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記憶を失ったスバルが迎える、知らない仲間たちとの朝。だが階段からの転落をきっかけに、彼は自分が「同じ時間をやり直している」ことに気づいてしまう。予知夢なんかじゃない、死に戻りだ。二度の死、死の狭間で囁く嫉妬の魔女、そして塔からの脱走。シリーズ屈指のダークさが帰ってきた第74話を振り返る。




知らない仲間たちとの朝
自己紹介、やり直し
「俺の名前はナツキ・スバル。右も左も分からねえが、多分、君たちのお友達」。記憶を失ったスバルに、エミリアは「私の名前はエミリア、ただのエミリアよ」と名乗り直し、「えいっ!」と元気を注入してみせる。ベアトリスは「手のかかる契約者かしら」と憎まれ口を叩きつつ、契約者の縁を告げた。
シャウラとメィリィの自己紹介に続き、エキドナは「今はアナスタシアと名乗っておこうか」と正体の開示を一旦保留。後に改めて全員の前で人工精霊だと明かすが、当のスバルとエミリアは「前にエキドナって名前の子に意地悪されたから」「また会ったら文句言わなくちゃ」と同名の魔女への文句で盛り上がり、「風評被害を多く受けている僕からもお願いしたいところだね」と苦笑いされていた。
深刻な状況なのに、自己紹介のやり直しがどこか楽しいのがこの一行の強さだ。「スバルはやっぱりスバルだから」と笑うエミリアの受容力が、後の展開を思うとひときわ眩しい。
ラムの追及と、呼べない名前
ただ一人、ラムだけは「これは何の悪ふざけなの? バルス」と疑いを解かない。水汲みに連れ出し、「つまらない芝居はやめなさい」と詰め寄り、胸ぐらを掴んでなお、返ってくるのは本物の困惑だけ。ついに彼女の声から棘が抜け落ちる。「話して、お願いだから、全部話して」。
名前を食われたレムを「覚えて」いたのは、実質スバルだけだった。彼が忘れれば、レムは今度こそ本当に失われる。それでもラムは「エミリア様たちを心配させるだけだから、さっきのことは黙っていなさい」と、すぐいつもの顔に戻ってみせた。
怒りに見えて、その実これは祈りだ。妹を思い出せない姉が、妹の記憶の最後の器に縋る構図が苦しすぎる。ちなみに記憶を失ったスバルの「エミリアちゃん」呼びには、ネットの検証班も敏感に反応していた。
予知夢じゃない
実況見分と、お留守番
スバルが倒れていたのは三層の書庫だと聞かされ、一行は原因究明に動き出す。ユリウスいわく、あそこは死者の書を納めた曰くつきの書庫。死者の記憶を追体験する本を読んで脳がパンクした、という仮説はいかにもありそうだ。当のスバルは「昨日と同じことになったら困るから」と留守番を言い渡されてしまう。
暇を持て余したスバルは「ステータスオープン!」と叫んでみるが、もちろん何も起きない。そもそも初級魔法の使いすぎでゲートが壊れていると聞かされ、「初級魔法で壊すとかだっせえ!」と過去の自分に総ツッコミ。体が覚えている武術にも期待したが、こちらも空振りだった。
記憶喪失あるあるを異世界テンプレで試していく流れが、悲壮な状況の中で唯一笑えるパートだ。だがこの吞気な探索が、そのまま死への導線になっているのだから恐ろしい。
階段からの、転落
塔をうろついたスバルは、あの「すんげえ高い」大階段で足を滑らせる。視界が反転し、次に気づいた時、彼は目覚めの部屋であの朝の会話を聞いていた。倒れていたスバルを見つけて、ベアトリスが泣きそうだったという、あのやり取りを。
会話は寸分違わず繰り返され、しかし自分の行動次第で少しずつ食い違っていく。スバルはこれを予知夢だと解釈した。「夢の中ではみんな知らなかった。俺は…ナツキ・スバルは、話してなかったんだ。この力を」。記憶を失う前の自分への不信が、静かに芽を出す。
死に戻りを「予知夢」と誤解する視点が新鮮で、この設定の残酷さを改めて味わわされる。よりにもよって再開地点が記憶喪失後という点には、ネットの反応も「なんでセーブポイントそこにした!!」と絶叫していた。
二度目の死と、魔女
信じてもらえない
予知夢を武器にしようと決めたスバルの耳に、仲間たちの議論が漏れ聞こえてくる。今の彼を頼るのは「不確定要素が大きすぎる」。危険視する声に、エミリアだけが「ラムまでスバルのことをそんなふうに言うの?」と怒ってくれた。
「記憶が、人を形作るんだよ」。その言葉どおり、彼らが信じる「ナツキ・スバル」と今の自分は別人だ。「やっぱりスバルはスバルなんだ」という温かい声と、「お前は誰だ?」という冷たい現実。サブタイトルの問いが、スバル自身に突き刺さる。
仲間の誰も悪くないのがこの状況の底意地の悪さだ。慎重論は正論で、エミリアの擁護は情で、そのどちらもが記憶なきスバルを追い詰めていく。
逃げた先の、棒振り
居場所を失い泣きながら走ったスバルがたどり着いたのは、よりにもよって二層だった。「何逃げてきてんだ、おめえ? おまけに逃げた先が俺のとこってのは何の冗談だ、おめえ?」。赤髪の男レイドは嬲るように笑い、「おめえ、死にてえのか?」と問う。
薄れゆく意識の中、スバルの脳裏に浮かぶのは父と母への悔い。そして「お前に殺されるんじゃない。お前には殺されない」という悲痛な抵抗とともに、彼は二度目の死を迎えた。落ちていく死の狭間の闇で、何かが囁く。「愛してる」。
久々に姿を見せた嫉妬の魔女の気配に、視聴者の背筋も凍りついたはずだ。記憶を失っても、死の瞬間の恐怖と魔女の愛だけは平等に襲ってくる。この地獄の設計に本作の本領を見る。
「オマエハダレダ」まとめと考察
「誰が殺されてやるか」
再び目覚めたスバルは、ようやく理解する。「二回死んだんだ。落ちて死んだ瞬間、あの部屋に戻って、同じ時間をやり直している。予知夢なんかじゃない。死に戻りだ」。そして彼は決意した。「誰が殺されてやるか」。
行き着いた先は、塔からの脱走だった。夜の砂丘へ駆け出すスバル。だがその姿を、塔の番人の目が自動的に捉える。掟を思い出してほしい。試験を終えずに去ることを禁ず。妖しく光るシャウラの瞳で、物語は次回へ持ち越された。
記憶も文脈も失った状態で死に戻りだけが襲ってくるのは、ネットの反応の言うとおりまさに地獄だ。現実逃避の脱走が最悪の掟に触れるという引きも完璧で、初期リゼロの怖さが完全に帰ってきた。
カララギ細腕繁盛記
幕間のミニコーナーは、エキドナとアナスタシアの出会いの物語。絶体絶命の状況で出会った幼いアナは、いつ死んでも構わないと嘯く精霊に「かちんときたわ」と言い放ち、とんでもない宣言をする。「あんたの底値の命、うちが買うたる!」。
大勢に狙われる身だと警告されても、アナは動じない。守り切れなければ一緒に死ぬだけ、けれど「いつか死ぬとしても、それは…今日やない」。その記憶を振り返った現代のユリウスが「確かに今日じゃないよね、アナ」と呟いて幕。「オマエハダレダ」という問いは、スバルにも、正体を偽る狐にも、そして記憶を失った誰の上にも重く響く。次回、脱走の代償が明らかになる。














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