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第7話の公式サブタイトルは「遺物の復元」。ところがこの回で復元を必要としているのは、遼河だけではない。首を斬られた大河原の側も同じ回で同じ問題を抱えていて、しかも復元師と先に連絡がついているのは向こうのほうである。そしてこの回で本当に壊れているのは、遺物ではなく人間のほうだった。




復元が要るのは、主人公のほうだけではない
第7話の公式サブタイトルは「遺物の復元」(※1)。素直に読めば、戦いで壊れた遼河の遺物を直す回である。実際そのとおりなのだが、同じ問題を、この回は敵側にも同時に持たせている。
公式のあらすじは、片側しか書いていない
公式サイトのあらすじはこうだ。「自らの傘下に誘う大河原の首を斬る遼河。だが「アキレウスの遺物」を所有する大河原は不死身だった。その戦いでダメージを受けた遺物を復元するため、遼河はアイリーンにある人物の捜索を頼む。」(※1)。主語はすべて遼河のほうにある。
ところが本編では、首を斬られた側も「いずれにせよ復元が必要だ」と言われている。しかも「復元師に話をつけてやる」と続く。復元師の居場所を先に押さえているのは、敵のほうだった。遼河が捜索を頼んだ相手はすでに死んだことになっているのに、向こうは電話一本でつながっている。副題は両側にかかっている。
壊れているのは、遺物だけではない
もう一つ、この回は後半で復元師そのものが壊れていることを見せる。詐欺王と呼ばれる人物が、なぜそう呼ばれるようになったのか。その理由が「盗まれたから」だと分かる。盗む側の主人公と、盗まれた側の相手が向き合う回になっていて、副題の「復元」は人間のほうにもかかっている。
第7話「遺物の復元」で起きたこと(要点だけ)
本編で起きる順に並べるとこうなる。
- 大河原の勧誘。「私の元に来い」に対し、遼河は「手を組もうと言いながら元に来いだと?」と拒む。
- 誘い文句は「戦闘用はもちろん医療用まで」。遼河が反応したのはこの一語だった。
- 遼河が大河原の首を斬り落とす。だがアキレウスの遺物で復活する。
- アキレウスの神話が説明される。かかとだけが水に浸らず弱点になった。
- 遼河の遺物が損傷。ハンムラビ法典もダメージを負う。
- アイリーンに柳孝太郎の捜索を依頼。返ってきたのは「なくなったそうです」。
- 遺物復元師という職能の説明。復元遺物は芸術系統で、扱うには神話力がいる。
- 大河原側も「いずれにせよ復元が必要だ」「復元師に話をつけてやる」と動く。
- 遼河は美術品取引所を全国50カ所以上、全部回る。
- 壊れた遺物を持ち込んで反応を見る。秘書が連絡した相手が柳だった。
- 柳の手口が明かされる。復元を口実に本物を預かり、依頼人には複製を渡す。
- 柳を捕らえ、ハンムラビ法典で縛った専属契約を結ばせる。契約金6000ドル。
- 柳の過去。師のジャン・リチャードに画風を盗まれ、美術界から葬られた。
- 柳が逃げてTKBMへ。だがジャン・リチャードは大河原の身内だった。
アキレウスの神話が、そのまま攻略のヒントになっている
この作品の遺物は、元ネタの神話をそのまま能力にしている。今回はそれがそのまま攻略の手がかりに変わる場面が出てきた。
弱点の場所は分からないが、あることだけは確定している
大河原の不死を支えているのがアキレウスの遺物である。作中の説明は「スティクス川の水に浸したアキレウスの体」、「幼い頃に母のテティスにより、スティクス川の水に浸されて強靭な体を得た」、「しかしその時掴まれていたかかとは水に浸らず、弱点となってしまった」。神話の要約としては教科書どおりだ。
効いているのは、遼河がそれをどう受け取ったかである。「こいつの力にも弱点があるはず」、「問題はそれがどこなのかわからないことだ」。弱点の位置は不明でも、弱点が存在することだけは神話が保証している。元ネタを知っていることが、そのまま「必ず勝ち筋がある」という前提になる。未来の知識で墓を攻略してきたこの主人公にとって、神話の知識は未来の知識と同じ働きをする。
「医療用を思う存分」に反応した理由
勧誘の場面も、前世を知っていると読み方が変わる。大河原が並べる条件は「我がTKBMの数え切れないほどの遺物を思う存分使うことができる」、「戦闘用はもちろん医療用まで」である。ここで遼河が食いつくのが「医療用を思う存分だと?」だった。
続く一言が答えになっている。「不老草を餌にこき使われたことは今でも忘れない」、「なめるなよ」「そんな言葉に二度も乗せられるもんか」。前世で使われた餌が、そのまま同じ形で差し出されている。大河原の側は初対面のつもりで最良の条件を並べているのに、その最良の条件が、相手にとっては一番の地雷だった。勧誘が失敗する理由が、大河原には最後まで分かっていない。
未来を知っている男が、この回で初めて未来と食い違う
設定上いちばん大きい出来事は、戦闘のほうではない。
五年後に会うはずの相手が、もう死んでいる
アイリーンへの依頼は「ある人を探していただけませんか」「柳孝太郎、日本人です」。返ってきたのが「なくなったそうです」だった。アイリーンの説明も具体的で、兄が数ヶ月前にその人物から名画を買って贋作をつかまされ、兄が後を追ったところ、車がガードレールを突き破って崖下に落ちたという。
ここでの遼河の反応が重要だ。「これは予想外だな」、「待てよ、あいつは今の時点で多分26歳くらい」、「なら俺と初めて会ったのは今から5年後のはずだ」、「すでに死んだだと?」。未来の知識が、初めて当てにならなくなった。墓の位置も罠も遺物の所在も全部知っている男が、人ひとりの生き死にだけは予定表から外れた。結果として柳は生きていたわけだが、「知っているはずのことを確認しに行く」という手順が一度崩れたのがこの回である。
支配の道を選んだ代償が、ここで請求される
遺物復元師の説明も、ただの用語解説では終わっていない。遺物は様々な理由で耐久度が落ちたり壊れたりする。破損した遺物を復元できる復元遺物が存在し、それを扱う者を遺物復元師と呼ぶ。そして「復元遺物は芸術系統の遺物で、扱うには神話力がいる」。
最後に置かれるのが「だから俺とは相性が良くない」である。第3話で剛力遼河が選んだのは支配の道で、遺物と協力する神話力ではなく、力ずくで従わせる支配力を伸ばしてきた。その選択の請求書が、ここで届いている。自分で直せないから他人を探すしかない、という状況は、強さの都合ではなく、生き方の都合で発生している。取れる遺物と扱える遺物は別だという話は、前回に神クラスの遺物を抜いておきながら支配力が足りずに使えなかった件とも地続きだ。
詐欺師を、詐欺の手口ごと釣り上げる
捜索の方法が、この回でいちばん面白いところだった。
総当たりから始めている
最初にやるのは力技である。柳に近しい人が運営している美術品取引所が全国に50カ所以上あると分かると、「全部行くつもりですか」と聞かれて、そのまま全部回る。連れ回される呉羽が「兄貴、ここがもう最後ですよね」「疲れて死にそうです」とへばっているのに、返事は「つべこべ言わずについてこい」。未来の知識で先回りする主人公が、この回だけは足で潰している。
手口を知ったうえで、その手口の餌をまく
仕掛けのほうは頭を使っている。ギャラリーに持ち込むのは壊れた遺物で、それも数が多く、全部レベルが高いものを見せる。受付が奥へ引っ込んだ時点で読み切っているのが、「この女は柳の秘書だ」「今連絡してるのは間違いなく柳」「このレベルの遺物を復元できるのは、やつしかいないからな」。そして「やっぱり柳は生きていた」。
効いているのは、その餌が相手の手口そのものだということである。柳が詐欺王と呼ばれる理由は、贋作画家の秘密のサインというBクラスの複製遺物を持っているからで、やり口は復元を口実に遺物を預かり、依頼人には複製品を渡し、本物は自分の手元へ。偽物は遺物特有のオーラまで放ち、半日経つとオーラが消える。つまり高レベルの遺物をまとめて持ち込む客は、この詐欺師にとって最高の獲物になる。
実際、向こう側も同じことを考えている。「簡単に騙せそうです」「どうしましょうか」に対して、返ってくるのが「なら丁重に迎えないとね」。騙す気で迎えに出た側と、騙されるふりで待っている側が、同じ部屋で握手している。副題は「遺物の復元」だが、この場面で行われようとしているのは本物と偽物の交換だった。
契約の罰則が、前回の遺物になっている
捕らえたあとがまた早い。何を言っても通じないと見るや、「説得はやめだ」と切り替えて遺物を取り出す。それがシェイクスピアの幼年時代のペンで、「書いたことが現実になる力を持ってる」という代物だった。以後の交渉は、書かれた内容をどうやめさせるかという話に変わる。交渉の余地を、交渉の前に消してから始めている。
契約そのものも、この作品らしい。柳が「奴隷契約」と呼ぶのに対して遼河は「専属契約って言ってくれよな」、それに対して「お前ら同じようなもんだ」と返される。問題は罰則のほうで、契約違反したらハンムラビ法典で懲らしめられるという条項がついている。
前回、神々への反撃に使った遺物が、今回は契約書の担保に使われている。目には目を、という原則をそのまま罰則条項に流用した形だ。しかも本人は「よく見てみろ、契約金はいくらだ」「6000ドルだぞ」「それに復元件数によってボーナスも支給される」「好条件だろうが」と、完全に雇用条件の話として押している。前回の予告で「念のため縄持ってくかな」と言っていた男が、実際に縄で吊るしたうえで待遇の説明をしている。
詐欺王になった理由は、盗まれたことにある
後半で語られる過去が、この回の芯である。
潰された若い天才画家
経歴が短くまとめられる。もともと美術界で注目される新人芸術家で、アメリカの名門大学に全額奨学金で入れるはずだった。ところが独特の画風を盗まれてしまう。犯人は師のジャン・リチャードで、結果としてジャン・リチャードの二番煎じという汚名を着せられ、美術界から葬り去られた。そしてどん底で秘密のサインの遺物を手にして、詐欺師として活動し始めた。
盗掘王と詐欺王が、盗む側と盗まれた側として向かい合っている。遼河は墓から遺物を盗んで成り上がろうとしている人物で、柳は盗まれたせいで盗む側に回った人物である。同じ「王」の呼び名が、片方は選んだ結果、片方は追い込まれた結果についている。
人生を壊したのも、遺物だった
本人の訴えが具体的で重い。「画風ってのはそんなに簡単に真似できるものなのか?」と聞かれて、「できるかもしれない。絵が完成していればね」、「だがあいつは僕が頭に描いた絵まで描き出した」、「頭の中を覗いてるみたいに」。納得のいかなさが、そのまま十五年ぶんの動機になっている。
それに対する遼河の見立てが「方法はあるかもな」「おそらくジャン・リチャードは遺物使いだ」「他の能力を完全にコピーできる遺物もあるんだが」。柳の人生を壊したのも遺物だったということになる。本人はそれを知らないまま詐欺師をやっていた。遺物のことを何も知らずに、遺物で人生を壊された人間という立ち位置は、この作品では珍しい。
逃がしたのは作戦だった
提案は正面から出る。「ジャン・リチャードに奪われた画風と評判を俺が取り戻してやる」、「その代わりに俺の専属復元師になるっていうのはどうだ?」。ところが柳はそのまま逃げ出し、より条件の良いTKBMのほうへ行って同じ取引を持ちかける。「あいつから遺物を奪ってください。そしたら会長と専属契約を結びます」。
手下が「あいつ逃げた!」と騒ぐのに、遼河の返事は「ほっとけ」「どこに行くかはもう分かってる」だった。そして持ちかけられた大河原は「面白いな君」と応じたうえで、その場で電話をかける。「ああ、リチャード。興味深い話を聞いたよ」。
「見ての通り、リチャードとは親しい仲でね」。柳の仇は、逃げ込んだ先の身内だった。逃げた先で捕まる柳を見て、遼河の側が言うのが「作戦成功だな」である。逃がすところまでが手順に入っていた。契約で縛りきれなかったのではなく、縛ったうえで泳がせて、敵の人脈を一本引き出したことになる。
まとめと次回予想:修理待ちの二人が、同じ相手を取り合っている
整理すると、この回が作った状況はかなり単純である。遼河も大河原も遺物が壊れていて、直せる人間は一人しかいない。その一人を、片方は契約で縛り、片方は師匠を人質のように押さえた。復元師の取り合いが、そのまま次の戦線になっている。
第3話と同じ班が作っている
制作面で一つ気づいたことがある。第7話のスタッフは絵コンテ二人、演出二人、総作画監督一人という編成で、この三役の顔ぶれが第3話とまったく同じである(※1)(※2)。第3話は遼河が支配の道を選んだ回で、第7話はその道では直せないものがあると突きつけられる回だった。意図されたものかは分からないが、対になる二本を同じ班が担当している。
ちなみにこの作品の各話スタッフ欄には脚本の項目そのものが無い(※1)。絵コンテ、演出、総作画監督、作画監督だけが並ぶ。原作つきで、しかも制作の座組がそうなっている作品なのだと分かる。
次回予想:先に動くのは、たぶん師匠のほう
予想として書けるのはここまでだ。柳の希望はジャン・リチャードから遺物を奪うことで、これは遼河と大河原の両方に同じ形で持ちかけられている。同じ依頼を二人が受けた状態なので、先に果たしたほうが専属契約を取る。
もう一つ残っているのが、アキレウスの遺物の弱点である。位置は分からないが存在は確定している、というところで止まっている。この回で遼河が神話から引き出した結論は、まだ使われていない。復元がどちらに先に届くのか、そして弱点がどこで判明するのかが、次に見るところになる。
出典
※1 テレビアニメ公式サイト STORY 第7話「遺物の復元」(あらすじ・絵コンテ・演出・総作画監督・作画監督)/tombraiderking-pr.com
※2 同 STORY 第3話(スタッフ編成の比較)/tombraiderking-pr.com




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