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第15話は三本立て。アストレア・ライブラがクロードに打ち明けた悩みは「女の子になりたい」だった。理由は想い人のポルックスが、異性に触れると男のカストルに変わってしまう体質だから。図書室の魔術書を頼りに変身薬づくりが始まる。後半はクロードを変態だと誤解して監視する寮母のパートと、新しい植物魔法に浮かれたスピカが授業を丸ごと台無しにする話が続く。




アストレアの悩みは「女の子になりたい」
父から託された「バカ息子」
第15話は冬季合宿前の場面から始まる。クロードのカヴンから5名が参加すると報告を受けた教頭が、「うちのバカ息子も参加させてやりたいくらいですよ」とこぼす。息子のアストレアについての評は「あいつは女に弱くだらしない。要領はいいのですがね」で、そのうえで「クロード先生、あいつをよろしく頼みます。立派な魔術師に導いてやってくださいね」と頭を下げた。
その父は魔術博士号を持ち、数多くの魔道具を開発した一流の研究者でもある。クロードいわく「そのジュニアともなれば、周囲のプレッシャーは相当なものだろう」。だからこそ、いつになく真剣な顔で「相談に乗ってもらえますか」と訪ねてきたアストレアに、悩み相談は苦手だと言いつつ「分かった、話を聞こう」と応じることになる。
そして告げられた悩みが「僕、その、女の子になりたいんです」だった。重々しく身構えていたクロードの前提が、この一行で崩壊する。
ポルックスとカストル、そして究極の愛
理由を聞くと、話はさらに斜め上へ進む。気になっている女性がいるが、その子は異性に触れると男に変身してしまう特殊な体質なのだという。想い人のポルックスに近づけば、その瞬間に彼女は消えてカストルに変わってしまう。
そこで彼が悩みに悩み抜いて出した結論が「ならば、もう女の子になればいい」である。そうすれば彼女は消えず、触れ合うこともイチャイチャもできる。本人は「これぞ究極の愛」と胸を張るが、聞かされた側の感想は「ただの変態じゃないか。本当に教頭の息子かよ」だった。
クロードの正論「そこまで言うなら男の姿ごと愛せばいいだろう」も一蹴される。「カストルを受け入れるのだけは生理的に無理です。あいつとは馬が合わない」。呆れつつも、クロードは図書室のアレイスター・クロウリーの魔術書に性別を入れ替える変身薬の作り方が載っていると教えてやった。調合は研究者でも難しいのですぐ音を上げて諦めるだろう、という読みだったのだが、「先生ももちろん手伝ってくれますよね」「手助けするなら最後まで責任持ってください」と逆に巻き込まれてしまう。
洞窟の幽霊草と、覚醒したテミスの剣
プリンで釣られたスピカ
変身薬に必要なのは幽霊草だが、森中どこを探しても見つからない。そこで駆り出されたのがスピカである。「なんで私まで手伝う羽目になってるんですか」という抗議に対して、クロードの言い分は「アストレアと二人はなんか気まずいんだよ」。決め手は「プリンあげるから」で、あっさり交渉が成立した。
現地でのスピカは頼りになる。「幽霊草は湿気のある暗いところに生えるの。だからこういう洞窟とかに自生しやすいよ」。植物に詳しい才女だと持ち上げられて「そうかな」と満更でもない様子だが、クロードには「おだてるのうまいな。見習いたい」と見透かされていた。図書室の植物関係の本を読み漁っている、という裏付けもきちんと語られる。
愛は困難を乗り越えてこそ
洞窟には三つ目の血吸いコウモリが巣くっていた。舌で血を吸い、好物は人間の血で子供を襲うこともある。やめた方がいいという忠告に、アストレアは「愛は困難を乗り越えてこそ掴めるもの。ポルックス君、この身は君に捧げる」と突っ込んでいく。
ここで披露されるのが家系の魔法だ。ライブラマジック「心眼テミスの眼」は相手の心を可視化するもので、普段は人の心を見ることは禁じられている。ただし数匹の心が読めても、コウモリは数百匹の群れで襲ってくるので避けきれない。「引けアストレア、血がなくなるぞ」「おふざけはおしまいだ」というクロードに、返ってきたのは「他人から見たらふざけた悩みに映るでしょうが、この気持ちは自分にも誰にも否定できない」だった。
そして窮地で「マジック、テミスの剣」が初めて発動する。肉体ではなく思考や精神を切り裂く上級魔法で、食らえば行動不能になる。クロードの評は「こいつ、動機はあれだが、窮地に立ち力を覚醒させやがった」。帰りの調合作業でも、材料を並べながら「乾燥させて粉末にし、変身魔術の詠唱をしないと」「髪型や服装も変化する工夫が欲しいな」と詰めていく姿に、強い探究心と好きなものに没頭する性格は父親譲りだと評価を改めさせられる。
五日後、そして寮母の疑惑
性別が変わっても解決しなかった問題
五日後、試作品が完成する。名付けて「性変わる薬」。「今ならポルックス君の手も握れるはず」と意気込んで教室に現れた女の子姿のアストレアは、誰だと騒がれ、鏡を割られ、「お父さんそっくり」と言われ、男の姿になった者からは「イケメン」と持てはやされる大混乱を引き起こす。
肝心のポルックスはどこかと探して、致命的な事実に気づく。薬の影響で相手はカストルになっており、しかも今の自分は女の子なので、触れれば再びポルックスに戻ってしまう。そこまでは計算通りのはずだった。ところが女子になった影響でカストルにときめいてしまい、「やだ、やだやだ、それだけは絶対やだ」で作戦は失敗に終わる。一時間後に魔法は解けた。
それでも収穫はあった。ポルックスが服の変化魔法に興味を持ったのである。光魔法で他の子の制服をコピーしていたと聞いて「あれめっちゃ便利じゃん、私も欲しいな」と乗ってきた相手に、アストレアの答えは「君のためなら何でも作るよ」。少しだけ距離が縮まった。
キング・オブ・変態
続くのは寮母のパートである。「私はクロード寮の寮母。先生や生徒が快適に暮らせるよう、行動を監視するのも私の務め」。その目に映るのは、女子生徒相手に胸の大きさを論じるクロードだった。「僕は大きければいいとは思わないな。大きすぎるとバランスが悪くなるんだ」「やはり中くらいがいいと思うぞ」——寮母の判定は「女の子に独自のおっぱい論を押し付けるなんてセクハラよ」である。
次に目撃したのは男子生徒との会話だ。「どうだった、女になれて」「いや、いい経験ができました」。さらに「俺の女になれ、メス堕ちさせてやるよ」「先生が望むなら」まで聞こえてしまい、「変態よ、変態の王、キング・オブ・変態」と結論が出る。文脈を全部知っている視聴者だけが真相を知っているという構図で、寮母とクロードの戦いは続くことになった。
新しい力に浮かれたスピカ
ハーバリウムとデビルロップホーン
最後はスピカの回である。アルバイト代で買った本に採取した花を挟み、ヴァルゴマジック「ハーバリウム」で使える植物魔法の幅が一気に広がった。「今まではその場にある草木を操っていましたけど、これで使える植物魔法の幅がうんと増えます」と浮かれる彼女に、クロードは「あんまり浮かれるなよ。そんなにたくさん使いこなせるのか」と釘を刺していた。
その日の授業は畑での実技だった。標的は新学期に捕まえたロップホーンの亜種、デビルロップホーン。巣を作って繁殖し、畑を荒らして生徒を襲う相手で、本種より素早くて凶暴だという。前回と比べてどれだけ実力が上がったかを測るリベンジ戦という位置づけだ。レオは速さで、アリアは巣穴から追い出す形でと、それぞれの流儀で仕留めていく。
「すごい武器を手に入れたからって」
スピカも地面にトゲを張り巡らせて跳躍を封じるところまでは良かった。問題はそこから、まだ試したことのない花を使ってしまったことである。アンジェルホルンは開花すると生物を錯乱させる花粉を飛ばす植物で、しかも花粉を出し尽くすか氷点下まで冷えない限り止まらない。
結果、畑は地獄絵図になる。笑いが止まらなくなる者、「俺みたいなカスは生きてる価値ない、土に帰りたい」と落ち込む者、幼児退行する者、リボンを褒め出す者。「スピカは笑顔が一番」という素直すぎる一言まで飛び出した。最後はサジタリアスグランマジックのアイシングブレスで鎮圧され、全員が保健室送りとなって授業は中断した。
説教の中身が良い。「授業っていうのは試しの場でもある。失敗は別に構わないさ。僕が怒っているのは、君が新しい力を手に入れて調子に乗っていたことだよ」。今までの君なら、ろくに知らない花をいきなり実践で使ったりはしなかったはずだ、できることが増えたせいで基本がおろそかになっていたぞ、と続く。そして締めがこれである。「すごい武器を手に入れたからって、自分が強くなったわけじゃない。力に振り回されないよう、気持ちを強く持てよ」。そうすれば君はもっと強くなれる、という一言まで置いていくのが、この先生の良いところだ。




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