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第16話「撹乱」。アキヤマが考案した裏切り作戦を、ヨコヤは先に完了させていた。昼の国のATMマネーは全額が夜の国へ移り、残高はゼロ。フクナガは「勝つ可能性はゼロ」と言い放つ。作戦を知る相手に裏切りは期待できない。それでもアキヤマは自ら検査官となり、大胆なハッタリで夜の国を揺さぶる。接触したアカギは、ヨコヤがいかにして支配者になったのかを語り出す。




昼の国、残高ゼロ
ヨコヤに、先を越された
第16話は、最悪の報告から始まる。昼の国チームの三人が、昼の国ATMのマネーを全額、自分たちの口座を経由して夜の国へ運んでしまったのだ。つまり、昼の国ATMの残高はゼロになった。
これは偶然ではない。フクナガが解説する。ヨコヤは連続で検査官を務め、菊沢と連携して金を稼ぐと同時に、昼の国チームの一人一人を観察していた。そのうえで、話を持ちかければ必ず乗ってくる三人を狙い撃ちにした。アキヤマが考えていた「敵を裏切らせる作戦」を、ヨコヤは先に、しかも昼の国に対して完遂していたのである。
主人公側が温めていた策を、敵が先に決めてしまうという幕開けが強烈だ。しかもその手口が、地道な観察と人選という「相手をよく見た」ものなのが、ヨコヤの不気味さを際立たせている。
「勝つ可能性はゼロ」
フクナガの計算は残酷だった。夜の国が残り全ゲームでダウト1億をコールし続ければ、昼の国が何も運ばなくても、最終的な金額はマイナスになる。「私たちの勝つ可能性はゼロよ」。
では、夜の国の誰かが裏切ってくれれば——という淡い期待も、フクナガに一蹴される。アキヤマと同じ裏切り作戦を、向こうはすでにやってきたのだ。作戦を知っている敵を、どうやってそそのかすのか。もはや夜の国の勝利は確定的で、こんな状況で寝返る者などいない、というわけである。
勝ち筋が理屈で完全に潰されるところまで見せるから、この後の逆転に重みが出る。希望的観測を先に叩き潰しておく構成が、いかにもこの作品らしくて容赦がない。
ヘマした三人と、アキヤマの一手
「自分のためにやった」という正直
金を運んでしまった三人が、アキヤマに事の次第を報告に行く。アキヤマが問うたのは、ただ一つ。「チームのためにやったことなのか?」。一人が絞り出したのは、「僕は、自分のためにやった。自分が儲かることしか考えていなかった」という告白だった。
それを聞いてアキヤマは「そうか、それを聞いて安心したよ」と返す。自分たちが不利になると分かっていて、わざわざ正直に「自分のためだった」と言った——その正直さゆえに、彼らはまだ救いがある、という判断である。殴ったところでチームを勝たせる何のプラスにもならない、とも付け加えた。
ヘマをした仲間を責めるのではなく、その告白の「正直さ」を評価するアキヤマの反応が、後半で語られるこのゲームの本質へと静かにつながっている。ライアーゲームなのに、鍵になるのが嘘ではなく正直だという逆説がいい。
起死回生の、ハッタリ
状況は厳しいが、まだ起死回生の策はある——アキヤマはそう宣言する。三人を騙した人間が検査ルームに入ったとき、アキヤマ自らが検査官として乗り込むのだ。
越境ゲートで対峙した夜の国のメンバーに、アキヤマは大胆なハッタリを放つ。運ばれたはずの大金は「夜の国ATMには入れず、とある場所に隠した」と言い切ったのだ。三人は確かに現金をあの場所から動かした。だがATMには入れていない——という、真偽不明の主張である。
この嘘が効くのは、ゲームの盲点を突いているからだ。夜の国のメンバーは、昼の国ATMの残高は見られても、自分たち夜の国ATMの残高は見られない。だからアキヤマの嘘を確認するすべがない。空のトランクにあえてダウト1億をコールしてみせる不敵さも含めて、「顔だけは悪役」と評された、この回のアキヤマの見せ場になっている。
支配者ヨコヤの、正体
敗者復活戦という、リストラゲーム
揺さぶられた夜の国のアカギが、ヨコヤの過去を語り出す。舞台は敗者復活戦——脱落者を一人選ぶ「リストラゲーム」だった。渡辺の代理として初めて現れたヨコヤを、参加者たちは票を入れ合って脱落させる算段でいた。
ところがヨコヤは、金で票を買い占めた。「5000万で5票を売ってくれ」——最初は誰もが断ったが、人間は欲望に勝てず、結局全員がヨコヤに票を売ってしまった。極めつけが中舘というサラリーマンで、持ち金全額に退職金の前借り、さらに1000万を払うという念書まで書いた。ヨコヤは中舘を最下位にしつつ2億2000万を支払い、中舘は差し引きプラス1000万でゲームを終えた。
裏切りと欲望を逆手に取って、脱落するはずの立場から支配者へ上りつめる手口が鮮やかで、そら恐ろしい。「捨て身で尽くす者には見返りを、忠誠心を欠く者は地獄へ」——恐怖と報酬で人を縛るヨコヤの流儀が、この一戦で完成していたのだと分かる。
ナオと同じ戦略、正反対の結末
聞き終えたアキヤマが、静かに切り返す。昼の国のボス、神崎ナオも、実は同じ敗者復活戦で全マネーを占有し、ゲームを支配していたというのだ。戦略はヨコヤと全く同じだった。だが、そこから先が正反対だった。
ナオは自分を気にかけてくれた一人に2億を渡して勝ち抜けさせた後、残りのプレイヤーに、獲得した全マネーを返却した。そして言ったのだ。「自分だけが儲かろうと思わなければ、全員が救われる。ライアーゲームは嘘つきのゲームではない。正直でいられるかを試されているゲームなのだ」——。昼の国のボスはそういう人間だ、来いよ、昼の国へ来い、俺たちの仲間になることがお前が助かる唯一の道だ、とアキヤマはアカギを誘う。
恐怖で縛るヨコヤと、返すことで救うナオ。同じ戦略の結末を対に並べることで、このゲームが問うているものが一気に立ち上がってくる。「昼の国へ来い」の一言が格好いいと評判になったのも納得の、シリーズの核心に触れる場面だった。
まとめ——ハッタリが繋いだ、希望
対人戦だからこそ、成立する策
第16話は、詰みかけた盤面をアキヤマの奇策が押し返す回だった。昼の国ATMが空になり、フクナガが「勝つ可能性はゼロ」と断じた絶望から、ハッタリ一つで夜の国に疑心を植えつけ、寝返りの糸口を作るまでを一気に描いた。
アキヤマの狙いの核心も明かされる。まず第三国口座の額を夜の国より少しだけ下の「ちょい負け」で確定させ、そのうえで寝返らせた裏切り者に、夜の国ATMのマネーを運ばせる——という二段構えだ。相手のトランクが空でもダウト1億をコールし続けるのは、その布石だった。コンピューター相手では成立しない、人間同士の心理戦だからこそ効く策である。
気づき始めた、ヨコヤ
この回で改めて浮かび上がったのは、ヨコヤとナオの対照だった。恐怖と借金でプレイヤーを支配下に置くヨコヤと、全員が救われる道を選ぶナオ。その真逆の生き方が、そのまま夜の国と昼の国の色になっている。アキヤマがアカギを口説く材料が、金や脅しではなく「ナオの生き様」だったのが、この作品らしい。
そしてヨコヤも、状況の変化に薄々気づき始めている。アキヤマの起死回生の策がハマりつつある一方で、この支配者がどう動くのか。四つの口座を条件つきで巡る金の攻防は、まだ折り返したばかりだ。次回も目が離せない。




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