕とともに、場の空気を一変させる存在感だった。
騎士団長会議の間、後ろに控えることを願い出たフィーアに、クラリッサ団長は「まあ 嬉しい」とにっこり。男たちがそろって警戒する相手なのに、フィーアには優しく接してくれるのが面白い。演じる声にも、ファンからは喜びの声が上がっていた。
黒き王の捕獲作戦会議
黒き王には寝床へ帰っていただく
いよいよ騎士団長会議が始まる。議題は黒き王の捕獲について。もともとは、黒き王が幼い体である今こそ捕獲の絶好の機会という計画だった。ところが星降りの森での目撃情報から、黒き王が想定より成長していると分かり、「だとしたら捕獲は不可能だ」という流れに変わっていく。黒き王には速やかに住処の霊峰へ帰ってもらうのが最善だ、という結論だった。
会議の中でも、団長たちの個性は全開だ。クラリッサ団長は「私のかわいい王都民たちを危険にさらしたら」、「私はご機嫌が悪くなってしまうわよ」とにこやかに釘を刺す。そして、クェンティン団長が持ち帰った黒き王の住処の石などを見せれば、記憶が戻って帰ってくれるのではないかという案が出る。「試してみよう」。黒竜が現れ、石を見せられて住処の方角へ飛び去っていく。フィーアとザビリアにとっては、ザビリアが狙われずに済む都合のいい筋書きだ。
ところがそこでも騒ぎは終わらない。シリル団長が「会議中にうちの団員に 流し目を送るのはやめてください」、「風紀が乱れます」と注意すれば、クェンティン団長は「どうやら俺は視線だけで フィーア様との意思の疎通ができるようだ」と得意げだ。クラリッサ団長は「モテモテね フィーアちゃん」と楽しげに眺め、「じらして じらして」とあおる始末。最後は「天と地のすべては、ナーヴ王国黒竜騎士団と共に」の唱和で締まるものの、議題よりもフィーアの取り合いのほうが目立つ会議だった。
ザビリアの粛清リスト
会議を終えて「騎士団長会議って疲れるのね」とため息をつくフィーアに、ザビリアが差し出したのは「粛清リストだよ」。「1位ギディオン副団長、2位ザカリー団長、3位シリル団長」。フィーアの害になりそうな人物を先回りして排除しておこうという、気の利きすぎた従魔の発想に震えた。
フィーアが「紳士だし優しいし騎士団長としても有能よ」とシリル団長をかばうと、「フィーアの口からスラスラと3つもの褒め言葉が出てきたことが問題だよね」とかえって機嫌を損ねる。「この立場を他の者に譲る気はないからね」。そこでフィーアが「ザビリアは可愛いわ強いわ賢いわ気が利くわ」、「私のことを一番に考えてくれるわ」、「ほーら一瞬で5つも浮かんだわよ」と返し、ようやく「そうか、それならいいかな、保留で」。重すぎる愛情と、それを上手になだめるフィーアのやり取りがかわいらしい。
リボンと花冠をつけたザビリアを「凶悪なまでに可愛くなるなんて素敵すぎるわ」とほめるフィーアに、「愛らしいとか可愛いとか」、「表現されたのはフィーアが初めてだよ」と返すザビリア。長く生きてきたと言うザビリアに「何言ってるのゼロ歳でしょ」と返すフィーアとの掛け合いも、二人だけの秘密を知っているからこその楽しさだった。
従魔舎のフィーア
回復、回復
翌朝、フィーアはクェンティン団長の従魔であるグリフォンたちと対面する。遠征から帰ったばかりで怪我をしているのに気づいたフィーアは、ただ触れているだけに見えるよう気をつけながら「回復」。ザビリアが止める間もなく、ほかの従魔たちも次々に治してしまう。
その結果、従魔たちはすっかりフィーアに懐いてしまった。「フィーアは相変わらず魔物にモテモテだね」とあきれるザビリアに、「ザビリアが一番かわいいわ」とすかさずフォローするのも忘れない。正体を隠すつもりで力を使うたびに、かえって目立ってしまう。このお約束の展開が、毎回楽しみになってきた。
フィーアさん
この光景を見て青ざめたのが、副団長のギディオンだった。「フィーア様の手は黄金か!」。従魔は契約主にしか懐かないものだと思っていた彼にとって、すべての従魔が小動物のようにじゃれつく様子は信じがたいものだった。「俺は魔物騎士団長として浅はかな自分を恥じます」と、なぜか団長の立場で反省までしてしまう。
そして呼び方が、いつの間にか「フィーアさん」に変わっていた。総長の指示でフィーアが来たのには深い考えがあったに違いないと思い込み、「副団長の職を返上することで」、「謝罪の意を表します」とまで言い出す。止めに入った側から「お前かっこいいと思ってるだろ」と突っ込まれ、「ちょっとだけです」と答えるあたり、根は憎めない人物なのだろう。粛清リストの1位が、あっという間に味方側に転がり込んできたのには笑ってしまった。
第6話のまとめ考察
幻覚を見せる夢見鳥
聖女たちも到着し、いよいよ星降りの森へ出発する。探索はクェンティン隊、ギディオン隊、ザカリー隊に分かれ、定期的に笛を鳴らし合って互いの距離を確かめながら進む。ところがフィーアは、ザビリアがどのタイミングで登場すればいいのか、クェンティン団長と打ち合わせていなかったことに気づく。「まあ昼食で合流したときにでも」とのんきに構えていたところに、思わぬ魔物が現れた。
森の入り口近くに現れたのは夢見鳥。「相手に幻覚を見せるBランクの魔物」で、「円を描くように周りを一周されると その中にいる人間は幻覚を見始める」という厄介な相手だ。弓矢隊が狙いを定めるものの、騎士たちは次々に幻覚に惑わされ、統率が崩れていく。さらに夢見鳥は幻覚の空間を作り上げると巨大化し、Aランクの魔物へと変貌してしまう。騒がしい会議から一転して、緊張感のある展開で幕を閉じた。
騒がしさの中に見えた信頼
第6話は、騎士団長会議を舞台に、個性の強い団長たちが次々と登場する回だった。クェンティン団長の誤解を招く言葉選び、ザカリー団長の妙な親しさ、シリル団長の笑顔の圧、そしてクラリッサ団長のあおり。全員がフィーアを中心に振り回されているのが、見ていて本当に楽しい。一方で、ザビリアとの完全重複という契約の重さや、正体を隠し通そうとするフィーアの冷静な判断も描かれ、笑いの中に物語の芯がしっかり通っていた。
黒き王の捕獲は、ザビリアに住処へ帰ってもらうという筋書きに落ち着いた。けれど、その作戦の最中に現れた夢見鳥のせいで、騎士たちは幻覚に飲み込まれつつある。フィーアは正体を隠したまま、この窮地をどう切り抜けるのか。そして、ザビリアはどこで姿を見せるのか。騒がしくも頼もしい騎士団の行方を見守りたい。




関連作品:




























































コメント