この記事の作品:
魔界の一年は13ヶ月。12月31日から13月1日への“月越し”を前に、問題児クラスが入間の家で忘年会を開く。ところが炭酸飲料を水で割らず原液で飲んでしまい、全員のテンションが暴走。アズの独占欲もジャズの“兄貴”宣言も炸裂し、締めは全員で反省文666枚。後半は、羽目を外しすぎた入間が一日“使用人見習い”としてオペラに弟子入りさせられ、「期待という名の依存こそ、仕えることの本質」というオペラの覚悟に触れる。次回「13冠の集い」への招待状も届く、笑いとしみじみの二本立てだ。




魔界の“月越し”と、問題児クラスの無礼講
一年は13ヶ月、13月から新年
第16話は「問題児(アブノーマル)な無礼講」「魔界の献身者」の二本立て。まず語られるのは魔界の暦だ。魔界の一年は13ヶ月あり、12月31日の晩から13月1日への切り替わりを「月越し」と呼ぶ。つまり13月から新年が始まる。人間界でいう年越しにあたり、今はちょうど年末というわけである。
この時期なら多少羽目を外すくらいは許されるはず。そんな空気のなか、問題児クラスの面々が「みんなで忘年会しない?」と盛り上がり、会場はあれよという間に入間の家に決まってしまう。アスモデウスは「礼儀正しく節度を守り、決して迷惑などかけぬよう肝に銘じるのだ」と釘を刺すのだが、この宣言がのちに盛大な前振りとなる。
アクドル大運動会と、それぞれの月越し
テーブルに並んだのは、オペラがすべて用意した絢爛豪華な料理の数々。「絶えなる味のハーモニー」と唸る者もいれば、早くもハイペースで箸を進める者もいる。話題は自然と「みんなはどうやって月越しを過ごすの?」へ移り、家族と過ごす、妹に電話する、実家に帰る、父と鍛錬する、とそれぞれの答えが返ってくる。
なかでも盛り上がったのが「月越しといえばアクドル大運動会」という話題だ。人気アクドルが共演する夢の祭典で、毎年欠かさず見ているという者もいる魔界の風物詩。誰が出場するのかとひとしきり語り合ったところで、「ちょっと早いけど、みんな今年一年お疲れ様」と乾杯の音頭が上がった。
原液で飲んだ“ジュース”と、暴走する問題児たち
「水で割って飲んでね」(※気づくのが遅い)
この日の主役となったのが、パーティーグッズとして持ち込まれた炭酸飲料だ。子供から大人まで楽しめる面白グッズで、酒ではない。だが「飲んだらなんだか楽しくなれる」という触れ込みどおり、口にした面々のテンションはみるみる上がっていく。
異変に気づいたときには手遅れだった。ボトルの注意書きにはこうある。「水で割って飲んでね」「そのまま飲むとテンションが上がりすぎることがあるよ」。全員、見事に原液で飲んでいたのだ。ちなみに表示されたカロリーは66kcal。「繰り返しますがジュースですよ、ジュース」とネットでも突っ込まれる、悪魔らしい小ネタだった。
アズの独占欲と、ブラザーズハイのジャズ
ここからは全員の“酔い方”の個性が炸裂する。アスモデウスは入間の体の小ささを本気で心配し始め、「ちょっと力を入れたら折れそう」「早く大きくなってください」と絡み倒す。さらに「近頃シャックスに構いすぎです」と嫉妬まで飛び出した。
負けじと入間も「アズくんとクララだって二人で仲良くなってるでしょ」と反撃。アスモデウスは「収穫祭もゲームも、親友の我々を差し置いてシャックスとばかり」とこぼし、「でも寂しい」と本音を漏らす。入間の「声をかけづらい時もあった」という言葉には「気にせず話しかけてください、親友ですから」と返すあたりが、この二人らしい。
一方でジャズは「俺はお前たち全員、弟妹だと思ってる」と兄貴を名乗り出し、いわゆるブラザーズハイ状態に突入。「拙者が皆のお世話をする」と譲らないガープと世話係を奪い合う。隅では「なんで僕がモテなくて演習教師のカルエゴがモテるんだ」という恋バナも始まり、アロケルが「女心はどんな方程式より解くのが難しい」と達観してみせるなど、カオスは加速していった。
反省文666枚と、一日“使用人見習い”
「これはお説教案件ですね」
騒ぎ疲れた頃、ふと零れたのは「将来さ、大人になってもさ、みんなで集まって、一緒に」というしみじみとした言葉だった。だが余韻に浸る間もなく響いたのが、オペラの一言。「これはお説教案件ですね」。この後、全員が反省文を666枚書かされた。
後半「魔界の献身者」は、その説教の続きから始まる。オペラいわく、近頃の入間は羽目を外しすぎ。音楽祭での無断外泊に始まり、暴れて大騒ぎと素行が目に余るため、一度規律正しい生活に戻すべきだという。サリバンと相談した結論は「シャキッとするならオペラの真似をするといいよ」。こうして入間は、一日“使用人見習い”を務めることになった。
掃除・洗濯・仕込み、オペラ流の一日
用意されたのは、サリバンのセンスにオペラらしさも漂う特注の使用人服。まずは掃除からと、家具をどかすオペラのテキパキとした手際に入間は圧倒される。コツを尋ねると「気持ちを込めてみるといいですよ」との答え。「いつもゲームさせてくれてありがとう」と念を込めた入間に、「ゲームは一日一時間にします」と即座に返すやり取りが可笑しい。
洗濯では、上着・下着・手洗い・靴用・おしゃれ着洗い・ドライクリーニング用に加え、サリバンの襟巻きをふわふわにする用まで洗剤がずらり。布団は踏み洗いで、「私はこれが一番好きです」と語りながら軽やかに跳ねる姿も見られた。書類雑務、鍵の見回り、サリバンの苦手なマナスをバレないよう仕込むご飯作り、そしてカトラリーの並べ方まで、仕事は途切れなく続く。
“期待という名の依存”と、13冠の集いへ
SD=セキュリティデビルという役目
摘み立てのお茶で一息つきながら、入間は素直な感想を口にする。「オペラさんは全部を大事にしてくれてるんだなって。こうやって毎日、僕たちの生活を守ってくれてるんだなって」。魔界では悪魔に仕える者をSD、セキュリティデビルと呼ぶ。主人の命はもちろん、風評から身だしなみに至るまで一切を守り支える役目であり、どの仕事も手を抜くことはないという。
そして語られたのが、この回で最も静かに刺さる一節だ。オペラはサリバンへの想いを「親愛、忠義、そして依存です」と言い切る。他者への情がひどく薄い魔界で、己のすべてを血の一滴から爪の先まで捧げ尽くしても、この方ならきっとそれ以上に応えてくださると信じ抜く。「期待という名の依存こそ、仕えることの本質」なのだと。
「あなたに期待をしてもよろしいでしょうか」
さらにオペラは、その心構えをこれからも変えないと告げたうえで、入間へ向き直る。魔界で生きるには相応の覚悟が必要だと以前伝えたこと。サリバン家の悪魔として生きれば、この先いくつもの難しい立場や苦境に立たされること。「それでもこの場所を選ぶというのなら。イルマ様、私はあなたに期待をしてもよろしいでしょうか」。
こうして「ふぬけた部分も治りましたし、心構えも十分」と業務は終了。最後にオペラが差し出したのは、「サーティーンディナー」への招待状だった。笑い通しの前半から一転、静かな覚悟の言葉で背筋を伸ばし、次回「13冠の集い」へと繋げる構成が見事だと評判を呼んだ一話である。




関連作品:














コメント