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ベリル先生の魔術師学院での講師生活が本格化する第2話。教え方のコツがつかめず肩を落とすフィッセルに、ベリルの試行錯誤も続く。キネラ先生による防性魔法の実演にたじたじのおっさんも見ものだが、白眉は一枚のハンカチが縮めるミュイとシンディの距離。そして穏やかな誕生日会の最後に、「魔法が使えない」学院の異変が待っていた。




教え方って何だ? 剣魔法科・手探りの授業風景
走り込み「あと50周」! 教え方に手こずるフィッセル
第2話は、前回から続く屋外での走り込みから始まる。息を切らす級友たちをよそに、シンディだけは涼しい顔で「唯一の取り柄です」。フィッセル先生もこんなに走っていたのかと問われた講師の答えは「もちろん。まだ走り足りない」、そして「あと50周」。慌てて止めに入るベリルの胸中はこうだ。「教え方を教えるっていうのは手こずるもんだな」。
授業後に「教え方のコツがつかめたとか」と水を向けても、フィッセルの答えは「つかめてない」。走り込みに道場の日々を懐かしむ余裕はあっても、教えるとなるとまるで勝手が違うらしい。一方、授業中も級友の輪に入りきれないミュイの様子には「馴染めてないな。こっちも手こずりそうだ」と、ベリルはこちらでも気掛かりを抱えるのだった。
廊下の剣魔法談義と、ブラウン教頭の「混ざり物は要らん」
夕暮れの学院の廊下を、ベリルとフィッセルが並んで歩く。話題は剣魔法の理屈だ。魔法は遠距離になるほど拡張と維持が難しく、操作を失えば霧散してしまう。だが剣を依り代にすれば操作のイメージがしやすくなり、魔力に切れ味を持たせられるのだという。なるほどと聞いたベリルの感想は「なんだかすごいということしか分からない」。この飾らなさがいかにも彼らしい。
そこへばったり現れたのがブラウン教頭である。「魔術を学ぶ気のない者が学内をむやみに歩き回らないでもらいたい」とベリルへの当たりは強烈で、去り際に残した一言は「混ざり物は要らん」。フィッセルによれば、教頭は魔法第一主義で剣魔法をよく思っておらず、今は研究一筋なのだという。魔法研究のことをぶつぶつ言いながら去っていく背中に、新設の剣魔法科への風当たりの強さがにじんでいた。
弟子たちの昼下がり 張り合う姉妹弟子とキネラの防性魔法
「私が払う」「いや私だ」 大衆食堂のアリューシアとスレナ
場面は変わって大衆食堂。カウンターに並ぶのは、騎士団長アリューシアと冒険者スレナというベリル門下の二人だ。先生と週に一度会えなくなったくらいで何だそのざまは、騎士団長の職権で都合よく取り計らってはいないだろうな、と互いに突っかかり合いながらも、「先生を盛り立てたいという思いは同じ」というところだけは、あっさり一致してみせる。
挙げ句の果てに注文までぴったり重なり、会計は「先生に最も近しい弟子であるこの私が払います」「妹弟子のお前なんぞにおごられてたまるか」「いいえ私が」「いや私だ」の応酬に。仲がいいのか悪いのか。おそらく、その両方なのだろう。
手のひらに魔力の膜 防性魔法の実演と「通報の危機」
いっぽうのベリルは、授業終わりに「昼飯はどこで食べようか」と考えていたところへ声を掛けられる。相手は防性魔法を専門とする講師のキネラ。連れ立って入った小洒落た店で、トマトベースのラビオリを前に「慣れないんだよな、こういうお店」と落ち着かないことこの上ない。
それでも席上、ベリルはキネラの講義でのミュイの様子を尋ねる。人と接することにはまだ戸惑いがあるものの、何とかしたいという気持ちは見て取れる。その答えに「そっか、ミュイは変わろうとしてるんだな」と目を細めるベリルは、すっかり保護者の顔である。
話題がキネラの専門・防性魔法に及ぶと、言葉で説明するより早いからと、その場で実演することに。「私の手を握ってみてください」と差し出された手に、おっさんが人前で若い女性の手を握ったら周りの客に通報されるんじゃないか——と冷や汗をかきながら、恐る恐る握ってみれば、全力を込めてもびくともしない。「私は今、自分の手のひらにだけ魔力の膜を張っているんですよ」。単に硬いのではない、弾力と強靭さを併せ持つ不思議な感触に、ベリルの感想は今回も「やっぱり、なんだかすごいということしか分からない」であった。
別れ際にキネラが残した「ベリル先生には期待してます。剣魔法科は新しい学問で、大きな可能性を秘めていますから」という言葉も印象的だ。魔法の素人に期待されてもな、と苦笑しつつ、風当たりの強い学院で好意的な同僚がいるのは心強い限りだろう。
一枚のハンカチが縮めた、ミュイとシンディの距離
言いそびれた「ありがとう」と、シンディの機転
同じころ学食では、ミュイとシンディが昼食を共にしていた。服にシミを作ってしまったミュイに、シンディはすかさず自分のハンカチで拭ってくれたうえ、替えのスカートが寮にあるとまで気を回してくれる。ミュイが「あ、あの」とお礼を言いかけた、まさにそのとき級友たちが合流してきて、感謝の言葉は言えずじまいになってしまう。
席では基礎魔法のテスト談義から、ベリル先生の話題へ。「あの人教え方うまいよ。うちで教わってた剣術の先生よりずっと分かりやすい」と生徒たちの評判は上々だ。ところが「ベリル先生とお知り合いなんですか」と話が向くと、ミュイの歯切れは急に悪くなる。「まあ、知り合いではある」。どういう知り合いなのかと詰め寄られ、返答に窮したその瞬間——「実は今度の週末、私の誕生日なんです」と、シンディがとっさの話題転換でミュイを救い出す。家族は仕事で祝いに来られないと聞けば、それならと皆でお祝いする流れになり、ミュイはシンディに「さっきのハンカチ、貸してもらっていいか」と申し出るのだった。
そして帰宅後。夕食もそっちのけで「今取り込み中なんだよ」と何かを洗うミュイ。もらった心づかいに自分なりのやり方で応えようとする、その不器用さがなんとも彼女らしい。
誕生日会で返した、洗い立てのハンカチと「おめでとう」
別の日の夕刻、学園の食堂でシンディの誕生日会が開かれる。皆に祝われて幸せそうなシンディに、ミュイは勇気を出して、あの日借りたハンカチをきれいに洗って差し出す。ぎこちない「誕生日、おめでとう」に、シンディは思わずミュイへ抱きついた。
「おい、今ミュイが礼を言わなかったか」「こりゃ明日は雨が降るかもな」と級友に冷やかされて小突き合いになるのもご愛嬌。この様子を見守っていたベリルの「よかったよ。いいものを見られた」という一言が、この場面のすべてを物語っている。
「先生が褒めてくれたから」 教える原点と学院の異変
フィッセルが気づいた、褒めることの力
会の傍らでは、ベリルとフィッセルが剣魔法科の行く末を話している。今のままでは受講者不足で講義自体がなくなりかねない。そんな流れから、ベリルはふと尋ねる。「フィッセル君はどうして辞めなかったんだい」。
剣を振るのが楽しかったから。でも、それだけじゃなかった気がする——思い返されるのは道場の日々、「熱心だね。それにいい立ち筋だ」という師の声。「先生が褒めてくれたから。褒められると嬉しくて、もっと頑張った」。口にした瞬間、フィッセルは気づく。自分はまだ、生徒を褒めていない。
教え方のコツがつかめないと肩を落としていた講師が、自分自身の原点に答えを見つける。「これからのフィッセル先生に期待させてもらうよ」という言葉に、「先生と呼ばれた。ついに私もここまで来た」と静かに噛みしめる姿も、なんともいじらしい。
「いきなり襲われて、魔法が使えない」 黒い狼の影
実はこの回、穏やかな学院パートの合間に、教会側の不穏な動きが短く挿し込まれている。先の一件で裁かれた司教が、裁判の後に不慮の死を遂げたこと。教会騎士団では幹部の首がいくつかすげ替わり、再編が進んでいること。そして「近いうちに大きな任務があるかもしれない」という意味深な言葉だ。
その不穏さを裏書きするように、誕生日会の和やかな空気を突然の悲鳴が切り裂く。様子を見に向かったベリルとフィッセルの前に校舎から負傷者が現れ、「いきなり襲われて、魔法が使えない」と訴える。フィッセルがその場で魔法を出して確かめると、たしかに魔法がかき消えてしまった。
そして校舎から飛び出してくる、黒いオオカミのような何か。亡霊なのか、魔法なのか。魔法使いの牙城である魔術師学院で「魔法が使えない」ことの絶望感を突きつけて、第2話は幕を閉じる。剣一本のおっさんの真価が問われる次回を、待つしかない。




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