EXCEEDSの駆除隊員となったシイナは、倒した侵略種を吸収して力をつける日々を送っていた。連続勤務明けの休日、橋の上の少女を見て川へ飛び込むが、少女は身投げではなく、橋の下の猫を助けようとしていた。銭湯と食事ですっかり打ち解けた二人は、侵略種に家族を奪われた境遇までよく似ていて、互いに名乗り合って友達になる。だが同じ夜、「魔人狩り」を名乗る一団が裏社会の売人と対峙していた。「全部潰す」——昼の顔と夜の顔を静かに並べた回だ。




駆除隊員としての日常と、シイナが背負っているもの
倒した侵略種を吸収して強くなる
第3話は「私、久瀬シイナは今、新しい職場で働いてる」という独白から始まる。EXCEEDSの駆除隊員となったシイナの任務は、生存者の検索と侵略種の駆除。高町なのはが「被災者の皆さんの避難を確認、突入準備OKです」と告げ、シイナは1階から突入していく。
押さえておきたいのがシイナの力の仕組みだ。戦って倒した侵略種を吸収して強くなり、より危険な侵略種を倒せるようになるという、積み上げ式の強さである。現場を終えると執務官から「クゼ隊員は昨日から連続勤務ですし、今日と明日は休暇にしましょう」と休みが出て、なのはには「高町調査員は現場の事後調査を」と別の役割が回された。
なおこの回のなのはは「調査員」という立ち位置で、前線での見せ場は多くない。ネットでは「なのはの拘束魔法ってバインドだわなぁ」「敵を攻撃しないのも」と違和感を語る声や、そこから「なのはたちのほうが偽物では」と踏み込む推測まで飛び交っている。
休日の街で、シイナが語りかける相手
「服着るの久しぶり」と私服で街へ出たシイナ。賑やかな通りを歩きながら胸に浮かぶのは妹のことだ。「刹那、ここに連れてきてあげたら喜んでくれたかな。デパートとか遊園地とか動物園とか、もっとたくさん、いろんなところに連れて行ってあげたかったな」。
ここは取り違えやすいところだが、この回のシイナは天涯孤独として描かれている。後の食事の場面で「侵略種絡みの事件で家族を亡くしている」「天涯孤独の身の上だけど、家族の思い出が支え」と明かされる。つまりこれは妹と暮らす日々の描写ではなく、失った妹に語りかける時間なのだ。
街に流れる会話も重い。「平和に見えても侵略種災害はいつ起きるか分からない」「いつ死んでもおかしくない毎日」「辛い話だけど、自殺者も増えてるって」——そして「でもこんな世の中だからこそ、前向きに生きていかないと」。この何気ない一言が、直後の出来事の下敷きになる。
橋から飛び込んだ理由は、身投げではなかった
★助けようとしていたのは、猫だった
橋の上に立つ一人の少女。シイナは飛び降りようとしていると判断し、迷わず自分も飛び込んだ。公式のあらすじが「飛び降りようとしている一人の少女」と書いているのも、ここまでのシイナの見え方どおりである。
ところが少女は身投げをしようとしていたのではなかった。「橋の下から鳴き声が聞こえて、それで助けられるかなって」——助けようとしていた相手は猫だったのだ。「勘違いっていうか、早とちりで」「でも、君まで飛び込むことなかったよ。二重事故になったら危ないんだから」と、少女はむしろシイナを気遣ってみせる。
その返しが振るっている。「それは君も」と言われたシイナは「私はいいの。ライフセーバーの資格があるから」と平然と答えた。猫は無事で交番が預かってくれ、「お互いお相子ってことで」「助けに来てくれてありがとね」「こちらこそありがと」と、二人は笑い合う。
コインランドリー付きの銭湯で、なぜか一緒に湯船へ
濡れた服をどうにかしようと、少女が案内したのはコインランドリー付きの銭湯だった。ところが二人は当たり前のように並んで湯に浸かり、シイナが「なんか、普通に一緒にお風呂入ってんね」と我に返るのが可笑しい。「服が乾くまで別行動かなって思ってたんだけど、まあいいか」。
店の人が服を乾かしてくれたことも、猫を交番が預かってくれたことも、ひとつずつ言葉にして礼を言う。「優しい人なんだね、君は」「そうでもないよ、こういう性格なだけ」「それでもいい人だと思う」——こうして距離が縮んでいく描写に、余計な説明はいっさい挟まらない。
驚くほど似ていた二人が、名乗り合うまで
侵略種に家族を奪われた者同士
「この後何か予定ある?」と聞かれた少女は「あるけど夜遅くだから」と答える。この“夜遅くの予定”こそが、後半への伏線だ。奢ると言うシイナに「いやいや、割り勘で行こう」と返し、二人は食事へ向かう。
食べながら分かったのは、驚くほど似ているということだった。二人とも食べるのが好きで、二人とも侵略種絡みの事件で家族を亡くしていて、今は働きながら学生をしていて、天涯孤独で、家族の思い出が支えになっている。「多分お互い、自分と同じ匂いがして。だから気になったのかなって」。
「私、久瀬シイナ」「トワだよ」
食べる量も相当で、ネットでは「ラーメン、ライス大盛り、餃子2枚。JKが夜に食う量ではない」と話題になった。「体を動かす仕事だから、お腹が減るの」「割とガチ目の肉体労働」——互いに正体をぼかしたまま交わされるこの会話が、あとになって効いてくる。
別れ際、名前をまだ聞いていなかったことに気づく。「私、久瀬シイナ」「トワだよ。ヨルミトア」。「よろしくね、トワ」「うん、シイナ」。「また会える?」「会えたら嬉しい」と交わして、二人は別れた。
そして夜、「魔人狩り」の取引現場
「全部潰す」——魔人火薬をめぐる交渉
場面は一転、裏社会の取引へ。関西弁の売人たちと向き合うのは「魔人狩り」と呼ばれる集団だ。「探り合いや駆け引きは不要です。取引です。こちらが欲しいのは薬と情報だけですから」と、交渉役の少女はどこまでも淡々としている。
売人は脅しにかかる。「魔人の頭を吹き飛ばせる武器くらい用意しとる」、そして「君は面白い能力を持ってるらしいな。魔人の固有能力をリスクなしに奪って使えるようになるとか」「君を切り刻んで魔人火薬にできたら、大変な稼ぎになるな」。返ってきたのは「それはできない。昔試されたことがある」という短い否定だった。
少女が求めたのは、取引相手と仕入れ先、知っている魔人の居場所、そして魔人火薬のレシピの入手先。何に使うのかと問われての答えが、この回でいちばん冷たい。「全部潰す。望んで魔人になった人間は殺す。魔人に関わる薬は根絶する。一つの例外もなく、一かけらの取りこぼしもなく」。
売人は「裏社会の強者はもちろん、この国の上の方も、裏じゃ侵略種の力を、魔人火薬を利用しとる」と現実を突きつけるが、「だって、私たちの方が強いから」の一言で押し切られてしまう。魔人火薬のレシピを作った者として倉木英二と四宮マナの名が挙がり、さらに「炎の魔人」について問われる場面もあった。「知らないならそれでいい。あれは人間が扱っていいものじゃないし、扱えるものでもないから」。
ただし、この集団にも守っている線はある。「私らは好きで魔人になったわけじゃないんだ。人間を食ったりなんかしない」と声を荒げる仲間がおり、取引用に囚われていた人々——食用、実験用と呼ばれていた——には「助けるからね」と手が伸びる。仲間に段取りを任せ、自分は「私はここを処理しておくから」と残る手際も含めて、ネットで「魔人狩りのメンバー、皆いい子じゃん」と評された所以が、ここに詰まっている。
★昼の顔と夜の顔、そして重なる“限界”の話
この昼と夜を並べたことが、第3話の設計そのものだ。ネットは「シイナとトワのあまりにも綺麗な対比」「日常ほっこりガールミーツガールから、非日常殺伐ガールミーツガールへ移行していく予感」と沸いた。互いが対立する側にいると知らないまま出会ってしまう——なのはシリーズらしい構図である。
見逃せない符合もある。売人が投げつけた「どれだけ侵略して人間を食ってきたか知らんが、それ以上力をつけようとしたらパンクするはずや」という限界の指摘は、倒した侵略種を吸収して強くなるシイナ自身にも、そのまま重なる。強すぎる力がいずれ抑えられなくなるのはどちらなのか。友達になったばかりの二人に、その問いが同時にのしかかっている。




















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