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第7話で街猫のハイブチが案内を申し出るときの理由が、「このままあなたを放っておいたら、夜も寝つけなくなってしまう」である。この言い方は、公式サイトのコメント欄にほとんど同じ形で先に載っている。ハイブチ役の杉山紀彰が「気になることを手伝わず放置していたら、心配で夜も眠れなくなってしまう」「ハイブチ君なりの親心のような親切心」と書いていた。そして第7話は、そのハイブチが自分の母には二度と会えなかったと語る回である。




案内役の親切には、公式が先に説明をつけている
第7話でママにゃんを森まで案内するのは、街に住む猫のハイブチである。この回が実質の初登場になる。案内を申し出るときの理由が変わっていて、遠慮はいらない、実は私はおせっかいなので、このままあなたを放っておいたら、夜も寝つけなくなってしまう、と言う。返しがママにゃんの「あらやだ、私もおせっかいだから、その気持ちわかるわ」で、二匹はここで並ぶ。
「夜も眠れなくなってしまう」は、公式のコメント欄にある言葉
公式サイトのコメント欄を開くと、ハイブチ役の杉山紀彰がこう書いている。「ハイブチ君は、ほんわかとした親切なお節介焼きさんなのですが、その心理は気になることを手伝わず放置していたら、心配で夜も眠れなくなってしまうというハイブチ君なりの親心のような親切心から来るものなんですよね」(※1)。本編の台詞とほとんど同じ言い方である。第7話のハイブチが口にしたのは、演じる側が最初から持っていた説明だった。
その親切心に、公式は「親心のような」という言葉を当てている
見落とせないのが続きの一語で、コメントは「ハイブチ君なりの親心のような親切心」と書いている。第7話は、そのハイブチが自分の母の話をする回である。しかも語られるのは母に会えなかった側の記憶だった。おせっかいの出どころが親心だと先に書かれていて、その親心がどこから来たのかを本編が埋めにくる、という順番になっている。
ハイブチが語るのは、二度と会えなかった母の話
道中でハイブチが自分の身の上を話す。「私の母猫はある日突然、人間に使い魔として召喚された」「突然のことで私も兄弟たちも動揺し嘆いた」。それでも「母猫が教えてくれたことを守ろうとお互いに誓い合い、それを支えに生き延びた」と続き、教えの中身を聞かれた答えが「まあ、みんなで力を合わせて生きていくってことだ」。その後に会えたのか、という問いへの答えが「いや、おそらく寿命で亡くなっただろう。兄弟たちも亡くなってだいぶ経つからな」である。召喚されて消えた母を持つ猫が、召喚されて消えた母を、その子のところへ案内している。この回の案内役は、そういう位置に置かれていた。
第7話「母猫の帰還」で起きたこと(要点だけ)
公式のあらすじは「アンネロッサに勧められ、魔法学校に召喚されて以来初めて故郷の「しょしんしゃの森」へと帰ることにした母猫。案内役の街猫・ハイブチとともに近くの街から歩いて森を目指すことにする」(※2)。森の名は、公式表記だとひらがなである。
- 学校の庭に猫じゃらし。庭師が森から種を分けてもらったもので、交渉相手の猫を「なかなか好感の持てる人物、いや猫物でしてな」と評する
- 森の竜は皇竜、つまり竜の皇帝の称号を持ち、一息で一国の軍を滅ぼし焼き払ったという逸話がある。ママにゃんは「本当にあの子のことかしら」と疑う
- 移動を頼まれたグレーターデーモンは、ママにゃんが昔育てた魔獣で、猫竜を弟と呼ぶ。「あの森には印をつけられないんだ」=瞬間移動が使えない
- 別れ際が「あの森、クマが多いからね。お母ちゃんも歳なんだから、向かって行ったりしないで」
- 街でハイブチと出会う。ママにゃんは真名を伏せ、「あだ名でママにゃんって呼んでね」と頼む
- モシャモシャ広場は祭りの前日で、四代目に「祭りの日以外は、みだりに中に入れるわけにはいかねえ」と断られる。ついでに「そういうあなたは、尻尾が二つあるぞ」と見抜かれる
- 森は変わっていたが、洞窟だけは変わっていない。決め手になったのは匂いだった
- 再会。猫竜が「だって約束しただろ」と言い、ママにゃんが「約束? そんなのしたかしら」と返す
引用したのは原作漫画の公式アカウントで、第7話がコミックス第4巻収録のエピソードだと告知している。同じアカウントは第6話を第2巻収録と告知していたので、巻の順にそのまま並べているわけではない。公式のイントロダクションもオムニバス形式でアニメ化と書いていて、どの一本を先に出すかは巻数と別の基準で決められている(※1)。付け加えると、猫竜を弟と呼ぶ魔獣が目の前にいるのに、ママにゃんは竜の寿命のほうを心配している。この回のママにゃんは、自分の記憶より噂のほうを信じかけている。
公式のコメント欄は、この回の他の面々も先に説明していた
同じコメント欄を続けて読むと、第7話に出てくる面々の振る舞いが、そろって先に書かれていることに気づく。
四代目モシャモシャは「穏やかな見た目に反して厳しい面も見せます」
四代目モシャモシャ役の上田燿司のコメントはこうだ。「猫の世界にも色々ありまして、こちらは代々ワザ(技・業)を受け継ぐ職業。穏やかな見た目に反して厳しい面も見せます。仲間の喜びとともにお祝いを司る大事な役目」(※1)。第7話の四代目は、立派な猫じゃらしを育ててくれてありがとうと礼を言われて上機嫌になった直後、広場に入れてほしいという頼みを「しかし決まりは決まりだ。祭りの日以外は、みだりに中に入れるわけにはいかねえ」で断る。理由が「祭りの前日に誰かを入れたとあっちゃ、みなが羨ましがるだろ」で、そのまま「明日また来てやってくださいよ」に転がる。厳しい面とお祝いを司る役目が、ひと続きの場面に収まっている。
猫竜は「威厳があり堅物」から「意識変化していく」
猫竜役の子安武人のコメントは「私の演じる猫竜さんは物語の始まりは威厳があり堅物なのですが、様々な触れ合いを通して、意識変化していくキャラクターです。率直に言って可愛い奴です(笑)」(※1)。皇竜と呼ばれる竜が、母の顔を見た瞬間に「お母ちゃん? なんでお母ちゃんがこんなところに」と言い、以降ずっと押され続ける。可愛い奴、という一語が第7話で回収された形になっている。
ママにゃんは「肝っ玉かあちゃん」、グレーターデーモンは「ママにゃんの愛」
ママにゃん役の井上喜久子は「母猫は優しくて、どんな子も分け隔てなく育てますが、ちょっと肝っ玉かあちゃんの部分もある」と書いている。第7話の締めが「あんたもついてきなさい。どんだけ狩りがうまくなったか見てあげる」なので、肝っ玉かあちゃんのほうで終わる回だった。もう一件、グレーターデーモン役の田所陽向のコメントは「ママにゃんの愛、皆さんも受け取ってください」で締められている(※1)。第7話で「お母ちゃんも歳なんだから、向かって行ったりしないで」と心配していたのは、その愛を先に受け取っていた側である。
すれ違いを解いたのは、言葉ではなく匂いのほうである
この回のすれ違いは二重になっている。ママにゃんは噂の竜が我が子だと思えず、猫竜は母がとうに亡くなったと思っている。
ママにゃん側は、噂が大きすぎて結びつかない
庭師が語る猫竜は、竜の皇帝である皇竜の称号を持ち、一息で一国の軍を滅ぼし焼き払ったという逸話まである存在だった。それを聞いたママにゃんの内心が「本当にあの子のことかしら。噂を聞けば聞くほど、あの子ではない気がするわ」。ハイブチが「猫に育てられた竜というのは、そうそういるものではないでしょ」と常識的に返すのだが、答えが「そう? 結構いるんじゃない? ほら、私たちっておせっかい、お世話焼きだから」である。猫の側から見ると、竜を拾って育てるのは特別なことではないらしい。
猫竜側は、再会するまで言葉にならない
もう片方は、再会の場面で初めて分かる。猫竜の口から出るのが「やっぱりお母ちゃんだ。生きてたんだね」で、ここでこの竜が母を過去形で数えていたことがはっきりする。根拠は前半に置いてあった。ハイブチが自分の母について「いや、おそらく寿命で亡くなっただろう」と答えていて、召喚された猫が帰ってこないというのは、この世界では珍しくない結末らしいと分かるようになっている。森を進むママにゃんの側にも、確かにこの森に竜の子がおりました、だがずいぶん昔に亡くなりました、という言葉が重なる。誰が言っているのかは画面から確かめられないので置き方だけを見ておくと、どちらの側にも、相手はもういないという話が用意されていたことになる。
目で見て分からなかったものが、鼻で分かる
洞窟に着いても、そこにいるのは知らない子猫たちである。それでもママにゃんには分かってしまう。「この子たちからも、洞窟の周りからも、鼻を利かせればかすかに。森全体も、あの子の匂いだ」。続くのが「小さくて頼りなかったあの子。今はなんて力強い匂いなんだ」で、時間が経ったことと、それでも同じ子であることを、一つの感覚で同時に受け取っている。直前まで独白が「知らない猫たち、知らない道」と続いていただけに、順番として効いていた。
守り続けた側と、言ったことを覚えていない側
再会そのものは拍子抜けするほど早く済む。重いのは、その少しあとに来る。
皇竜が、一言も返せなくなる
ママにゃんの第一声が「魔法も上手になって。でも、すぐにあんただってわかったわ」。猫竜の返事が「お母ちゃん? なんでお母ちゃんがこんなところに」で、ここから口調が変わる。「こんなところってなんだい。私はここであんたにお乳をあげて育てあげたんだよ」「あんたが初めて狩りができたときとか、空を飛んだときとか、火を吹いたときとか、お母ちゃんは全部覚えてるんだからね」と畳みかけられて、一国の軍を焼いたと噂される竜が、一言も返せない。
「約束。そんなのしたかしら」
この回でいちばん効くのが次のやりとりである。ずっとこの森を守ってくれてたのね、と言われた猫竜の答えが「だって約束しただろ」。ママにゃんの返事が「約束? そんなのしたかしら」だった。猫竜が続ける。「あのとき消える前にそう言ったじゃないか。だから僕はここでずっと」。第3話で示されていた、みんな仲良く過ごすこと、決して喧嘩はしないように、という言葉である。言った当人は覚えていない。
それでも返ってくるのは「ありがとう」
覚えていないと言われた側が拗ねるでもなく、覚えていない側が取り繕うでもなく、ママにゃんの返事は「ありがとう」だった。約束を守り続けた理由が、途中から約束そのものではなくなっているのがこの場面の芯だと思う。言った本人が忘れているなら、その言葉を守り続けたのは猫竜の側の意思である。そのうえで礼を言われている。
サブタイトルの形が、第6話を境に変わっている
公式サイトで各話の題を並べると、第6話を境に形が変わっているのが見える(※2)。
第1話から第5話までは、全部「AとB」だった
第1話「猫と竜」、第2話「母猫と少女」、第3話「子猫達と羽のおじちゃん」、第4話「黒猫と王子」、第5話「白猫と少女」。五本続けて、二者を「と」でつないだ題である。誰と誰の話なのかが、題の時点で決まっていた。
第6話と第7話だけ、「と」がない
第6話「猫じゃらしの夜」、第7話「母猫の帰還」。どちらも二者を「と」で結んでいない。第7話は母と子が再会する回なのに、題が指しているのは帰還のほうだけである。実際、画面で長いのも二匹が向き合う時間ではなく、ママにゃんが一匹で歩いて確かめていく時間だった。庭園の猫じゃらし、皇竜の噂、変わってしまった道、変わっていない洞窟。再会は最後に置かれている。
引用したのは、この回のコンテを担当した人のポスト
引用したポストで、第7話のコンテを担当した人が普段は三百カットくらいのところ、この話数はたった二百十二カットだったと書いている。「こんな少ないコンテを描いたのは初めて。だが、その分じっくり猫たちをおみせ出来た」。カット数が少ないというのは一つの画面が長いということで、歩く時間と匂いを嗅ぐ時間で持たせたこの回の作りと噛み合う。ただし公式サイトには各話スタッフの欄が無いので、照らし合わせられるのはここまでである。公式に載っているのは、監督のオ ジング、シリーズ構成の広田光毅までだった(※3)。
まとめと次回予想:案内役の続きは、公式がもう書いている
母に会えなかった猫が、母と子を引き合わせた回だった。案内役の出番はここで一区切りになるのだが、その続きは公式サイトにもう出ている。
第8話はハイブチの側から始まる
第8話の題が「城下町の生活&黒猫と冒険王子」で、公式のあらすじが「城下町の大鐘楼を寝床とする街猫・ハイブチは、今日も街で起こる出来事を見ている。時には彼自身も頼まれ事をしたりして街での暮らしにすっかり馴染んでいる」と書いている(※2)。次も出るのか、という問いには公式が答えを出していることになる。寝床が大鐘楼だというのも、この一文で初めて出てくる。題が二本立てで組まれているのもこの回との差で、第7話は三十分をまるごと一本に使った回だった。
残っているのは、四代目が勝手に組んだ明日の予定
第7話の終わりで決まっているのは、二、三日泊まることと、狩りについていくことである。そこへもう一つ、四代目の一言が残っている。「明日また来てやってくださいよ。羽のおじさんと親子で楽しむ猫じゃらしってわけさ」。第6話は猫じゃらしの祭りの当日を描いた回で、第7話の四代目は明日が祭りだと言っている。同じ祭りを指しているのかまでは画面から確かめられないが、祭りの広場に母と子が並んで座る絵が、予告なしに用意されている。守った約束を覚えていない相手と、その相手に礼を言われた竜が、翌日いっしょに猫じゃらしを咥えるのだとしたら、この二話が続けて置かれた理由としては十分だと思う。
出典
※1 テレビアニメ公式サイト(イントロダクションとキャストのコメント欄)/nekoryuu-pr.com
※2 テレビアニメ公式サイト ストーリー(第1話〜第8話のサブタイトルとあらすじ)/nekoryuu-pr.com
※3 テレビアニメ公式サイト スタッフ&キャスト/nekoryuu-pr.com




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