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父オルコット公爵との初めての面会で命じられたのは、異母兄ヨアヒムとの模擬戦。それは妾腹の子エフタルと無適性の母イリアを見下す、悪意に満ちた見せしめだった。だが物語は模擬戦では終わらない。王太子暗殺を狙うクーデター、実の息子を手にかける父、そして解き放たれるレベル10。実家編が決着する第3話「外道 -OVERKILL-」だ




模擬戦という名の見せしめ。「外道」の幕開け
頭蓋骨が陥没する木剣
第3話は、オルコット公爵が見守る中での、長男ヨアヒムとエフタルの模擬戦から始まる。フレイザーは「模擬戦とはいえ、くれぐれも気をつけてください。ああ見えてもヨアヒム兄さんは、学生時代に剣術で稀有な成績を残したかなりの達人です。無理だと思ったらすぐ降参してください」と弟を案じるが、エフタルは「逃げませんよ」と静かに応じる。
ヨアヒムがエフタルに投げ渡したのは、ずしりと重い特別製の木剣。普段は使わない硬い代物で、思い切り叩けば骨は砕け、頭蓋骨ならば陥没する。「どういうことか、分かるな?」と凄むヨアヒムに、エフタルは「どういうことですか?」と真顔で返し、早くも兄の癇に障ってしまう。
母への罵倒と、「こんなのが俺の子孫だって言うのか」
ここからのヨアヒムは、まさに罵詈雑言の見本市だ。母親も馬鹿ならガキも頭が悪い、本家長男のヨアヒム様が直々に教育してやる、お前ら親子のことは誰もよく思っていない。魔法適性のない母イリアが父に泣きついて産んだ子、一族の顔に泥を塗る母親を殺してやりたいがお前で我慢してやる……と、エフタル本人だけでなく母までまとめて貶める下劣さである。挙げ句、余裕たっぷりに「最初はお前から撃ってこい」と初手まで譲ってみせた。
これを聞くエフタルの内心が凄まじい。「こんなのが、俺の子孫だって言うのか」。二度の転生を経た雷神皇の記憶を宿す少年にとって、目の前の卑劣な兄は、皮肉にも自分の血を引く末裔なのだ。公式あらすじの言う「卑劣な『子孫』」との対峙である。
「二度は言いません。今度俺の母親を侮辱したら、殺すぞ」
怒りに火のついたエフタルの猛攻が始まる。剣術の達人のはずのヨアヒムはギリギリで反応するのがやっと。それでも一撃を木剣で受け止めると「身体能力強化か。今までのガキと同じ奴か」と高をくくった。その直後、エフタルの一撃は、防いだ木剣ごとヨアヒムの顔面を打ち潰す。
勝負は一瞬。倒れた兄に、エフタルは冷たく言い放つ。「二度は言いません。今度俺の母親を侮辱したら、殺すぞ」。母のもとへ戻ったエフタルは「終わったよ、母さん。帰ろう」といつもの顔に戻るが、母は「あなた、いつものエフタルよね?」とわずかな違和感を口にする。「そうだよ、いつもの僕だよ」という返事が、かえって意味深に響く場面だ。
冷や汗の公爵と、二週間後の来客
「せ、せいぜい来年からの士官学校、頑張れ」
帰り際、エフタルはオルコット公爵に「父上、本日はお招き頂きありがとうございました」と折り目正しく挨拶する。対する公爵は冷や汗が止まらない。絞り出した言葉が「せ、せいぜい来年からの士官学校、頑張れ」なのだから、長男の顔面を潰した末息子への恐怖は隠しようもない。
それから二週間。エフタルは「あいつらから何らかの報復はあると思っていたけど」と警戒しつつも、母の手料理を前に穏やかな時間を過ごしていた。「今日はエフタルの大好物を」という団らんを破ったのは、扉を荒々しく叩く音だった。
扉の向こうに、赤ん坊を抱えた兄たち
扉の向こうにいたのは、フレイザーとモーリア。そして、よく見るとその腕には赤ん坊が抱えられていた。ただの赤ん坊ではない。この国の王位継承を巡る争いの、まさに火種となっている王太子殿下である。
王太子を巡るクーデター
王位継承のねじれと、大臣派の暗躍
事情はこうだ。アズール王国では、先の王の長男より次男の方が優秀だったため、次男が現国王となり、長男は大臣に収まった。国王は男子に恵まれず、王位は大臣の嫡男に譲られることがほぼ確定していた。ところが、そこへ王太子殿下が誕生。継承の流れが引っくり返り、長男派がにわかに殺気立ったのである。
折しも、聖騎士団とアズール軍は隣国との決戦へ大遠征中。留守の王都はロイヤルガードが警備していたが、そこに「大臣派が王太子殿下の暗殺を目論んでいる」との情報が入り、直後に「南の蛮族が王都に!」の急報。フレイザーたちは王太子を連れて逃げ、とっさに思い浮かんだ「安全な場所」がエフタルの家だった、というわけだ。
蛮族の侵入は「おそらく父上の仕業」
警備を強化していた王都に、なぜ蛮族が入り込めたのか。フレイザーの答えは重い。「おそらくは父上の仕業でしょうね。王位の変更で一番出世や権力に影響が出る人ですから」。ヨアヒムを次の玉座に据える目算が王太子の誕生で崩れたオルコット公爵が、赤ん坊の命を狙っているのだ。
もう王都には戻れない。国境を越え、大遠征中の国の主戦力のもとへ殿下を届けるしかない。旅立つ一行に、エフタルは「僕も同行させてください」と志願する。「今は一人でも味方がいるのは心強い」と歓迎される裏で、彼の胸中にあるのは400年前の記憶だ。当時の国王陛下に魔王討伐の物資提供を受けた恩がある。だから俺にはこの国を守る義理がある、と。母には「心配かけてごめん、母さん。父さんたちを許せないんだ」と告げて家を出た。
森の罠と、フレイザーの説得
小動物一匹いない静けさ
一行は森を抜け、平原を越えて国境を目指す。だが森は妙だった。小動物の一匹も見当たらない、不穏な静けさ。やがて雷鳴のような音が轟き始める。正体の分からぬまま、一行は森の出口へと急いだ。
前には魔法師団、後ろには炎
森を抜ける寸前、待ち構えていたのは公爵家の魔法師団だった。網を張られていたのだ。引き返そうにも、来た道はすでに炎。さっきから森に轟いていた音は、火を放つ音だった。獲物を炙り出す算段である。後ろに炎、前には魔法師団のまさに八方塞がり。「せめて王太子殿下だけでも生かす方法はないのか」と絶望が漂う。
「分かったよ、フレイザー。貴様が邪魔だということが、な」
ここでフレイザーが「私が父を説得してまいります」と前に出る。父もそこまで悪い人ではありませんよ、と。丸腰で魔法師団の前に立ち、「どうか話を聞いてください。もうこんなことはやめて、話し合いで解決しましょう。今ならまだ間に合います」と呼びかけた。公爵は「他でもない我が息子の頼みだ。出向いてやるか」と姿を見せる。
「分かっていただけたんですね、父上」と喜ぶフレイザーに、公爵は言った。「分かったよ、フレイザー。貴様が、俺にとって邪魔な存在だということが、な」。次の瞬間、魔力が解き放たれ、フレイザーは昏倒。さらに公爵はレベル6の大魔法で追い打ちをかけ、実の息子の命を奪ってみせた。ここまでやるかという、サブタイトル通りの外道ぶりである。
雷神皇、覚醒。レベル10「エフタル」
レベル9コキュートスで森が凍る
兄を撃たれたエフタルの怒りが、ついに全てのタガを外す。放たれたのはレベル9「コキュートス」。あたり一帯が一瞬で凍りつき、燃え盛っていた森の火まで鎮火した。「尋常ではない規模の魔力……一体どうなってやがる」とうろたえる敵。エフタル本人は「この世界だと、このレベルの魔法を単独で扱うなんて聞いたことすらないんだろうな。水系の魔法は得意じゃねえが」と涼しい顔だ。得意ですらない系統でこの威力である。
怯えたオルコット公爵は「おいバカども、何をしておる。敵だ、敵!」と魔法師団をけしかける。
一斉砲撃も、虎の子の大魔法も通じない
魔法師団はレベル5「エクスプロージョンアロー」の一斉砲撃を浴びせるが、直撃してもエフタルは無傷。「常時防御魔法陣ってもんがあるだろう。本当に何も知らないんだな。どんだけ練度の低い連中なんだ」と呆れるばかりだ。続いて放たれた虎の子は、なんと「エフタル」の名を冠したレベル6の雷系大魔法。400年の時を経て、雷神皇の名は魔法の名前として残っていたのだ。当の本人は「あんなもんに俺の名前を使われちゃ、沽券に関わるってもんだ」と、レベル7「エクストラマジックガード」で一瞬にしてかき消した。「バケモノか」という敵の悲鳴がすべてを物語る。
そこからは剣の間合いだ。「フレイザー兄さんに教えてもらった甲斐があったな。剣ってのも悪くねえ」と、単身斬り込んで魔法師団を次々となぎ倒していく。組織的な抵抗は、もはや崩壊していた。
「俺が操るのは、雷だ!」
仕上げにエフタルは吼える。「てめえらみたいに、静電気をどうこうするしょぼくれたもんじゃねえ! 俺が操るのは、雷だ! レベル10、エフタル!」。自らの名を冠した最高位の雷魔法が、魔法師団を全滅させた。ただし、オルコット公爵とヨアヒムの二人だけは、エフタルの防御魔法に守られて生き残っている。「よくわからんが、助かったのか?」と呆ける二人だが、これは慈悲ではない。
「王太子殿下の暗殺未遂だ。首謀者含めて全滅しましたってのじゃ、収まりが悪いよな」。つまり、裁きの場に引きずり出すために生かしたのだ。「私への反抗は、国軍に対する反逆罪だぞ!」とわめく公爵に、エフタルは吐き捨てる。「てめえの息子すら殺すような外道に、慈悲はねえ」。かくしてクーデターは未遂に終わり、オルコットとヨアヒムは公衆の面前で絞首刑となった。
裁きのあとに。三人だけの秘密
生きていた兄と、オベロンズガード
実は、フレイザーは生きていた。「まさか、家宝のこのネックレスが助けてくれるとは思いもしませんでしたよ」と笑う兄に、エフタルは内心で驚く。そのネックレスは、その昔エフタル自身が使っていた「オベロンズガード」。自分の遺品が、時を越えて兄の命を守ったのである。「生きててくれて、ありがとう、兄さん」という言葉に、万感がこもる。
今回の一件で公爵家は爵位剥奪の話も出たが、フレイザーが命を懸けて王太子殿下を守った功績で爵位は守られた。当主を失った公爵家は、フレイザーが継ぐことになった。
レベル7を連発、力の種明かし
騒動の後、エフタルはフレイザーとモーリアの前で自らの力を明かす。レベル7「エビルフレア」、レベル7「カオスウィード」の連発。森が消し飛び、山が削れる規格外の威力に、二人は絶句するしかない。「レベル7を連発とは……これが本当のエフタルですか?」。
「二人に黙っていてごめんなさい」と謝るエフタルに、理由を問い詰める者はいなかった。「言いたくないのであれば言わなくていい。これだけの力だ。人には言えない事情がある」という気遣いが染みる。エフタルの内心はといえば「そう、転生してるなんて口が裂けても言えない」。かくして「これは俺たち三人だけの秘密だ」と誓い合い、この力はなるべく人前で使わないことも決まった。こんなものを見たら、世界が混乱してしまうからだ。
目指すは魔法学院
これからどうするのかと問われたエフタルの答えは、「僕は魔法学院に行きます」。その力があってなお学院に通うのかと驚かれるが、「設備の整った場所で、さらに魔術の腕を磨きたい。魔道の探求をしたいんです」という決意は固い。ならばと、15歳まで剣術の稽古をつけてもらう約束も取り付けた。
実家編はこの回で一区切り。血縁の柵に決着をつけ、三人だけの秘密を胸に、物語はいよいよタイトル通りの「学院無双」へと歩み出す。





























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