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夜のコンビニで、隼人と妹の姫子が偶然春希と鉢合わせる。姫子もまた、春希を昔「男の子」だと思って遊んだ幼馴染だと気づく回だ。七年ぶりの再会に盛り上がった二人は連絡先を交換し、寝不足になるまでメッセージを続ける。翌日、春希の家を訪ねた姫子は壊滅的センスの私服からイメチェン計画を思いつき、一方でキッチンへ向かった隼人は、春希の食生活に隠れた家庭の影を目にすることになる。




夜のコンビニ、七年ぶりの再会
「彼女さんですか?」から始まる誤解
第3話は夜のコンビニから始まる。買い物に来ていた隼人と、その妹・姫子。そこへ現れた春希が「こんばんは、桐島君。奇遇ですね」と声をかける。隣にいる姫子を見て「可愛らしい子ですね。彼女さんですか?」と尋ねるので、隼人は「待て、なんか誤解して」と慌てることになる。
二人はお知り合いなんですか、という姫子に、春希は「同じクラスで隣の席なんです」と答える。だが姫子の方は、目の前の春希が誰なのかに気づいていた。兄が言っていた通り——「ハルちゃんはハルちゃんだ」。姫子にとっても春希は、昔よく一緒に遊んだ幼馴染だったのだ。
学校での春希と、姫子の記憶の中の春希が、コンビニの明かりの下で一本につながる。「彼女」という誤解から入って再会に着地させる運びが軽やかで、三人の距離が一気に近づく導入になっている。
連絡先の交換と、スマホを持たない兄
再会に盛り上がった春希と姫子は、その場で連絡先を交換する。「私、スマホ持ってるし。お兄と違って」と姫子。実は隼人はスマホを持っていない。作る料理も年配の人が好みそうなものばかりで、「ハヤトって変なとこで感覚が古いんだよね」と妹に言われる始末である。
その夜、春希と姫子は深夜までメッセージのやりとりを続けた。翌朝、姫子が寝坊するほどの寝不足になったのは、そのせいだった。服のブランドやコスメにすっごく詳しい姫子に、春希は「僕が全然知らないもんだから」と夢中になっていたらしい。
スマホを持たない兄と、今どきの妹という対比が、そのまま春希の居場所を照らし出す。幼馴染二人が朝まで盛り上がる何気ない描写が、この後に見えてくる春希の孤独をそっと下ごしらえしている。
学校の顔と、隼人の手料理
優等生の仮面と、一人称の「ボク」
学校での春希は、成績優秀で容姿端麗な優等生を演じている。スマホを嬉しそうに見ていると「彼女でもできたか」とからかわれ、隼人の前でだけ一人称が「ボク」になり、少年のような振る舞いを見せる。
その素顔について、春希自身がぽつりと漏らす言葉がある。「いい子を演じてるだけだからね」。明るく完璧な転校生という評判の裏側に、演じているという自覚がある。だからこそ、幼馴染の前で見せる「ボク」の顔が、素の春希に近いのだと分かる。
学校の春希と隼人の前の春希、二つの顔をさらりと並べて見せるのがうまい。「演じてるだけ」という一言があるだけで、可愛い転校生というだけでは終わらない奥行きが生まれている。
百均の二百円と、野菜たっぷりハンバーグ
昼食の場面が楽しい。春希が箸を差し出しながら「百均で売ってた、二百円だったけどね」と言うので、隼人が「百均なのに二百円ってどういうことなんだ」とすかさず突っ込む。この作品らしい、細かいけれど効いているやり取りである。
隼人が分けたのは、自分で作り置きした野菜たっぷりハンバーグの弁当だった。姫子のお菓子も弁当も、一緒に作れば楽だからと隼人が用意している。一人っ子の春希は「いいな、姫ちゃん」と、そのやり取りをうらやましそうに眺めていた。
兄妹が当たり前に交わす手料理のやり取りを、春希が羨望のまなざしで見ている。そのワンカットが、後の家庭訪問で明かされる事情の伏線になっていて、笑える場面の中にきちんと芯が通っている。
春希の家で見えた、家庭の影
壊滅的センスのクローゼット
放課後、隼人と姫子は春希の家を訪ねる。そこで姫子がクローゼットを開けて絶句した。全体的に黒い、もさい、地味の三拍子が揃った上に、くたびれた服ばかり。サイズの合っていないシャツもある。「汚れてもいい服というか、ガキの頃着ていたのを彷彿とさせるものばかりだな」と隼人も評する。
そこで姫子がイメチェン計画を思いつく。「お兄、土曜日さ、ハルちゃん借りていい? 服、ハルちゃんの服を買いに」。見捨てないから、と言いながらの提案に、春希も乗り気になっていく。
私服のセンスというコミカルな入口から春希の生活に踏み込んでいくのが自然だ。「ガキの頃を彷彿とさせる」という隼人の一言が、この後のキッチンの場面へと、笑いのまま静かに橋を架けている。
キッチンで、隼人の表情が変わる
そのキッチンで、隼人は表情を変える。目に入ったのは冷凍食品とコンビニ弁当ばかりの食生活だった。明るく完璧な優等生を演じている春希の、誰にも見せていない日常がそこにあった。
隼人はその場で夕食を作り、春希にも手伝わせて、三人で食卓を囲む。客なのに手伝わされる春希の「お客様に手伝わせるんだ」に、隼人は「ハルキーだからな」と返す。食べながら春希がこぼしたのは「誰かと食卓を囲むの、久しぶりだ」「思った以上に心が弱っていたんだ」という本音だった。
だから隼人は誘う。「基本的に夕食は姫子と二人なんだ。ハルキーさえ良ければ、これからは夕食うちで一緒に食べないか」。どうして、と聞く春希への答えは「ハルキーだから、友達だからだろ」——。壊滅的なセンスや二百円の箸で笑わせておいてから、その裏にあった孤食をそっと差し出す。落差の付け方が丁寧で、胸に残る場面だった。
それぞれが抱える事情
姫子の買い物と、昔の恋心
土曜日、姫子は張り切って春希を街へ連れ出す。中央通りから百貨店まではしごする計画で、渋っていた割に春希もやる気だ。「やると決めたら徹底的に。その方が、隼人を驚かせることができるでしょ」。
そんな買い物の途中、姫子がふと本音を漏らす。「見ない間にすっかり女の子になっちゃって。男の子だと思ってたのにな」。そして「私、あの頃ね、春ちゃんのこと——」と言いかけて口をつぐむ。姫子もまた、かつて男の子だと思っていた春希に、淡い想いを寄せていたのだ。
兄の恋の相手が、妹のかつての初恋の相手でもあった——という関係の捻れが、この回で静かに置かれる。叶わないと分かった上での「男の子だと思ってたのにな」に、言葉にしきらない切なさがにじんでいて、うまい。
隼人の実家と、三岳の祖父
一方の隼人にも事情がある。実家に顔を出した隼人は、母から父の近況を聞く。手術は成功し、指先に痺れは残るものの、近いうちにリハビリ病棟へ移れそうだという。田舎の月野瀬から都心へ引っ越してきた背景に、この父の病気があったことがうかがえる。
そしてもう一人、園芸部の三岳みなもとの関わりも描かれる。花壇の野菜の花を前に打ち解ける二人だが、そこへみなもの祖父が現れ、「よくもわしの孫娘を」と隼人を警戒する。孫思いのやきもちだが、隼人がみなもに親しみを覚えたのは、以前住んでいた土地の近所にいた八歳の女の子に似ていたから、という理由もあった。
恋愛のドタバタの裏で、家族の事情がきちんと描かれるのがこの作品の手触りだ。父の手術という重い事実を、母との短いやり取りだけで過不足なく伝える。みなもの祖父のエキセントリックな孫愛も、笑いのなかに次の関係の芽をのぞかせている。
まとめ——明るさの裏で、それぞれが抱えるもの
演じることと、踏み込めない距離
第3話は、はなやかな再会コメディの裏側で、登場人物それぞれが抱えるものが少しずつ見えてきた回だった。学校では完璧な優等生を演じ、家では冷凍食品ばかりの食生活を送る春希。その「いい子を演じてるだけ」という明るさの裏に、家庭の影がのぞく。
隼人は春希の事情に薄々気づきながらも、簡単には踏み込まない。元幼馴染とはいえ、家庭環境は簡単に触れていい話題ではないからだ。その代わりに彼が差し出したのは、「これからは夕食うちで一緒に食べないか」という、言葉ではなく食卓の形をした手だった。問い詰めるのではなく隣に居場所を作る、というやり方が隼人らしい。
月野瀬の巫女と、これから
ラストには、月野瀬に残る村尾沙紀の姿が差し込まれる。姫子の大の仲良しである沙紀は、メッセージで春希のことを聞かされ、「ゴリラって聞いてたんだけど」と、可愛らしい春希の姿に驚いていた。田舎に残された側の視点が、都会での再会劇にそっと影を添える。
春希の家庭、姫子の淡い恋心、隼人の父の病、三岳みなもと祖父、そして月野瀬の沙紀——この回で、それぞれの人物が抱える事情の輪郭が一斉に見えてきた。華やかなラブコメの体裁の下で、生活や家族の手触りを丁寧に積み上げていくのが本作の魅力だ。交差し始めたそれぞれの想いが、これからどう動いていくのか。続きが楽しみである。




















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