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寮で第9話は、シリーズ屈指の“神回”。いぶきが珍しく郡上を交えて宅飲みし、「ボタンとお酒を飲むのが楽しい」と語る一方、その本心を察した郡上はそっと身を引く。後日、星空を見にグランピングへ向かった二人。「あなたは私の特別」の意味に悩んだぼたんに、いぶきは「ボタンを独り占めしたい」と告げ、ぼたんは「友達やめていい?」と応える。湯煙の中で、二人の想いがついに通じ合う。




いぶきの部屋で、宅飲み
ぼたん以外と、飲むいぶき
第9話は、いぶきの部屋での宅飲みから。集まったのは、ぼたん、ジンラン、そして郡上。いつもはぼたんとしか飲まないいぶきが、ぼたん以外の相手と宅飲みするのは、それ自体が小さな事件だった。
卓には、薬用瓶に入ったアルケミエのジン、厚岸蒸留所のウイスキー——牡蠣にウイスキーを合わせる話に、台湾の牡蠣オムレツの話。お酒と食の話題が、いつものように賑やかに飛び交う。
メンバーが一人増えるだけで、いぶきの世界がまた少し広がって見える。その変化の大きさを、さりげない宅飲みの場から丁寧に描き出していた。
ボタンと飲むのが、楽しい
「いぶきは、これが好きとか楽しいとかないの?」と問われ、いぶきは答える。「最近、お酒が一番楽しい」。醸造家にでもなるのかと茶化されると、彼女は言い直す。「飲むのが楽しいのよ。ボタンとお酒を飲むのが、楽しいのよ」——郡上の目の前で。
その言葉に、そっと寄り添ったのがジンランの持参した秩父の蜂蜜のミード。リンゴのような酸味の優しい味わいが、場に流れた微妙な空気を、やわらかく包んでいた。
好きなものを、まっすぐ「楽しい」と言えるようになったいぶき。その成長がまぶしい一方で、同じ言葉に胸を痛める人がいることを、物語は忘れない。
察してしまった、郡上先輩
諦観の、まなざし
いぶきの「ボタンと飲むのが楽しい」を聞いた瞬間、郡上の表情がわずかに変わる。いぶきの心が、もう自分には向いていないと察してしまったのだ。
目のアップと、あえて目を描かないカットの使い分け。星空の下に立つ二人の位置取り。郡上の諦観を、台詞ではなく画面の繊細さで語る演出が、とにかく丁寧だった。
多くを説明しないからこそ、郡上の感情がまっすぐ伝わってくる。察してしまった人の静けさを、これほど美しく描いた場面はそうない。
散りゆく、一輪の百合
ぼたんといぶきが通じ合うということは、裏を返せば一人の女性の失恋を意味する。一組のカップルの誕生を愛でるだけでは済まない、その陰で儚く散った一輪の百合。
郡上先輩は、幸せになるべき——多くの視聴者がそう願った。彼女の未来に幸あれと祈らずにいられない、切なくも尊い描写だった。
特別の意味に、揺れるぼたん
あの“特別”は、どんな特別?
一方のぼたんは、いぶきにもらった「あなたは私の特別」という言葉に、ずっと悶々としていた。「あの特別は、私がいぶきに抱くものと同じ? それとも、少し違う?」——。
答えの出ない問いを抱えたまま、二人きりのお出かけも、どこか上の空。いぶきの“感情”を、ちゃんと確かめよう。ぼたんは静かに覚悟を固めていく。
グランピングと、山のBBQ
Bパートの舞台は、星空を見にやってきたグランピング。山の上で手ぶらのバーベキューを楽しみ、泊まるのは露天風呂付きのコテージという贅沢な一泊だ。
本来は楽しいはずの食事も、ぼたんの胸には複雑な想いが入り混じる。そんな心を、山の空気とお酒の優しい味が、少しだけ晴らしてくれる。
友達を、やめていい?
私は、ボタンを独り占めしたい
露天風呂の湯煙の中、いぶきが切り出す。「私、あなたに言いたいことがあるの」。「あと何回、一緒にお酒が飲めるのかな。友達と飲める回数なんて、たかが知れてる」——。
そして、はっきりと。「私は、ボタンを独り占めしたいよ」。友達という関係では、もう足りない。ぼたんとなら、その先へ進みたい。ずっと一人でいた人が、たどり着いた精一杯の告白だった。
星空を、ふたり占め
いぶきの想いを受けて、ぼたんが返した言葉は——「友達、やめていい?」。8話の川辺での「大丈夫ですよ、私は」への、これがぼたんなりの答えだった。
星空の下、二人の想いがついに通じ合う。星空を“ふたり占め”にして、ぼたんは嬉し泣き。その先を直接には見せない演出が、かえって二人の関係の尊さを際立たせていた。
まとめ——湯煙の中で、ハッキリと
葛藤の果ての、成就
ずっと緩やかに見えたこの物語は、第9話で湯煙の中、関係をハッキリさせた。そこに至るまでの葛藤——マイノリティであることの悩み、関係を言葉にすることへの不安——を、他作品ではあまり見ないリアリティで描ききった、まさに“神回”だった。
ラストで成就した二人に、感無量。その一方で、そっと身を引く郡上の視点を対比として差し込んでくる構成が、いっそう深く沁みてくる。
移ろう作画と、白の色
この回もまた、作画が印象的だった。絵コンテ・演出・作監を一人で手がけた回で、プレーンだけれど作品に馴染む「白」の色付けと評された映像が、物語をそっと支える。
何より、いぶきの笑顔が最高だった。葛藤の果てにたどり着いた二人の幸福を、丁寧な芝居と画で祝福した、忘れがたい一話である。




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