この記事の作品:
プリステラでの魔女教との死闘を制したスバルたち。だが暴食に名前を食われたユリウスや、名前も記憶も奪われ眠るレムを取り戻す手がかりは掴めない。そこで一行は、すべてを見通す「賢者」シャウラを求め、前人未到のプレアデス監視塔を目指す決意を固める。さらに、アナスタシアに隠されたある秘密も明らかになる。第67話を振り返る。




手詰まりと、新たな目的地
癒えぬ傷跡
魔女教大罪司教との激闘を制したスバルたち。だが勝利の裏で、街には深い傷跡が残されていた。色欲によって姿を変えられた人々、そして暴食に「名前」を食われ、存在ごと忘れ去られてしまった者たち。
捕らえた大罪司教が、素直に戻し方を教えてくれるはずもない。被害者をどう元に戻すのか、その手立てが見つからず、一行は完全な手詰まりに陥っていた。
華々しい勝利の直後に、あえて「勝っても取り戻せないもの」を突きつけてくる幕開けが重い。とりわけ、名前を食われても意識だけは残るユリウスの孤独が痛ましく、この救済の物語に否応なく引き込まれる。
全知の賢者を頼る
手詰まりを破る一手を示したのは、アナスタシアだった。「すごーく物知りさん」。すなわち、この世のすべてを見通すという伝説の「賢者シャウラ」を頼ろう、というのだ。
シャウラが隠遁するのは、ルグニカ王国東端のアウグリア砂丘に立つプレアデス監視塔。封印された嫉妬の魔女を見張るための塔で、向かっても近づけない結界に阻まれ、かつてはラインハルトすら攻略に失敗したという。それでも一行は、被害者を救うため、前人未到のその地を目指す決意を固める。
「賢者」「監視塔」「三英傑」と、いかにも大冒険の予感を煽るワードが並び、物語が新章へ舵を切ったのが伝わってくる。絶望的な難所と分かっていてなお足を踏み出すスバルたちの覚悟に、静かに胸が熱くなる。
アナスタシアの、正体
見抜かれた“猿芝居”
旅立ちの前夜、スバルはアナスタシアに鋭く切り込む。「お前はアナスタシアさんじゃない」。大事な仲間が生涯残る怪我を負ったのに、あまりに人間味のない言動。その違和感の正体を、彼は確信していた。
かつてプリシラも彼女を「蜜狐」と呼んで見抜いていたという。観念した“アナスタシア”の姿をした何かが、静かにその正体を明かし始める。
スバルが理屈ではなく「らしくなさ」で偽物を見破るのが、彼らしくて唸らされる。ここぞで名前が挙がるプリシラの慧眼も心憎く、キャラクターの積み重ねが効いた見抜きの場面だ。
魔女ではない、もう一人のエキドナ
その正体は、人工精霊エキドナ。アナスタシアが肌身離さず巻いているキツネの襟巻きこそが、彼の本体だった。かの「強欲の魔女」と同じ名を持つが、まったくの別存在だという。
10年以上アナと共にあり、家族に近い情を抱く彼は、事情あってアナのオドを媒介にその身を「上書き」している状態にあった。しかも今回はなぜか、元の襟巻きに戻れなくなってしまったという。体を返す方法を賢者に問いたい。それが彼の本当の目的だった。スバルは、この秘密をユリウスたちには伏せると約束する。
「魔女エキドナ」を知る視聴者ほど身構える名前を出しつつ、まるで別物の“いい奴”として登場させる肩透かしが上手い。アナを心から案じるその情の深さに、思わず警戒を解かされてしまう。
砂漠へ、仲間とともに
魔獣使いメィリィ
魔獣がひしめくアウグリア砂丘を越えるには、心強い助っ人が要る。一行がメイザース邸で頼ったのは、魔獣使いの少女メィリィ。魔獣を遠ざけることも飼い慣らすことも自在な、砂丘の経験者だ。
外の世界を怖がり、屋敷にこもりがちだった彼女だが、「一生閉じこもっているのも嫌」と同行を決意する。眠り続けるレムも伴い、砂漠越えの一行が少しずつ整っていく。
「賢者さんを食べさせるのも自由」と物騒な冗談を飛ばすメィリィの危うさも、少しずつ外へ踏み出す健気さも、両方描かれていて味わい深い。喪失を抱えた面々が、それでも前へ進もうとする編成に温かさを感じる。
取り戻すという、誓い
旅立ちの支度が進む中、ラムは妹レムの身を清め、着替えさせる。命がけの砂漠行に、なぜスバル自身が向かうのか。問われた彼の答えは、まっすぐだった。
「目が覚めたとき、最初に見るのが俺であってほしい」。感情を抜きにすれば、起こす役は誰でもいい。それでも、と彼は言う。「俺が助けてやりたい。俺の全部で、あいつを救ってやりたい」。「俺はお前を取り戻すよ、レム。それが俺の誓いだ」。
忘れられ、眠り続けるレムへ向ける、見返りを求めないスバルの想いがただただ尊い。理屈で割り切れる話に「感情をぶっ込む」と言い切る不器用な誠実さこそ、彼の芯なのだと改めて胸を打たれる。
「喪失からの出発」まとめと考察
ゴージャスタイガーの涙
Cパートは、プリステラに残ったガーフィールの物語。「ゴージャスタイガー」と名乗る彼が、母のように慕う女性のもとを訪ねる、心温まる一幕だ。
彼女が我が子につけた名は、フレドとラフィール。それぞれフレデリカ、ガーフィールを思わせる響きだった。母を前に子供のように涙する彼の姿に、5章を清算しつつ次章への希望をつなぐ、喪失編ならではの情感が満ちていた。
本筋の重さを、ガーフィールの不器用な涙がそっと受け止めてくれる構成が心地よい。名前に込められた伏線もにくく、失っても忘れても、それでも前を向きたくなる。そんな一話の余韻を美しく締めくくってくれた。
監視塔の、彼方へ
3期から地続きに幕を開けた第4期は、「喪失編」の名にふさわしく、取り戻すべきものの大きさを丁寧に積み上げてきた。ユリウス、レム、アナスタシア。彼らを救う鍵は、前人未到の監視塔の彼方にある。
全知の賢者は、はたして答えをくれるのか。魔獣ひしめく砂丘の先で、スバルたちを待つものは何か。死に戻りの少年の、新たな挑戦が始まる。次回からの監視塔編に、大いに期待したい。












コメント
暴食の権能が三種類あるというか、「名前を食われた状態」「記憶を食われた状態」「名前も記憶も食われた状態」の三種類があります
「名前」を食われると周囲に忘れられ。記憶を食われると記憶喪失になり、両方を食われると周囲に忘れられた状態で意識不明になります
またレムの書いた親書が白紙になる等、物理的な痕跡にも影響する模様
暴食の権能の詳しい条件は不明ですが、条件の一つに相手の名前を知ってる事があり、三期でフェルトは孤児であるため本人も本名を知らなかったのが幸いして被害を免れています
アルは何故か暴食の権能を知っており、三期でスバルたちに「暴食の大罪司教には名前を知られるな」と助言してます