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第7話に出てきた三体が何をするかは、公式サイトのキャラクター欄にもう書いてある。鉄輪の欄には「妖気を圧しつけるような戦い方をする」、呂蓮の欄には「人間に幻を見せて、破滅していく過程を見ることを楽しむ」、鳴子の欄には「結界を張ることを得意としている」。三体は紹介文どおりに現れ、紹介文どおりに戦った。そしてこの回には、どこにも書かれていなかったことが一つだけある。勝った側で起きたことだ。




三体の戦い方は、公式のキャラクター紹介に先に書いてある
第7話は、霧に沈んだ町で三つの戦いが同時に進む回である。相手は鉄輪・呂蓮・鳴子の三体である。公式サイトのキャラクター欄には三体ぶんの紹介文が用意されていて、それぞれが第7話でやったことが、そのまま書いてある(※1)。先に読んでいれば、手の内はほとんど分かってしまう。
ついでに数えておくと、公式のキャラクター紹介は十五名ぶんあり、本人コメント入りのキャスト欄に並ぶのは十一名である。差の四名は芙蓉・鉄輪・呂蓮・鳴子で、そろって第7話に出てきた物ノ怪だった。配役は紹介欄のほうに書いてあり、鉄輪が稲田徹、呂蓮が小林千晃、鳴子が久野美咲。一華は千本木彩花、特務一課課長の久澄陶子は甲斐田裕子である。
鉄輪は、公式の紹介文とほぼ同じ言葉で自己紹介した
公式の鉄輪紹介はこうだ。「恰幅のよい物ノ怪。天鬼の理念に共感しており、人間を食べることを好む。強大な妖力を誇り、妖気を圧しつけるような戦い方をする」。第7話の鉄輪は、弐郎を組み伏せてから「わしは不器用な物ノ怪でな、妖気を押し付けるくらいしかできんが」と前置きして身の上話を始める。使っている言葉が同じである。おもしろいのは温度差のほうで、公式は「強大な妖力を誇り」と長所として書き、本人は「くらいしかできんが」と限界として言う。公式の身長欄も見ておくと鉄輪は三百六十センチで、天鬼の百八十センチ、咬牙の百七十五センチと並べても桁が違う。圧しつけるという戦い方が、体格の欄にまで出ている。
呂蓮の紹介文は、術の説明そのものになっている
呂蓮の欄は「ガスマスクが特徴的な物ノ怪。天鬼に協力しており、人間を見下した言動をとる。人間に幻を見せて、破滅していく過程を見ることを楽しむ」。第7話の呂蓮は、術の中身を自分から一華に説明する。落ちれば本当に死ぬこと、これまで見せてきたのが「甘美で破滅的な幻から地獄のような恐ろしい幻まで」であること、そして「誰も彼も笑ったり泣いたり怯えたりして、最後には壊れて真っ白になる。面白いっすよね」。紹介文にある「過程を見ることを楽しむ」を、本人が実況しているだけだった。
鳴子だけ、日本語版と英語版で強さの書き方が違う
鳴子の欄は「いつも眠そうな物ノ怪。天鬼と行動を共にし、のんびりとした話し方をする。結界を張ることを得意としている」。第7話の鳴子は町ひとつ分の霧を一人で保っていて、呼びかけても返事をしない理由を、呂蓮が「こんだけの結界、一人で張ってるんすから」と代わりに答えている。ここで公式サイトの英語版を開くと、同じ欄の言い方が一段強くなる(※2)。日本語版が「得意としている」で止めているところを、英語版は結界を張って保つ力が second to none、つまり並ぶ者がないと書いている。町ひとつという規模を先に知らせていたのは、英語版のほうだった。
第7話「3 ON THREE」で起きたこと(要点だけ)
公式のあらすじは「巷で発生する物ノ怪による大量虐殺事件。物ノ怪たちは人間を喰らうことで力を蓄えようとしていた。そんな中、町がひとつ霧に覆われる。現場に急行する『黒の灯火』の面々。そこには物ノ怪の鉄輪、呂蓮、鳴子、そしてフードを被った謎の男が待ち構えていた」(※4)。公式の時点で、敵は三体ではなく四人ぶん並べて紹介されている。
- 冒頭のニュースは「頭部のみの遺体」。答えはすぐ後に出る(鉄輪「頭骨は固くて嫌いなんじゃ」)
- 芙蓉が設定を言い直す。「人間の生命力は妖気を底上げする唯一の要素なんじゃ」
- 司場は特務一課の久澄陶子に羅睺の過去、つまり天鬼の名を差し出し、神社の件の帳消しと事件への参加を買う
- 任務の目的は三つ。救命、結界の解除、そして敵勢力の無力化および捕獲
- 平坂町の結界は隠密服の妖気中和機能で突破。内側は通信が通らず、芙蓉の花弁を飲んで代用する
- 鉄輪は弐郎と、呂蓮は一華と、鳴子のいる場所へは零司が向かう。三対三のはずが三つの一対一に割れる
- 勝負は早い。ただし弐郎の側だけ、勝った理由が本人たちにも分かっていない
- 最後、零司の前にフードの男が立ち、桐原流斬術を口にする
公式紹介文は、三体と天鬼の距離まで三通りに書き分けている
もう一段おもしろいのは、三体の紹介文が天鬼との関係を三通りの言葉で書き分けていることである。鉄輪は「天鬼の理念に共感しており」、呂蓮は「天鬼に協力しており」、鳴子は「天鬼と行動を共にし」。同じ陣営の三体に、わざわざ違う言い方が当てられている。そして第7話の三体は、この書き分けのとおりに動いた。
理念に共感している鉄輪は、指示を振り切って出ていく
鳴子が数を訂正した直後、鉄輪は迷わず出撃する。止めたのは呂蓮のほうで、「ボスからの指示、忘れてないっすよね」「だからやっちゃダメっすってば」。鉄輪は聞かない。共感しているのは理念であって、命令ではないという順番が、この一場面に出ている。上から来ている指示より、目の前に現れた相手のほうが優先された。
協力している呂蓮は、止める側に回る
一方の呂蓮は、二百人を生きたまま集める作業を淡々とこなしている。「今だいたい二百くらいっすかね」「やっぱ生きたまんま操って集めるのは、結構時間かかるっすね」。頭だけ残す鉄輪の癖にも「ていうか頭だけ残す癖、なんとかしてくださいよ」と苦情を入れる。この物ノ怪の言葉はどれも段取りの話で、理念の話が一つも出てこない。協力という紹介文の一語が、そのまま仕事の距離感になっている。
行動を共にしているだけの鳴子は、ほとんどしゃべらない
鳴子は呼びかけても返事をしない。第7話で確認できる台詞は「三人じゃない。三人と、一匹」の一つだけである。公式が鳴子に当てた「天鬼と行動を共にし」という言い方は、咬牙の欄にある「天鬼と行動を共にする若い物ノ怪」と同じ形をしている。思想でも仕事でもなく、ただ一緒にいるという位置の二体に、公式は同じ言葉を使っていた。
この回は三度、数を数え直している
サブタイトルは「3 ON THREE」だが、三対三が成立している時間はほとんどない。むしろこの回は、数の言い直しが三度出てくる回である。
敵側が二度、数を言い直す
一度目は鉄輪の「三人か。思ったより少ないの。その程度ならわざわざ徒党を組むまでもなかったの」。二度目が鳴子の「三人じゃない。三人と、一匹」である。この回でいちばん眠そうな物ノ怪が、いちばん正確に数えている。しかもこの一言はただの訂正ではなく、鉄輪を出撃させる合図になった。羅睺という一匹が勘定に入った瞬間、鉄輪にとってこの現場は仕事から目的に変わっている。
味方側も一度、数を言い直す
町の中では羅睺が「妖気が混ざってひでぇ匂いだなぁ」と顔をしかめ、一華に「あんたちょっと妖怪レーダーになりなさいよ」と雑に使われる。返ってきたのが「三つ、いや、妖気は四つだな」だった。結界を張る者、人間に術をかけている者、そして「そいつらよりも強い妖気の奴が二匹」。正確に数え直したのは、いちばん眠そうな物ノ怪と、公式の身長欄で三十二センチしかない黒猫だった。場所の内訳を運んできたのは猫たちで、「北の交差点に人間の群れを動かしている二人と、街の中心にある公園に二人」。第1話から地味に置かれてきた動物と話せる能力が、ここで初めて捜索の主戦力になっている。
四つ目に数えられたのは、人間のはずの男だった
この数え直しは、あとで効いてくる。四つの妖気のうち、鳴子と呂蓮を除いた「そいつらよりも強い」二匹の片方は鉄輪である。残る一匹が、零司の前に立ったフードの男だった。人間であるはずの相手が、羅睺の感覚では物ノ怪と同じ単位で数えられている。零司は捕獲の手順どおり「動くな。武器を捨て、投降しろ。従わなければ、武力行使に移る。これは警告」と告げるのだが、応じた声が桐原流斬術を口にし、零司が「この声は」と漏らしたところで幕が下りる。
鉄輪の来歴は羅睺とまったく同じで、選んだものだけが違う
鉄輪が弐郎を押さえ込んでから始めるのは、追撃ではなく身の上話である。ここで語られる履歴は、第6話で見た羅睺の過去とほとんど同じ形をしている。
祈られていた頃のことを、負かした相手に向かって話す
「かつてわしは山林を治める鬼人として、崇められる存在じゃった」。人間は供物を捧げて祈り、見返りに鉄輪はその地を守った。「あの頃は良かったのう」。それを崩したのが御庭番衆で、「御庭番が現れてからは、祈るのをやめたどころか、隠密と共謀してわしを闇討ちしようとしおった。だから殺した」。結論が「昨日まで笑顔で祈っておったのが、今日には寄ってたかって殺しに来よる。それが貴様ら人間じゃ」である。
同じ履歴から、羅睺は自分を封じ、鉄輪は食う側に回った
第6話の羅睺も、村の土地神として拝まれ、御庭番衆の登場で狩られる側に落ちた物ノ怪だった。違うのはそこから先である。羅睺は殺生石に憑依して自分を封印し、鉄輪は人間を食う側に回った。締めの「羅睺の力もこの程度ならば、葬る必要もあるまい。このままここで新時代の贄となれ」で、かつて贄を捧げられていた側が、今度は贄を要求する側になっている。公式の英語版を読むと、この順番はもう少しはっきり書かれている(※2)。日本語版が「天鬼の理念に共感しており、人間を食べることを好む」と並べて置くのに対し、英語版は天鬼への共感が人間を食べたい気持ちを強めた、という因果の形で書いている。
絵コンテについては、公式サイトに一点だけ答えがある
この回は数百年分の来歴を殴り合いの最中に語らせる構成で、テンポが何度も止まる。絵コンテの側に無理が出ているようにも見えるのだが、公式サイトのスタッフ欄を読むと、少なくとも一点は答えが出ている。原作者のタカキツヨシが「制作に関しては設定や絵コンテなど、私もしっかり監修させて頂いています」と自分で書いている(※3)。「最大限に原作を尊重しつつ、アニメとしてより良い形に再構築されてる」という言い方も、そこに並んでいる。同じ欄でCGディレクターの内藤博高が「これまで100studioで手掛けてきました作画とCGのハイブリッドアニメーションよりもアクションとCG要素が多い映像になっています」と書き、撮影監督の山本聖は「白黒世界のエフェクトのカッコよさ」をどう出すかに絞って試行錯誤したと書いている。霧と妖気しか映らないこの回は、その試行錯誤がいちばん前に出た回だった。なおこの公式サイトには各話スタッフの欄が無いので、第7話の絵コンテを誰が切ったのかは公式からは分からない。監督は馬引圭である。
一華の勝ち方は、第5話と第6話の訓練の答え合わせになっている
三つの戦いのうち、勝った理由がいちばんはっきりしているのは一華のほうである。
呂蓮は、三人のなかでいちばん幻術に慣れた相手を引いた
第5話と第6話で三人が受けていたのは、芙蓉による妖術対抗訓練だった。幻を見せられ、自力で破って出てくるという内容である。一華は母の幻を見せられ、「今さらこんな幻覚で揺らぐほど、私も子供じゃないのよ」と十分以内に破っている。第7話の一華の内心は短い。「冷静さを欠けば、それこそ相手の術中」「これはただの幻」「あいつは完全にこっちを舐めて遊んでる。そこが狙い目」「勝負は一瞬」。呂蓮は、三人のなかでもっとも幻術に慣れた相手を引いてしまった。
制服は演出ではなく、侮りの記号として置かれている
追い詰めるつもりの呂蓮が選んだ手が着せ替えだった。「じゃ、あんたにはこれをプレゼントっす」「人形の着せ替えもおもちゃ遊びの定番っすよ」と言い、次はメイドかナースかと品定めを続ける。この回で一華が制服姿になるのは学校の場面だからではなく、幻術で着せられているからである。戦いの最中に衣装を替えて遊ぶこと自体が、相手を脅威と見ていないという宣言になっていた。かわいいと受け取るのが間違いというわけではなく、一枚絵として成立させたうえで侮りを乗せているのがこの場面の作りだ。
「人間なめんな」は、第3話の台詞の対になっている
決着は一瞬だった。次の衣装を見繕う呂蓮に「どれも却下よ」と言い放ち、すでに仕込んであった手をステルスモードの解除で見せる。制御を乱された術者は術を保てず、「うつせみとかいう隠密の技か。器用な猿ね」と吐き捨てるのが精一杯になる。そして一華の一行が「あんたは遊びのつもりでも、こっちは真剣にやってんのよ。人間なめんな」。第3話でこの人は「私が嫌いな二つのものを教えてあげる。物ノ怪と、女だからって舐めてる男よ」と言っていた。舐めてきた相手を同じやり方で沈める、という形が二度目である。公式の呂蓮紹介にある「人間を見下した言動をとる」という一行に、まっすぐ当たった台詞だった。
まとめと次回予想:書かれていなかったのは、勝った側だけである
三体は紹介文どおりに動き、鉄輪と呂蓮は紹介文どおりに沈んだ。どちらもあっけないほど早く片がつく。それなのに終わったあとに残るのが勝った側の不安だけという回だった。
羅睺が食べていたもの
鉄輪を沈めたのは訓練の成果ではない。隠密服が脱げた瞬間に妖気が噴き出し、鉄輪ですら「まだそんな力を隠しとったとは」と驚く。弐郎の「おい、羅睺、どうなってんだよこれ」に、羅睺は「俺にもよく分からねえんだが」と答えるしかない。隠密服の妖気中和機能のせいかと疑うものの、「あれはあくまできっかけ」だと自分で否定し、たどり着いた結論が「封印中、殺生石に削られちまった妖力が、いつの間にか以前にも増して戻っていたのか」「たった数週間で」だった。ここで冒頭の芙蓉の説明が効いてくる。妖気を底上げする唯一の要素は人間の生命力で、羅睺はろくに食べていないはずである。それでも増えているなら、どこかから摂っている。「俺は食っていた。いや、食い続けている。自分でも気づかない間、ずっと。こいつの命が」。第5話の咬牙、第6話の天鬼、そして今回の芙蓉と、三度にわたって説明されてきた同じ理屈が、敵ではなく相棒の側に着地する。しかも弐郎はまだ知らない。
次回予想
次回のサブタイトルは「Under dog」で、公式サイトにはあらすじも先に出ている。フードの男は零司の双子の兄で、名前は真司、物ノ怪に魂を売って消息不明になっていた、と公式が書いている(※4)。第6話で妖刀に飲まれた兄が「死に物狂いで強くなって、俺を殺しに来い」と言い残していたので、零司の側の答え合わせは次回そのまま行われるとみていい。読めないのは弐郎のほうである。この回の任務目的は救命・結界の解除・捕獲の三つで、どれもこの回のうちには片づいていない。二百人は倒れたままで、結界は残っていて、捕獲の対象は零司の目の前にいる。そのうえ勝った側の主人公は、自分が食われていることを知らされていない。公式のサブタイトルを八本並べると、日本語は第1話「未来は俺等の手の中」と第4話「たりないふたり」の二本だけで、残りはすべて英語である(※4)。負け犬という単語が次回の題に置かれていて、それが誰を指すのかは、まだ決まっていないように見える。
出典
※1 テレビアニメ公式サイト キャラクター(鉄輪・呂蓮・鳴子ほか十五名の紹介文と配役)/blacktorch-anime.com
※2 テレビアニメ公式サイト英語版 キャラクター(鉄輪・鳴子の英語紹介文)/blacktorch-anime.com
※3 テレビアニメ公式サイト スタッフ&キャスト(原作者・監督・CGディレクター・撮影監督のコメント)/blacktorch-anime.com
※4 テレビアニメ公式サイト ストーリー(第1話〜第8話のサブタイトルとあらすじ)/blacktorch-anime.com




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