この記事の作品:
塔から逃げ出したスバルを待っていたのは、仲間たちの死体の山と「次、当ててみなよ、英雄」という謎の声だった。三度目の周回で彼は記憶喪失を隠す潜入捜査を選ぶが、疑心暗鬼の果てに待つのは、首に手形の残るメィリィと、腕に刻まれた「ナツキスバル参上」の傷。悪夢が加速する第75話を振り返る。




三度目の周回へ
死体の山と、謎の声
「誰が殺されてやるか」。塔を飛び出したスバルは、巨大な砂ミミズに襲われて地下へ逃れ、皮肉にも塔へ戻る道をたどることになる。そして上りついた先で目にしたのは、変わり果てた仲間たちの姿。死体の山だった。
動転するスバルの頭に、聞き覚えのない声が響く。「次、当ててみなよ、英雄」。直後、彼は姿なき何者かに命を奪われた。ネットの集計班によれば、これでスバルの死は通算26回目。監視塔編は早くも章別最多の死亡数だという。
脱走の先に地獄しかないという、逃げ場の完全な封鎖が恐ろしい。誰が、なぜ、どうやって。謎の声の「英雄」という呼びかけも含めて、視聴者ごと疑心暗鬼に叩き込む導入だ。
記憶喪失を、隠す
目覚めはまた、あの朝。今度のスバルを見つけたのはパトラッシュだったらしく、ベアトリスが「スバルを見つけたのはベティとエミリアの手柄のはずなのよ」と拗ねる平和な光景が広がる。だがスバルの腹は決まっていた。「かなりリスキーになるが、今回は記憶喪失のことを打ち明けずに行く。俺が殺される理由と記憶喪失が関係してるか確かめたい」。
手がかりは整理されていく。あの死体の山に、二人だけ見つからない者がいたこと。そしてあの声は、塔にいる誰の声とも違ったこと。自分の腕に刻まれた「ナツキスバル参上」という不可解な傷跡も、彼の背筋を撫でる。
二度の死を経て、恐慌ではなく捜査に切り替える胆力はさすがの一言。だが「記憶を失う前の自分」まで容疑者に含めざるを得ない状況が、静かに彼を蝕んでいく。
疑心暗鬼の潜入捜査
いつも通りの顔、いつも通りの毒
記憶がないことを悟られぬよう、スバルは仲間との会話を綱渡りで乗り切っていく。ラムは「ボケッとしていないで水汲みぐらい手伝いなさい」「あまり馬鹿な真似をするのはやめなさい。周りに迷惑がかかるから」と通常運転の毒舌で、心配の気配を悟らせない。
シャウラに「今朝の俺を見て何か気づかないか?」と探りを入れても、返事は「いつも通り色男じゃ」とのんきなもの。彼女は「昔の夢とか見ちゃったっすよ」と、遠い日のお師様の夢の話を口にしかけていた。
記憶がなくてもシャウラの扱いが変わらないスバルに、ネットの反応も思わず笑っていた。一方でシャウラの「昔の夢」は聞き流すには惜しい一言で、彼女の400年の記憶に何が眠るのか気になって仕方ない。
ユリウスとの、しんどい対話
カマをかけるように「昨日の夜のことで話がしたい」と切り出したスバルに、ユリウスは静かに応じる。エキドナを信じるのかという問いへの答えは、「彼女は信用できる。いや、彼女を信じる以外に術はない」。そして、「取り戻せたところで、あの方が私を覚えていなかったとしても」と、報われない忠義を口にした。
別れ際、ユリウスは付け加える。「昨夜の話と言われ、少し怯えたよ。君が謝罪を口にしたらどうするべきかと」。もし謝られたら何と答えたのか、それはもう分からないことだが、と。スバルは彼が「殺し」とは無関係らしいと結論しつつ、記憶を失う前の自分への不信を募らせていく。
和解の可能性ごと記憶が失われたという、あまりに残酷なすれ違いだ。どちらも本心では歩み寄りたいのに、その糸口だけが消えている。ネットの「どのみちしんどい」に全面同意である。
信じられるもの、疑うもの
シャウラへの、ぎゅっ
聞き込みに付き合わせたシャウラが、ぽつりと漏らす。「お師様にとって都合のいい女、それがアーシの存在意義っすから」。その背中に、スバルは思わず声をかけた。「都合のいい女とか、そんなこと考えなくていい。俺が悪かった。お前がいてくれて助かった。そんだけだ」。そして感謝を込めて、彼女を抱きしめる。
疑心暗鬼の真っ只中でも、傷つけた相手には謝り、感謝を言葉にする。記憶を失っても、ナツキ・スバルの芯は変わらない。ネットの反応にも「記憶が無くてもスバルはスバルで少しだけ安心した」という声が並んだ。
400年待ち続けた少女の自己評価が「都合のいい女」なのが切なすぎる。このハグが、殺伐とした本編で数少ない救いの場面だった。
信じられるのは、パトラッシュだけ
それでも疑念は膨らむ。「あいつらの態度が嘘だったとしたら、もう何を信じていいのかわからねえよ。結局信じられるのはパトラッシュだけとは」。漏れ聞いたメィリィは「そんなの聞いたらベアトリスちゃんやお姉さんが泣いちゃうわよ」と笑い、「でも別にそれがお兄さんの本心でも笑ったりしないわよ」と続けた。
彼女は自らの過去も語る。厳しい「ママ」と、だらしないエルザの世話。魔獣たちと暮らした日々。だが情報量に頭がパンク寸前のスバルは、「今忙しいんだ、シャウラとでも遊んでてくれ」と、その小さな歩み寄りを退けてしまう。
エルザの名前が出た瞬間、1期から追ってきた視聴者の背筋は伸びたはずだ。そして何より、ここでメィリィを遠ざけてしまったことが、直後の悲劇で重く効いてくるのが本当に苦しい。
「残骸」まとめと考察
「俺が殺した」
夜、メィリィがスバルを訪ねてくる。「昨日の夜の話だけど、私はどのくらい真に受けていいのかしら」。その囁きを境に、場面は一変する。気づけばスバルの目の前には、首に手の跡が残るメィリィが横たわっていた。
「何だこれ。嘘だ、嘘だ嘘だ嘘だ。俺が殺した? なんで俺がそんな」。記憶のない時間、自分は何をしていたのか。腕の「ナツキスバル参上」と併せ、疑惑の刃はついに自分自身へ向かう。謎の声の主についても、ネットの反応は「声優が水瀬いのり」という一点に騒然となっていた。眠り続けるレムと同じ声。その意味は、まだ誰にも分からない。
視聴者にすら時系列を掴ませない編集が、スバルの混乱を追体験させてくる。「殺人は癖になる」という次回サブタイトルも併せて、疑惑の中心に主人公を置く構成が凶悪すぎる。
留守番組の誓い
幕間の「エミリア陣営奮闘記」は、屋敷で留守を守るオットーとガーフィールの一幕。ボロボロの足で無茶をするオットーに、ガーフィールが呆れつつも、二人は「今回の一件で僕たちはいいところなしだ」と力不足を噛み締める。
「戻ってきた大将たちのために強くなんねえといけねえ。俺様が陣営の最強の盾でいるんだ。もう俺様は誰にも負けねえ。剣聖にも」と気炎を上げるガーフィールに、オットーも「ペンを両手に」戦う武闘派内政官を提案されて全力拒否。本編の地獄を少しだけ和らげる、留守番組の温かな誓いだった。物語はいよいよ、残り話数へ向けて加速する。






















コメント