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第7話のサブタイトルは「玲夜の秘密の恋人」。祖父母の家に現れた元婚約者の鬼山桜子が、花嫁はただの器でしかないと告げ、そのうえで玲夜には以前から愛し合っている恋人がいて、相手は高道だと言い置いていく。ただしこの話には裏があり、そう言い切っている本人の側にこそ、この回いちばんの見どころがある。そして揺れた柚子に答えを出すのは玲夜ではなく、祖母が自分の恋の話として語る一言だった。




公式サブタイトルは「玲夜の秘密の恋人」。祖父母の家に現れた元婚約者
「あなたが花嫁様ですね。私、鬼山桜子と申します」
前回の引きをそのまま受けて始まる。「失礼します」「あなたが花嫁様ですね」「私、鬼山桜子と申します」。謝罪から入るくらい礼儀は完璧で、柚子のほうが「いえ、とんでもないです」と恐縮する側に回る。
柚子の第一印象が正直である。「玲夜の隣に立っても、これ以上ないほどお似合いだろうな」。相手を敵だと思う前に、釣り合いの取れた人だと認めてしまっている。この一行があるおかげで、このあと言われることが全部効いてしまう。
場所の選び方も嫌らしい。屋敷でも学校でもなく、祖父母の家という、柚子がいちばん気を抜いている場所に来ている。逃げ場のほうから訪ねてこられた形なので、座って聞くしかない。
副社長として名前だけ知っていた兄
家の説明が入る。「私の家、鬼山家は鬼龍院家の筆頭分家でございます」「過去幾度か鬼龍院からお嫁や婿に来られた方もおり、最も鬼龍院に近い家です」。さらに「高道様のお家と同じく代々鬼龍院に仕えており、父は現当主様の右腕として、兄はグループの副社長として玲夜様をサポートしております」と続く。
ここで柚子が気づく。副社長には会ったことがあったのだ。「桜河としか名乗らなかったから気づかなかったけど、言われてみれば桜子さんとどことなく似ている気がする」。名字を名乗られていなかったので、分家の人間だと分からないままやりとりしていたことになる。
この短いくだりが地味に効く。柚子の周りはすでに鬼山家の人間で固められていたのに、本人だけがそれを知らなかった。知らないうちに囲まれていた、という感覚が、このあとの話の入りをやわらかくしている。
桜子が伝えに来た「立ち位置と立場」
「ただの器でしかありません」
先に予防線が張られる。「私も一族より玲夜様の婚約者に選ばれた時に、とても光栄なことと喜びましたの」「婚約が白紙になったことで花嫁様を恨んではおりませんのよ」。柚子の内心は「恨んでない、本当かな。でもこの人から敵意は感じられない」だった。
そのうえで本題に入る。知っておいてほしいのは「ご自分の立ち位置と立場」だという。「あなたはあくまで花嫁。鬼龍院の家を盛り立てるため、強い次代様を生むための、ただの器でしかありません」「間違っても玲夜様から愛されようなどと、分不相応な希望は抱かぬようにと忠告申し上げに来たのですわ」。
前回、この人は一人になってから身の程というものを教えて差し上げなくては、と独りごちていた。その予告を、一話またいで律儀に実行しにきたことになる。恨んでいないというのも本当なのだと思う。恨みではなく、格の話としてやっている。
「お相手は高道様ですわ」
そしてこの回の副題が出てくる。「玲夜様には、以前より愛し合っている恋人がいらっしゃるのですよ」。「花嫁様が気づかれないのも仕方がありませんわ。あのお二人は周りに知られぬよう、慎重に逢瀬を重ねられているのですから」。相手を問われて返ってきたのが「お相手は高道様ですわ」だった。
ここから先が本題である。「あのお二人は決して結ばれぬ仲なのです」「私はそれが悔しくてならない」「孤独で感情を表さない玲夜様も、あの方にだけは心を許される」「とてもお似合いですのに」「どうやっても結ばれることはない」「可哀想なお二人」。言いながら、本人がいちばん熱くなっている。
極めつけが将来設計である。「私は決めましたの。玲夜様のお飾りの伴侶となり、お二人の仲を密かに見守ろうと」。そのうえで「花嫁様が現れた以上は仕方がありませんね」「ですが決してあの方たちの邪魔だけはなさらないでください」と念を押していく。婚約者の座を、二人を見守るための席として使うつもりだったと告白しているに等しい。衝撃の真実というより、この人の願望を聞かされた回だったと思う。
それでも柚子に刺さってしまう理由
熟年夫婦みたいだと思っていたのは柚子自身
一人になった柚子の反応が「冗談だよね」だった。ところが思い返すと符合してしまう。「確かに玲夜は高道さんに対して並々ならぬ信頼を置いていた」「私自身も、まるで長年苦楽を共にした熟年夫婦のような二人だって思ってた」。
この熟年夫婦という言い方は、以前この人が高道の仕事ぶりを見て自分で口にしたものである。感心して使った言葉が、そのまま疑いの証拠になって返ってくる。「あれは秘書だからだと思っていたが」と言いかけて、「だけど、恋人だ、二人に限って」と自分で打ち消そうとする。
打ち消しきれないので、子鬼に聞いてしまう。「玲夜と高道さんは、本当に恋人同士なの」。答えられるはずのない相手に確認する時点で、もう一人では抱えきれなくなっている。嘘だと言い切れる材料を、この人は何も持っていない。
どちらも電話をかけられずにいた
同じ夜、会合先の玲夜も同じことを考えていた。名簿の確認が終わって「もうこんな時間か」「声だけでも聞きたかったが、柚子はきっともう寝てしまっているだろうな」と言って、そのまま「続ける」と仕事に戻る。
一方の柚子も「玲夜のことだから頻繁に電話をかけてくると思っていたのに、一度もかかってこない」「こっちからかけるのか」「玲夜の迷惑になるし」「寂しい」「会いたいなあ」で止まっている。同じ理由で、二人とも相手を気づかって連絡を取っていない。
すれ違いの作り方が丁寧だった。どちらかが冷たいのではなく、どちらも相手を思って手を止めている。それを知っているのは見ている側だけなので、桜子の話がじわじわ効いてしまう時間が長くなる。
答えを出したのは祖父母の家だった
「もう一人で悩まないで、解決しようとしなくていいのよ」
祖母は最初から気づいていた。「昨日からなんか変よ。桜子さんって人に何か言われたの」。柚子は「大丈夫、なんともないから」と隠し、内心で「おばあちゃんたちに知られたら心配かけちゃう。自分で解決しなきゃ」と決めてしまう。
それを散歩の途中で崩される。「私たちね、ずっとあなたのために何かできることはないかって考えていたわ」「だからもう一人で悩まないで、解決しようとしなくていいのよ」「私たちにもちゃんと心配をさせてほしいの」。
心配をさせてほしい、という言い方が良かった。この人はずっと、迷惑をかけない子でいることで居場所を確保してきた。その努力を、してくれなくていいと正面から言われている。実家では絶対に言われなかった言葉である。
「愛している時は胸が熱くなるのよ」
打ち明けた中身が重い。「玲夜のことを信じたいのに、信じきれないの」「玲夜は私を選んでくれた。でも、もしかしたらそれは夢だったのかも」「玲夜が私を愛してくれているっていうのは嘘なのかもって」「考えれば考えるほど、何が本当なのかわからなくなって、不安で」。
返ってきたのが説教でも保証でもなく、祖母自身の昔話だった。「おじいちゃんと会って恋したばかりの時のこと」「信じたいけど信じられなくて、不安だらけで、毎日そわそわしていたわ」。そして「誰かを愛するって常に不安なの。それが当たり前」「でも、その不安を吹き飛ばしてしまうくらい、幸せだって思える瞬間が訪れる」と続く。
締めが効く。「大丈夫よ柚子。あなたはちゃんと鬼龍院さんを愛しているわ」と言い切ってから、判別のしかたまで教える。「好きな時は頬が熱くなる。そして愛している時は胸が熱くなるのよ」。前回この人は、自分の気持ちが恩人へのものなのか恋なのか分からないと言っていた。その問いに答えを出したのが玲夜ではなく祖母だったのが、この作品らしくてとても良かった。
実家の側で動いているもの
「柚子を育ててきた苦労が報われる」
合間に実家が挟まる。父が電話に出ない相手に苛立ち、母が「本当にあの子、家に帰ってこないじゃない」と焦っている。「さすがにあの鬼龍院玲夜様にたてつくわけにはいかないだろう」に対して、「柚子は鬼の花嫁のまま、絶対に破談などしないよう、うまく家に連れ戻さなきゃ」。
そして本音が出る。「娘が鬼の花嫁になったなんて、こんな最高なことないわ」「今まで柚子を育ててきた苦労が報われるってものよ」。謝罪でも反省でもなく、回収の話をしている。直前まで祖父母の場面を見せられているので、落差が余計にきつい。
対比として置かれているのが祖父の一言である。「鬼龍院さんはな、お前の両親との話が済んだ後も、俺たちのところに定期的に人を送って様子を見に来てくれているんだよ」。柚子が知らないところで続いていた気づかいで、「玲夜は私の大事なものを全て守ろうとしてくれている」という確信につながっていく。
「でもきっと、あの子は知らないのよね」
花梨の側も変わっていた。友達に「花梨のお姉ちゃん、鬼の花嫁になったんだって」「ていうか鬼ってあやかしのトップだったよね」「じゃあ、もしかして花梨より」と言われかけて、「私、もう帰る」と席を立ってしまう。
家でも「みんなしてお姉ちゃんの話ばかり」とこぼす。そこに続くのが「でもきっと、あの子は知らないのよね」「ほんと、かわいそうなお姉ちゃん」である。柚子が知らない何かを、この妹は握っていることになる。
ずっと姉を見下すことで自分の位置を保ってきた子が、外側からその順位をひっくり返されている。かわいそう、という言い方に余裕がないのが分かるので、次に動くときは前より危ないと思う。
「玲夜の秘密の恋人」まとめと考察
会いたいのを我慢していたのは玲夜も同じだった
あやかしの会合は年に一度、数日かけて開かれる。初日は各一族の当主が集まる報告会で、それ以外の日はただの酒宴だという。今年が例年と違ったのは、次期当主として存在感を増した玲夜に誰もが見とれていた点で、「一段と霊力が強くなられて」「花嫁が見つかられたという噂は本当なんだな」と噂される。
当の本人は上の空だった。「柚子はどうしているだろうか」「こんなにも長く離れたのは、出会ってから初めてだ」「少し電話でも」と言いかけたところで面会が入る。心配の中身も具体的で、「自宅の屋敷は俺が結界を張っているから中のことはだいたい分かるが、祖父母の家では柚子の様子が分からない」。
締めの独白が良かった。あやかしにとって花嫁は心を囚われたように愛おしく感じる存在なのだという説明に対して、「その通りだ。柚子と出会った瞬間から、俺は身も心も囚われ続けている」と返す。つまり桜子が言った秘密の恋人の話は、視聴者の側では即座に否定されている。疑っているのは柚子だけという状態を作ったうえで、最後に瑶太の力を借りた花梨が姉に会いに行くと言い出す。祖母のおかげでようやく自分の気持ちを確かめられた直後にこれなので、来週はまた別の方向から揺さぶられることになりそうである。




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