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第3話はアバンから雫の過去へ。皇(スメラギ)サーカスで「怪我が怖くてサーカスはできません」と言い切った雫は、忠告どおりに肩を壊し、令嬢・七海から「皇にあなたの居場所はありません」と告げられて去っていた。現在、公演地を奪ったシャイニーラベンダーを見学した一同は格上ぶりに圧倒されるが、瑞佳は演目を丸ごと組み替える策で勝負に出る。そして豊川公演の本番、雫の右腕がついに限界を迎えた。「瑞佳、後を頼む」——空中芸の演者としての最後の頼みが、静かにバトンを渡す。




アバンで描かれた、雫が皇サーカスを去った日
「怪我が怖くてサーカスはできません」
第3話は現在ではなく、雫がまだ皇(スメラギ)サーカスにいた頃の回想から幕を開ける。高難度の技に挑む雫に「怪我、怖くないのですか?」と声をかけたのは、皇の令嬢・七海だった。
返ってきた答えが、雫という演者のすべてだ。「怪我が怖くてサーカスはできません。練習にも全力で挑んだその先に、人を感動させる技があると思うんです」。七海は「前時代的ですね」と切り捨て、「練習で怪我をしては元も子もない」「自らの力量に合わせて引くことも必要です」と説き、「慢心はいずれ、あなたからサーカスを奪うことになる」と言い残して去っていく。
肩腱板断裂、そして「皇にあなたの居場所はありません」
忠告は的中してしまう。次の場面で雫が負っていたのは肩腱板断裂の大怪我。「手術すれば日常生活には問題ない。リハビリ次第でブランコにだって復帰できる」と語り、見舞いに来た七海の前で「いや、する」と言い切る。
七海の言葉は容赦がない。「そして次は再起不能になるつもり」「あなたが抜けた穴を埋めるために周囲は大迷惑」。それでもやり方を変えるつもりはあるのかと問われ、雫の答えは「ない」。「残念です。なら皇にあなたの居場所はありません」——そう告げた七海は、「これからの皇は変わる。それはおそらく、あなたが望まない形に」と続けた。
肩を落とすスヴェトラーナに、雫はこう声をかける。「そんな顔するなよ。サーカスはどこでだってできる」。スヴェトラーナが「私、心当たりがある。あなたが追い求めるサーカスを受け入れてくれる人を」と応じ、二人はひまわりサーカスへ流れ着いた。この「どこでだってできる」という一言は、後半の山場でもう一度、まったく違う響きで戻ってくる。
シャイニーラベンダー見学と、金剛寺睦美の「負け犬」
設備も動物も格上、「無理ですね。赤字確定です」
現在に戻り、公演地を奪われた側として一同はシャイニーラベンダーの見学に向かう。煌びやかなテントを前にした団員たちの評価は容赦なく現実的で、「無理ですね。赤字確定です」「設備も動物もよくしつけられてます」と、実力差がそのまま口をついて出る。それでも麻利亜は「絶対あいつらに勝つわよ。今日中に作戦を考えなさい」と発破をかけた。
そこへ現れたのが、金ぴかの縦ロールが目を引くシャイニーラベンダー団長・金剛寺睦美。「偶然にも公演地を奪う形になってしまって」と慇懃に詫び、麻利亜が「こっちも公演できることになりましたので」と返せば「あら、それはそれは。心より祝福いたしますわ。なんてお優しい」と受け流す。
そして雫を見つけた睦美の一言が、この回の因縁を決定づける。「しばらく姿を見ないと思えば、タンポポサーカスにいましたのね」——団名をわざと間違えたうえで、「今回も負け犬にならないことをお祈りしますわ」。「負け犬ってどういうことですか」と食い下がった瑞佳が「降りなさい」とたしなめられ、「あいつは本当に空気読まないな」と呆れられるのも、この団らしい空気だ。
風呂で作戦会議、演目を丸ごと組み替える
帰投後、瑞佳が風呂で書きつけていたのは「今回の演目の構成と演技構想案」だった。本番直前の変更に驚く仲間へ、瑞佳はこう言い切る。「設備も体制も宣伝力も全部向こうが上。おそらく実力も。なら少し無茶でも勝てる手段を取らないと」。
狭い湯船に雫まで加わって「風呂で作戦会議かい」と笑う異色の場面から、勝負手が決まっていく。雫が「昔飛んでいた時の技がある」と鉛筆で図を描き、麻利亜の「お前の言う通りにすれば皇に勝てるんだな」という問いに、瑞佳は「桜翔ちゃんと雫さんが私の言う通りに動いてくれれば」と答えて「いい答えだ」と認められた。
構成はこうだ。序盤にスヴェトラーナの演技を持ってきて一気に客を引き込み、雫と桜翔の空中芸を長めの締めに回す。「中だるみしても、最後にすごいのを持ってくればむしろ差が出て結構」という割り切りに、桜翔は「頑張る」、雫は「受けて立つさ」と応じた。
豊川公演——空席の目立つ客席から始まった10日間
七海が見に来た「あなたの本気」
練習の最中、ひまわりサーカスを訪ねてきたのは七海だった。目的は「あなたが組みたいという子を見たくて」。「あなたが皇で得るはずだった最高の環境と舞台。それを捨てさせた子か」と、七海は瑞佳を値踏みする。
雫の答えは静かだった。「環境や舞台は、いつか自分の力で掴み取ります」。そして瑞佳について、「一緒に飛んだ時のあの高揚感。今掴まなければ、あの子はきっとどこかに行ってしまう」と語る。名前を問われて「鶴巻瑞佳です」と返すと、七海は「あなたの本気は理解したわ。公演楽しみにしています」と言い残して帰っていった。
開幕、そして客席で見つめる皇の視線
迎えた豊川公演。ところが客席には空席が目立ち、「皇さえ来なけりゃ、本当は今頃満席だったのに」という嘆きが漏れる。その客席には七海の姿もあり、付き人が「わざわざ潰しにかかる必要あるのですか」と漏らしていた。
それでも幕は上がる。麻利亜が客の心を掴み、五十鈴が全力で当たり、伊万里が続く。馬上で舞うスヴェトラーナの演技は狙いどおり客席を沸かせ、ひまわりサーカスの十日間が動き出した。
最後の空中芸と、受け継がれるもの
★右腕が限界を迎え、「瑞佳、後を頼む」
そして雫と桜翔の空中ブランコ。高所からの回転を受け止めるキャッチャーの負担は大きく、本番の最中に雫の右腕は限界を迎えてしまう。「限界ですか」「ああ」。打ち合わせどおりなら、ここでスヴェトラーナのソロに切り替えて締める段取りだった。
だが雫は「待て、ちょっと待ってくれ」と止める。観客たちの笑顔、歓声、期待に満ちた顔。このまま返すわけにはいかない、このままでは終われない——「これが空中芸の演者としての、僕の最後の頼みになる」。そして雫は瑞佳に「後を頼む」と告げた。返ってきたのは「高くつきますよ」という、あの調子の一言だ。
間をつないだのは、ネットで「ボンタン狩り」と呼ばれた即興の脱がし芸。笑いで温まった客席へ、雫は最後の空中芸を届ける。「観客を笑顔にすること。この瞬間のためなら僕は何だってできる」。客席の七海は「あれがこの団の花形、川澄桜翔よ」と評したあと、その魅力を引き出しているのが瑞佳のほうだと見抜き、「なるほどね」とつぶやいた。
新聞の見出しは「思わぬ伏兵」
十日間の公演を終え、麻利亜が結果を告げる。「シャイニーラベンダーも客は結構入ったみたいだけど、新聞はどこもこっちの話題でいっぱい」。見出しは「本選出場が確実視されていたシャイニーラベンダー、思わぬ伏兵に遅れをとる」。生活費と次の公演の資金も確保でき、「潰れなくてよかった」と胸をなでおろす団員たちの姿で幕を閉じる。
もっとも、瑞佳はどこか不貞腐れたままだ。自分の構成で勝ちながら、空中芸の舞台には立てなかったからである。からかわれる瑞佳に、雫は「落ち込むなよ。嫁の貰い手がなければ僕が貰ってやるさ」と軽口を叩いてみせた。雫の空中芸はここで最後。受け取ったバトンを瑞佳がどう使うのかが、次の焦点になる。




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