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領民0人から歩み始めた辺境の地に、少しずつ人が集まり始める。行商人ペイジン・ドがアースドラゴンの素材を求めて訪れ、当初は疑いつつもディアスの並外れた怪力に驚愕して取引が成立。運び込まれた積荷の片隅には、薄汚れた双子の少女セナイとアイハンの姿があった。ディアスの信念と優しさが光る第3話を振り返る。




領民0人から、動き出す辺境
クラウスの決意と、忍び寄る後継者争いの影
クラウスが領民に加わって10日。ディアスは彼のために新しいユルトを用意し、ドラゴンの素材でこしらえた槍と鎧まで与えていた。「王族でも手に入るか分からない貴重なもの」を託されたクラウスは、その期待に応えようと領兵の隊長として奮い立つ——もっとも、今のところ領兵はクラウス一人きりなのだが。
そんな折、アルナーが東から近づく十人の気配を捉える。方角は王都。王都では五人の王子王女が後継者の座を争い、先の第三王女ディアーネの一件もその一端だった。貴族たちの暴力合戦の余波が、この辺境にもいずれ及ぶかもしれない——穏やかな日常の裏で、不穏な影がちらつく。
棄民となった12人の老女を迎えて
ディアスが連れ帰ったのは、隣の領地の内乱で口減らしのために追い出された、12人の老女たちだった。まとめ役は、占いで生き延びる道を探り当てたという90歳のマヤ婆さん。ディアスは迷わず彼女たちを迎え入れ、「領民が一気に12人も増えたぞ」と喜ぶ。
「あの人たちでは生産性がない」と気を揉むクラウスに、ディアスは意に介さない。メーアの毛が溜まれば糸を紡ぎ、布を織ってもらえる——高齢だから、ではなく「何ができるか」で人を見る。アルナーも「ここの領主はディアスだからな」と、その判断を後押しした。
ディアスの信念と、村の名「イルク」
「奴隷は持たない、売らない」——マヤ婆さんが試したもの
マヤ婆さんは、ディアスにこう持ちかける。「ドラゴンの素材を売って、奴隷を買えばいい。なぜそうしないんだい?」。だがディアスの答えは明確だった。「奴隷制度が嫌いなんだ。戦場で見た奴隷兵は、皆ひどい扱いを受けていた。私の領内では、奴隷を持つことも売ることも禁止する」。
実はこれ、マヤ婆さんがディアスの本音を試すための問いだった。もし奴隷に乗り気なら買わないよう仕向けるつもりだった、と明かす。高齢の女性を見捨てず、奴隷を認めない——ディアスの領主としての信念が、はっきりと示された場面だ。奴隷狩りを趣味とする隣領カスデクスとの対比が、その芯を際立たせる。
アルナーが名づけた「イルク村」
人が増えてきたことで、ディアスは村に名前をつけようと思案する。だが良い名が浮かばない。マヤ婆さんの名を取った「手安村」は本人が固辞し、「ドラゴン殺し村」はさすがに却下となる。
そこでアルナーが提案したのが「イルク村」。古い言葉で「最初の村」を意味する、分かりやすい名だ。こうして領民0人から始まった土地に、ようやく村としての名前が刻まれた。集会所も建ち、老女たちが働く場も少しずつ整っていく。
奇妙な行商人ペイジン・ドの来訪
アースドラゴンの素材と、怪力への驚愕
かねてディアスは、鬼人族の村に来る行商人へ、イルク村にも足を運ぶよう頼んでいた。やってきたのは、カエル人間「フロックマン」の行商人ペイジン・ド。「足はペイジン、良い取引をいたしましょうや」と、独特の口調で商談が始まる。
だが取引の目玉であるアースドラゴンの素材を前に、ペイジン・ドは半信半疑だった。「本当にお一人で倒したんで?」——「もっと小物だと思っていた」と漏らすほど、その素材は規格外。ディアスの並外れた怪力を目の当たりにして、ペイジン・ドは驚愕し、取引はめでたく成立する。
積荷の片隅にいた、双子の少女
物資が次々と運び込まれる中、ペイジン・ドが「ついでに」と差し出した積荷の片隅に、薄汚れた身なりの双子の少女がいた。それを見たアルナーの表情が険しくなる。「ペイジンは孤児を、奴隷として売っているのか」。
だがペイジン・ドは慌てて弁明する。この双子は奴隷ではなく、商品として預からなければ死んでいた子供たちなのだ、と。生まれた里では「双子は災いをもたらす」と忌み嫌われ、生後すぐに処刑されるところを、両親が連れて逃げた——その痛ましい事情が、静かに語られていく。
セナイとアイハン、そして次なる影
名前を守った双子と、月の宝石
病で先の長くない両親から双子を託されたペイジン・ドは、儲けのない話と一度は断りつつ、金を積まれて預かったのだという。事情を聞いたディアスは「その子たちは私が引き取ろう。今まで養うのにかかった費用は、素材で支払う」と申し出る。
警戒して名を明かさなかった双子だが、ディアスの穏やかな語りかけに、姉が「セナイ」と口を開く。妹はアイハン。戦争前は孤児たちの親代わりもしていたというディアスの、子供の扱いの上手さが光る。従魔フランシスは二人に月の力を秘めた宝石「アーイ」を贈り、セナイ=「月のように綺麗な人」、アイハン=「聖なる月」という名の意味を教える。アルナーいわく、その古い言葉は今や言い伝えにしか残らず、双子は鬼人族と縁のある特別な種族なのかもしれない。
カスデクス新領主・エルダンの使者
それから10日、イルク村はすっかり賑やかになった。「ディアスの食べかけがいい」とねだるほど、セナイとアイハンもディアスに懐いていく。そんな折、東から馬に乗った人物が一人。従魔が「シロ(敵意なし)」と告げるその使者は、カマロッツと名乗った。
彼は、内乱を経てカスデクス領の新たな領主となったエルダンに仕える者で、主がディアスとの面会を望み、すでにこちらへ向かっているという。「新たな領主——つまり、女の奴隷をはべらせる次男が内乱に勝ったのか」とディアスは警戒を見せる。周辺国のきな臭さも漂う中、エルダンがいかなる人物なのか——次回への大きな引きを残して、第3話は幕を閉じた。




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