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足のある身体、喋る魚、通じない言葉、そして「本当の愛を探せ」という重すぎる使命。人間になったララにとって、滋賀はまるごと恐ろしい場所だった。誰とも言葉が通じないその街で、たった一人、ぶっきらぼうに手を差し伸べたのが大津茉里である。第2話は、使命の物語である前に、居場所の物語として進む。




姉たちの指輪と、「人間の世界を見てみたい」
いつか本当の愛に出会えますように
第2話は、海の底の思い出から始まる。姉たちと母が、ララに一つの指輪の話をしている。
いつか本当の愛に出会えますように。その指輪には、そんな願いが込められているのだという。そして、それを探すのが私たちの役目なのだと。
6人姉妹の姫君にとって、本当の愛を見つけることは、ただの恋ではない。海の世界を照らす光そのものに関わる使命として語られている。
行ってみたいところはある?
どこか行ってみたいところはある、と姉に問われて、ララは答える。人間の世界を見てみたい、と。
この一言が、すべての始まりだった。200年前、人間の王子との恋が叶わず、泡となって消えた人魚姫。その願いが、いま滋賀県の琵琶湖で、人間の姿となって叶えられようとしている。
もっとも、叶ってしまった当人にとっては、それは祝福というより遭難に近い。
足のある朝と、窓の外へ投げ捨てた目覚まし
朝日と、謎の機械音声
ララは、目にかかる朝日と、謎の機械音声で目を覚ます。朝のトレーニングの時間です。目覚まし時計が、そう告げている。
まず混乱する。ここはどこなのか。そして、自分の身体に足があることに、さらに混乱する。人魚だったはずの自分に、二本の足がついている。
記憶を巡らせて、ようやく思い出す。魔女の、人間になる薬を飲んだこと。そして、恐ろしい人間に会ったことも。
窓を割って、外へ投げ捨てる
考えを巡らせているうちに、喋り続ける謎の機械が恐ろしくなってくる。ララは目覚まし時計を、窓を叩き割りながら、外へ投げ捨てる。
当然、それを見ていた家の住人・大津茉里に怒られる。私の部屋、窓、めちゃくちゃなんやけど、あれどうしてくれんねん。もっともな抗議である。
だがララの側からすれば、恐ろしい機械を排除しただけだ。そしてこの茉里こそ、記憶にあった「恐ろしい人間」だと思い出し、屋根から転げ落ちるように逃げ出す。
逃げ込んだ教会で、魚が喋る
神様の愛に、一番近い場所
逃げたララがたどり着いたのは、教会だった。死ぬ前に、人間の世界で見たことのある建物である。この国で一番大きな教会、神様の愛に一番近い場所。すがるように、中へ入る。
ところが、そこへ金魚鉢を持った茉里が現れる。逃げた先に、逃げた相手が待っている。
魔女様の声は、魚から聞こえた
どこからか、魔女の声が聞こえる。ララ、ここだ。声の主は、茉里が抱えた金魚鉢の、魚だった。
私だ、ふざけるな。魚が、そう喋る。ララを人間に変えた魔女グレイスが、いまは魚の姿になっている。
同時に、茉里からは窓のことで詰め寄られる。逃げた先で、魚には正体を明かされ、住人には弁償を迫られる。ララにとっては受難の連続だが、そこへ家の中から朝食の声がかかり、場面は大津家へ移る。
大津家の朝食と、「ゴンちゃん」と呼ばれる魔女
マリに、友達
大津家の食卓。茉里は、幼い頃に母を亡くし、祖母と父と兄と暮らす女子高生ボクサーである。
兄は、今晩は友達の家に泊まると言い、祖母は、茉里の友達なんて初めて見たと驚く。連れてきいや、と言われても、当のララは客人という空気ではない。
茉里が、今ゴンちゃんと話してる、と言えば、魚が何で喋んねん、と返される。この家では、茉里が魚と喋っていることのほうが、人魚がいることよりも問題になっている。
茉里と金魚が、普通に喋っている
茉里の部屋で、ララと金魚の魔女が言葉を交わす。そこへ、音声デバイスを持った茉里がやってくる。
そして、なぜか茉里と金魚が普通に会話している。茉里は魔女を「ゴンちゃん」と呼び、ペットのように扱っている。魔女のほうも、それを受け入れている。
かつて自分を掟破りに追い込んだ恐ろしい魔女が、いまは女子高生に「ゴンちゃん」と呼ばれて金魚鉢に収まっている。ララの混乱は、まだ続く。
魔女グレイスの告白と、消えた指輪
家族はもう、ほとんど死んでいる
グレイスは、久しぶりだな、ララ、と語りかける。そして、重いことを告げる。
自分がここまで引き連れてきたが、奴らの光は失われていくばかりだ。民も、王家の者も、父であるローワンも、今は私の屋敷で眠っている。ほとんど死んでいるようなものだ——。
そして、その原因をララに突きつける。お前が掟を破ったから。たった一人の人間を愛してしまったせいで、みんなが光を失ったのだ、と。
それでも、救いも一つ差し出す。光を失ったなら、また光を与えればいい。本当の愛を探せ、ララ。お前はプリンセスなんだ。冒頭の指輪の話が、ここで重い使命として返ってくる。
指輪がない
そのララが、ふと気づく。指輪がない。本当の愛の願いが込められた、あの大切な指輪が、手元にない。
そんなもの忘れてしまえ、という魔女の声を振り切って、ララは家を飛び出す。絶対に取り戻さなければ、と。
魔女は茉里に追わせようとする。あいつを追え、あいつはこの滋賀を崩壊させかねない、プリンセスなんだぞ。だが茉里は、何がプリンセスや、と取り合わない。この温度差が、そのまま第2話の後半を動かしていく。
現れる姉と、どこまでも恐ろしい滋賀
懐かしい知り合いに、会いに来ただけ
場面が変わり、二人の男女が町に現れる。町の人と面識があるらしく、久しぶりですね、と声をかけられている。
懐かしい知り合いに会いに来ただけよ。そう応じる女性は、どう見てもララと同郷の人魚だ。ララの四番目の姉・リサと、行動を共にするコータである。
リサ様、あの光は。分からない、でもこの指輪が共鳴したんだとしたら。姉たちもまた、指輪を手掛かりに、蘇ったララを探している。ララの知らないところで、物語がもう一つ動き出している。
どこへ行っても、恐ろしい場所
一方のララは、指輪を探して町をさまよう。だが、どこへ行っても恐ろしい。あらゆる動物に絡まれ、車が怖くて、車道の真ん中で往来を止めてしまう。町の人から見れば、ただの奇行である。
親切な老夫婦が、駅まで車で送ろうとしてくれる。ちなみにこの夫婦、ララの足に縫い目があることに気づいている。それでも騒がず送ろうとするあたりが、この町の優しさだ。ララはその車からも脱出してしまう。
最初にこの地へ来た場所を見つけるが、指輪はない。水の中を探そうとするが、人間の身体では泳げない。ただ苦しいだけだ。海の世界にも、もう帰れないのかもしれない。絶望が、ここで底を打つ。
差し出されたココアと、「魔女のペット」
大バカ者ね、お礼を言わないなんて
溺れかけたララを、茉里が救い出す。大バカ者ね、お礼を言わないなんて。口は悪いが、助けたのは間違いなく茉里だ。
それでも二人は、指輪のこと、部屋のこと、窓のことで言い争ってしまう。まだ、通じ合ってはいない。
そこへ大雨が降り、二人は近くの建物に退避する。茉里は、一本の缶のココアを差し出す。ララが、生まれて初めて飲む味だ。恐ろしいばかりだった地上に、初めて温かいものが差し込む。
しもべではなく、ペット
ララは、ずっと気になっていたことを尋ねる。あなたは、魔女様のしもべなの、と。
返ってきた答えは逆だった。魔女がしもべなのではない。むしろ、あいつが私のペットだ。死にかけで落ちていた魚を拾って、ペットにしようと思っただけらしい。あれは恐ろしい魔女なのよ、というララに、ただの可愛い魚やけどな、と茉里は返す。
そして、ここで初めて名乗る。大津茉里。ララは、素敵な名前ね、と応じる。恐ろしい人間だったはずの相手に、初めて名前で呼びかけた瞬間である。
初めての風呂と、「うっさい」で閉じる夜
死にかけのゴンちゃんを、拾っただけ
ララは大津家で、初めての風呂に入り、初めての食事をとる。逃げ回っていた家が、いつのまにか帰る場所になっている。
その流れで、金魚の魔女のいきさつも語られる。死にかけで落ちていたところを、茉里が拾ったのだという。人魚を泊め、死にかけの魚を拾う。ぶっきらぼうだが、茉里は放っておけない人なのだ。
うっさい
就寝の際、ララは魔女に謝罪し、これからのことを話し始める。逃げ出してしまったこと、本当の愛を探せるだろうかという不安。人魚だった頃の自分と、これからの自分のこと。
その、しんみりとした独白に対して、茉里から返ってきた言葉は一つだった。うっさい。
突き放しているようで、これは照れ隠しの優しさだ。ボクサーらしく、なにしてんねん、で始まり、うっさい、で締める。この不器用なツッコミ一つで、恐ろしいだけだった滋賀が、ララにとって少しだけ居場所になった。第2話は、ここで幕を閉じる。




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