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町を襲った魔王軍幹部メノウのもとへ、鏡浩二は単身「話し合い」に向かう。魔王の異変を巡るすれ違い、飛行魔獣の群れをたった一人で撃破する規格外ぶり、そして森で交わした魔王城行きの約束。移動手段はまさかのケンタウロス、目指す先は要塞都市サルマリア。無謀な潜入計画が動き出した矢先、町に本物の魔物が降りかかる第3話だ。




飛行魔獣の上の直談判
「通りすがりの村人だけど」
町バルマンを襲撃した魔王軍のもとへ、鏡浩二は単身乗り込む。それも、飛行する魔獣の背の上へ直接だ。「誰だ、お前は」と問う指揮官メノウに、返す答えは「通りすがりの村人だけど」。どうやってここまで来たのかと聞かれれば「ゴリラ……ああいや、馬力のある奴に蹴り飛ばしてもらって」。何者だ、勇者かと重ねられても「だから村人だって」。レベル999の表示を見たメノウが「ありえん、そんな人間いるはずが」と絶句するのも無理はない。
鏡の用件は戦いではなく質問だった。「安心しろ、魔王を倒す気はない。俺は魔王と、その娘アリスと友達だ」。そして核心を突く。この襲撃作戦は、本当に魔王の命令なのか。
襲撃は魔王の直命なのか
アリスによれば、魔王は病気で倒れているはず。だがメノウは「馬鹿な、魔王様は健在だ」と譲らない。バルマン襲撃は目の前で下された直々の命令だと言う。それでも鏡は食い下がる。そこにいたからといって、本人の意思とは限らない。もしも操られていたとしたら。「魔王様を侮辱する気か」といきり立つメノウに、「可能性の話だ。常識や思い込みに囚われるのは危険だぜ」と返す。話し合いはすれ違ったまま、メノウは魔王の様子を確かめるべく魔王城へ急ごうとする。
全滅偽装と、森での約束
ここで鏡が取った行動が豪快だ。飛行魔獣の群れを、たった一人で次々と撃破していく。地上でそれを見ていた勇者一行は「魔族の指揮官と話すってのはどうなったのよ」と唖然とするばかり。だがこれは乱心ではない。魔王が操られていた場合、騙されていたメノウは操っている者にとって邪魔になる。だから襲撃部隊はここで全滅したことにして、後でこっそり魔王城へ向かった方がいい、という理屈である。撃破のついでに金品までちゃっかり回収する抜け目なさも見せた。
かくして二人は森へ落下。「心配ない、この高さなら助かる。多分」の「多分」に全部持っていかれる場面だ。森でメノウは、自分が代々魔王に仕えてきた一族の末裔で、魔王とアリスに仕えて3年になると明かす。「貴様は私を殺さないのか」と問う相手に、鏡は「アホらしい。あんたは魔王とアリスが大事なんだろ。そんな奴殺せねえよ」。モンスターを生み出す魔力さえなければ、人間と魔族は理解し合えるはずだ。互いに恨み憎み合う、そんなのは悲しいだろ、と。そして「明日の昼、アリスを連れて迎えに来るから、一緒に魔王城へ行こう」と約束を交わした。
翌日。移動手段は、まさかのケンタウロス
馬は魔族を怖がる
翌日、食堂で食事をとりながら鏡とアリスは旅の算段を立てる。魔王城までは急いで6日、ただしまっすぐ行ければの話。今回は人数が多いうえに、馬が使えない。馬は魔族を怖がるからだ。魔力を抑えているアリスはともかく、メノウを乗せるのは無理だろう、と鏡は言う。
高貴にして、鞭を喜ぶモンスター
そこで鏡が挙げた代案がケンタウロスである。「なんだ人間、道端のゴミクズどもが」「我々は高貴なる存在。我々に声をかけてもらえるだけでありがたいと思え」と、とにかくプライドが高く、基本的に言うことを聞かないモンスター。ところが、である。彼らは鞭で叩かれるのがたまらなく好きで、「あれが欲しくて言うことを聞くんだ」というのだから恐れ入る。高貴な自称と性癖の落差が今回一番の飛び道具だ。
勇者一行の待ち伏せ、決裂する問答
「魔族に寝返ったあなたたちを逃がさない」
約束どおり森でメノウと落ち合うと、メノウはアリスの無事な姿に平伏し、町を襲撃してしまった非礼を詫びる。「気にしないで。顔を上げてよ、メノウ」と応じるアリス。タカコも「あら、いい男じゃない」と上機嫌で、顔合わせはなごやかに済んだ……のだが、この密会を勇者一行が待ち伏せていた。「やっぱりね。魔族と一緒だなんて」「その子も、やっぱり妹じゃなくて魔族じゃないですか」と包囲網を敷く面々に、鏡は真顔で返す。「なら今度の作戦は0点だ。自分より強い相手を包囲しても意味がないだろ」。
剣を折りながらの説得
「勇者が諦めたら誰が悪と戦うんだ」と叫ぶレックス。昨日の襲撃の被害者は大勢いる、首謀者を見過ごせるわけがない、という言い分はもっともで、鏡も「まあ確かにその通りだ。とりあえず謝っとけよ」とメノウを促す。当のメノウは「あの襲撃の何十倍もの屈辱を我々魔族は受けてきたんだぞ」と気色ばむが、鏡の説得が進むと素直に「すみませんでした」と頭を下げるのが可笑しい。
鏡は、詰め寄る勇者の剣をへし折りながら、あくまで言葉で説得を続ける。アリスが魔王の娘であることまで明かしたうえで、魔族は魔力でモンスターを生み出すから確かに害がある、だからお前らが魔王を倒すのは止めない。でもモンスターのことを除けば人間と変わらない。「害はあるが悪じゃない。だから俺は友人を殺させたりしない」。さらに「俺は魔王に会ったことがある」と爆弾発言を落とし、昨日を別にすれば魔王軍が街を攻めてきたことなど一度もなかったはずだと畳みかける。よく考えろ、固定観念に囚われるな。
「お前は悩まないんだな」「悩む必要がないもの」
だが説得は届かなかった。「魔族は敵よ! その男は洗脳されている可能性があるわ。まともに相手しちゃダメ!」というクルルの号令で、勇者一行は撤退していく。「アリス、共存の道はやっぱ険しいぜ」と鏡は苦笑いだ。
一方の勇者側にも、確かな揺らぎが残った。人間にとってモンスターは脅威で、魔族は滅ぼすべきもの。なのに、人間と魔族は変わらないだと……と一人煩悶するレックス。「お前は悩まないんだな」と漏らす彼に、クルルは平然と「悩む必要がないもの」と言い切る。この温度差が、勇者一行の今後を占う伏線になりそうだ。
珍道中の始まりと、夜のキャンプ
叩く側と叩かれる側、利害の一致
ケンタウロスたちは「薄汚い目で誇り高き我らを見るでない」と人間には居丈高だが、メノウには「魔族のお前は別だ。解放してくれたお礼にどこへでも送り届けよう」と従順だった。聞けば、通りすがりの商人から奪って解放したのだという(「もちろん彼を殺したりはしていません。どうかご安心ください」とのこと)。そしてタカコは、たくましいケンタウロスたちにすっかりメロメロ。鞭で叩かれて喜ぶ側と、喜んで叩きたい側。かくして利害は完全に一致し、一行の足はあっさり確保された。
次の標的はサルマリア
夜のキャンプでは、旅の道筋が固まっていく。魔王城へ行くにはアトロス島に渡る必要があり、まずは一番近い要塞都市サルマリアを目指す。アリスの魔力は、鏡が着けさせた「魔力を別の物質に変える」アイテムで隠せているが、それは一つしかない。だからメノウはなるべく姿を隠すことになった。「鏡殿は本当に魔族を嫌っていないのだな」と、メノウの中で何かが変わり始めている。
気がかりなのは戦況だ。メノウによれば、バルマン同様サルマリアへの襲撃も宣戦布告として行われており、近いうちに本格的な侵攻が始まる。そうなれば最初に狙われるのはサルマリアだ。
要塞都市サルマリアへ、商人一家が潜入する
商品はブルーデビルの角
一行はサルマリアに商人として入ることにする。商品はブルーデビルの角。その魔力でメノウの魔力をごまかす算段だ。門番に「荷台には誰か乗っているのか? 魔族の魔力のようなものが感じられるが」と突っ込まれても、「ブルーデビルの角です。何せ大量でして、漏れちまったのかな」としれっと切り抜ける。アリスは「前からサルマリアに行きたがっていた妹」として観光目的で通過。門番はあっさり「今はパレードの最中だ。楽しんでいけ」と通してくれた。
パレードの裏で、明日出発する討伐大部隊
町は祭りの真っ最中だった。ここ数日続いた魔王軍の襲撃を見事撃退した祝いと、明日への景気付け。そう、明日、魔王軍討伐の大部隊が出発するのだという。連戦連勝で勢いづいた人間側だが、魔王城周辺のモンスターが本気で攻めてくれば討伐隊は全滅しかねず、生き残ったとしてもこの街は占領される。そうなれば、人間と魔族の共存の道は完全に断たれてしまう。
無謀な作戦と「第三勢力」構想
そこで鏡の作戦である。討伐隊より先に魔王城へ潜入し、魔王と直接話をする。魔王軍を止めて、魔族の連中を全員連れて逃げる。「これで全て解決だ」。タカコは「気持ちはわかるけど、さすがに無謀よ」と至極まっとうなツッコミを入れた。もし魔王が本当に人間を滅ぼすつもりだったら? 鏡の答えは明快だ。「その時は俺も腹をくくって戦うよ。ただし第三勢力として」。魔王軍、人間軍ときて、魔族と人間の共存を目指す同盟軍。争いを望まない魔族や人間を集めて、とことん抗ってやる、と。
アリスは「お父さんと戦うのは嫌だけど、もしもお父さんの考えが変わってしまったのなら、僕は鏡さんたちと一緒にいたい。共存を諦めたくないんだ」と決意を口にし、タカコも「あたしも入れてもらおうかしら」。メノウは魔王とアリスに仕える身だと断りつつ「しかしアリス様のお側を離れません!」。同盟軍の芽は、この夜たしかに生まれた。ただし西の門は討伐隊出発まで封鎖されており、明日は開門と同時に一気に魔王城へ向かうしかない。
ソフトクリームの夜と、偽物ではない襲撃
デザートが先のご褒美
夜、鏡はアリスにソフトクリームを買ってやる。「デザートが先になっちまったなって」「今から晩飯食べられるよな?」「うん! 今日はドキドキしたし、お腹ペコペコだよ」。張り詰めた一日の締めくくりに置かれた、ほっとする日常の一齣だ。
食堂で勇者一行にばったり
ところが晩飯に向かった食堂で、よりにもよって勇者一行と鉢合わせてしまう。「捕まると面倒だからな。話はしたいが今じゃない」と、鏡たちはそそくさと退散。追う側も追われる側も、どこか間の抜けた攻防である。
「出し物と違うぞ」本物が降ってくる
そして夜の町では、討伐隊の景気付けとして弱いモンスターを倒してみせるデモンストレーションが行われていた。「前哨戦だ! やっちまえ!」と盛り上がる群衆に、鏡は「弱いモンスターを倒して士気を上げる。つまり偽物だ。悪趣味だけどな」と冷ややかだ。
その直後、空気が変わる。「あれ、出し物と違うぞ!」「まさか、魔王軍の!」。出し物とはまるで違う、強力な魔物が次々と町に降りかかってきたのだ。宣戦布告どおり、本格的な侵攻が始まったのか。サルマリアが戦場と化す寸前で、第3話は幕を閉じた。




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