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第5話は、ぼたんが人生初のバーで自由なカクテルの世界に出会う一方、いぶきを想う郡上先輩のほろ苦い恋が静かに描かれる。いぶきの好物グレンリベットで漬けたいちごウイスキー、そして答えのかわりの一本の煙草。甘いお酒とほろ苦い想いが交差し、EDでは郡上の色が褪せて——いぶきの心の移ろいを暗示する、切なくも美しい一話である。




人生初の、バー
重い扉の、向こうへ
第5話、ぼたんはいぶきに連れられて人生初のバーへ。入りづらいオーラをまとった重い扉を押し開けると、そこには灯りの柔らかく揺れる、大人の空間が広がっていた。
「コールは覚えてきました」と気合十分のぼたんだが、緊張のあまり、メニューも見ずにソルティドッグを注文してしまう。何も見ずに頼むのが常識だと勘違いした、初心者らしい可愛い空回りだ。
背伸びしたい気持ちと、隠しきれない初々しさ。その両方がにじむぼたんの様子に、こちらまで微笑ましくなる導入だった。
ソルティドッグと、自由なカクテル
運ばれてきたソルティドッグは、グラスの縁に塩。「塩と一緒に飲むんだ、自由なお酒だな」と驚くぼたんに、いぶきは「それがカクテルのいいところ」と教える。
決まった飲み方に縛られず、自由に楽しんでいい。カクテルの懐の深さを知ったぼたんの表情が、ぱっと華やぐ。美味しそうに飲むその姿こそ、この作品がいちばん大切にしているものだ。
お酒の一つ一つを、丁寧に“初めて”として味わっていくぼたん。その新鮮な驚きが、観ているこちらの視線もやさしく更新してくれる。
しゃっくりと、隣の席
離れて座りたい、いぶきの理由
静かなお店で、いぶきは他のお客さんから離れた席を選ぶ。理由は、酔うと出てしまうしゃっくり。「うるさいから」と気にする彼女に、ぼたんはまっすぐ言葉をかける。
「いぶきさんが気にされてるほど、目立たないと思いますよ。この距離でも、私ほとんど聞こえないし」。長年のコンプレックスを、そっとほどいていくぼたんに、いぶきは「ありがとう、ボタン」と微笑む。
欠点を無理に否定するのではなく、隣で受け止める。ぼたんの寄り添い方が、いぶきの頑なな心を少しずつ溶かしていた。
元気が出る、一杯
そこへ、偶然を装って郡上が合流する。三人はテーブル席へ移り、マスターからは「元気が出るカクテル」がぼたんに、そして連れの分もサービスで振る舞われる。
「ボタンと初めてのバーなんだし、楽しまないとね」。いぶきの言葉に、ぼたんの初バーは温かな一杯で満たされていく。顔なじみのマスターと先輩に囲まれた、心地よい夜だった。
いちごウイスキーと、郡上先輩の想い
グレンリベットで、漬ける
別の場面。郡上はぼたんやあかねと一緒に、いちごウイスキーを仕込んでいた。料理をしない郡上は、ぼたんから包丁やまな板を借りての挑戦。いちごと氷砂糖にウイスキーを注ぎ、シェリー樽熟成のもので漬け込んでいく。
使うのはザ・グレンリベット——スコッチのなかでも、いぶきがいちばん好きなウイスキーだ。「あの子の誕生日か何かにあげたら、喜ぶかな」と、郡上の手つきはどこかそわそわしている。
誰のために作るのかが、はっきりと伝わってくる仕込みの場面。いぶきの好物を選ぶ郡上の細やかさに、その想いの真剣さがにじんでいた。
あの子にあげたら、喜ぶかな
「飲む時は絶対、いぶきさんと飲んでほしいです」。ぼたんがそう言うと、郡上は「かなわないな、神稲さんには」と静かに笑う。ぼたんの屈託のなさが、かえって郡上の恋の切なさを浮かび上がらせる。
好きな人の好物を、好きな人のために漬ける。その一途さが報われるのかどうか——甘いお酒の底に、ほろ苦さが静かに沈んでいた。
恋敵になり得るぼたんにすら、素直に脱帽してしまう郡上の人の良さ。だからこそ、この報われなさが余計に胸に迫ってくる。
答えは、沈黙と煙草
答えられなかった、問いかけ
この回でいぶきは、二つの問いに答えられずにいる。「上伊那さんと行った温泉と、どっちがよかった?」。そして「運転がなかったら、飲んでくれるの?」——どちらも、郡上に向けての問いだった。
言葉で応えることのできないいぶき。その沈黙こそが、彼女の揺れる心をなにより雄弁に物語っていた。
郡上先輩に応える、一本の煙草
答えのかわりに、いぶきが選んだのは一本の煙草だった。郡上と分け合うその煙——甘いお酒に対する、なんともほろ苦い演出。ぼたんとの間にはない、郡上といぶきだけの関係が、そこにはたしかにあった。
言葉にしない優しさで、いぶきは郡上の気持ちに応えようとする。実らないと分かっていても寄り添う二人の距離が、静かに胸を締めつけた。
まとめ——褪せてゆく色と、次章の予感
飛行機雲と、ED演出の暗喩
第5話は、演出でも語り草になった。飛行機雲で二人を分かつカット、花吹雪とともに舞い、別れていく蝶。物悲しさをたたえた映像が、心を掴んで離さない。
極めつけはエンディング。“かなで”の色が、最後にそっと褪せていく。いぶきの心が、郡上からぼたんへ移ろってしまったことを暗示するその一瞬に、多くの視聴者が胸を打たれた。
来月、留学生がやってくる
山梨の温泉からの帰り道、車中で告げられるのは新しい寮生の予告。来月、9月入学の留学生が寮にやってくるという。ほろ苦い余韻の先に、次章のにぎやかな予感がそっと差し込まれる。
甘さとほろ苦さ、そして新たな出会いへの期待。さまざまな感情を一杯のグラスに注ぎ込んだような、忘れがたい一話だった。




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