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第3話「蟲愛ヅル君」。前線部隊の宿舎に、一夜にして巨大な蟲の繭が生じた。鳩柳先生は隔離施設の仕業と決めつけ、岩元に犯人を突き出せと命じる。だが調査の末に名乗り出たのは、前線部隊2年生の岡野三郎だった。愛した生き物を進化させる能力を隠し、経歴を偽って前線部隊にいた彼を、岩元は「不幸な事故」として処理する。そして繭は焼かれるのではなく、熱で羽化を早められ、ホタルのような光になって飛び立った。後半は舞台を移し、湖の街の屍人伝説へ。




宿舎に生じた巨大な繭と、鳩柳先生の激昂
「神聖なる前線部隊の宿舎に、こんなでけえクソをしたのは誰だ」
陸軍栖鳳中学の前線部隊宿舎に、一夜にして巨大な蟲の繭が現れる。周囲のものを巻き込んで膨れ上がったそれは、一目で常人の仕業ではないと分かる異形だった。生徒たちがなす術なく呆然とするなか、唯一その光景に慣れているのが隔離施設の者たちだという語りが、この学園の力関係を端的に示している。
駆けつけた鳩柳先生の第一声が強烈だった。「誰だよ、神聖なる前線部隊の宿舎に、こんなでけえクソした奴は」「お国に忠を尽くすなら、自ら名乗り出ろ」。ネットでもフルメタル・ジャケットのハートマン軍曹を引き合いに出す声が上がったほどの罵倒ぶりで、「クソもするうえ、不忠なゴミ学生がこの学園内に紛れ込んでいるとは」と続く。
疑われるのは、いつも隔離施設
鳩柳先生は居合わせた生徒を捕まえ、「誰に推薦されて紛れ込んだ」と詰め寄る。返ってきた「岩元胡堂先輩です」という答えに「だろうと思ったよ」と吐き捨てるあたり、疑いは最初から固まっている。そして岩元に命じるのだ。「お前が責任を持って犯人を見つけ出し、俺の元へ突き出せ」と。
言い草も容赦がない。「この学園は頭脳と肉体を鍛え上げる、エリートたちの修練の場となるべきだ」「クソの処理は役立たずの貴様らがしろ。国に貢献する戦士たちの手は汚させん」。岩元にとって厄介なのは、犯人を捕まえれば捕まえたで、その生徒が鬼軍曹に殺されかねないという構図だった。ネットでも「異常が起きたら隔離施設にいる者のせいにされる。それはそう」と、この理不尽さが真っ先に語られている。
★雨が降る空室から、犯人にたどり着く
密林に見せかけた作りもの
捜査は行き詰まる。前線部隊3年のゴンドウ——岩元の入学初日の最初の友達だという男——に相談しても、「あんなでかい虫出せるのは、お前んとこのやつしかいないってみんな思ってるだろ」と返るばかり。人形を繭に取られた一年生も純粋な被害者で、心当たりがない。
突破口を持ってきたのは、岩元の分隊の生徒だった。自分の周りにだけ雨が降るという能力の持ち主で、空気の違う場所を調べる癖がある。その彼が「隔離施設の宿舎を巡回してますと、時々とても強い雨が降る場所がございまして」と告げる。空室ばかりのはずの一角に、開いている部屋があった。
中は異様だった。草が生い茂る密林——いや、そう見せかけて作られた、虫が喜んで育つ環境である。しかも真上は、人形を奪われたあの一年生の部屋。「繭を作るなら、危険の少ない場所や安心できる場所がいいんじゃ」「例えば、育ての親がいる場所とか」——この一言で、犯人が誰かではなく、犯人にとってあの宿舎が何だったのかが見えてくる。
★名乗り出たのは、前線部隊2年の岡野三郎だった
現れたのは前線部隊2年生・岡野三郎。「自分があのマユを能力で生み出した犯人です」と、自ら名乗り出る。続く告白がこの回の芯だ。「本来であれば自分は隔離施設、岩元先輩の分隊にいるべき人間です」。
彼の能力は「この手で育てた生物が、私の愛に応じ、独自の色形に進化する」というもの。虫が好きで力を隠して育ててきたが、体格の良さを買われて軍部の推薦を受け、鳩柳先生に気に入られて前線部隊へ入った。愛した虫たちが軍事利用されるのを恐れて、能力者だと名乗らなかったのだ。そして洞窟で見つけた一匹を「愛しすぎてしまった」結果が、あの繭だった。
問題は、これが単なる事故で済まないことである。経歴の隠蔽、上官への嘘——鳩柳先生に知られれば軍法会議もので、命がない。一方の鳩柳先生は「奴は俺が育てた前線部隊の重要戦力だ。貴様には渡さん」と譲らず、岩元は「繭の処分は私にやらせてください」と申し出る。理由は「あなたに同意する点があるからです」だった。
★繭を焼かず、羽化させる
「さなぎは熱で温めると羽化が早まる」
処分と聞けば焼却である。巻き込まれた人形ごと燃やすのかと身構えたところで、岩元が口にしたのはこうだ。「マユの中のさなぎは、熱で温めると羽化が早まると聞いたことがある」。
結果、繭からは無数の光が舞い上がる。ホタルのような光景と、巻き込まれた人形が無事に救出されていたことが、この不気味な回にひとつだけ差し込まれた美しさになった。「焼いちゃうの?と思ったら救出済みだった」「虫問題が解決した時、ホタルが出てきたのきれいだった」——ネットの反応もそこに集中している。
共に才能を温め、羽化の時を待つ
後始末も岩元らしい。「岡野三郎は入学後初めて能力を自認した」と軍部には説明し、本件は不幸な事故として処理された。鳩柳先生もこれに同意したという。経歴詐称という一番危ないところだけを、静かに消したわけだ。
岡野に向けた言葉も印象に残る。「軍事利用といっても、戦場で戦わせるばかりじゃない。嫌なら君が使い方を考えるんだ」「少し時間がかかってもいいさ。それが学び屋ってもんだ」。そして岩元自身の述懐。「俺の分隊の価値、そんなもの考えたこともない。だが、どんなものにも大なり小なり能力があって、共に才能を温め、羽化の時を待てば、いずれ未来を照らす本当の戦力になる。そう俺は信じているんだ」。作品タイトルの「推薦」が何を指すのかが、ここではっきりする。
Bパート、湖の街と屍人伝説
学園長が禁じた調査と、天羽総一郎
後半は舞台を移す。食事処に現れたのは、入学して3日もいなかったという不登校の後輩・天羽総一郎。「性に合わんだけでさ。でも、あそこに入り込める権利はありがたいですよ」と嘯きながら、橘城学園長の机にしまわれていた極秘資料を持ち出して岩元に届けている。
ここで注意したいのが立場だ。天羽は「いくら能力者のためとはいえ、学園長の命令に背くなんて」と岩元をからかい、岩元は「お前が言うな」と返す。つまり二人は、調査を禁じられたうえで動いている。岩元の建前は「俺は休暇で、たまたまこの地を観光してるだけだよ」だが、天羽には即座に「嘘だ嘘だ」と見抜かれていた。
狙いは屍人伝説である。人肉がついた白骨死体という異常なものは能力者にしか作れない、この地域に伝わる「江戸時代に流行った開帳で、夜な夜な死体が徘徊する」という奇妙な伝説とも符合する——そこまでは、ほぼ確実だと岩元は見ている。
湖を汚す工場への潜入
二人が目をつけたのは、湖で成り立つ観光地でありながら、その湖を汚している工場だった。民間では珍しい数の気球が浮かび、下記厳禁の看板と城壁のような塀で異様に厳重に守られている。「中に入って調べよう」と踏み込む岩元に、天羽は「さすが岩元先輩、積極的」と軽口を叩きながらついていく。
裏口から忍び込んだ先で目にしたのは、葬式の参列者のような集団と、「あとは工場で処理して終わりだねー」「安らかに眠ってほしいものだね。再生のものも」という会話だった。死体が工場へ運ばれ、何かに「再生」される——その入口までを見せて、第3話は幕を閉じる。短めのエピソードだからこそ締まる、という評もうなずける構成だった。




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