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目覚めた傍らにはメィリィの死体、腕には「ナツキスバル参上」。疑うべきは、意識の途切れた間の自分自身。書庫に現れたメィリィ・ポートルートの死者の書は、彼女の孤独な人生と、スバルの顔をした殺人者を映し出す。読んだ者に染み込む殺人の癖、そしてラムの「偽物と言うべきかしら」。戦慄の第76話を振り返る。




死体と、隠蔽
容疑者は「ナツキ・スバル」
「俺の意識が途切れた間に、ナツキ・スバルが戻ってきたのか。スバルがメィリィを殺して、俺の腕にその証拠を刻んだっていうのか」。記憶のないスバルにとって、最有力の容疑者は記憶を失う前の自分だ。探偵役が犯人というミステリーの定石が、冗談にならない。
混乱の中で彼が選んだのは、死体を隠すこと。誰にも打ち明けられないまま、少年は殺人の隠蔽という一線を越えてしまう。
疑う相手が「自分の中の誰か」しかいないという構図が、恐ろしく良くできている。隠蔽はどう考えても悪手なのに、この状況では責める気になれないのがつらい。
エミリアの、まっすぐな言葉
何も知らないエミリアは、「最近気づくとスバルを目で追っかけちゃってることが多くて。不思議よね」とはにかみ、無事に戻れたらメィリィを恩赦にかけたいと語る。地下の座敷牢から出して、みんなと一緒の生活をさせてあげたい、と。
罪悪感に耐えかねたスバルは「くだらねえ!」と吐き捨ててしまう。だがエミリアは怯まない。「つらいならふてくされてないで、ちゃんと話して!」「一人で抱え込んで、一人でむしゃくしゃして、一人で終わりにしちゃうのはやめて!」。怒鳴られてなお、怒りも幻滅もしないと言い切った。
死んだ少女の未来を語るエミリアと、その死を隠しているスバル。この残酷な温度差が胸に刺さる。記憶を失っても、彼女の言葉がスバルの錨になっていくのが救いだ。
メィリィ・ポートルートの書
見つかった、死者の書
ベアトリスが書庫で見つけたのは、「メィリィ・ポートルート」と題された一冊。彼女は中身を検めず、慎重に仲間を呼んだ。これが本物の死者の書なら、メィリィはもうこの世にいない。
シャウラは「ちびっ子2号、死んじまったっすか」とあっけらかんとしたもので、「お師様が本を読んだら、きっと2号が死んだ理由も分かるっすよ」と核心を突く。読み手を巡ってエミリアが名乗りを上げるが、ベアトリスは経験者の「スバルかユリウスが適任なのよ」と譲らず、スバルが「俺が見るよ」と引き受けた。
シャウラの死生観のズレが、400年の孤独の重さを逆説的に語っている。そして死の真相を知りたいスバルにとって、この本は自分への疑いを晴らすか、確定させるかの賭けでもあった。
森の女王の、孤独な一生
流れ込んできたのは、暗い森にただ一人だった少女の記憶。言葉も、歩き方も、抗い方も知らず、獣の牙にかかって終わるはずだった命は、やがて獣たちの女王となって生き延びた。連れ戻しに来たエルザ、そして「ママ」。「嘆け、私のために。抗え、私のために。生きろ、私を愛せ」という調教が、彼女の人格を形作っていく。
憎しみも悲しみも、エルザの模倣でしか知らないまま育ったメィリィ。そのエルザを失った今、誰を規範に生きればいいのか。それでも死ねと命じられるのは「嫌よ」と思えた少女の、最後の望みは「知りたいわ」だった。ネットの反応は、ママの声が大罪司教カペラを思わせると騒然、エルザの意外な母親ぶりにも驚きの声が上がった。
殺し屋の少女の内側が、感情の器を与えられなかった子供の物語だったという事実が重い。「知りたい」という願いの直後に訪れる結末を思うと、この書はあまりにも残酷だ。
犯人の顔と、伝染する衝動
書の中の、殺人者
記憶の終盤、メィリィの前に現れたのは、スバルの顔をした何かだった。「薄っぺらいなあ、お前。こびるなよ、気持ち悪い」と嗤い、「望みに耳を傾けろ」「お前の退屈な悩みも、つまらない苦しみも、俺が覚えててやる」と囁く。
そして、あの夜の問いかけ。「昨日の夜の話だけど、私はどのくらい真に受けていいのかしら?」。答えは「ここじゃなんだな、場所を変えよう」、そして「悪いなあメィリィ。これを直接聞くのはルール違反だ」。森で始まった人生は、意味も分からぬまま絞め落とされて終わった。
ネットの反応が「大罪司教と同じ狂気を感じた」と評した通り、あの言動は断じてスバルのものではない。だが体は、顔は、声はスバルなのだ。この気持ち悪さこそが今章の核だろう。
混ざり合う、死者の記憶
深く潜りすぎたスバルを、エミリアの声が引き戻す。「あなたはナツキ・スバル、私の騎士様!」。ベアトリスいわく、死者の書は読み手と死者の記憶が「混ざり合ってしまう」危険物。そして戻ってきたスバルの耳には、彼にしか聞こえないメィリィの声が張り付いていた。
ベアトリスを見て「ちょっと力を入れたら折れちゃいそう」「そしたらまた死者の書は出現するのか?」と過る衝動。無意識に自分の手をひっかく癖。そして声は囁く。「人殺しは癖になるって知ってるかしら?」「癖はねえ、抜けないの」。
殺意が病のように染み込んでいく描写が本当に怖い。幻か、残滓か、それとも別の何かか。メィリィの声の正体を含め、視聴者の考察もスバル多重人格説から乗っ取り説まで割れに割れた。
「殺人は癖になる」まとめと考察
打ち切られた捜索と、夜の対峙
メィリィの姿は塔のどこにもなく、エミリアはあのレイドにまで聞き込みをかけたが空振り。そしてエキドナが冷徹に告げる。捜索の継続には反対だ、と。「僕は、僕がこうしているだけでアナの命を削っている。だから1秒でも早く塔を攻略したい」。ラムも食料の限りを挙げて同調し、エミリアは苦渋の決断で明日からの攻略再開を選んだ。
その夜、死体を確かめに動いたスバルの背に、声がかかる。「こんな夜更けにコソコソと捜し物でもしているの? バルス。それとも偽物と言うべきかしら。ナツキ・スバルの出来損ない」。ラムの静かな殺気が、少年に向けられていた。
感情より合理を取るエキドナの言い分が、正しいだけに冷え冷えとする。そして最後のラムの一言と仕草には、ネットの反応も「ゾッとするから止めて」と震え上がっていた。次回、この対峙はどう転ぶのか。
配られた手札で勝負する
幕間の「エミリア陣営奮闘記」は、療養中のオットーをフェルトが見舞う一幕。椅子にあぐらをかき、見舞いのリンガを勝手にかじる王選候補に、オットーは苦笑いだ。ただの一商人だった自分が遠くへ来たとこぼす彼に、フェルトは言う。「手札は配られちまった。だからよ、私たちはその手札で勝負するしかねえんだ。そこは一緒だろ? 内政官」。
かつての借りに礼を告げに来た義理堅さも、彼女の器の証明だろう。本編は疑心と殺意の泥沼だが、王都では確かに絆が積み上がっている。この落差を噛み締めつつ、物語はクール終盤へ突入する。

























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