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眠るレムを取り戻す旅が、ついに動き出す。スバルたち一行が挑むのは、魔獣ひしめくアウグリア砂丘と、何人も寄せつけないプレアデス監視塔。空間がねじれる魔境をラムの千里眼とメィリィの力で突破する攻略戦の果てに、あの死に戻りが再びスバルを襲う。第68話「砂時間を越えろ」を振り返る。




いざ、アウグリア砂丘へ
総出の見送り
旅立ちの朝。ロズワール邸の門前に、砂丘行きの一行が勢ぞろいした。緊張気味のエミリアに、ラムと眠り姫レム、魔獣使いのメィリィ、案内役のアナスタシア、そしてユリウス。地竜たちは魔獣の匂いをまとうメィリィが苦手のようで、早くも一悶着だ。
「食べられちゃうかも」と怯えるメィリィに、スバルは「パトラッシュはベジタリアンです!」と胸を張る。ラムはロズワールへ「必ずやロズワール様のお心に合った成果を持ち帰ります」と一礼し、留守はペトラとフレデリカに託された。
死地へ向かう出発のはずが、どこか遠足めいた賑やかさがあるのがこの陣営らしい。地竜に嫌われて困り顔のメィリィも新鮮で、旅の顔ぶれの多彩さに期待が膨らむ。
酒場の忠告と、鳥の言い伝え
砂丘の玄関口ミルーラの街。立ち寄った酒場で、店主は「悪いこと言わんから死ぬ前に帰れ」と渋い顔だ。400年もの間、あの塔には誰もたどり着けていない。砂丘は魔獣の巣窟で、生きて帰れれば御の字だという。
それでも引けないスバルたちに、店主はぽつりと付け加える。ここ1年ほど、塔を目指して飛ぶ鳥を見かけるようになった。「だから もしも迷ったら 鳥を探せ」。エミリアは「あなたは私たちをすごーく心配してくれてるのね」と、ぶっきらぼうな優しさを笑顔で受け取った。
物騒な忠告の場で温かいミルクを注文するマイペースぶりと、店主の武骨な人情の取り合わせが絶妙だ。何気ない世間話の体で、後々効いてくる手がかりをそっと置いていく構成も心憎い。
騎士と狐、それぞれの秘密
世界で一番、君を知っている人間
道中、スバルはユリウスを気遣う。名前を食われた彼のもとに契約精霊たちは残っているものの、主のことを思い出せず戸惑うばかり。精霊術を失った騎士は「今の私は剣技でしか騎士の務めを果たせない」と静かに語る。
「なぜ君のほうが悔しそうな顔をするのだろうね?」と苦笑するユリウスに、スバルは「どこの誰情報だよ!」と強がるが、「存外、君は隠し事には向かない性質だよ」とお見通し。「君は私を除けば、世界で一番私を知っている人間だ」と告げられ、スバルは「絶対に獲得したくない称号を獲得した」と頭を抱えた。
忘れられてなお騎士であろうとするユリウスの矜持が切ない。そんな彼の「今」を誰より知る人間になっていくスバルとの、悪態の応酬がそのまま信頼の証明になっているやり取りが微笑ましい。
狐を信じる、一蓮托生
まっすぐ進んでいるのに景色の変わらない砂の海で、スバルは案内役の“アナスタシア”に「本当にまっすぐ進んでいいんだよな」と探りを入れる。返ってきたのは「お互いに一蓮托生や。信じてくれてええよ」という飄々とした関西弁だ。
「狐を信じるなんて簡単に言ってくれるもんかしら」とベアトリスが牽制すれば、エキドナは「おや? 話したのかい?」と目を細める。正体を明かした襟巻きの人工精霊と、それを承知で頼るスバルたち。「約束は守るとも」という言葉に、同盟の微妙な緊張感がにじむ。
前話で明かされた正体が、ベアトリスにはもう共有済みというテンポの良さがいい。信じ切ってはいないが、頼るしかない。この絶妙な間合いこそエキドナというキャラクターの妙味だ。
砂時間、攻略戦
空間のねじれと、攻略の理屈
進めども進めども、塔との距離は縮まらない。エキドナいわく、塔と砂丘の間は「つながっとるようで、つながってへん」。空間のねじれこそ、かのラインハルトすら退けた魔境のカラクリだった。
だが風の強まる「砂時間」は、ねじれが戻ったりゆがんだりする反動の時間であり、その間だけ、ねじれに“ほころび”が生まれる。砂時間中も活動する魔獣の視界をラムの千里眼で借り、メィリィが魔獣の居所を突き止めて伝える。二人がかりでほころびを探すのが、エキドナの攻略プランだ。
メィリィが「私のありがたみを教えてあげる」と手を緩めた途端、記録にない規模の巨大な砂ミミズが姿を現す一幕も。彼女がいなければ、一行はとうに砂の中だったわけだ。
「誰もたどり着けない」を根性ではなく理屈で解体していく段取りが気持ちいい。千里眼と魔獣使いという手持ちの札がぴたりと噛み合う、頭脳戦パートの白眉だ。
鳥をつかまえろ
だが実戦は理屈通りにいかない。千里眼の接続は切れ、見えるのは砂ばかり。「これ以上ラムに負担をかけられないわ」と案じるエミリアに、ラムは「他に適任者がいません。ラムにしか果たせない役割ですから」と引かない。
行き詰まった一行の頭上に、一羽の鳥。酒場の話を覚えていたスバルが「あの鳥が鍵だ」と叫び、ラムがその視界を捕まえる。「まっすぐよ」。導きのままに駆け抜けた先で、砂丘は一面の花畑へと姿を変えた。ステージが変わった証しだ。
序盤の何気ない世間話が、最後のピースとして戻ってくる回収が実に鮮やか。疲弊してなお役割を譲らないラムの意地に、この旅に懸ける彼女なりの覚悟が透けて見える。
「砂時間を越えろ」まとめと考察
死に戻り、再び
花畑の正体は、魔獣花魁熊の群れの縄張り。さらに監視塔の方角から謎の狙撃が飛来し、スバルは頭を撃ち抜かれて絶命する。4期に入って初めての死に戻りだ。やり直しても狙撃は止まず、スバルは二度の死を重ねることになる。
三度目の挑戦。千里眼を酷使したラムが倒れる中、スバルは「塔が一瞬光ったのを見た奴はいるか?」と切り出し、勘だと言い張って仲間に警戒を促す。「スバルの勘でしょ? だったら心配したほうがいいと思う」と受け止めるエミリア。直後、ラムの「バルスを…見ている」という言葉が緊張を極限まで高める。スバルは叫びかけたベアトリスの口を塞ぎ、騒ぎかけた地竜ヨーゼフを見えざる手でそっと撫でて鎮めた。
死んで初めて盤面が見えるという、この作品の根源的な恐怖が久々に牙をむいた。死の記憶を「勘」としか言えないもどかしさも含めて、これぞ本作という手応えの引きだった。
ねじれに、飲まれて
降り注ぐ狙撃を、エミリアの氷の盾とユリウスの剣がしのぎ、スバルとベアトリスは切り札の絶対無効化魔法「EMT」を展開する。このフィールドの中では、あらゆる魔法が効果を失うのだ。
だが魔法を消すその力が、空間のねじれまでほつれさせてしまう。崩れゆく世界に、一行はなすすべもなく飲み込まれていった。倒れたラム、正体不明の狙撃手、そして自分たちがどこへ飛ばされたのかすら分からない結末。監視塔はまだ、その姿に近づくことすら許してくれない。
幕間のミニコーナー「エミリア陣営奮闘記」では、屋敷でのペトラとメィリィの交流も描かれた。願掛けのハンカチと「私のこと好きになっていいからね」の一言。殺し屋を自称する少女の心を真正面から解かしにいく、ペトラの大物ぶりに和まされる。
攻略の決め手だったEMTが、そのまま次の落とし穴になる皮肉な構成がよくできている。絶望と隣り合わせの前進という監視塔編の空気を、初回から濃密に味わわせてくれる一話だった。












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