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新種の怪異が暴走を始め、株式会社マジルミエとアスト、二社の魔法少女が鉢合わせる——だが第3話「こういうイチャモンは久々だな」の主役は、越谷仁美がマジルミエに入社するまでの過去だった。前の会社で人形のように扱われていた越谷が、重本社長のスカウトと、出自にこだわらない社風に心を惹かれていく回想が、じっくりと描かれる。現在パートでは越谷が他社のクールな魔法少女・土刃に共闘を持ちかけ、噛み合わないスタンスに緊張が走るなか、社長・重本が臨時オペレーターとして参戦し、いよいよ討伐の布陣が整っていく。




冒頭——「こういうイチャモンは久々だな」
暴走する新種怪異と、二社の鉢合わせ
第3話は、暴走を始めた新種の怪異を前にした緊迫の場面から幕を開ける。現場には株式会社マジルミエとアスト、二社の魔法少女が居合わせ、アスト側からは「他社の魔法少女は即刻退場をお願いいたします」という物言いが飛ぶ。
その言いがかりに、越谷仁美が啖呵を切る。サブタイトルにもなった「こういうイチャモンは久々だな」——相手のことをろくに見ず、思い込みで人を動かそうとする連中への苛立ちが、この一言に凝縮されている。
怪異との激突かと身構えたところで飛び出す、久々の日常パート的な口喧嘩。1期のあの空気が戻ってきた、と喜ぶ声も多く、掴みとしては越谷らしさが全開の立ち上がりだった。
3話かけて、ようやく土俵に上がる
もっとも、この回で怪異退治が本格的に始まるわけではない。冒頭の対峙から一転、物語はまるごと越谷の過去回想へと舵を切り、討伐は準備段階のまま終わる。
そのテンポには賛否がはっきり出た。「3話かけてまだ1体も怪異を倒していない」「回想やってないでさっさと仕事しろ」と、アニメから入った視聴者を中心に退屈さを訴える声が上がったのも事実だ。
一つのケースにじっくり話数を割く作り方は、この作品の持ち味でもあり弱点でもある。戦いが動くのは最終盤のわずかな時間だけで、この回は越谷を描くための回だと割り切れるかどうかで評価が分かれた。
回想——人形扱いされていた、越谷仁美
役員候補という名の、お人形
回想が映し出すのは、マジルミエに来る前の越谷の姿だ。彼女は、父がエネ庁の幹部という出自ゆえに、前の会社で「役員候補」として腫れ物のように扱われていた。擦り傷ひとつで大騒ぎされ、実力ではなく肩書きで守られる日々である。
「あなたは役員候補なのよ。お父さんとのつながりも大事にしてくれたまえ」——そう諭す上司に、越谷は本音を漏らす。「お人形扱いされるくらいなら、紅蓮隊でも作るわ」。魔法少女になると告げたときには家を勘当されており、父娘の間には深い溝があった。
実力で認められたいのに、名字が壁になる。この息苦しさを丁寧に見せておくからこそ、後のマジルミエの居心地の良さが引き立つ構成になっている。
せんべろ横丁の飛行と、重本のスカウト
そんな越谷に声をかけたのが、マジルミエ社長・重本だった。きっかけは、せんべろ横丁で狭い道を人に当たらず飛び切る彼女の飛行技術を目にしたこと。技量だけでなく、怪異を見過ごさない理念や的確な状況判断に惚れ込んでの、直々のヘッドハンティングである。
だが越谷の返事は「断る、帰ってくれ」。条件や方針の問題ではなく、この手の話はすべて断ってきた、と取りつく島もない。それでも重本は引かず、「絶望感のようなものを感じた」と、彼女の内心を静かに言い当ててみせる。
荒っぽい越谷と、飄々とした重本。最初の押し問答からして噛み合っているようで噛み合っていないのだが、その距離の詰め方に、姉御肌の越谷が絆されていく過程がこの回の背骨になっている。
「一度、うちの水を飲んでみませんか」
ボロいビルと、コスプレ社長
越谷が案内されたマジルミエ社は、お世辞にも立派とは言えないボロボロのビルだった。ホウキの発着は屋上で、管理人に毎月5000円払って許可を得ているという有様。散らばっているのは全部社長の服で、肝心の魔法少女の衣装はまだデザイン中ときている。
極めつけは、その社長・重本が年がら年中コスプレ姿だということ。「普通はすぐ辞める」「社長の格好を見て即決できない」とネットが総ツッコミを入れるほどの第一印象で、前職の可愛い制服と比べてマジルミエの制服は安っぽい、という声まで出るちぐはぐさだ。
優先順位がめちゃくちゃなベンチャーぶりが、逆に可笑しくて憎めない。ボロビルもコスプレも笑いどころとして丁寧に積み上げ、それでも越谷が去らない理由へと繋げていく運びが上手い。
出自に関係なく、働ける場所
重本の言葉は、まっすぐだった。「弊社には、人形を飾っておくような余裕はありません。純粋に、あなたの力量が欲しいんですよ」。肩書きではなく実力を求めるその姿勢は、人形扱いに倦んでいた越谷の胸に確かに刺さる。
実際に魔法に触れてみると、その良さが分かる。頼んだ魔法がオーダーメイドですぐ仕上がり、コツさえ掴めばこれ以上使いやすいシステムはない。「君のような前例を超えていく魔法少女のために、我々はこの会社を作った」——そう言い切る重本に、越谷は「こんな働きやすい職場はねえよ」と応じるのだった。
ボロくても、コスプレでも、人を肩書きで縛らない。越谷にとってマジルミエが特別な場所になった理由が、飾らない言葉の積み重ねで腑に落ちる。髪の短かった当時の面々も含め、この会社の空気そのものが彼女に合っていたのだと分かる回想だった。
父娘の距離と、討伐への布陣
「娘などいない」長官と、越谷父娘
現在パートに戻ると、ギャラリーにはエネ庁の越谷長官——越谷の実の父が座っていた。上層部と現場の癒着を最も嫌う長官は、アストへの依頼をあえてキャンセルし、マジルミエの働きを公平な目で視察すると言い出す。
「娘など、いない」と父は言い切る。しがらみを一切持ち込まない厳格さは、裏を返せば娘の会社にも情実で手心を加えないということ。突き放すようでいて、実は筋の通った父親だったのがこの回のサプライズで、「父娘はやはり父娘なんだ」と思わせる距離感に、視聴者からも好意的な反応が集まった。
勘当という形で切れていたはずの父娘が、仕事の場で不器用に交差する。越谷を人形扱いしていた前の会社の眼鏡の上司がやり込められる場面もあり、溜飲を下げつつ父娘の情を覗かせる、感情の起伏が効いた一幕だった。
土刃メイとの一時休戦、社長オペレーター参戦
怪異の変異が進むなか、越谷は他社の魔法少女・土刃メイに共闘を持ちかける。だがクールな土刃は「お断りします」と即答し、以前の接触から越谷の感覚的な行動が信頼できない、と一歩も引かない。相性は最悪である。
それでも、実戦データを取れる利は土刃側にもある。周囲の後押しもあって土刃は検討の余地を認め、ついに一時休戦が成立する。さらに、弊社オペレーターの負担を鑑みてと、社長の重本みずからが臨時オペレーターとして参戦——専用のオペレーター機まで用意していた周到さに驚かされる。
越谷を切り込み隊長に、カナと副所長を後衛に据えた布陣が整い、戦いはようやく土俵に上がる。元技術者で魔総研からも一目置かれるという重本のもう一つの顔が覗き、コスプレ社長の底知れなさが、ここへ来て一気に頼もしく見えてくる引きだった。
まとめ——回想を経て、いよいよ本番へ
「遅い」という声と、掘り下げの意味
この回の評価は、テンポの遅さをどう受け止めるかで割れた。怪異退治を1話まるごと引っ張り、越谷の過去に尺を割いたことに、退屈さを訴える声があったのは前述の通りだ。
一方で、姉御と父親の関係や背景を見せるために必要な回想だった、と受け止める声も同じくらい多かった。ただ強いだけでなく「働きやすい環境」を選ぶ越谷の人間性が描かれたことで、普通の女の子としても応援したくなった、という感想は、この掘り下げが機能した何よりの証だろう。
バトルの爽快感を今すぐ求める人には物足りず、キャラクターの厚みを喜ぶ人には刺さる。同じ回が正反対に読まれるのは、それだけ越谷という人物を丁寧に描いた回だったからだと言える。
長髪の社長と、次回への布石
最後まで多くの人の印象に残ったのが、社長の長い髪だった。異様に見えるのに、どこかバランスは取れているという不思議な納得感が語られ、その佇まいが「社長ちゃん参戦への布石」ではないかと期待を集めている。
越谷の入社秘話で足場を固め、父娘の情を覗かせ、土刃との一時休戦と社長の臨時オペレーター参戦で布陣を整えた——第3話は、次の本格バトルへ向けて役者をそろえるための一話だった。回想を経てチームが形になった今、いよいよ暴走する新種怪異との本番が始まる。




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