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裏切りに遭った元工作員が、工作員としての人生を捨てる。名乗ったのは、ランダル王国に実在した消息不明の人物「ビクトリア」の名。ベンチに座り続けていた少女ノンナとの出会い、ひったくり騒ぎで知り合った第二騎士団長ジェフリー。そして青いリボンと、置き手紙。第1話は、彼女が新しい人生を選び取るまでを描く。




過去を捨て、新たな人生の始まり
裏切られた工作員が、名前を捨てた日
第1話は、主人公の来歴から静かに幕を開ける。凄腕の工作員として生きてきた彼女は、組織の裏切りに遭い、工作員としての人生そのものを捨てる決意をするんだ。もう誰かの駒として使われるのはごめんだ、というわけだね。
そこで彼女が選んだ生き方が、実に彼女らしい。ランダル王国に実在する——ただし現在は消息不明の——人物の名を騙り、その人間として生きることにしたんだ。
「ビクトリア」という名前は、彼女が新しく作った偽名ではない。実在の誰かの人生を借りている、というのがポイントなんだよね。存在する人物なら身元は照会できるし、消息不明なら本人と鉢合わせる心配もない。この徹底ぶりに、元工作員としての手札の多さがさっそく表れている。
過去を捨て、他人の名前を借りて、静かに暮らす。そのはずだった彼女の計画は、しかし、たった一人の少女によって早々に狂わされることになる。
ベンチに座り続けていた少女、ノンナ
町を散策しようと歩き出す前、ビクトリアはベンチにぽつんと佇む少女を見かける。その時は、ただ通り過ぎただけだった。だが散策を終えて同じ道を戻ってくると、少女はまったく同じ場所に、同じ姿勢のまま座り続けていたんだ。
声をかけると、少女はノンナと名乗る。置き去りにされたのだと察したビクトリアは、彼女を背負い、保護施設を探して歩き出す。関わらないほうが賢い。それでも見過ごせなかった——ここが彼女の人間性なんだよな。
背中の少女はおとなしく、聞き分けもいい。むしろ、その聞き分けの良さこそが痛々しい。何も要求しないことに慣れてしまった子どもの姿が、そこにはあったんだ。
静かに暮らすはずだった元工作員が、少女を背負って街を歩く。第1話の物語は、ここから一気に転がり出す。
ひったくり騒ぎと、第二騎士団長ジェフリー
足をかけて、転ばす——身体が覚えている技
ノンナを背負って保護施設を探している途中、前方から人ごみをかき分けて走ってくる男がいた。ひったくりだ。
ビクトリアの対応は、あまりにさりげなかった。すれ違いざまに足をかけ、それだけで男は無様に転倒する。身構えるでもなく、追いかけるでもない。ただ、通りすがりに一手を打っただけ。
派手なアクションを見せつけるわけじゃない。それでも、身体が覚えている技が日常の中にふっと顔を出す。この抑制された描き方が、彼女の元工作員という設定を何より雄弁に語っているんだよね。
そして背中には、ノンナを背負ったまま。守るものを抱えた状態でも、判断は一瞬。ここで視聴者は、彼女がどれだけの手札を持っているのかを察することになる。
ネットでも、この場面で「元工作員」という設定の使い方に期待が集まっていた。スカッと爽快な無双ではなく、日常の中に静かに滲む技量。その塩梅が良い、というわけだ。
男の正体は、第二騎士団長ジェフリー
転んだひったくりを取り押さえにやって来たのが、一人の男だった。手際は良く、物腰は落ち着いている。
男が「警備隊に連れて行く」と言うので、ビクトリアもついていくことにする。そこで判明したのが、彼の正体だ。この男こそ、王都を警備する第二騎士団長ジェフリー・アッシャーだったんだよね。
ノンナを施設に引き渡すため、そのまま警備団に預けてしまおう——最初はそう考えていたビクトリア。合理的だし、それが正しい判断でもある。
けれど、預けられていく少女があまりに不憫で。ビクトリアは自分から、ノンナを自分の泊まっているホテルに連れて行くと申し出るんだ。ここが第1話最大の分岐点だった。
ネットでは、団長との関係が動き出す展開の早さも話題になっていた。
ホテルの朝食と、青いリボン
同じベッドで目を覚ます、二人の朝
翌朝。ホテルのベッドで、ビクトリアとノンナは並んで目を覚ます。昨日まで他人だった二人が、同じ布団から起き上がる——それだけの絵が、妙に沁みるんだよな。
そのままホテルで一緒に朝食をとる。その席でビクトリアは、ノンナの母親のことを軽く尋ねるんだ。深く踏み込むでもなく、探るでもなく。工作員として人の口を開かせる術を知っている彼女が、あえて軽く聞く——その距離の取り方が優しい。
この作品が良いのは、いきなり感動的な言葉で少女を救おうとしないところだ。一緒に寝て、一緒に朝ごはんを食べる。ただそれだけの積み重ねで、ノンナの中の何かがほどけていく。
青いリボンと、「引き取ります」の一言
外に出た二人。ビクトリアがノンナに買ってあげたのが、青いリボンだった。それを結んだ瞬間、ノンナの表情がふっとほどける。
リボンをつける前と後で、ノンナをまるで別人のように描き分けて心を開いた瞬間を表現した——この演出は、ネットでも高く評価されていた。台詞で説明しないのが本当にうまいんだよな。
そこへ、施設の人間がノンナを引き取りにやって来る。話は昨日のうちに通してあったのだから、当然の流れだ。ところがビクトリアは、その手を止める。ノンナを引き留め、自分が引き取ると告げるんだ。これから二人で暮らそう——静かに、しかしはっきりと。
部屋探しと、ジェフリーが読む手紙
子連れの部屋探しは、そう甘くない
二人で暮らすと決めた以上、まず必要なのは住む場所だ。ところが、これが思うようにいかない。
子どもがいる、というだけで部屋探しは一気に難航する。身分も後ろ盾も持たない女が、幼子を連れて部屋を借りようとすればなおさらだ。あらゆる手札を持つビクトリアが、こんな現実的な壁の前で足踏みするのが面白い。
そんな中、二人が身支度を整えておめかししていると、ジェフリーが食事に誘いに来る。三人での食事。そして夜には、ジェフリーが部屋の内見にまで付き合ってくれるんだ。
見返りを求めるでもなく、当たり前のように手を貸すジェフリー。誠実さがそのまま行動に出るタイプで、だからこそビクトリアの側が少し戸惑っているようにも見える。人に親切にされることに、彼女は慣れていないんだ。
「ビッキー」——そして残された手紙
ホテルに戻った二人。そこでノンナが、ビクトリアを「ビッキー」と愛称で呼ぶんだ。名前を短くして呼ぶ、ただそれだけのこと。でも、それは彼女がビクトリアを「自分の人」だと認めた証だった。
笑顔のなかったノンナが、家族という言葉を聞いて我儘を言い、愛称で呼び、そして笑う。この順序がきちんと踏まれているのが素晴らしい、という指摘がネットでも上がっていた。段階を飛ばさないからこそ、ノンナの変化が本物に見えるんだよな。
そして第1話は、静かな一手で幕を閉じる。ビクトリアとノンナがホテルを去ったあと、そこを訪ねてきたのがジェフリーだった。彼に残されていたのは、ビクトリアからの手紙。
去り際に手紙を残す——工作員の作法でありながら、そこに込められたのはきっと別の感情だ。手紙を読むジェフリーの姿で終わるラストが、次回への期待をぐっと引き上げてくれる。




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