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第3話は茉里の掘り下げ回。大会に出られるのは同じ階級の二人のうち一人だけで、長浜先輩とのガチスパーが組まれる。並行して描かれるのが亡き母との記憶で、「目そらしたら負け」「お母さんが一番嫌いなんは、大事なときに目そらす子や」という言葉が芯になる。一方のララは、お金の概念も知らないまま迷惑をかけ続けた末に「人に頼ってばかりじゃダメ」と家を出る決意をする。そして茉里が出した答えが「なんとかしたるわ」だった。




大津茉里という一年生
朝五時のランニングと、譲れないもの
第3話は二人の自己紹介から始まる。ララは「二百年の時を越えて蘇った人魚姫」で、失った海の世界、失った家族、失った光を取り戻すために本当の愛を見つけなければならない。だから「王子様を探そうと思うの! この滋賀で!」という宣言になる。
対する茉里は「ゼゼ南高校一年生。朝五時に起きてランニング。好きなものはペットのゴンちゃんとボクシング。お兄ちゃんと一緒に始めてもう十年続けてる」。そして続くのが「誰よりも強くなりたい。誰にも私を邪魔させへん」である。この一行が、今回起きる衝突のほとんどを説明してしまう。
部活で浮いている理由
部活での茉里は、長浜先輩とことあるごとにぶつかっている。器具の使用時間で小言を言われ、「なんなんその目」「ほんまは言いたいことありますって顔してるけど」と絡まれる。キャプテンの「お前ら、一日一回は揉めな気がすまんのか」が日常であることを物語っていた。
衝突の根っこは実力である。茉里は一年生でありながら二、三年と同じメニューを課されている。「全国大会で優勝してるやつに、新人と同じメニューはさせん」というのがキャプテンの説明で、長浜の「でもそんなん中学の話です」という反発も、それはそれで筋が通っている。
そこへ大会が近づく。大津と長浜は階級が同じで、試合に出られるのはどちらか一人だけ。「明日ガチスパするぞ。そこでどっちを出すか決める」「逃げんな」「逃げるわけない」——話は一気に単純明快になった。
お母さんが一番嫌いなんは
目そらしたら負け
この回のもう一本の柱が、亡き母との記憶である。喧嘩っ早い幼い茉里に、母が持ちかけたのが「目そらした方が負け。負けたら何でも言うこと聞く」という遊びだった。そして母が勝ち、「これでマリはもう喧嘩したらあかんからな」と約束を取り付ける。
茉里はボクシングをやりたいと言い出せずにいた。理由は「お母さん、喧嘩せえへん優しい子が好きって」言っていたからである。それに対する母の答えが、この回で一番大きい。「マリ、お母さんが一番嫌いなんはな、大事なときに目そらす子や。自分の好きなことやったらええ」。そして「マリ、目そらしたら負けやで」。
この言葉が、試合の相手からも、家族からも、そしてララからも目をそらさない、という形で全編に効いてくる。ネットでも「この言葉はこの後も大事な場面で出てきそう」という声が並んでいた。
お金を知らない人魚姫
一方のララは、地上の常識を何一つ持っていない。「お金がいるみたいなの」「それってどういうものなのかしら」という状態で大量のバームクーヘンやケーキを勝手に注文してしまう。「マリも好きでしょ、魔女様にそう聞いたわ」と悪気はまったくない。ネットでも、大津家への損害額とバームクーヘン代の行方が真面目に心配されていた。
その裏で魔女はララを焚きつけていた。「お前がかつて願った本当の愛は王子の拒絶により叶わなかった。お前はあの時の痛みや恐怖を克服せねばならん」「人間との間に新たな愛を見つけろ。それが家族を救う唯一の方法だ」。不安がるララに対しては「マリに手伝わせればいい。あいつは気難しい娘だが、うまく騙して何だってやらせてしまえば」と、利用することを平然と勧めてみせる。
祖母からも「事情もなんもわからん子を置いとけへんで」と現実的な話が出る。そして走りに行く茉里についてきたララに、とうとう茉里が言い放った。「これからどうすんの。そんなに長くうち置いとけへんで。もうついてこんといて」。
誰かを利用するなんてできない
ララが自分で決めたこと
追い出された形のララに、魔女はまた手を貸そうとする。「マリを怒らせて家を追い出されるだと。何をやっている。こんなことでは本当の愛を手に入れるなど夢のまた夢だ。しかし、私の力をまた借りたいというなら」。
だがここでララが出した答えが、彼女の輪郭を決めた。「決めた。私、ここを出ていくわ」「私は魔女様とは違う。誰かを利用するなんてできないもの」。続けて「人に頼ってばかりじゃダメだと思ったわ。これ以上みんなに、マリに迷惑かけたくないもの」。焚きつけられて動いたのではなく、初めて自分で決めた場面である。
ちなみに魔女とララの会話には、この家の力関係も覗く。どうやって茉里と出会ったのかと聞かれた魔女の答えは「たまたまさ。やつが私を見つけ連れてきた」。ここが気に入っているのかという問いには「まさか。こんな狭いところからは早く抜け出したいものだ。しかしマリに命令して作らせたこの水槽、暮らしづらくないでもない」と、素直ではない。
「目そらしてすいませんでした」
そしてスパーリング当日。「私は誰にも負けへん」「いつでも一番かっこいい私でいたい」と気を張る茉里の内心には、同時に「みんなうるさい。私の邪魔するな」も走っている。ネットでは、この試合のカットが一切妥協なく積み上げられていることに驚く声が多かった。
勝負がついた後、茉里は長浜先輩に頭を下げる。「先輩、私、気ぃ使ったりするの下手で。それでみんなに迷惑かけて。でもボクシングにはまっすぐかっこよく向き合っていたいんです」。そして「さっき私、かっこ悪かったです。目そらしてすいませんでした。もう一ラウンドお願いします」。母の言葉が、ここで本人の口から出てくる。
先輩の返しも良い。「ほんま可愛げない後輩や」「続けるで」、そして「昨日はピリピリしててごめん。私から、目ぇそらすなよ」「似たもん同士や」。判定は「二人とも合格」で、当人たちは「なんやねん」「絶対私が勝ってたし」と不服そうだった。
「多分アホやから」
海でも陸でも生きられない人魚
お礼を言いに来ていたララは、その試合を見ていた。「あれは何」「ボクシング。一対一のスポーツ」「かっこよかった」「よくわからないわ」。そのうえで出ていくという彼女に、茉里が食い下がる。「行くとこあるん」「ないけど」「じゃあどうすんの」「なんとかするわ」「なんとかならんやろ」。
ここでララが漏らすのが、今後の芯になりそうな一言である。「海でも陸でも生きられない人魚。ゴンちゃんがそう言ってた」。怖いのかと聞かれて答えるのは「まだ怖いの、人間にまた醜いって思われるのが」。それでも「私決めたの。この陸で生きていくって」と言い切った。
アホでおもろいやつは好きや
茉里の答えは、理屈ではなかった。「なんとかしたるわ。なんとかなるかわからんけど」。お家帰っていいってことかと確かめられて「うん」、どうしてと聞かれて「確かに、なんでやろ。多分アホやから」。そして「アホでおもろいやつは好きや」で決着する。まっすぐな人間が好きな茉里にとって、目をそらさないララは相性が良い、という理屈が一話まるごとかけて示された形だ。
なお最後にひと仕事したのはゴンちゃんだった。父親と連絡が取れない、他の家族も——という体裁が整えられ、「終わったぞ」「ありがとう、ゴンちゃん」「高くつくからな」。ララの「どういうことか全然わからないわ」「まだここにいていいってこと」に対する答えは「お前がボロを出さなければな」。居場所は、ひとまず確保された。
同じ頃、ララを探す側も動いている。「あの子の心が私たちを救う光になる。早く見つけて、私たちを、本当の愛を」。穏やかに閉じたように見えて、迎えに来る者がいることは忘れさせてくれない。




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