シイナと友達になってからも、お互いの秘密には触れないまま交流を続けてきたトワ。第4話は公式サブタイトル「夜海トワ Origin」の通り、そのトワの過去がまるごと明かされる回だ。物心ついた時には魔人化薬の製造施設の実験素材だった少女が、夜海夫妻と過ごした半年で家族を知り、初めての旅行先ですべてを奪われる。たどり着いた決意が「篠宮と蔵木は私が殺す」。そして最後の独白「私が死んだらシイナを悲しませちゃうかな」まで、一言も聞き逃せない回だったんだ。




原種10体目、表の世界のヒーロー久瀬シイナ
「紅蓮の魔人・久瀬シイナ、私たちのヒーローですよ」
冒頭はニュース映像から。国連災害対策本部の特別部隊EXCEEDSが危険生物、通称侵略種の対策と駆除にあたり、これまで不可侵とされてきた危険な大型侵略種「原種」も9体まで駆除に成功。封鎖立ち入り禁止区域の除染と解放も進み、総督の八神はやては極東支局を拠点に、年内には世界中に点在する原種の完全駆除を目指すと報じられる。その直後、シイナたちのチームが原種10体目の駆除を完了。国内に残る原種はあと3体だ。
海外は各支局が同時進行で対応中。シイナほど強力な個人戦力はいないぶん、職員みんなで協力して、という説明に続いて、八神総督直属の騎士の話も出てくる。「4人の騎士と従者さんが騎士団を組んで各地で頑張ってくれてます」。ファンにはたまらないヴォルケンリッターの近況だ。総督の年齢を尋ねたシイナへの「それは秘密です」「でも久瀬さんが思ってるよりは若いと思いますよ」という返しも楽しい。
配属から2ヶ月足らずで原種10体を撃破したシイナは、関係者から「紅蓮の魔人・久瀬シイナ、私たちのヒーローですよ」と讃えられる。一方で世間では、魔人化薬の取引ルートの壊滅や、危険な魔人としてマークされていた反社会組織の有力者たちの死亡が続き、魔人同士の粛清ではないかと噂されていた。人々が「魔人狩り」と呼ぶ存在だ。魔人犯罪はEXCEEDSの管轄外とはいえ、魔人相手の捕り物は大変そうだ、そうならないように努めます、というやり取りも交わされる。
表の組織で「魔人」の名を冠して讃えられるシイナと、ニュースの向こう側の「魔人狩り」。同じ場面にこの2つを並べてくる構成が上手くて、視聴中ずっと胸がざわざわしていたよ。
なのはとはやてが見守る、シイナの今
差し入れを持って住民との交流に向かうシイナ。それを見送る側では、自然とシイナの話題になる。「シイナさんは明るいね。それにどんどん強くなってる」という声に、はやては「なのはちゃんが見つけた人やし、間違いはないと思ってるよ。誇張抜きにこの世界を救える人やと思ってる」と全幅の信頼を寄せる。
妹を亡くして間もないシイナを心配する声もあるなか、一番近くで見ているなのはの答えはこうだ。「大丈夫だと思うよ。妹さん、セツナちゃんの話よくしてくれるし。何よりシイナさん、自分の中にセツナちゃんが生きてる実感があるって、よく言ってるからね」。最近は新しくできた友達、同世代のすごく優しい女の子のおかげで毎日楽しそうだ、とも。もちろんトワのことである。
壊れても修復してくれる制服ジャケットを「魔法です」「海外の技術です」と押し切るゆるいやり取りも含めて、表の世界はどこまでも穏やか。だからこそ「自分の中にセツナちゃんが生きてる」という言葉だけが妙に耳に残るんだよね。今は素直に、家族の思い出が支えになっているという意味で受け取っておきたい。
監獄で育った少女、魔人化薬の実験素材
実験素材として生きた監獄の日々
場面は変わって、害獣駆除の手伝いを終えたトワ。現地の人たちとの記念写真を眺めながら「この人たち、少し父さんと母さんに似てるかな」とつぶやいたところから、長い回想が始まる。「物心ついた時には監獄にいた」。トワはその施設の持ち主の実験素材で、薬を打たれてはデータを取られ、薬に耐えきれず死んだ子供たちが死体になって運び出されていく日々を生きていた。
他の子供たちと違って家族の思い出も帰りたい場所もなかったのに、「なぜだか生き延びてしまってた」。腕や内臓の一部を持っていかれてもすぐに生えてきた、という一文がさらりと語られるのが恐ろしい。そして身長と髪が少し伸びた頃、トワは施設の本当の目的を知る。人間に侵略種の力を与える、魔人化薬の製造施設だ。
第3話で本人が語った「働きながら学生をしている天涯孤独の身の上」からは想像もつかない重さ。淡々としたモノローグだからこそ、余計に刺さるんだ。
篠宮マナと蔵木エイジ、「本命」は炎型
施設を仕切るのは、魔人化薬を生んだ篠宮マナと蔵木エイジ。「黒髪の方はお前が期待してた能力者じゃなかったのか」と問うエイジに、マナは答える。期待していたのは魔人や侵略種を捕食した時の侵食リスクを減らし、副産物として捕食した相手の能力をそのまま獲得できる能力者。だがトワは「全然ダメ。能力の抽出も継承もできないの」で、おまけに魔人化薬の材料にもならないという。
マナの本命は炎型だった。「同じタイプを何人か作ってるんだけど、私の想定通りに強くなったら、美味しくいただいて私がもっともっと強くて綺麗になるの」。訳も分からないまま戦わされて負けたトワは、「この実験体は廃棄処分でよろしいですか?」「利用価値ないし、顧客の食用にでも卸しちゃって」と、モノのように処分が決まる。
だが輸送中の車が横転し、運転手は死亡。事故と侵略種の襲撃、どちらが先だったかは分からないという。廃墟でまだ息のあるトワを見つけたのは、駆除の仕事で現場に居合わせたらしい夫婦だった。「もう大丈夫だぞ」「何にも心配いらないからね」。トワは初めて、あの監獄以外の場所に出たのだった。
「美味しくいただいて綺麗になる」という言い草の胸糞の悪さは今期でも屈指。ネットの「エイジとマナ許すまじ」に全力で同意だし、炎型が量産されているという情報も聞き捨てならないよね。
夜海の家族と、初めての旅行先の悲劇
「父さんって呼んでいいんだぞ」夜海夫妻との半年
トワを引き取ったのは、どこの誰かも分からない子供を家に迎える「変わった二人」。「子供の本業は勉強と遊ぶことだ。友達や仲間を作って、食っていけるだけ稼げるようになれば、それで十分幸せってもんさ」「大切な人が見つかればもっといいわね」。夜海という苗字を「いい名前でしょう」と自慢し、「苗字も揃うとさらにかっこいいだろ。父さんって呼んでいいんだぞ」と笑う。
半年後、二人は改めて告げる。「俺達はお前と家族になりたいって思ってる」「学校にも行かせてやりたいしな」。「怪物の私が」とこぼすトワに、「持病の一つや二つあっていいさ」「気をつけてれば大丈夫よ」。当時のトワに特別な感情はなく、安全な寝床を提供してくれるから離れる理由がなかっただけ。それでも、いつも笑って自分を大切にしてくれる二人と暮らすうちに、昔は分からなかったことが少し分かるようになった。
あの炎の子がどうして自分に謝ったのか。あの子にはきっと帰りたい場所や、死んだら悲しむ人がいて、私を殺したくなかったから「ごめんね」と言ったんだ。「あの子は生きててくれるかな」「生きててほしいな」。そう思える自分に変わっていたことに、トワ自身が一番驚いていたのかもしれない。
「夜海トワ」という名前そのものが、この夫婦がくれた家族の証なんだよね。第3話で名乗ったフルネームの重みが、ここで一気に変わってしまった。
すべてを奪った空港の事件と、固まった決意
二人と出かけた初めての旅行先で、悲劇は起きる。暴走する炎の魔人。「自分じゃもう止められないの」という声。トワの中には、両親を殺されたという事実と、薬のせいで暴走する力を止められないのが分かってしまう気持ち、その両方があった。だから残ったのは、あなたは悪くないよ、という思いだった。
後に分かった真相はさらに重い。空港の事件は蔵木と篠宮によるもの。生きた使い捨て爆弾としての炎の魔人であり、それを生み出す薬を売るためのデモンストレーションだった。なお第4話には炎の少女、日渡ナツキ役で前島亜美が出演しており、包帯姿の彼女もまた実験の被害者だと、ネットでも心を痛める声が上がっている。
「家族や友達、大切なもののことを、私は多分今でも理解できていない。だけど、許せないことと、私がやらなきゃいけないことは分かる」。あの子は悪くない。悪いのは、あの子を魔人に変えてあんなことをさせた奴ら、あの施設と薬を作った人間。「篠宮と蔵木は私が殺す。それを邪魔する魔人は殺す。篠宮の魔人化薬は根絶する」。第3話の「全部潰す」という宣言の根っこが、ここですべてつながった。
義両親の顔や暮らしがはっきり描かれているぶん、この空港の場面は本当にきつい。それでも「あの子は悪くない」と言い切れるトワだからこそ、応援したくなるんだよね。
「夜海トワ Origin」まとめと考察
「ここから先は私一人でいい」魔人狩りチームの現在
時間軸が現在に戻ると、トワの拠点にはシオリ、ユズ、アオイといった仲間たちの姿がある。ネットでも整理されていた通り、チームはトワが助けた魔人被害者たちが集まった集団だ。買い出しのおすそ分けで、トワにだけ特盛弁当が渡されるのがちょっと微笑ましい。よく食べるのはシイナだけじゃないんだね。
そのトワが切り出す。「みんなには助けてもらってるし、正直頼りにもしてる。でもそろそろいいよ。ここから先は私一人でいい。みんなの魔人能力だって、私がいつでも消してあげられる」。だがシオリは「トワさんが助けてくれなかったら、魔人に食い尽くされていた命とお金です。正しく使っているつもりですよ」と譲らず、「私たちも魔人狩りのチームだよ」と口々に続く仲間たち。仇である魔人化薬の元締め、蔵木エイジと篠宮マナの捜索には「ぶっころです」という物騒でゆるい宣言も飛び出した。
トワの本音は「表の社会で普通に生きてほしい」。「区切りをつけられるまでもうすぐだと思うから、それまでの間はみんなの力を借りるけど」。魔人能力を消してあげられるという発言の詳細も含めて、このチームの在り方は今後の物語の鍵になりそうだ。
「私が死んだらシイナを悲しませちゃうかな」
そしてラストの独白が、この回のすべてを塗り替える。「やるべきことを終えたら、生きていようと思わない」「私がいなくなれば、あの子たちも普通に生きていこうと思うはずだから」。トワは復讐の完遂と引き換えに、自分の「その後」を最初から手放しているのだ。
締めの一言は「私が死んだらシイナを悲しませちゃうかな」。表の世界で「紅蓮の魔人」と讃えられるシイナと、魔人は殺すと誓うトワ。ネットでも「こんな良い娘のトワとシイナがどんなぶつかり方をするのか」「もうこの2人戦わせないで」と、二人の行く末を案じる声が相次いだ。
一方で、ほぼ1話まるごとモノローグの回想だったこともあり、「感情移入しにくかった」「盛り上がりに欠けた」という辛口の感想も確かにある回。ただ、第3話で売人が残した「それ以上力をつけようとしたらパンクするはずや」という警告や、倒した相手を吸収して強くなり続けるシイナの力のことを思うと、表と裏の主人公が互いの核心を知らないまま近づいていく構図は、むしろここからが本番だろう。副題の通り、これは夜海トワの「Origin」。名前の由来まで見届けたうえで、二人の再会を待ちたい。































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