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アキヤマが必勝法を組み立て、仲間に順を追って聞かせていく。ところがその同じ手を、横谷はもう完成させていた。しかも鏡写しに、昼の国の側で。第15話は、アキヤマの得意げな解説が、そのまま横谷の罠のネタばらしになってしまうという、残酷な二重構造の回である。




15分遅れて現れたアキヤマと、空のトランク
検査ルームに、何分以内という決まりはない
第15話は、密輸ゲーム二日目。最初の運び人として、アキヤマが向かう。ところが、その登場が異様に遅い。
もう15分経ったぞ、アキヤマ遅すぎないか。仲間がやきもきする。検査ルームでの制限時間は10分と決まっているが、検査ルームに何分以内で入れ、というルールは無い。アキヤマは、その隙間を平然と使っている。
15分後、ようやく検査ルームに現れたアキヤマは、相手のダウトをかわす。トランクの中身は、空。それでも5000万円を得て、同時に夜の国を出し抜いたことになる。
フクナガの不満——総額を増やせと言ったのはあんただ
仲間はアキヤマを歓迎で迎える。だが、フクナガだけは納得しない。食って掛かる。
あんた昨日言っただろ、このゲームはマネーの総額を増やさなきゃダメだって。トランクを空にして勝って、それでいいのか。もっともな指摘である。
だがアキヤマは、勝ったからいいだろ、と受け流したうえで、今の自分の行動には説明が必要だと認める。なぜ、こんなに時間をかけて検査ルームに入ったのか。その答えから、第15話は動き出す。
時間をかけた理由——四つの「実験」
カードは入金もできるし、2億も下ろせる
アキヤマは、検査ルームで実験をしていたのだと明かす。このゲームで勝つための可能性を探る実験だ。
まず、ATMのカード。金を下ろすためのものだと思われているが、実は入金もできる。1億下ろして、気が変わって5000万戻す、といったことが可能なのだ。
次に、1回に下ろせる額。1億までと思われているが、そんなルールは誰も言っていない。実際に2億下ろせた。口座に残っていれば、いくらでも下ろせる。
本人以外でも使えるし、折れば再発行される
三つめ。カードは本人以外でも使える。アキヤマは神崎ナオのカードを借りて試した。他人のカードで密輸してもよいが、その金はカードの持ち主の第三国口座に振り込まれる。
四つめ。カードを破損させたらどうなるか。使用不能と確認できれば直ちに再発行される。アキヤマはポケットの中でカードを折り、その場で再発行させた。ただし紛失では再発行できないので、注意が要る。
要するに、金を運ぶ度胸がなくて時間を潰していたのではない。カードとATMの穴を、片端から実地で確かめていたのだ。そしてこの四つの穴が、そのまま勝利の方法に組み上がる。
必勝法の正体——検査ルームを通さない密輸
足りないのは、夜の国の裏切り者
アキヤマの勝利法は、こうだ。夜の国のATMにある自分たちのマネーを、検査ルームを通さず、まるまる昼の国のATMに突っ込む。正真正銘の密輸である。
夜の国の口座には23億残っている。これを減らさない限り、昼の国は勝てない。そこで、チーム全員のカードを持った代表者が全額下ろし、ATMのそばに放置しておく。それを夜の国の裏切り者が運び、昼の国のATMで入金する。
入金に上限はなく、二つの国のATMをつなぐ廊下は完全なブラックボックス。23億もの大金でも運べる。ただし、この作戦には足りないものが一つある。作戦に協力してくれる夜の国の人間、いわゆる裏切り者だ。
支配をつなぐのは、欲望か恐怖か
そんな裏切り者がいるのか、と問われて、アキヤマは論を立てる。強力な独裁の支配をつなぐものは二つしかない。欲望か、恐怖かだ。
サラリーマンが会社に従うのは、給料と信用という欲望が満たされるから。一方、夜の国はほぼ間違いなく、恐怖による支配だ。横谷は高校時代からそういう男だった。
そして恐怖による支配は頑強だが、裏を返せば、残り8人の心には横谷への不満がくすぶっているはずだ。条件さえ整えば、裏切る。その一人を見つけ出せば、作戦は完成する。
ナオに託された、裏切り者探し
頼りないから、いい
その裏切り者を探す大役を、アキヤマは神崎ナオに託していた。時間をかけてプレイヤーと対話し、できるだけ相手の情報を引き出してほしい、と。
大丈夫かよ、ナオちゃんで頼りないな、とフクナガが心配する。だがアキヤマの答えは、頼りないからいいんじゃないか、だった。
馬鹿正直で、とろくて、ドジで、見た目もか弱くて頼りない。その弱点が、こういう舞台では武器になる。アキヤマが検査ルームに行けば相手はバリバリに緊張するが、ナオは自然と相手の緊張を緩ませる。現に、あの横谷から「支配」というセリフを引き出したのも、ナオなのだ。
クマのぬいぐるみと、無風のターン
ナオは使命を果たすため、必死に相手を探った。時間を目一杯使い、懸命に話しかける。というわけで、このクマのぬいぐるみがお気に入りなんです、といった調子で。
トランクの中身とか探らなくていいんですか、と相手に逆に心配されるほど、ゲーム的には無風のターンだった。だが、相手のことはかなり知ることができた。
どうだった、と問われたナオは答える。なんとなくですけど、恐怖を感じているのかなって思うところはありました。裏切る人は、必ずいると思います。アキヤマの読みを、ナオの直感が裏づける。
理想は「稼いで、負ける」——だが横谷が怖い
マネーを稼いで、スコアで負ける
この作戦が決まれば、昼の国の口座は空になり、夜の国の口座は23億増える。夜の国は、大金がごっそり移されたことに気づいてすらいない。
そのうえで、このゲームの理想の形は、マネーを稼いでスコアで負けることだ。マネーを獲得した以上、あとはスコアで負けることに専念できる。負けられれば配当は大幅プラス、儲けも出て、なおかつゲームを抜けられる。完璧なプランに見える。
裏切り者への謝礼も十分に払う。フクナガは思わず、必勝法完成だ、と口にする。
あえて、必勝法とは呼ばない
ところがアキヤマは、あえて必勝法という言葉は使わない、と言う。肝心の裏切り者がまだ決まっていないし、何より、横谷という男はやはり怖い。
いつも自信満々のアキヤマが、こんな弱気を見せるのは珍しい。裏切り者さえ見つければ成功する、簡単ではないが。そう言いつつ、警戒の色を隠さない。
この弱気は、正しかった。ここまでが、アキヤマの「勝つための設計図」である。そして第15話の後半は、その設計図が、そっくり敵の手で先に完成していたことを突きつけてくる。
ローテーションのほころびと、様子のおかしい二人
夜の国は、策略発覚を境にローテが乱れた
窓から夜の国の動向を探ることもできる。メンバーの提案で、チームは夜の国を観察し、裏切りそうな人物に目星をつけることにした。
そこでアキヤマは、あることに気づく。夜の国は、横谷が立て続けに検査官をやった時期を除けば、規則正しいローテーションで検査や密輸をこなしていた。ところが、ある策略が発覚したあたりを境に、そのローテが不規則になっている。
何かが動いている。アキヤマは、角田と枝尾が2回連続で同じプレイヤーと対峙していることに目をつけ、二人から相手の情報を聞くよう促す。
角田と枝尾の、歯切れの悪さ
ところが、その角田と枝尾の様子がおかしい。ナオが、密輸人の時も検査官の時も相手が同じ人だったでしょう、その時のことを詳しく聞きたくて、と尋ねても、いや別に何もないな、と歯切れが悪い。
何もないのか、困ったな、アキヤマさんになんて言おう。ナオがこぼすと、二人は明らかに動揺する。アキヤマ、絶対気づいてるぞ、やばいぞ、と。
二人は、ナオにだけ打ち明ける決心をする。ここから先の話は絶対に誰にも話さないと約束してくれ、と。第15話の底が、ここで抜ける。
長髪ヒゲ男の、甘い誘い
ボスは横谷、あんたらは100%負ける
角田が語り出す。自分の検査ターンで対峙した相手は、長髪ヒゲの男だった。その男は着席早々、昼の国のローテーションを探ってきた。次の密輸人はあんた、その次の検査官はデブ、と。返事のないところを見るとズボシ、聞けて助かった、と。
昼の国のローテを、うちのボスが聞きたがっていてね。ボスとは、横谷のことだ。うちのボスはすごい、すでに必勝法を用意してる。悪いが、あんたらこのゲーム100%負けちゃうよ。
アキヤマが「裏切り者を探せ」と言っていたのと、まったく同じことを、夜の国もやっていた。しかも、狙われていたのは昼の国のほうだった。
3億を持っていけ——お前だけは、儲かる
そのうえでヒゲ男は、角田だけにいいことを教えてやる、と持ちかける。次のターン、あんたは密輸人だろう。その時、昼の国のATMに3億円の現金が置いてある。それを持っていっていい、と。
それはボスの金で、必勝法に使うものらしい。それを角田が自分の口座に入れてしまえば、チームが負けても角田だけは儲かる。しかもボスは必勝法が使えなくなり、メンツ丸潰れだ。なぜ味方に不利なことを教えるのか、と問う角田に、ヒゲ男はこう答える。うちのボスに心底ムカついてるからだよ、と。
金を運ぶのに勇気がいるのは、失敗が怖いからだ。だが自分の口座が増えれば、その怖さが消える。人より余計に持っているのだから。甘い理屈である。3億のことは誰にも言うな、チャンスは次の1回きりだ、と念を押して、ヒゲ男は去る。
鏡写しの罠——横谷は、もう完成させていた
3億、また3億、そして北村の大金
角田は、3億の現物を見て舞い上がった。アキヤマの作戦を聞く前でもあり、これはチームのためになると本気で思ったのだ。3億を運び、口座は26億に。さらに次のゲームでも、同じ手口で3億を入れてしまう。
これを盗み聞きしていたのがフクナガだった。二人の態度が変だったので、ずっとマークしていたのだという。だが、まだ終わらない。
北村が、今まさに密輸人をやっている。しかも北村は、アキヤマの作戦を聞いていない。その時、検査官をやっていたからだ。北村もまた、同じ甘い誘いに乗って金を運ぶ。しかも3億どころではなく、置かれていた大金をまとめて自分の口座に入れてしまう。
皮肉にも、アキヤマの作戦を先に横谷が完了させた
角田、枝尾、北村。三人が運んでしまったのは、昼の国のATMにあったマネー、その全額だった。夜の国のATMは、みるみる膨れ上がっていく。
これこそが、横谷の必勝法だった。アキヤマは「夜の国に裏切り者を作り、夜の国の金を昼の国へ運ぶ」と考えた。横谷は、その鏡写しをやってのけた。昼の国の中に裏切り者を作り、昼の国の金を、夜の国へそっくり運ばせたのだ。しかも、味方であるはずの三人自身の手で。
皮肉にも、アキヤマの作戦を、そのまま先に横谷が完了させてしまった。見事に決まりましたね、横谷の作戦。残り30ゲームもあるのに、早くも大勢は決してしまった。アキヤマの弱気は、正しすぎた。




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