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第31話の副題は「名探偵キュアアルカナ」。第11話で現れて以来ずっと名前に付いていた「シャドウ」が、この回で初めて外れる。そして空いたところに、番組の題名から借りた「名探偵」が入った。ところがこの回のるるかは、推理をひとつもしていない。第30話で出した答えは覆されないまま残り、彼女を止めたのは反証ではなく「一緒にいたい!」のひと言だった。名探偵の名をもらった瞬間に、彼女は探偵のやり方を使っていない。




副題から「シャドウ」が消えて、空いた場所に「名探偵」が入る
第31話の副題は「名探偵キュアアルカナ」。ここまでの三十一本を並べると、この題がどれだけ特別なのかがすぐに分かる。彼女の名前が副題に入ったのは、第11話「キュアアルカナ・シャドウ、現る」、第12話「キュアアルカナ・シャドウの秘密」、第15話「森亜るるかの秘密」、第30話「エクリプス・シャドウ」、そして第31話。五本もある。
そのうえで、名前の後ろに付いていた「シャドウ」が落ちたのは今回が初めてだ。第11話で現れてから第30話まで、副題に彼女が出るときは必ず影が一緒に来ていた。今回はその影が外れ、空いたところに「名探偵」が入っている。番組の題名から借りた二文字が、二十話ぶんかけて彼女の名前の前に移動してきたことになる。
副題に名前が出ないのは、実は主人公の二人だけ
ついでに数えると、副題に名前が出た顔ぶれはくれあが三本、ポチタンとジェットとしるくとれいが一本ずつ、エリーが二本。そしてるるかが五本で最多だ。ところが明智あんなと小林みくるは、三十一本のどこにも名前が入っていない。主役の二人だけが副題から締め出されたまま、いちばん敵だった一人が五回も題を取っている。
その偏りを知っていると、この回であんなが立ち上がる場面の重さが変わる。題を取らない側が、題を取り続けてきた側を引き戻しに行くからだ。
同じ回で三度、誰かを守るために何かが消されようとする
るるかの狙いが公式のあらすじで言葉になった。くれあのマコトジュエルを砕き、プリキュアの力と探偵の記憶を消す。残すのはパティシエとしての人生だけ。マシュタンはそれを「それがるるかの優しさなの」と説明し、あんなは「優しさなんかじゃない!」と立ち上がる。
言い分としてはこう続く。一緒にいられなくても、あなたが笑顔でいてくれればそれでいい。守るために消す、という理屈が、この回では敵側の動機として置かれている。
味方の側でも、同じ理屈で証拠が処分されている
面白いのは、それが敵側だけの発想ではないことだ。この回では味方の側からも、くれあがここにいた証拠と、大王に関する資料を処分するようにという指示が飛んでいる。理由は同じで、知られたらくれあの身が危うい。守るために消す人が、戦っている両側にいる。
るるかは記憶を消そうとし、事務所の側は記録を消そうとする。片方は敵として描かれ、片方はそう描かれない。違いは手つきではなく、消す相手が本人か紙かというだけだ。
前回の「切り戻し」が、そのまま人に向けられている
第30話で解かれた謎を思い出したい。れいの百日草を全部切ったのは理事長で、動機は新しい芽が出て長く花を楽しめるようにする「切り戻し」だった。今あるものを一度落とすことで、その先を長くする。犯人も動機も善意で、くれあは「簡単だわ」とそれを解いた。
るるかがくれあにしようとしているのは、言い方を変えればこれと同じことだ。プリキュアと探偵を落として、パティシエを長く咲かせる。第30話は花に対してそれを肯定し、第31話は人に対してそれを拒む。二話とも脚本は村山功で、同じ書き手が同じ理屈を二度続けて出したうえで、後ろの一度だけを否定している。
名探偵の題を与えられた回で、彼女は推理をやめている
第30話でるるかが出した答えは「あなたが大王だから」だった。今回、その推理は覆されていない。エクリプス・シャドウは倒れたくれあに迫りながら、エクレールの瞳には彼らと同じ星がある、瞳に星を持つ者が大王になるという言い伝えがある、と語る。結論はそのまま残る。
代わりに叩かれるのは証拠のほうだ。証拠が未來自由の書だなんておかしいでしょ、という切り返しが飛ぶ。結論ではなく根拠を疑う。この番組らしい反論の仕方で、しかもそれで彼女は止まらない。
仲間だから、の続きが逆になる
言い合いの山場は、同じ言葉から反対の結論が出るところにある。仲間だからキュアエクレールを守ると言った。でも間違ってる。仲間だから、仲間だからこそ、私の手でキュアエクレールを止めるの。前半と後半で使っている接続はまったく同じで、行き先だけが正反対になる。
推理で勝てない相手を推理で崩そうとしないこと。それがこの回の選択だった。最後にるるかを止めたのは反証ではなく、光の中で向き合ったときの「一緒にいたい!」というひと言だ。名探偵の名前をもらった回で、彼女は探偵のやり方を使っていない。
必殺技の名前が、番組の英語表記そのものになった
キュアアルカナが放つ一撃は「アルカナスターシャイン!」。そのあと、ポチタンとマシュタンとシュシュタンの三体が加わり、プリキュアと妖精が力をあわせて「プリキュア! スターディテクティブ!」が出る。ここが今回いちばん静かに効いている部分だ。
この番組の公式サイトは star-detective という名前の場所に置かれている。英語表記は Star Detective Precure。つまり最後の技名は、番組そのものの名前を日本語の音でそのまま唱えたものになっている。三十一話目にして、作品名が武器として発射された。
妖精が三体そろって前に出る
技の内訳も見どころだ。ポチタンは時空の妖精、シュシュタンは知識の妖精、マシュタンは占いの妖精。所属も持ち主もばらばらだった三体が、この回で初めて同じ技に名前を並べる。プリキュアが四人そろうことばかりが話題になるが、妖精のほうも同時に三体そろっている。
マシュタンだけが二度、立場を変えて動く
マシュタンの動きが細かい。最初は「それがるるかの優しさなの」と、るるかの側に立って説得する。ところが終盤では、ペンダントをエクレールに託す側へ回る。るるかを守る役から、るるかを取り返す役へ。同じ妖精が一話の中で立ち位置を入れ替え、その手渡しが決め手になる。
プリキュアが増える回は、いつも同じ組み合わせで作られている
公式に載った第31話のスタッフは、脚本が村山功、演出が重矢葉月、作画監督が玖遠らぎ、美術が小川佑太。ここで第26話「キュアエクレールの復活!」の欄と並べたい。脚本が村山功、演出が矢野岳、作画監督が藤原未来夫、美術が小川佑太。
脚本が同じ、美術が同じ、作画監督が一人だけ、そして絵コンテの欄が載らない。四つがそろっている回は、第26話と第31話のこの二本しかない。第26話は変身シーンが解禁された回、第31話は新しいプリキュアが生まれた回。名乗りが増える回だけが、同じ組み合わせで作られている。
節目はシリーズ構成が二話続けて書く
脚本の並びもきれいだ。第25話と第26話がどちらも村山功で、正体の判明と復活を続けて書いている。第30話と第31話もどちらも村山功で、大王の名指しと加入を続けて書いている。シリーズ構成が二話まとめて受け持つのは、この番組では山場の合図になっているらしい。
美術の小川佑太が第26話以来の担当というのも合っている。あの回でくれあが帰ってきた事務所の絵と、この回でるるかが迎え入れられる絵を、同じ人が引き受けているわけだ。
第23話の「お店で、待ってるわ」が、八話ぶんかけて果たされる
締めが素晴らしかった。静けさを取りもどした取水塔でるるかを迎え入れたあんなたちは、「アイスを食べたい」というるるかの希望を聞いて、笑顔でパティスリーチュチュへ向かう。この一行のために、番組はずいぶん前から材料を置いていた。
第23話の副題は「くれあと推理とアイスクリーム」。るるかがアイスを食べに店へ入り、運んできたくれあに予告状を渡す回だ。そして写真を取り戻されて立ち去ろうとするるるかに、くれあはこう声をかけていた。お店で、待ってるわ。
公式紹介の一行が、ここでようやく理由を持つ
公式のキャラクター紹介で、るるかの好物はアイスクリームだと最初から書かれていた。第29話の終わりにも、るるかはアイスが好きだから、という言い方が置かれている。ずっと属性として置かれていたものが、この回で初めて本人の口から希望として出てくる。
敵側にいる間、彼女はアイスを食べに来ても予告状を置いて帰った。仲間になって最初に言ったのが、そのアイスをもう一度食べたいだった。八話ぶん置かれていた約束が、ここで店の側からではなく客の側から果たされる。
シャドウは振り払っても、貸した側の手元に残る
戦いの終わり方にも工夫がある。るるかがまとっていたシャドウを振り払ったあと、そのシャドウは再び集まってかたちを作り、デッチ・アゲインの命令で武器を持って襲ってくる。借りた力は、返しても消えない。貸した側の持ち物として残り、こちらへ向き直る。力を借りるという描写に、この番組はきちんと後始末を用意している。
予言が書き換わっても、主語だけは変わらない
最後に残されたのは新しい予言だった。1999年が終わりを迎えし時、すべてがゼロになる。そして真実の意志を持つ者が、と続く。ここで第25話の予言を並べたい。まことの地で真実の意思を抱く者、大王となる。そして世界が嘘の影で覆われる。
約束の時は1999年7月とされていた。その七月はもう過ぎている。期日だけが年の終わりへ延び、主語は「真実の意思を持つ者」のまま動いていない。書が新しい行を出しても、探している相手は最初から同じだということになる。
るるかが一緒に植えた花が、星の出どころかもしれない
言い伝えの出どころも語られた。忘れられた種族に伝わる古い言い伝えで、人間にも妖精にも忘れられた者たちのものだという。そこへ、人間と妖精の絆で生まれたトップオブリリー、それが君の瞳に星を宿したのか、という一言が重なる。
トップオブリリーは第25話でくれあの記憶を呼び戻した香水の元であり、第26話でくれあが「るるかと一緒に植えたの」と語った花でもある。もしその推測が当たっているなら、くれあの瞳に星を宿したのは、るるかが一緒に植えた花だったことになる。自分で作った原因を、自分で消しに来ていたわけだ。
狙いは、時空の妖精が送っているマコトジュエルへ移った。ありかを尋ねに行くので、しばらく留守にする。この番組の敵は、いつも予言の次の行を先に読みに行く。




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